川への想い   

    2011 act 1  Modane 〜 Alpe-D'Hues (Col du Galibier)    (2011.07.10)


Col de Galibier 手前数q地点から 来た道を振り返る
 最初で最後、一度走ってみようという程度の軽い気持ちで Etape du Tour に初めて参加して、フランスの山岳地帯を走ることにすっかり魅了されてしまいました。絶対、また来るぞと思ってから5年。漸く、2回目が実現しました。
 今回は、いろんな事情が噛み合ったこともありますが、コースに Col du Galibier(ガリビエ峠)を経由するということが、一番大きな理由でした。Tour de France に関心がある方なら、Col du Galibier という名は少なからず耳にしたことがあるでしょう。私もそんな一人でしたが、知っているのは名前だけ。どんなところかは、全く知識がありませんでした。それでも、こちらも有名な名前だけしか知らなかった、5年前に Tour de France 観戦ツーリング時に走った Col du Tourmalet(ツールマレー峠)が素晴らしい光景の連続だったので、きっと Col du Galibier も素晴らしい峠なのだろうと勝手に想像していたのです。
 実際走ってみて、それはそれは素晴らしい峠・道程でした。これまでに走ったところは限られていますが、現2018年の時点で、未だに最高の場所と思っています。

 さて、当日は午前3時半起床。宿泊地の Chambery(シャンベリー)はスタート地点の Modane(モダーヌ)から約100q離れているので、午前4時に出発。午前6時頃、交通規制の始まっている Modane 市街手前5qくらいのところで、バスを降りて準備。そこからは、自走でスタート地点に向かいます。雨の心配は全くなさそうです。前を見ても振り返っても、道路にはスタート地点に向かう参加者でいっぱいです。
 
 Modane の街の狭い路地は、参加者で溢れています(写真:下左)。その数、10000人以上!参加者の半数以上はフランス国外からの参加だそうです(日本からは22名くらい)。快晴ですが、谷底の街には、まだ陽が当たらず肌寒いくらいでした。南側は山ひとつ隔てるとイタリア。北側にも高峰が聳えています。そんな山々が朝日に照らされた姿は神々しいくらいに見えました(写真:下右上)。気持ちも高揚してきます。
 いよいよスタートです。寒いのでウインドブレーカーを着たまま。ゼッケン順に1000人ずつグループとなってスタートします。私のゼッケンは8000番台。前回は5000番台(7000人余)でスタートまでに16、7分かかった記憶でしたが、今回は先頭スタート後、30分ほどして漸く前に進み始める状況でした。少し進んでは立ち止まるということを何度か繰り返して、スタートラインを越えたのは、約1時間後(ちなみにほぼ最終スタートとなった2016年は、最初の組から2時間遅れでした)。実績のある人は、前方のスタートです。後方スタートは、ただでさえ遅いのに、関門までの制限時間が短くなるので大変です。
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 スタート地点から15qほどは、D1006。緩やかな下り基調です。かなりスピードが出るので、混みあうと危険かなと思っていましたが、さすが自転車の本場。1000人ずつのスタートで、見事にバラけています。周囲を走る人の走力も似通っており、危険を感じることは全くありませんでした。進んでいくと、道路の中央で頭上に旗を掲げて左右に振る人の姿。Tour de France ではよく見かける光景です。そう、前方にロータリーなどがある警告です。その前後一緒に走っていたSさんが、左右に分かれて再び合流したところで、「これ、やってみたかったんだよな〜」。気分は、Tour de France!
