川への想い   

    2012 act 1  Albertville 〜 La Tousuire    (2012.07.08)


Col du Glandon(グランドン峠)から、コースを見下ろす
 2011年に続いて、2012年もふたつの Etape du Tour が開催されました。Act 1 は Albertville(アルベールビル)をスタートして、 La Toussuire(ラ・トゥスゥール)までの約150q。途中に2つの2000m・超級峠、さらに2級をひとつ越えて、最後は1級の頂上ゴールというコースです。
 左から Col de la Madeleine(マドレーヌ峠)、Col de la Croix de Fer(クロワ・ド・フェル峠)、その手前にCol du Grandon(グランドン峠)、、Col du mollard(モラール峠)、そしてゴールが右端の La Toussuire(ラ・トゥスゥール)

 今回の宿泊地・Annecy(アヌシー)はスタート地点・Albertville から40kmほど離れたところだったので、2006年に比べると時間的に少し余裕がありました。それでも、午前4時起床。早い朝食を摂って、5時にはバスに乗り込み、ホテルを出発しました。6時過ぎには前日受付時に下見をしていたスタート地点から3qばかり離れた広場に到着。早速、出走準備にかかります。
 ところが、まさかの雨。小雨でしたが、前年の悪夢が頭を過ります。ただ、周囲を見渡すと山々のかなり上方まで確認できたので、大崩れはしないだろうと思いました。前年の教訓に学び、今年はちゃんとした自転車用合羽を羽織って、シューズカバー(雨用ではない)も装着。防水の手袋も準備しています。ところが、雨ばかりに気を取られていて、肝心なものを忘れてしまったのに気づいたのは、この後の話。

 エントリー数は10000人近くでしたが、スタート時の天候が悪かったためか出走数は5688人だったそうです。1000人ずつのグループ別にスタート地点が区分されているので、その場所を目指します。前年の Act 1 を完走していたためか、私のゼッケンは2000番台でした。その集合場所に到着したところで、なんとスペアチューブや携帯電話などを入れたサドルバックを付け忘れていることに気付きました。既に6時45分。スタートは午前7時、先頭から順次。MAVICのサービスカーも走るとはいえ、スペアチューブは必須のお守りです。ちょっと迷った末に大急ぎで広場まで引き返したのですが、バスは既にゴール地点に向かって出発した後でした。仕方ありません。パンク=リタイアという、最も考えたくない不安要素を抱えたままのスタートとなりました。写真:上左端は、スタート前。写っているのは、全出走者の5分の1にも満たないと思われます。
 まずは、Albertville の街中を走っていきます。前日は冬季オリンピック会場跡を使用した受付会場付近しか見ていなかったので、初めての街並を確認しながら、雰囲気も楽しみます。街の目抜き通りを思われる道筋は、これがフランスの地方小都市と言わんばかりの佇まい。小雨の早朝にも関わらず、沿道には大勢の人が声援を送ってくれていました。

 路面が濡れていることや街中でコーナーも多かったためか、集団のスピードは30km/hr弱と、ゆっくりしたペースで進みました。が、小雨に集団とあって写真を撮る余裕は全くありません。道路には所々に高さ20cmほどの路面を横断する盛り上がった箇所がありました。街中でクルマの減速を促すためと思わるこの仕様は、前回まではあまり気が付かなかったのですが、今回はコース途中に通過する街の随所に見られました。
 橋を渡るクランク状に折れ曲がった部分を過ぎると、Albertville の街から郊外へと抜けていきます。極緩やかなカーブとアップダウンが連続します。集団のスピードは相変わらず30km/hrくらいでゆっくりと進みます。変わらぬ小雨の中、緑の中に点在する民家の軒先には、応援の人が続きます。いや、本当に有難いです。

 スタートから15qほど走ると、Col de la Madeleine への登りとなりました。雨も小康状態になり、登りとなって集団のスピードも下がってきたので、写真撮影開始です。Col du Madeleine は穏やかに広がる展望との何処かで読んだ記憶でしたが、D213 で北側から南下する今回のコースは、比較的狭い谷沿いの道が続き、峠に近づくまであまり展望は開けませんでした。
 
