川への想い
    2014 Tour de France 観戦  Etape 16 Carcassonne 〜 Bagneres-de-Luchon  (2014.07.22)
                                             Port de Bales (バレス峠)の思い出


Port de Bales (バレス峠)にて
 2014 Tour de France 観戦第一日目は、Etape 16 Carcassonne(カルカッソンヌ)から Bagneres-de-Luchon(バニェーレ・ド・ルション)までの237.5q、後半はピレネー山岳コースです。観戦目的地は最後の峠・Port de Bales(バレス峠)。いつものように早朝に出発し、峠の麓・Mauleon-Barousse(モレオン・バルッス)から自転車でスタート。小さな町は四賞ジャージを模した旗が街道に張り巡らされ、その下には、Tour de France 観戦に向かう人が続きます。Port de Bales まで19qの垂れ幕も(写真:下右端)。

 さて、いきなりのサプライズは、日本でも有名な悪魔おじさんとの遭遇でした。本物?と最初はちょっと疑いましたが、間違いありません。現地でも人気者のようで、沢山の人が周りに集まって一緒に写真を撮ったりしていました。路上でも、カメラを向けると、パフォーマンスで応えてくれます。サービス精神も旺盛(写真:下左、下右上)。
 街角には、Tour de France のオフィシャルショップ(出店)もありました。その前を、食べ物など沢山の荷物を抱えて、観戦に向かう人が歩いて行きます。家族でしょう、3人で向かうお母さんと思われる人のリュックからは、フランスパンが覗いています。写真:右下、ハンドルに馬の首のデコレーションをした人も。進んでいく道は、D952です。

 峠までの道前半は比較的緩やかで、小さな川に沿って森に囲まれた道を進みます。地図を辿ってみると、この小川は Bordeuax(ボルドー)近くで大西洋にそそぐガロンヌ川の支流のようです。しばらくは、木陰のなかで、周囲の展望もほとんどありません。選手達がやってくるまでには、まだ7〜8時間以上あるはずですが、既に交通規制が入っているのかクルマはほとんど通りません。自転車か歩いて向かう人のみ。道脇のちょっとしたスペースには、キャンピングカーや乗用車が既に列をなして駐車されています。いつもの峠・定番の表示も見つけました(写真:下中上)、峠まで後7q。山岳ポイントとなる峠手前5q地点を示す表示が、ちょうどスタッフによって設営されている場面に出くわしました(写:下中下)。峠まで後5q地点を過ぎて少し走ると、木立が少し遠のいて、展望が広がってきました。峠付近と思われる稜線が、やっと見えてきました(写真:下右)。

 写真:下左の表示、峠まで後4q。平均勾配は9.5%との表示です。さすがにこの辺りになると、歩く人の姿はほとんどなくて、自転車乗りばかり。毎回何処かで見かけるのですが、ここでも子供用(しかも結構二人乗りも多い)のトレーラーを牽いたお父さん(写真:下右上)。この付近で、Kdさんの自転車にチェントラブル。居合わせた4人はチェン切りを持っていません。ちょうど、なぜかBMCのチームカーが停まっていたので、この車には何でも対処できる工具が載っているだろうと、戻ってきたスタッフに片言で説明して助力を求めます。いや工具は何も載っていないんだよと言いながら、協力してくれましたが、どうにもなりません。その後遅れて登ってきたHさんが、チェン切りを持っていたので、なんとか対処。驚いたのは、比較的自転車歴が長くても、自分でチェンの交換をしたことがある人の少ないこと。さすがにツーリングをするHさんは準備万端でした。

 峠まで後3qを切ると、周囲は草原地帯となり、前方に稜線が見えてきました。小川に沿った森の小径もいいですが、やはりこんな広大な光景は、ヨーロッパの山岳地帯といった趣をより一層感じさせてくれます。余裕があれば、峠から一度まで下って登り返そうと思っていたのですが、ちょっと時間が足りなそうになったので諦めました。ところで、この日のゴール・Bagneres-de-Luchon が実は2012・Act 2 のゴール地点であったということに気づいたのは、こうして書きつけている4年近く経ってのこと。2011年からは、事前に Tour de France の公式ガイドブックが日本語版でも発行されていたので多少は目を通していたのですが、当日どのポイントで観戦するかはその日に決定だったこともあり、十分な把握が全くできていませんでした。写真:下右は、峠まで後2q地点。稜線が右手前の山に重なる後方が峠です。

 下の4枚は、峠1q手前付近から峠まで。選手達がやってくるまでに、まだ5時間くらいあるのですが、もう既にみなさん思い思いのところで寛いでいます。もちろん、時間とともに、まだまだ観戦客の数は増えてきます。