 Saint-Michel-de-Maurienne(サン=ミッシェル=ド=モリエンヌ)まで、右手(北側)には険しい峰々が続き、麓の山肌には写真に撮ってくれといわんばかりの村が点在していたのですが、さすがにこの区間ではスピードも出ており、写真を撮る余裕はありませんでした。漸く写真を撮る余裕が出てきたのは、Saint-Michel-de-Maurienne の街で左折して、Col du Telegraphe(テレグラフ峠)への登り・D902に入ってからです。暑くなってきたので、ウィンドブレーカーを脱ぐために路肩に止まった際に、前後を走る人々を2枚ほど(下の2枚)。
 周囲の人のスピードは、後方スタートのためか、それほど速くありません。2011年当時はまだまだ元気だったので、特に気合を入れて走っているつもりではなくても、どんどん追い抜いていくことができました。抜いていく人は、その10分の1くらい。34X17〜19で全く問題ない勾配でしたが、2018年の今なら、23〜25で登っていることでしょう。登りでスピードが遅いとは言え、写真のような混雑具合なので、簡単に停まって写真を撮ることもままなりません。振り返ったら、走って来る人の後方に尖峰が聳えているという絶好のポイントもあったのですが、立ち止まることができませんでした。残念。
 
 勾配は、ほぼ一定だったような記憶です。最初の峠だったので、まだまだ元気だったせいかもしれません。登るにつれて、幾分人もばらけてきました。遠慮なく、時折道脇に止まってカメラを構えます。ほとんどの人は、黙々と登っていきます。たまに手を挙げてくれたり、声をかけてくれたりする人も。前回もそうでしたが、写真を撮りながら走っている人は、ほとんど見かけません。
 道前半は周囲の木々が大きく繁っており展望がなかったのですが、峠に近づいてくると、次第と見晴らしがよくなってきました。写真:右下、谷底の街から登ってきました。走ってきたD1006 と併走する高速道路が見えます。ピレネーやアルプスの名だたる峠道には、自転車のための常設表示があることが多いです。Col du Telegraphe も例外ではありませんでした。峠まで1q毎に表示があるので、峠までの目安がたって助かります。
 辿り着いた Col du Telegraphe は尾根を越える峠ではなくて、山肌の大きな左カーブをなった最高点でした。峠の路肩が広がったところ(写真:右下)では、沢山の人が一服したり、下りに備えて上着を羽織ったりしていました。
 峠自体には、あまり趣がなかったのですが、峠から谷を挟んで北側の山肌中央付近に、教会の尖塔を中心にこじんまりした村が見えました(写真:下左下)。日本人が想像するハイジの世界といったら適切かな。Google map で見ると、Albannette(アルバネット)という村でしょうか。思わず、あちらにも登ってみたいと思わせる光景でした。
 
 Col du Telegraphe からは、Valloire(バロワール)という街まで下りです。フランスでは当たり前のことですが、ガードレールはほとんどなく、あっても登り時の写真に見られるような低い石造りのガードだけ。S字に曲がる緩いコーナーも続く道を、みんなガンガン飛ばして下っていきます。女性も同様。登りでは抜くことが多かったのですが、下りではほとんど抜かれるばかりでした。そんな光景も写真に撮りたかったのですが、速度を下げたり立ち止まったりするのは他の走者の妨げにもなるかと、安全第一で写真はなし。
 下り切った Valloire は小綺麗な街でした。観光地のように見えます。通りの歩道を歩く人は、避暑に訪れているのでしょうか。地元民ではなさそうな道行く人々も、沢山の応援をくれました。ほぼ下り切って再び登りに入るところには、石畳区間がありました。僅か100m程の距離でしたが、結構ストレス。シャンゼリゼの荒い石畳を60q/h以上のスピードで疾走する Tour de France の選手達は、やはり人間離れしているとしか思われません。
 Valloire を過ぎると、いよいよ Col du Galibier への登りです。街を抜けると8%くらいの短いつづら折れがありましたが、それを過ぎると道は少し緩やかになって、直線の登りが続くところが2ヶ所ほどありました。そんなところでは、前方見える限り、道が自転車乗りで埋め尽くされていました(写真:下左端)。