 最初の補給地点 Celliers Dessus(スリエ・デシュ、写真:ひとつ上&横)近くの九十九折れ前後で何枚か写真撮影。雨も小康状態となってきたので、ついでに合羽も脱ぎました。ここでは、ちょっとだけバナナとカステラ風のケーキをいただきました。

 曇天が続きますが、とりあえず雨は上がり路面も少し乾いてきました。しかし、やはりパンクが気になって、少しでも先に進んでおこうと、ゆっくり写真を撮る気持ちの余裕がありません。この付近で、後方から日本語で声をかけられました。いつも着ているTOKUSHIMAジャージ背面には、「あわわ」(徳島のタウン誌名)というひらがなが入っているので、後ろからみるとすぐに日本人だとわかるのでしょう。お話しを聞くと、Raphaで働いていて主催者枠で出場しているというYnさん。この後 Col du Gladon まで相前後して走ることになりました。 
 同じ頃先発していたKdさんにも出会いましたが、毎年 Etape du Tour のHPから日本人らしき参加者を名簿から探しているKdさんによると、2012 Act 1 参加の日本人は20人程度だったようです。6000人近い中なので、なかなか見かけることはないと思うのですが、走力が似ているためか、意外と前後を走っていることがありました。

 ところで、Etape du Tour は、毎年 Tour de France の山岳コースのひとつを走るのですが、この年の Act 1・Act 2 ふたつのコースとも峠三昧でした。峠までのアプローチは何処も20q近くの距離がありました。そこで、目標は比較的勾配の緩い峠まで10q地点までは淡々と走る、10q地点を通過したら次は5q地点を目標に、5q地点を過ぎたら、その後は1q毎にカウントダウン感覚で小刻みに進んでいこうと考えていました。どの峠にも、峠までの距離と平均勾配を示す1q毎の常設表示(写真:下中)に加えて、Etape du Tour 臨時の距離表示(赤に白抜き文字・写真:上中)が設けられています。Col de la Madeleine も例外ではありません。
 Tour de France 観戦待ちの方でしょうか。キャンピングカーの中から応援です。峠道の途中には、こんな方が結構沢山います。
 写真:左、後3q地点付近から、稜線の中央やや左が Col du Madeleine です。

 峠まで5qの切ると森林限界を超えたようで、漸く展望が広がってきました。アルプスならではの緑の草原が広がるなだらかな斜面。行く先にも、振り返っても、自転車乗りの姿が延々と続いています。Etape du Tour ならではの光景です。

 時折陽も差してきて、やっと少し余裕が出てきました。周囲の人達のスピードも遅いので、立ち止まって写真撮影を繰り返します。最後の大きな九十九折れを過ぎると峠です。さすがに標高2000mの峠に近づいてくると、付近の山々は急峻な頂きを構えていました。

 しかし、後3qを切ってからも峠まで随分と長く感じました。峠はそこに見えているのですが、なかなか近づきません。

 写真:下、後1qの表示です。しかし、まだまだ、きつい坂が続きます。

 振り返ると、近くの切り立った山肌の下を走る参加者たち。谷を隔てた遠くの高峰も望むことができました。制限時間に追われてなければ、もっと余裕を持って楽しみたい光景が、これでもかと続きます。風景だけでも素晴らしいのですが、延々と自転車乗りの姿がそこにあることが、またいいですね。

 漸く Col du Madeleine に到着です(写真:下)。ここは水の補給だけでしたが、そのまま先に進む人は少数で、ほとんどの人が立ち止まって一服しています。もちろん、上位で完走するレベルの人たちは、こんなことはないのでしょうが。
 Col du Madeleine で小休憩。写真:下中は、前述Ynさんに撮っていただきました。峠には制限時間を示していると思われる時計表示がありました。上まで来たら、タイムアウトでしょうか?

