川への想い
    2012 Tour de France 観戦  Etape 10 Macon 〜 Bellegarde-Sur-Valserine  (2012.07.11)


マイヨジョーヌがやってきた Col de Grand Colombier にて

 Arc-et-Senans での個人TT観戦から休養日の一日置いて、Tour de France 観戦2日目は、山岳コースでした。この日の観戦ポイントは、100年の歴史を誇る Tour de France のコースで初めて採用された Col du Grand Colombier(グランコロンビエール峠)です。実は、今回記録を書きつけるに当たって、Col du Grand Colombier の正確な場所を初めて知った次第です。Annecy からこんなに近いところだったとは。
 Col du Grand Colombier は標高1501m。麓の街 Culoz(キュロズ)から17.4q、平均勾配7.1%と聞くと、さほど激坂とは思われないのですが・・・。

 まだ朝早い Culoz の街外れでバスから自転車を降ろして準備です。リュックの中身は、サンドウィッチやハム、そして2本のワイン。ちょっと時間があったので、Culoz の駅まで行ってみました。残念ながら、列車の姿はありません。
      

 Culoz の街を抜けて、Col du Grand Colombier へ向かいます。写真:下左端、小さくてわかりにくいですが、街の中心にあるロータリーには自転車のオブジェが見えます。カフェテラスには、自転車乗りの姿も。写真:右から2枚目、麓にはオフィシャルショップ、向こうに見える山の奥が Col du Grand Colombier です。写真:下右端、峠への表示があって、いよいよ登りです。
      

 斜面のブドウ畑中を緩やかに登り始めると、すぐに急峻な崖を縫うような道になって、どんどん標高が上がっていきます。Culoz の街も、あっという間に眼下に。Tour de France の選手達がやってくるまでには、まだ6時間以上あるのですが、既に場所を決めて待っている人も多数。道際には何故かクルマ全体を熊のプーさんで飾っている一台(写真:下中下)。登るにつれて、絶景が広がってきました。写真:下右、遠くにみえるのは Lac du Bourget(ブールジュ湖)、手前は Le Rhone(ローヌ川)。

 ピレネーやアルプスの峠コースでは、峠までの距離などを記した常設の表示をよく見かけるのですが、Col du Grand Colombier で見かけたのは、比較的真新しいものでした。今回初めて Tour de France のコースに選ばれたので、急遽設けられたのでしょうか。観戦のため峠へ向かっていく自転車乗りは多いのですが、歩いて登っていく家族連れや、写真:下右端のようにインラインスケートで登っていく人も見かけました。
      

 急峻な岩肌にへばり付くような道を過ぎると、今度は一転して林の中を行く道になりました。道の両側には、ぎっしりとキャンピングカーが並んでします。当日は、交通規制が早い時間から始まるので、少なくとも前日より前から現地入りしているようです。写真では緩やかそうに見えますが、勾配は結構急です。平均7%ですが、一部緩いところもあるので、走っている実感は、ずっと8〜9%くらいの感覚でした。予行演習ではないでしょうが、子供や若者は登っていく自転車乗りに様々なパフォーマンスでエールを送ってくれます。Allez!Allez!Allez!

 応援する選手の名前を路面に書く人の姿も。前々日のTT観戦で、出発時間が遅れたために、唯一の日本人選手である新城幸也選手のスタートに間に合うことができませんでした。そこで、この日は、みんなで盛大なエールを送ろうということにしていました。道路に名前も書いておこうと用意したのは、チョークです。話があとさきになりますが、峠手前で新城と漢字を書いていると、周りに沢山の人だかり。「なんて読むのだ」と訊ねられ、「アラシロ、新城選手知ってる?」などと片言話が弾みました。が、残念ながらチョークでは沢山のキャラバン隊が通過しただけで、ほとんど消えてしまいました。やはり、ペンキでないとだめですね。

 写真:下左上は、峠まで1q地点の手前。これくらい大きな字を書けば、目立ちますね。2時間以上かけて、漸く峠に到着。ちょうど山岳ポイントの設置をしているところでした(写真:下中上)。選手達がやって来るには、まだ4時間以上あります。写真:下左下、リカンベント風自転車。これで登って来るのは大変だったでしょうねえ。下中下の写真は、峠から向こう側。さすがに下って、戻って来ることはしませんでした。峠付近からは、Lac du Bourget を始め、Le Rhone に沿った展望が広がっています。