 しばらく進んだところで、補給地点がありました。さほど空腹でもなかったのですが、とりあえずバナナとカステラのようなケーキを少々摂取。前回あったハムをはさんだサンドイッチ(レースの補給としてはあまり効果がないかもしれませんが)や パワーバー(協賛がなくなったのかも)は、この後の補給地点でも見ることができませんでした。少し感心したのは、前回足の踏み場もないくらい空のペットボトルなどが散乱していた補給地点周辺は、ゴミを捨てるポイントがちゃんと設けられていたり、水は大きなペットボトルからボトルに入れて貰ったりすることで、足元がゴミだらけということは一切ありませんでした。
 ほぼ直線的に南へと向かうD902を進むと、次第に周囲の山が険しさを増してきました。しかし、道はそれまで同様、さほど急勾ということはなく、走りやすい勾配が続きます。小さなZ字のつづら折れ(写真:上、右から2枚目)を越えても、また南へ向かう道が続きます。周囲の山々はどんどん近づいてくるのですが、全てが大き過ぎて、距離間隔や山容の大きさが十分に把握できません。
 森林限界を超えたのか、いつの間にか道周囲の木々は姿を消して、道脇は草原地帯が続くものの、山肌は Col D'Izoard のような荒い石の斜面が見られるようになってきました。
 この辺りからは、周囲の光景に、ただ圧倒されるばかりでした。
 集落はおろか民家も全く見かけません。広告塔や電柱はもちろん、ガードレールも一切なし。1q毎に峠までの距離を示してくれる常設の表示(写真:下、峠まで後11q)があるのみです。Etape du Tour が開催されている今回は、赤い Etape du Tour 専用の表示もありました。。
 おおっ、凄い山容だ、と思いながら走っていると、その後方に、またそれを上回る光景が現れてきます。加えて、前後の道には多数の自転車乗りが同じ楽しみを共有しながら走っているという光景が、さらに気持ちを盛り上げてくれます。
 周囲を走る多くの人々にとっては、さほど珍しい光景でもなく、また容易に再訪することができるのかもしれません、みんな黙々とペダルを回していましたが、日本語が通じないのを幸いと、私はひとり歓声を上げまくっていました。走りながら、こんなにいい目をしてもいいのだろうか、と思うくらいでした。
 前回参加時、観戦のためノンビリと余裕を持って登れた Col du Tourmalet への道も、前も見ても横を見ても振り返っても、周囲の山を始めとする光景のスケールの大きさに、ただただ歓声を挙げながら進んだものですが、それをさらに上回る光景が続きます。乏しい語彙では表現できません。写真でごまかそうと思いますが、眼前というか体の周り全体に広がる光景の迫力を伝えることは、かなり大きな画面で見れば、多少はわかるでしょうか?相変わらず、前を見ても後ろを振り返っても、道には延々と自転車乗りが続いています。
 
 
 D902が南進している区間(写真:上まで)は、勾配もさほどきつくない道でした。元気の良かった当時は、34X19で問題なし。初めてフロント・インナーを38から34にしたこの年、フリーは12X23でした。ちょっと不安はありましたが、結果的には峠まで問題なしでした(7年後の今なら、絶対無理)。
 峠まで後5qあまりのところで、道は180℃方向転換し、その後のつづら折れが始まると、勾配はぐっときつくなりました(写真:下)。この辺りから、追い抜く人と追い越していく人の数が、ほぼ同じくらいになってきましたが、大多数の人は似たようなペースで登っていきます。
 この180°の折れ曲がり地点周囲では羊の放牧がされていて、穏やかなアルプスの一場面という絵になる光景だったので、迷わず写真を撮ったのですが、なんと痛恨のピンボケ。羊が放牧された草原の背後(東側)には、ノコギリ歯のような切り立った稜線が連なっていました(トップの写真、二つ下右の写真)。こんな山も日本ではまず見ることができません。アップにしたり、広角にしたり、いろいろ構図を考えてみますが、やはりこの壮大さや迫力は上手く伝わりません。
 つづら折れを登り始めると、先程まで南進してきた道は、どんどん下方に遠ざかっていきます。立ち止まって眼下の道を見ると、まだまだ沢山の自転車乗りが走っていますが、心持ち少な目に思えます。結果的にそんなことはなかったのですが、あの辺りが最終走者に近いのだろうかと、ついつい不安になってしまいます。写真:下右、斜め奥に進む道は農道で、右下方に自転車乗りの姿が点状見える道がコースのD902、その間に羊の群れがいるのですが、小さくて言わないとわかりませんね。
 つづら折れを登っていくと、また新たな高峰が目の前に姿を現します。道は、まだまだ登ります。下左の写真、ほぼ中央付近にも石積みのアーチ橋の上を走る自転車乗りの姿がわかるでしょうか?