 Port de Bales に到着。何処かから香ばしい匂いがしてくるなあと思って進んでみると、大きな肉を切ってバーベキューをしているのに出くわしました(写真:下左上)。売り物かなあと思って近づいたのですが、どうも仲間内で楽しんでいるようです、残念。そのすぐ横手で、こちらはちゃんとしたお店で飲み物を売っていました。ビールがあったので一杯。いや、これが良く冷えて、味も好みで美味しかったのです(写真:下中下)。値段も400円弱と場所から考えても割安。たまらず、お代わりしました。
 峠でウロウロしていたら、日本人女性に出会いました。珍しいなあと思っていたら、なんとBSプレミアム・世界で一番美しい瞬間という番組のスタッフの方だそうです。「ツール・ド・フランスが運ぶ美しい瞬間」(2014.08.28 放送)の番組制作のため訪れているとのこと。まさか、こんなところで自転車に乗って観戦にやってきた日本人に出会うとは、彼女らも思っても見なかったことでしょう。
 峠から南を見ると、遠くに万年雪を頂いた峰々(写真:下右)。稜線は、フランス・スペイン国境のようです。ゴールの街・Bagneres-de-Luchon はその手前左手と思われます。上述のように、この時は全く気付いていないのですが、2012・Act 2 では写真の右手の方から Col e Peyresourde(ペイルスールド峠)を越えて中程に見える稜線の向こう側を下っている筈です。その時、峠は霧の中だったのですが、晴れていたら、奥の山々がもっと間近に見られたのでしょう。

 峠から距離で300mほど下ったところで観戦することにしました。ちょうど、登ってきた谷がずっと遠くまで見渡せるので、選手達がやって来るの同時に飛んでくるヘリコプターも一早く確認できそうです(写真:下左)。180°の折り返しもあるので、2倍分楽しめるかなとも思いました。
 持ってきた軽食を食べながら、のんびりと過ごします。周囲のみなさんも老若男女、思い思いの恰好で寛いでします。一際、周囲が騒がしくなったなあと思うと、小学校低学年くらいでしょうか、小さな男の子が自転車で登ってきました(写真:下中)。自転車で登ってくる人には、沿道の多くの人が声援を送ってくれるのですが、やはり小さな子供は圧倒的な声援を受けます。子供に続いて声援が多いのが、女性です。もちろん、オヤジ達にも結構声援を送ってくれます。
持ってきたワインも空いてしまいました。

 キャラバン隊がやってきました。これもまた欠かせないものです。アップテンポの大音響とフランス語なのでわかりませんが絶叫するアナウンスの声、スポンサーをよくわかるように装飾されたクルマ、そしてその上で踊りながらキャラバン隊グッズを投げる女性たち。今回クルマ上で踊る女性達には命綱と思われるハーネスのようなものが腰についているのに、初めて気が付きました。上り坂でスピードは遅いとは言え、曲がりくねった道をさらに左右に蛇行しながら走るクルマの上でのパフォーマンスは、考えてみるとかなり大変そうです。また危険でもあるのでしょう。華やかさの影に、といったところでしょうか。

 キャラバン隊が去って1時間半ばかり。遂に選手達がやってきました。周囲は一気に盛り上がります。先頭は3人、この日優勝した M.RogersT.Voeckler ともう一人。登りとは思われないスピードです。写真:下左は、2番手グループ。写真:下中は、P.RolandT.Voeckler と並んで人気のあるフランス人なので、周囲のボルテージも上がっています。
 実は、山岳コースで一度撮れる機会はないかなと狙っていたのが、レースを実況するヘリコプターと選手が並走する写真です。その日の先頭を走る選手には当然報道関係者が周囲を囲んでいますが、やはり本命はマイヨ・ジョーヌです。先頭以上の報道関係者を引き連れています。先頭通過後から数分、遠くに低空飛行のヘリコプターが見えてきました。マイヨ・ジョーヌが近づいてきたようです。コンデジのズームを最大限にしましたが、手持ちではモニター画像がぶれて、なかなか定まらず確認できません。かろうじて撮った一枚が下右のもの。この年、総合優勝した V.Nibali のおしりだけが写真の左端に写っています。条件を変えて何枚か撮っておけば良かった・・・。

 あたかもしっかりとレースを把握しながら観戦していたように思われるかもしれませんが、上述の記載はレース後の成績や展開も参考しにして記述しています。実際は登りと言えども、かなりのスピードで走っていくので目の前を通過するのは、ほんの数秒程度。よほど良く知っている選手が単独もしくは数人以内でやってこない限り、なかなかその場で確認するのは難しいです。
 そんな中、唯一の日本人選手として2012年に続き2014年もアシストとして大活躍した新城選手。この Port de Bales でも T.Voeckler をアシストした後、マイヨ・ジョーヌも走り去ってまもなく、結構上位(2、もしくは3番手)グループで姿を現しました。応援するのに必死で動画は乱れまくっていますが、新城選手なんとか判別できますね。

 最終グループとチームカーが行き過ぎると(写真:上4枚)、毎度のことですが、みんな一斉に帰路に向かい始めます。いつものように、道路上は大混乱・大混雑です。上位で通過していった新城選手を間近に見ることができた感動と興奮の中、私も下り始めます。その時、再びBSプレミアムのスタッフの方と出会いました。「いや、良かったです、最高」なんて的確な表現ができぬまま二言三言交わして、お別れ。
 このレポート上での長さもそうですが、長〜い時間待って、実際に選手達が通り過ぎるのは、最終峠であっても30分程度。ほぼ一瞬と言ってもいい長さですが、レース通過後のみんなが満ち足りた顔をして帰路に向かう姿を見て、おそらくロードレースには全くの素人だろうと思われるBSプレミアムのスタッフの方も、まさに「ツール・ド・フランスが運ぶ美しい瞬間」という言葉にピッタリな時を感じられたのではないかと思っています。後日見た番組の最後に、帰路に向かう少しお年を召した親父さんがカメラに向かって 「また、来年」と声をかけた姿が印象的でした。

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