川への想い
    2012 Tour de France 観戦  Etape 9 Arc-et-Senans 〜 Besancon (個人TT)  (2012.07.09)


Arc-Et-Senans 郊外にて
 2012年 Etape du Tour ツアー、Tour de France観戦初日は、Arc-Et-Senans(アルケスナン)からBesancon(ブザンソン)までの個人タイムトライアルでした。個人タイムトライアルの観戦って、山岳やゴールスプリントなどと異なって、どんな風に観戦したらいいのかなあ、とちょっと疑問・不安でしたが、結果的には好天にも恵まれ楽しい一日を送ることができました。

 前日は Etape du Tour 本番。距離は140qほどと比較的短かったのですが、積算標高差がなんと4800m。時間内完走者が少なく、急遽最終制限時間が2時間延長されたという難関コースでした。
 そのため帰路が遅くなり、バスの運転手さんの休養(フランスでは前日の終業から翌日の始業開始時間までの厳しい制限があります)のため、出発時間が当初の予定より少し遅くなりました。ご存じのように、個人TTは、その日までの成績順に出走なので、前半だった唯一の日本人・新城幸也選手のスタートには、間に合いそうにありません。みんなで大声援を送ろうと思っていたので、非常に残念。

 前日の宿泊地Annecy(アヌシー)からスタート地点のARC-ET-SENANSまで、北方向に150qくらい。いつものように、バスからフランスの田園風景を楽しみながら向かいます。Arc-Et-Senansに近づいてくると、写真:上のようなスタート地点の案内板(赤い矢印)がでてきました。コース近くでは交通規制が厳しく、観戦予定地点よりかなり離れたところにバスをデポすることが多いのですが、この日は幸いにもスタート地点のかなり近くに置くことができました。
 スタート地点までは、歩いてもすぐ。もう始まっていて、次々と選手がスタート台から飛び出していきます。観客も思ったより少なくて、すぐ近くまで行くことができます。

 ところで、Arc-Et-Senansは、世界遺産にも登録されている王立製塩所だった建物があります。スタート会場は、なんとこの半円状に作られた王立製塩所を使用していました。半周に沿って、各チームカーとバスが並んでいます。チームカーは、いつもは数台以上のマシンを積んでいますが、個人TTなのでひとつだけ。すっきりして美しい。走る選手の姿はもちろんですが、伴走するチームカーも滅茶苦茶格好いいです。

奥の建物が王立製塩所・中心部

 せっかくなので、製塩所内もぐるりと回ってみました。が、この日は Tour de France 開催のため臨時休業だったのでしょうか?内部に入る場所がはっきりしなくて、建物周囲を巡っただけで終わりました。

製塩所も同時に見学中

製塩所の建物群

 各チームのテントでは、スタート前の選手達がウォーミングアップ中。出走が近づいてきた選手から、半円形の製塩所の門からすぐ外にあるスタート台へ向かっていきます。門を出たところにあったのは、自転車の計測チェックポイントでした。サドルの位置など、いろいろある基準をチェックしているようです。それが終わると、いよいよスタート台に登っていきます。

 スタートから100mほどのところから見てみました。次々と選手達が飛び出してきます。スタート地点に戻ってみると、チームカーは、選手が出走直後に右手側から出てきていました。
 一際歓声が大きくなりました。出走順は、まだ半ば過ぎたくらい、上位選手達はまだまだなのに誰だろうと思っていたら、T.Voecklerでした。この年は、ステージ優勝もしたし、山岳賞も取った素晴らしい年でしたが、それに関係なくフランスでは絶大な人気です。

 T.Voecklerが製塩所の門から出てきたところで、早くも人だかり。スタート後もカメラクルーが監督が乗っていると思われるチームカーにとりついていました。
 さて、まだまだ出走は続きますが、数人で少し離れた場所に行って観戦してみることにしました。スタート地点には、定番オフィシャルショップがあります。なにかいいものはないかなあ、と少し寄り道。製塩所の壁には、観戦に訪れた人の自転車がずらり。

