林道西熊別府線 2022
 冬場に県南を一緒に走ることの多いtさんから、「5月に何処か走りに行きましょう」とお誘いをいただいたのは3月頃のことだったでしょうか。同世代で、自転車ツーリングを始めたのもほぼ同じ1970年代前半。それでは是非泥除け付き自転車でと応対したものの、なかなか適当なコースが見つかりません。そんな時、以前の記録を眺めていたら、ふと別府峡が浮かんできました。確認すると、もっと距離があると思っていたのに意外にも65qくらいです。前回走ったのは2004年。再訪しようと思いながら、いつの間にか18年も経っていました。これ幸いとtさんにお願いして、泥除け付きではなくロードバイクでの出動となりました。 (2022年 6月18日 記)

西熊渓谷展望台から、天狗塚を望む (2022.05.22)
 コースは18年前とほぼ同じです。スタート・ゴールは別府峡温泉前・国道195号線沿いの広い駐車場。徳島市内からだと120q弱。午前5時前に出発して、7時半頃に到着。スタートは8時前となりました。天気は快晴、湿度は低く、絶好のサイクリング日和です。
コース  別府峡−国道195号線−大杤−林道西熊別府線−別府峡
走行距離   65q   積算標高 1500m
最高地点   林道西熊別府線ピーク(白髪峠)  標高1480m
走行日   2022年 5月22日  天候:晴れ  GIANT CONTEND
 まずは国道195号線で大杤へ。標高500mほどから200mまで、約20qの距離で下ります。この道を初めて走ったのは1976年のことです。当時、四足トンネルを越えて高知県側に入ると、随所で道路舗装工事中。まだまだ未舗装の部分が結構ありました。現在では幅広い二車線の快走路です。しかも旧道はトンネルでショートカット・直線化された箇所も多く、ちょっと味気ないです。横を流れる物部川もあまり眺めることができません。下の写真:左3枚、いずれも陽が差していますが、まだ朝早い時間帯だったこともあり山影になるところも多く、ウィンドブレーカーを着ていても肌寒いくらいでした。時折見ることができる川面や国道沿いの田植えの景色などを見ながら。大杤の分岐部(写真:下右端)には8時40分過ぎに到着。写真は撮り逃しましたが、途中にあった仙頭大橋は富郷ダム手前の藤原大橋に良く似た造り・雰囲気でした。
 大杤からは県道217号線で物部川の支流・上韮生(かみにろう)川沿いを遡っていきます。写真:下左は、最初に見えてきた集落。赤い橋は上韮生橋。地形図では大杤町柳瀬・平井と記載されています。進んで行く道の遠く先に山が見えています。下左の写真・左端付近をズームアップしたのが、下右上の写真。方向から、綱付森でしょうか。

綱付森?

上韮生川に沿って
 進んでいくと、矢筈峠(通称アリラン峠)へ向かう県道49号線の分岐(写真:下左)が思っていたより随分手前にありました。矢筈峠に向かって走ったのも、2005年と昔のことになってしまいました。峠までで引き返した林道楮佐古小桧曽線を始め、まだ走っていない道、再訪したい道が、この付近にはいくつかあります。走れるうちに行けるかなあ、などと思いながら進んでいきます。下中の写真は、旧五王堂小学校。五王堂地区の道沿いの狭い水田はちょうど田植え時期でした(写真:下右)。
  
 先へ進んで、写真:下の2枚は久保高井地区。石積みの畑ではなく水田です。四角形に整えられた水田が、石積みで何段も棚田できれいに整えられています。
 下左の写真は、久保高井地区から少し先にあった旧久保小学校跡。周辺には、子供の姿はもちろん、人の姿をほとんど見かけません。写真:下中のような杉林の中を走るところは、徳島県内の道と違って比較的稀です。下右は、対岸にある久保影地区。県道217号線沿いのまとまった集落としては最奥に位置するようです。
  