 写真:下左、大分登ってきました。見下ろすと、手前の道は3つ上のつづら折れの一番上くらいに見えるところでしょうか。谷底に細く横走しているのが、南進していた部分のD902。羊の放牧はこの右手付近です。
 写真:下右、上左の石積みアーチを越えた辺りかと思います。Col du Galibier はこの右奥方向なのですが、こんなに登った後で、まだこの後再びなだらかで広い草原状地帯が広がるのにも驚かされました。
 つづら折れを過ぎると草原状地帯になりましたが、まだまだ登っていて、勾配はそれなりに続きます。周囲の人もだんだん疲れがたまってきているようで、俯き加減の人の姿が次第に増えてきました。写真:下左下、黄色い看板は今回の Etape du Tour 用の峠まで後5qの表示。その下、白っぽく見えるのが、常設の表示です。1q毎にあるので、何度か写真に撮ろうとしたのですが、目安になるためか、なぜか表示近くには立ち止まって休憩している人がいることが多く、なかなかいい具合の写真を撮ることができませんでした。
 写真:下左は、二つ上・右の写真の山を、さらに登った地点から見たところ。見上げていた道が、こんな下方になりました。
 写真:下右、ちょっと広い雰囲気が伝えられるかと思う一枚。標高2000mを越えていますが、好天のため半袖短パンで全く問題なし。ヘルメットを脱いでいる人も時々見かけました。みなさん、マイペースで黙々と走っていきます。同じような好天でも、一人か何人かで走るのと、こうして10000人に及ぶ沢山の自転車乗りと一緒に走るのでは、また随分と雰囲気や感じ方が変わるのかもしれません。交通制限がなければ、クルマは結構通る道なのでしょうか?
 写真:下左は、峠まで4q付近の地点から。漸く峠が見えてきました。稜線の中央部やや左の凹んだところが Col du Galibier です。いつも走っているコースなら、距離的には大坂峠くらいかな、と思いましたが、その後10%くらいと思われるつづら折れがもうひとつありました。
 写真:下左では真っ直ぐ正面が峠ですが、下右の写真のように、大きく左手にカーブして登っていきます。道周囲には、もう草もほとんどない状態になってきました。
 大分登ってきました。広い草原地帯も一望できます。見上げるような位置にあったノコギリ状の稜線も、いつの間にか目線の高さになっています。D902の南進してきた部分は、谷の奥となって、視界から完全に消えてしまいました。
 次々と展開されていく眺めに魅せられて、ちょっと走っては立ち止まって写真撮影の繰り返しです。写真:下左は、峠少し手前から振り返ったところ。後方に聳えている山は、ふたつ上右の写真、5つ上、6つ上の写真と同じ山です。前を見ると、いよいよ峠が近づいてきました。峠を目の前にして歩いている人も写っていますが、歩いている人や補給地点や峠以外で立ち止まっている人は、ほとんどいませんでした。
 とうとう、峠に到着しました。さすがに多くの人が補給・休憩したり、何人かはスマホやカメラで写真を撮ったりしていました。快晴でほぼ無風。標高2645mの峠は、暑くも寒くもなく快適でした。
 写真:下右は、峠から走ってきた道を見たところ。今回のコースは、Tour de France 本番の19stage でしたが、本番のほうは写真の右下に向かっていくセンターラインのある道を進んでトンネルで峠を通過するようでした。やはり峠は、上まで登るに限りますね。ほんの少し登るだけでも、眺めが随分と異なりますから。コースを本番から変更してくれた主催者に感謝。
 峠までの道程、峠から振り返って見た走ってきた道を含む光景も素晴らしかったのですが、峠から西方向の眺めも劣らない大展望が広がっていました(写真:下左)。これから下っていく Col du Lautaret(ロータレ峠)は、手前の山の後ろを下って行ったところ。その向こうに、前回も Col du Lautaret から見上げた氷河を抱いた山が、今度はほぼ目線で、しかも屏風のように広がっていました。もう下るのが勿体ないくらいの光景です。次々と同じような写真を何枚も撮ったつもりでしたが、帰国後確認してみると、それほど多くの枚数はありません。やはり下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるで、もっと枚数を撮ることが必要かと思われました。
 上:もう一度、峠から振り返ってみます。
 