 下りは冷え込むかと再び合羽を羽織ったのですが、それほど寒くはないばかりか、少し暑いくらいになって途中で脱ぐ羽目になりました。

 峠から下っていく南側は、登ってきた北側よりもずっと遠方までの展望が広がっていました。雪を頂いた高峰との間に広がる深いU字谷の底に小さく見える街の風景は、この地方ならではのものでしょうか。

 Col du Madeleine からの下りでは、そんな風景が連続していて、写真を撮りたいところが次々と出てきます。しかし、周囲の人のスピードはとても速く、また道幅も比較的狭く、他の参加者の危険も伴うので、ほとんど立ち止まることができません。

 急峻な峰、その山肌に点在する小さな村、草原の斜面を突っ走っていく参加者の姿、途中で通過する小さな村の光景など、足早に通り過ぎるのが勿体ないくらいです。しかし、時間制限もあるし、スペアチューブもないし、後ろ髪を引かれる思いで先へと下りました。

 下り切った La Chambre(ラ・シャンブル)の街が第二補給地点です。ここでも多数の人が応援に繰り出していました(写真:下)。補給地点の食べ物の内容は、ほぼ何処も同じです。定番のバナナ、オレンジ、カステラ風お菓子、あとドライフルーツや得体のしれないチューブ入りのものなど。以前のようなサンドウィッチなどはありませんでした。

 補給後は、今回のコースで唯一の平坦区間が少しありました。8qほどだったのですが、補給地点で一緒になったYgさんと一緒に10数名ほどの集団で走りました。が、切れないようにするので精一杯。一方、Ygさんはシクロクロス車ベースのかなり重そうな自転車で、時には先頭を牽いて行くパワーを見せていました。

 St.-Colomban-des-Villards(サン・コロンバン・デ・ヴィラード)の給水所(写真:上右)を越えると、D927 で二つ目の Col de la Croix de Fer に向けて本格的な登り坂となってきました。Col de la Croix de Fer の手前には、Col du Grandon 控えています。

 名前はもちろん、何の予備知識もなく向かった Col du Grandon の登りは、予想していなかったきつい坂が続きました。後で話を聞くと、みなさん、ここの登りが一番厳しかったと同じ意見でした。
 天候は、すっかり回復して青空も見えてきたのですが、それを楽しむまでの余裕がありません。予備タイヤを忘れたことも、あまりのきつさに忘れてしまっていました。

 写真では比較的緩やかに見えますが、峠の10q手前から結構急な坂が続き、先が思いやられました。それでも、写真が多いのは、周囲のスピードも遅いため立ち止まりやすかったことや天候が回復してきたこと、何よりも二度と来ることはないだろうと思うと、少しでも楽しみ、そして写真にも残しておきたいと思ったからです。

 後4qを過ぎても、峠の姿は見えてきません。Col du Madeleine と同じように、ちょっと路肩の広いところには、Tour de France 本番を今から待っているのでしょうか?キャンピングカーが停車しており、デッキチェアに座ったり、思い思いの姿で、参加者を応援してくれます。
 後4q 後3q

 後3qまでの表示を過ぎて、漸く稜線に峠らしき道が見えてきました(写真:下右)。3qというと、地元・徳島では距離だけ見ると眉山や大坂峠程度なのですが、なんだか距離表示が間違っているのではないかと思うくらい峠は高く遠いところに見えます。

 疲れもあったのでしょうが、その3q、とても長くきつかったです。後1q前後からは、蛇行する人や歩いて自転車を押す人の姿も見えるようになってきました。最後の1qも急勾配で、コーナーでは頭上に次の道があるという感じでした。

 漸く辿りついた Col du Grandon は Col du Madeleine 同様、補給地点ではありません。給水もなし。補給地点はそこから2.5q先の Col de la Croix de Fer です。しかし、しっかりと登ってきた峠なので、みなさん一服。下右の写真は、再びYnさんに撮ってもらいました。サドルバックがないので、自転車はすっきりしています。ちなみにギアは、50X34・12-23。まだまだ元気でした。下右端の写真は Col de la Croix de Fer 方面に進んだところから振り返ったもの。右下の建物のところが Col du Grandon。登ってきたのは写真の右手から。左手に見えている道ではありません。