 スタート地点から数km離れたところまで行って観戦することにしました。D17を東方向に3qばかり走って右折。牧草地や畑の中を少し進むと、Tour de Franceのコースに出ました。観戦客は数珠なりということはなく、道端にパラパラといる程度。自転車を一か所にまとめて、私達もそれぞれ適当なところでウロウロします。

 と、いきなりやってきたのは、マイヨベールを身にまとったP.Saganです。確かこの年が初参加だったはずですが、いきなり大ブレークでしたね。続いて、当時一世を風靡していた兄弟の兄・F.Schleck。選手は、3分くらいの間隔で次々とやってくるので、退屈する暇はありません。かといって、大集団がやって来るのを今か今かと待つのではなく、応援する人々も比較的ノンビリしています。周囲は、小麦やトウモロコシ畑が多いのですが・・・。

 Tour de Franceと言えば、有名なひまわり畑。フランス南部を移動していると、随所でひまわり畑を見ることができます。が、雑誌で見るようなひまわり畑をバックに選手達が走る、といった光景は、それほど多くはないと思われます。ここには、すぐ近くに大きなひまわり畑があったのですが、コースとは少し離れており、走る選手を大写しに入れて撮れるポイントがありません。
 

 なんとか、何処かいいポイントがないかとウロウロしてみたのですが、遠くからも花の向きが反対になってしまいます。仕方なく、あきらめてまたコース沿いに戻りました。相変わらず選手は次々とやってきます。あっという間に通り過ぎて行くので、誰だかほとんどわかりません。こうして写真を見て、チームカーのボンネット上の選手名を確認して初めてわかる次第です(HP上では、写真が小さいので判別できませんが)。

 有名な選手や地元フランス人選手には、カメラクルーが後を追ってきます。一度は、ヘリコプターが低空飛行で追いかけてきました(写真なし)。少しゴール方向に歩いてみると川を渡るポイントもあり。後半となって、名前の知れた選手も増えてきましたが、やはり走っている時にはなかなか判別できません。下の写真、左上から、I.BassoP.RolandL.LipheimerJ.Coppel

この真ん中を走ってくれれば、最高ですがね

 さてどれくらいの時間、ここで過ごしたのでしょうか?どうも記憶がありません。そろそろ帰路に向かうための集合時間が近づいてきました。うまくいけば、上位陣のスタートも見えるかもと、スタート地点に戻ります。
 戻ってみると、観客数が数倍に増えています。ちょうど旨い具合に、トップ5くらいのスタートに間に合ったのですが、走っていく選手は、三重四重になった人波の後ろからチラッと見える程度でした。上位選手は、成績に直結するのこともあるのでしょうが、スタートダッシュも中盤辺りで見ていた選手と随分と違うように感じられました。下の写真:上は、この時点で総合2位だった前年度覇者・C.Evans、下は、この年の勝者・B.Wiggins

 冒頭に書いたように、個人TTをどのように楽しむことができるかとの懸念は、全くの杞憂に終わりました。個人TTに限らず、Tour de France の観戦は、ほとんどの人がのんびりとバカンスを楽しむ、ちょっとしたお祭り、そして素晴らしいショーを見る、それぞれの楽しみ方をしているようです。日常生活から少し離れた非日常でありながら、日常の延長でもあるような。バカンスそのものの楽しみ方が、とても大人なのですね。大部分の人は、誰か特定の選手を応援しているというのではなく、Tour de France そのものを楽しんでいるのです。
 テレビ中継を見るほうがレース展開も良くわかるし、ずっといい場面を見られるわけですが、実際に見るのは、また全く異なった価値があるように思います。特に平坦ステージの途中なんて、一瞬で通り過ぎ去ってしまうのに、何時間も(中には2、3日前から)前から、みんなそれぞれに待っている。そして選手達が通り過ぎて行った後は、さっと幕を下ろすように去っていく。しかし、みんなの心の中には、Tour de France と一体化したものが残っている。写真:上左の男性も、そんな思いを抱いて、帰路についているように見えました。

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