 左:峠から西へ、家屋の横にトンネルから抜けてきた道が見えます。

 下:南西に伸びる谷は、前回走った Briancon(ブリアンソン)から Col du Lautaret へと向かう道が走っています。
 いつまでも飽きずに山々を眺めていたかったのですが、時間制限もあるため仕方なく下りにかかりました。5年前に Col du Lautaret を走った時も快晴で、走っていく右手に道があるなあとは思っていましたが、それがこの有名な Col du Galibier へ続く道で、しかもこんな素晴らしい光景がみられるとは想像もしていませんでした。
 Col du Galibier から Col du Lautaret まで、距離は約8q、標高差は600mほど。道幅はそこそこありますが(センターラインははっきりしない)、路面はそれほどスムースと言うほどでもなく、断崖絶壁ではありませんが当然ガードレールの類は皆無です。カーブは大きな半径のものが数か所あるだけで、直線区間も多いので、みんな凄いスピードで下っていきます。プロが100q/hで下るというのも納得。
 しかし、私は相変わらず周囲の景色に目を配るのに夢中でした。右側通行なので、道の一番右端に寄って、みんなの邪魔にならないようにゆっくりと下りました。幸い大きな集団はなくて、次々とばらけて下っていきます。登ってきた側とはまた異なる魅力を持った山々に、停まって写真を撮りたい誘惑が次々と襲ってきます。しかし、走行の邪魔を考えたり、道路の左側のほうがいい写真が撮れそうだけど、さらに邪魔と思うと、なかなか立ち止まることができません。結局、数か所でなんとか止まっただけ。
 前方には、巨大な氷河が見えてきました。圧倒的です。前回も見ている筈ですが感動がより大きく、前回は雲がかかっていて、あまり見えなかったのかなあと思い、当時の写真を確かめましたが、その時も晴れていて、しっかり氷河が見えていました。前回は、ここまで到達するのに体力を消耗してしまって、十分味わえる余裕がなかったのだろうと思います。
 斜面には一面に満開の高山植物。咲き誇る花々と下っていく自転車乗り達をなんとか上手い一枚に捉えたかったのですが・・・。
 写真:上右下は、D1091・Briancon 方面から前回走ってきた道です。
 Col du Lautaret からは、Le Bourg d'Oisans(ラ・ブール・ドアザン)までD1091、そこからD211でゴールの Alpe d'Huez(アルプデュエズ)までというコースは、5年前と一緒でした。5年も経つのに昨日のようにはっきり覚えているところもあれば、全く記憶に残ってないところもありました。写真:下左は峠から Col du Galibier 方面を振り返ったところ。Col du Galibier は一番奥の稜線、左手付近と思います。何軒かあった峠の建物は、さほど変化がないように思えました。写真:下右、峠から最初の道筋、緩やかに下っていきます。
 写真:下右のコーナーは、5年前にもここで写真を撮ったなあとしっかり覚えているポイントです。奥の山に氷河が見えたので、思わず停車したのでした。さらにカーブから北方向を見たのが下左の写真です。これもまた記憶に残っている光景でした。山腹に見える村を訪ねながら、ゆっくりとツーリングをするのが理想でしょうか。途中、如何にもアルプスの村という趣のあるところも通過したのですが、写真なし。
 補給地点に立ち寄りました。補給・休憩と写真撮影が目的です。前回も確か同じ場所に補給地点があったような記憶です。北側には、氷河を抱いた山が迫っています。相変わらず、バナナ、オレンジ、カステラをいただきます。もちろん、水分も補給。
 補給地点からしばらく走ると、ダム湖沿いの平坦な道になりました。途中いくつかのトンネルがあるのですが、ひとつはほとんど真っ暗でした。トンネル内に入ると前後に走っていた人達のスピードがだんだんと遅くなり、とうとう立ち止まってしまいました。そこからしばらくは乗車することができず、押して進みました。出口に近づいて少し明るくなってきて、漸く走り始めることができました。前回は、全く記憶にないことでした。私の走った辺りは、さほどスピードも速くなく集団もばらけていたのですが、大集団で速いスピードで突入したら結構危険かなと思われました。が、そんな人達は、またそれなりのスキルを持っているのかもしれません。このトンネルかどうかははっきりしませんが、私が通過した後に何処かのトンネル内で事故があって、しばらく通行止めになっていたことを聞いたのは、ゴール後大分経ってからのことでした。