  Col du Grandon を過ぎると、ほんの少しだけ下って、今度は D926。また登りです。そこまでに比べると緩やかなのですが、 Col du Grandon で体力を消耗してしまって、全く緩やかに感じられませんでした。下左の写真は、Col du Grandon から Col de la Croix de Fer 方面。右手の鞍部付近が峠です。下右の写真は、Col du Grnadon から1q以上走って振り返ったところ。ほとんどの人が俯いているので、みんな疲れていることがよくわかります。後方の切り立った山岳風景に気づいている人は、ほとんどいないかもしれません。

 Col de la Croix de Fer に到着しました。ここは、補給地点。定番のバナナ、オレンジ、カステラ風のケーキをいただきます。一服しつつ補給処の裏手に回ってみると、写真:下右のような尖がった峰が並ぶ姿が見えました。こんな光景は、日本ではまず見られません。地図を見ると Le Rissiou とか Les Aiguillettes という山でしょうか。
 

 ゆっくり休憩して、ここからは下り。この下り区間の光景も素晴らしかったです。広大な草原の斜面を横切って道は下っていきます。ただ道はさほど広くなく、ガードレールは一切なし(それが景観を損なわないので、またいいのですが)。コーナーでは、つい必要以上の減速をしてしまいます。写真:下左の左下付近に見える道を下っていきます。そして、写真:下右の谷底の町・St.Jean D'Arves(サン・ジャン・ダルブ)まで一気に下ります。

 相変わらず下る速さは、みんな速いので立ち止まることができません。あっちこっちと写真を撮りたいところが沢山ありましたが、ほとんど写真なし。下っていく参加者や、途中の小さな村・St.Sorlin D'Arves(サン・ソルラン・ダルブ)も1枚撮るのが精一杯でした。

 下り切ると、今度は3つ目の峠・Col du mollard への登りです。事前にちょっと確認していたコースから、この峠は2級で標高差もさほどないし、それほどきつくはないだろうと侮っていたのですが、そんなに甘くはありませんでした。客観的には(冒頭の図参照)、標高差も距離も前二つの峠に比較してなんていうことはないのですが、そこまで走ってきた疲れで、全く脚に力が入りませんでした。

 それでも走りながらキョロキョロしていると、Col de la Croix de Fer で見えた尖った峰々が見えます。走る前にコースをいい加減にしか見てなかったため、冒頭の地図のように Col de la Croix de Fer からゴールの La Toussuire まで、ぐるっと半時計方向に近くを回る様にコースが設定されていることを全く知りませんでした。どっちへ向いて走っているのかなあと不思議な感覚でした。
 到着した Col du mollard は標高1633m(写真:下中下と下右上)。標高2000mの前二つの峠と比較しても、なだらかな丘状にありました。ここでもCol de la Croix de Fer で見えた尖った峰々が見えています。

 さあ、最後の頂上ゴール・La Toussuire を目指して最後の登りです。しかし、ここもまた難所でした。麓の St.Jean de Mourienne(サン・ジャン・ド・モリエンヌ)の標高は約400m、ゴール・La Toussuire は標高1686m、標高差1300m弱です。もうフラフラ。事前チェックをいい加減にしかしていなかったので、こんな遅いスピードで制限時間に間に合うのか、だんだん気になってきました。時にクルマやバイクが後方からやって来ると、最終の回収かなと心配する始末。しかし、ここまでやって来て、やっとスペアチューブがなくてもゴールには辿り着けると確信できました。走っていても、歩くスピードよりちょっと速い程度でしたから。

 そんなこんな状況でしたが、遂にゴールが見えてきました(写真:上右)。無事完走できて、DNFとなった前年の借りを返すことができた気分でした。実は、1週間後に開催される Act 2 は大きな4つの峠もあり距離は50qも長いので、そちらのほうがずっと不安だったのですが、150qそこそこのこのコースでこれだけのダメージを受けるとは思ってもみませんでした。Act 2 がますます不安になってきました。
 参加者みんなにとっても、かなり厳しかったようで、制限時間内に完走したのは、同じツアーの方で私を含めて3名のみ。全体でもかなり完走率が低くなりそうだったとのこどで、ゴールの制限時間が急遽2時間延長されたそうです。積算標高差は4800mだったと、同じツアーの方からお聞きしました。

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