 久保影地区から1qほど走ったところで、小さな橋で上韮生川を渡ります。さすがに上流になってくると、川の透明度は抜群です。ここまでは極緩い登りでしたが、東向きの道が左手に一度方向を変え川沿いから離れる付近から、少し勾配が増してきます。
 左  上韮生川を渡る
 左上 上韮生川
 上  勾配が上がってきた
 右  上韮生川の川水
 まもなく、地図で見られる最初のつづら折れ区間が始まります。電柱・電線もなくなって、ガードレールもない道は、少し濃くなっているものの、まだまだ明るい緑のトンネルの中を進んでいきます。
 そんな道を走りながら、北へ向かうアサギマダラを見かけるのはこの季節だったよなあと思っていたら、なんと一羽に遭遇しました。せめて1枚でも写真をと、木にとまった姿にカメラを向けますが、なかなか羽を広げてくれません。あっ、飛び立ってしまった、と思ったら、すぐ近くで再び木にとまり、やっと羽を広げた写真を1枚だけ撮ることができました。美しい色合いと優雅な飛翔、海を渡るとはとても思えない姿です。道は相変わらず、木漏れ日が美しい緑のトンネルが続きます。
 クルマの姿もほとんどなし。余分なものが何もない道は貴重です。落合峠への道は私の最も好きな場所の一つですが、ここはそれに匹敵するかと思われます。二つ目のつづら折れ区間を進んでいくと、三嶺への高知県側登山口である光石山登山口に到着しました。11時過ぎ。2004年時にも休憩したここで今回も休憩です。走っている間は全くと行っていいほどクルマに出会いませんでしたが、登山口には10台ほどのクルマが駐車していました。
 光石山登山口も過ぎて少し進んだところに、林道西熊別府線起点の標示がありました。林道西熊別府線の起点は、もう少し手前かと思っていました。こちらには県道49号線との分岐からとありますが、Google map では久保影の先まで県道271号線の標示がついています。またここには、この道はふるさと林道大杤線と記載されています。このページの見出しは林道西熊別府線としましたが、どれが正しいのかわかりません。まあ、名前には関係なく、見上げるような落葉樹が続く素晴らしい道が続きます。