 峠に到着してしばらくは、まだ雲が多く、もうひとつ靄がかっていたのですが、選手達が到着する頃には、すっきりと晴れてきました。峠に到着時にも、大展望に見入っていて何枚か写真を撮ったのですが、下の2枚は観戦も終わって下山時のものです。山の高度感から、峠よりは少し下ったところからと思います。写真:下左は、北東方向に向かって。中央に見える山の向こうは、もうスイスかと思います。下右、蛇行する Le Rhone の手前には、並行して水運用と思われる直線化した運河。山の向こうはAnnecy 方面のはずです。

 まだまだ時間はあるので、みんなのんびりと思い思いの場所で過ごしています。幸い、暑くなく寒くなく、適温で穏やか。草の斜面で、軽食片手に持ってきたワインを。
 

 そうしているうちにも、続々と登って来る人々。タンデムで登ってくる人、二人の子供を乗せたベビーカーを引っ張って来るお父さんも。子供たちが声援を送っています。子供たちが来ている、お揃いの白地に赤玉・Tシャツは、スポンサーのひとつ Carrefuor (カルフール・大手スーパー)のスタッフが配ってくれるもの。下記のキャラバン隊よりも随分と早い時間にやってきて、みんなに配ってくれます。私も、しっかりいただきました。キャップもお揃いで。
      

 峠に到着して3時間後くらい。下のほうが騒がしくなってきたなあと思っていたら、大音響とともにキャラバン隊がやってきました。次々と、趣向を凝らしたクルマやトラックが、スポンサー別に隊列をなしてやってきます。キャラバン隊グッズというのでしょうか、各スポンサーのちょっとした宣伝小物をばらまいていくのも定番。他愛のないものがほとんどと言えばそうなのですが、ちょっと記念になりそうなものもあります。写真:下段右2枚、マドレーヌはちょっとしたおやつになりますし、Vittel のペットボトルの水をいただけると峠では貴重。もっとも、ゲットできるのは限られますが。選手達がやって来るまでのひととき、場を盛り上げてくれるのはもちろん、これを見るだけでも結構楽しい並行イベントです。
      
          

 賑やかだったキャラバン隊が去って1時間あまり。遠くからヘリコプターの音が聞こえ始めると、いよいよ選手達が登りに差し掛かったことが伺えます。向かい側のキャンピングカーでは衛星放送で実況中継が放映されているようです。何人もが顔を突っ込んで、状況を確認しているようでした。
 一際声援が大きくなりました。トップ集団がやってきました(写真:下右上)。このレース、T.Voeckler が逃げて勝ったのですが、なぜか写真が撮れていません。続いてスプリンターの P.Sagan もやってきました(写真:下中下)。いや、スプリンターなのに超級峠をこんな前方で通過していくとは。そして、アシストに囲まれて、この年の優勝者・B.Wiggins(写真:下右下)。山側の鉄柵がない左手は、応援の人垣が選手のすぐそばまで寄っています。テレビの映像でも良く見る光景です。

 この日、峠麓まで、優勝したT.Voeckler をアシストしてきた新城選手。道の右手を通っても左手を通ってもいいように、数人で左右二手に分かれて応援していました。ところが、ちょうど間の悪いことに、チームカーの間に入っていて、気付いた時には、もう目の前を通り過ぎていました。左下の写真を撮るのが精一杯。日本語での声援、聞こえたかなあ。あっという間の出来事でした。路面の文字が残っていても、選手達には確認する余裕はないでしょう。

 その後も、次々と選手達がやってきます。大きな集団がやってきたので、これが最終かな、と思っていたら、それから少しして、また大集団。その数、30〜40名近く。それが最後尾だったようです。トップ集団から約20分。

 峠観戦では毎度のことですが、最終走者が走り去ると、誰が合図するのでもなく、みんな一斉に帰路につき始めます。少なくともレースの余韻なんてものは、ほとんど感じられません。帰路の大渋滞を少しでも避ける目的もあるのでしょうが、その切り替えの早さには、ちょっと驚かされます。数時間以上(クルマの人達は1日以上)待って、観戦は僅か20分ほど。平地だと一瞬です。ただ、お目当ての選手がいようといまいが関係なく、全力で走っていく選手達の姿に、みんな心満ち足りて帰途についていることは間違いありません。

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