 ダム湖畔沿いの道を走った後、ダムの堰堤上もD1091で走ったのですが、そこは全く前回の記憶に残っていませんでした。かなり疲労していたのでしょう。ダム湖から下って Le Bourg-d'Oisans までには小さなアップダウンがありましたが、Le Bourg-d'Oisans 手前は平坦区間です。10名ほどの集団だったので、無賃乗車を決め込みました。Le Bourg-d'Oisans の補給地点で、最後の補給です(写真:下右3枚)。前回は180q近くで2つの超級峠を登った後だったのでヘロヘロでしたが、今回はそこまで積算標高で2000m以上登っていましたが、距離は100q弱だったので、まだ十分余裕がありました。
 さあ、ここから Alpe d'Huez への登りです。登り始めには、Tour de France 本番にはほど遠いものの、沿道には応援の人達が並んでいます。中には、手を差し出してタッチを求める人も。登るにつれて、Le Bourg-d'Oisans の街は、次第に眼下の谷底へと沈んでいきます。21ヶ所あるヘアピンカーブ毎に立ち止まって、前後を走る人達の姿を撮ります。もちろん、休憩も兼ねているのですが。
 5年前同様、少し登り始めたところで、既にゴールして下ってくる人と擦れ違い始めました。前回はコースを逆走する人に驚いたのですが、今回は、やっぱり速い人は違うなあと思いながら。写真:下右から2番目は、No.11のヘアピンカーブにて。みなさん、似たようなスピードです。
 つづら折れを過ぎて、後3qの地点辺りになると、勾配は少し緩やかになります。Le Bourg-d'Oisans の街もすっかり下方になりました。下右の写真、左手に切れる山の奥付近が、Col du Lautaret あたりでしょうか?
 Alpe d'Huez の街が見え始めると、また沿道に応援する人の数が増えてきました。それに応えるように、それまでよろよろを走っていた周囲の人のペースも次第に上がっていきます。
 さあ、あと1q。前回はあまりの疲れ具合に気づかなかった短い下りを過ぎると、左直角コーナーを抜けて最後の直線です。この登りコーナーを、Tour de France の選手達は大きく膨らむくらいのスピードで通過していく映像を見て、ヨタヨタと走っていた前回は、どうしてあんなスピードで駆け上がっていけるのかと驚嘆したものでしが、少しばかり余裕のあった今回は、そこそこのスピードでコーナーを回っていくことができました。
 最後の直線の坂も、前回はなんてきついんだと思いながらのゴールでしたが、今回は余裕があって、写真を摂りながら(下右)でした。きっと、笑顔だったと思います。
 前回は、おそらく暑さと長旅の疲れや睡眠不足もあったためだと思いますが、熱中症のようになって、ゴール後暗くなるまでぶっ倒れていたのですが、今回はまだまだ余裕があったので、ゴール後、前回はゆっくりできなかった Alpe d'Huez の街を少し歩いてみました。スキー場として有名のようで、リフトが何本も設けられています。ホテルも多数。土産物屋やレストランもあります。遠くをみると、Col du Lautaret とは反対方向にも氷河を抱いた山々が見えました(写真:下右端)。
 20歳の頃、自転車乗りではなかった友人から「自転車で旅する時の一番の楽しみは?」 もしくは「何を求めて自転車で旅をするのか?」という意味の質問を受けたことがありました。ただ知らないところを走ることが楽しくてと漠然と思っていた私は、ちょっと考えてみました。で、辿り着いた答えは、「スケールの大きな風景の中を走ることが自分にとってサイクリングの一番の楽しみだと思う」。当時は海外旅行も行ったことがなく、もちろん海外を自転車で走るということも考えたことがない状況で、北海道や信州の光景を思い描いて答えたことでした。
 今回の Col du Galibier を巡る Etape du Tour は、まさにその最高の舞台だったのではないかと思います。これまでの自転車人生における最高の一日、と言っても過言ではないでしょう。

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