林道西熊別府線 起点の標示
 下左の写真、左奥からtさんが登ってきていますが、手前にある左コーナーを曲がると、周囲の木々の高さが少し低くなって山肌の光景が見えるようになってきました。私の技量では上手く捉えることができなかったのですが、写真:下右、手前から稜線までずっと一面の落葉樹の緑で占められています。針葉樹の深い緑はほとんど見られません。徳島県内では見ノ越の西側付近に落葉樹の森がありますが、それ以外にはあまり見かけることがない光景です。が、この後もっと広い範囲でこんな光景を見ることができました。
 下の2枚は、二つ目のつづら折れ最後の右カーブです。奥に森林限界を少し超えていると思われる稜線が見えてきました。左の写真、当初天狗塚かと思っていた左奥の尖がり山、天狗塚はこのまだ左奥で、躄峠だと下記の西熊渓谷展望台にあった案内板で確認。勾配もさらにきつくなってきて10%前後。後半がきつくなるという記憶通りです。
 西熊渓谷展望台で一服(写真:下)。広角で撮ると高度感がいまひとつですが、絶景です。2004年時に走った時、ここの記憶にはあまり残っていないなあと確認したら、この付近から雲が増えてきて稜線は雲の中に隠れていたようです。右手奥の三嶺から中央部の平な草原状のところが西熊山、左奥の天狗塚までの稜線が一望です。写真の手前にイラスト入りの案内板があって、山の名前がわかりやすく記載されていました(写真省略)。
 下左は天狗塚、下右は三嶺をぞれぞれズームアップ。この日、あの頂きに立っていた人は、また格別の光景を見ることができたことでしょう。
 もう一枚、自転車をアップにして、背景は西熊山。三嶺から天狗塚の少し東手までの稜線区間は歩いたことがありません。以前三嶺に登った時、山頂からなだらかな草原状に続く稜線が一望でき、気持ちよさそうだなと思っていました(こちらのトップの写真がそう。奥に天狗塚が見えています)。一度歩いてみたいとその時も思ったものですが、前後のアプローチも長く、今後訪れることは難しいか・・・。
 さて、大休憩の後、まだ続く登りへと向かいます。後半になるにつれ勾配はきつくなるという記憶は、ここでも外れず。下2枚の写真は、これまで二つのつづら折れ区間が南北に折り返しているのに対して、東西Z字に折り返す区間。写真:下左、背後の山肌に見える道筋は、この先走る道ではなく、すぐ後に分岐部がある井地山林道のようです。ここまでやってくると、ピークまではもう僅か。
 何本かのブナの樹があった(うまく写真に撮れず)写真:下右上の短いZ字コーナーを過ぎると、白髪山の登山口がありました。近くにあった駐車場にもクルマが数台。そこを過ぎると、まもなくピーク・白髪峠でした。13時半頃に到着(写真:下左)。正面に見えるのは、方向から三嶺から高ノ瀬に向かう稜線だと思います。2004年時の記録のトップに揚げている写真が記憶に残っていて、前方にクマザサの中に高木が点在する光景が見えてくるイメージがちらついていたのですが、とうとう最後まで何処だったかわからないままでした。18年の時の流れに木々も成長して、様相が変わったのかもしれません。
 さあ、あとは別府峡へと下るだけです。前回はピーク手前から霧の中、そして冬の冷たい雨となって、下りはただ寒さとの闘いになってしまったのですが、今回は後半も快晴が続き、ピークから別府峡を下り切るまで、山肌全体が落葉樹の素晴らしい新緑に覆われていることを改めて確認、満喫しました。
 少し霞んでいるのが残念ですが、スケールの大きな眺めが広がっています。左手の稜線ピーク、地形図でみると中東山という付近でしょうか。山肌斜面に谷底へ落ち込んでいくように、これから下っていく道が見えています。
 今回は快晴の下でしたが、15qほどで標高差1000mを下るこの道、晴れていても油断はできません。山へ登るためにクルマで来る人のほとんどが大杤側から入るからでしょう、大杤側の道と異なり別府峡側はクルマの通行があまりないようで、路面には落石多数。急勾配の道が続くので、慎重に。
 上2枚の写真も下の写真も大きくないので、下っていくtさんの姿は画面についた埃くらいにしか見えません。何処に写っているか、わかるでしょうか。
 下の2枚の写真なら、tさんの姿がわかるかと。山肌には、ずっと広葉樹の森が続きます。大杤側の登りでも広葉樹林を楽しめましたが、道を覆う姿を下から眺めることがほとんどでした。それに対して、別府側は稜線から山肌全体が広葉樹に覆われている姿を見渡すことができます。植林された杉林が多い徳島県内はもちろん、四国内ではあまり目にすることができない光景かと思います。前回は霧が出ていて小雨で寒さに震え、凍える手で転倒しないように自転車をコントロールするのが精一杯。周囲の光景を見る余裕は全くありませんでした。12月だったので、天候が良くても落葉した裸木の姿だったでしょうが、それはそれでまた見映えのある光景だろうと思われます。
 大分下って来ると、漸く別府渓谷・物部川の流れが見えるようになってきました。ところが、5月の太陽が高い時期、午後まだ早い時間帯(14時過ぎ)にも関わらず、大部分の場所では既に西側の切り立った斜面の山影となっていました。写真は、時にあった陽の当たる場所で。別府峡を楽しむとすれば、急勾配の道が続きますが、午前中に別府峡温泉側から登ることがお薦めかと思います。
 大杤側の物部川支流・上韮生川同様、上流の水は透明度も高く、急流なので川底の石も常に洗われているようで綺麗です。が、下の写真のように、十分に水面が見えるところは下っているとほとんどないように思われました。逆向きで登りとなると、もっと目が行き届いて、いい場所に気付くのかもしれません。
  
 周回するとすれば、やはり前回・今回の時計回りのほうがいいかなと個人的には思います。大杤側の登りは大きな変化はなく、単調と思われるかもしれません。私も登っている時は、やはり落合峠のほうが趣があるかなと思っていたのですが、今となって振り返ってみると、こちらには落合峠にはない魅力もあると思います。なにより大きく広い山肌全体を落葉樹が繁る様相は、自転車で走ることができる道から見える光景としては四国随一かと思います。もう少し早い時期がベストだったかもしれません。紅葉時期にも是非一度やってきたいと思います。

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