北海道 2013

 4年ぶりの北海道は、三連休の前後に夏休みをいただき道東を走ってきました。5日間のツーリングは、ほぼ35年ぶり。折角なので、あっちもこっちもと欲張り、毎日だた走るだけのツーリングになってしまった感もありますが、天候にも恵まれ、走っているだけでも楽しい道が続きました。  (2016年 5月29日記)

1日目  女満別からウトロへ
 早朝徳島を出発して、午後には北海道。女満別から斜里、ウトロへの道は、北海道ならではと思わせられる光景が続き、心軽やかに走れました。

斜里郊外、道道827号線
コース  徳島=関西空港・・女満別空港−藻琴湖−斜里−ウトロ
走行距離   約100キロ  積算標高 約500m
最高地点   ほぼフラット           
走行日など   2013年 7月20日  天候:晴れ LOOK KG-96
 午前6時半に自宅を出発、路線バスで関西空港へ。北海道・女満別まで、ひとっ飛び。今回の出発地点・女満別空港には正午過ぎに到着しました。空港ビルを出たところで自転車を組み立てていると、報道関係らしき人が近寄ってきて「オホーツクサイクリング大会に参加ですか」と。同じ航空便に自転車乗りが4名ほどいたようですが、大会に参加の方は1名だけのようでした。
 13時前、空港からスタート。ほぼ快晴。日差しは強いものの、湿度が低く爽やかでした。網走方面に向かってまもなく、当初の計画通り国道39号線を右折して道道246号線へと進みました。するとすぐに周囲は丘陵地帯の広々とした畑の光景となりました。美瑛などと比較すると少し見劣りするかもしれませんが、つい先程まで四国にいたことを考えると、青空のもと、北海道にやってきた実感が一気にやってきました。

道道246号線沿い、ジャガイモ畑

道道246号線沿いにて
 いやあ、これこれ、と調子に乗っていたら、いつの間にか予定コースを外れてしまったようでした。道が微妙に曲がっているので、方向感覚がおかしくなったようです。立ち止まって地図を確認してみましたが、目印になるような建物もなく、?な状況。しばらく悩んでいたら、軽トラックが通りかかったので藻琴湖方面への道を訊ねました。教えてくれたのは、私が予想していたのと90°くらいずれた方向でした。本当にこっちかな、と疑問に思いながら進むと、なんとか予定の道に戻ることができて、藻琴湖へ。湖畔で休憩していると、とんでもなく大きなタカ類が一羽空をよぎっていきました。オジロワシでした。一瞬のことで、写真は撮れませんでした。

藻琴湖

国道244号線、両側は原生花園
 オホーツク海沿いに出て、微妙に向い風が吹く中、止別まで海沿いを進みました。北海道ならではの直線道路が続きます。小清水原生花園は、もう見頃も終了間近のようでした。エゾキスゲの明るい黄色、エゾスカシユリの落ち着いた橙色、ハマナスの鮮やかな赤紫色が目につきましたが、一面の花畑というほどではなかったです。

小清水原生花園にて

エゾスカシユリの群落
 斜里の街では、この日の宿泊地・ウトロへ向かう前に、ちょっと寄り道です。斜里岳の広大な裾野に広がる畑を眺めながら国道244号線を少し走って、某紙でその存在を知った直線道路を一望するポイント(トップの写真)へと向かいました。北海道内には10qくらいの直線道路が至る所にありますが、ここは20q超。この日は快晴でしたが少し靄っていて、遥か道の先は霞んでいました。この辺りも、白い花が満開のジャガイモや微妙に品種が異なる麦類の畑が続き、平地や丘陵地がほとんどない四国人には、うれしい光景が続きました。

斜里岳の裾野に広がる畑

小麦畑、斜里郊外にて
 その後は国道334号線に出て、知床半島の海岸線沿いをウトロに向けて走りました。ウトロまでの道は、ほんの少しアップダウンがある程度で、ほぼ平坦でした。驚いたのは、海岸際まで広葉樹・針葉樹を織り交ぜた原生林が広がり迫っていたことです。四国では、標高1300mを超えないと見ることができない光景です。そんな光景は、この後行く先々で見ることができ、北海道にはまだまだ自然に近い状態の森林が残っていることを再認識させられました。

知床半島、国道334号線

初日の宿
 オシンコシンの滝は、観光客が多かったので通過。宿泊地のウトロに到着したのは、17時半頃でした。

2日目  ウトロから知床峠を越えて風連湖へ
 今回のコースは、10年以上前に子供たちを連れてレンタカーで周った道と重なる部分がいくつかありました。当時ツーリングからは遠ざかっていた私としては、いつか一度は自転車で走ってみたいコースがいくつもありましたが、中でも知床峠は最も印象に残っており、いつかは自転車で越えたいものだと強く思ったところです。

野付半島への道
コース  ウトロ−知床峠−羅臼−標津−野付半島−厚床−風連湖
走行距離   約180キロ  積算標高 約1300m
最高地点   知床峠 (標高750m)  
走行日など   2013年 7月21日  天候:晴れ LOOK KG-96
 2日目。夜間には結構激しい雨音がしましたが、幸い早朝には止んでいました。午前7時に宿を出発。まずはウトロ港の周辺を散策してから、今回のツーリングの一番の目的であった、かつ唯一の山岳?コースである知床峠へと向かいました。

ウトロの港

ウトロ、遠景
 ウトロの街を出ると、すぐに道は登りになりました。振り返ってウトロの街や海岸線が見えるのは、登り始めだけでした。その後は世界遺産にもなっている知床半島の原生林内を走るので、あまり展望はありません。原生林内とは言えども、道は幅広い2車線なので、曇天にも関わらず、周囲は明るく、勾配も北海道の峠道独特の緩やかさで、汗ばむこともなくノンビリと走りました。三連休の初日でしたが、まだ時間が早かったためか、交通量も少なく、ヒグマ対策にカウベルでも付けておけば良かったかなと思うほどでした。幸い、遭遇したのはエゾシカのみでした。知床半島だけでなく北海道全体でも、四国同様シカが増えているそうです。

知床原生林の道を進む

結構多く見たシカ
 前日にも感じたことですが、この後もずっと、北海道にはまだまだ手つかずの立派な自然林が残っているなあ、と走りながら眺めていました。立ち止まって何枚か写真を撮ったのですが、森林だけ撮ると部分的になって、北海道の広大さをうまく伝えることができません。

雪渓が残る

登ってきた道、背景はオホーツク海
 標高500m付近を超えると、少し展望が広がってきました。振り返ると、オホーツクの海が曇天の下に薄っすらと見えました。見上げると、峠付近は雲が切れているように見えましたが、それより上方は雲の中でした。標高600mほどで森林限界なのか、それまでの樹高のある広葉樹の姿が消えて、草原状になってきました。下方は、見渡す限りの原生林です。

知床峠にて

国後島が見えた!
 峠には、ゆっくり走ってウトロから1時間少々で到着しました。二人の自転車乗りが既に先着されていました。一人は前日女満別空港で見かけた方でした。大阪からだそうで、これまで北海道は何度か走っており、もうすぐ日本一周になるとか。四国も山中まで結構走られているようでした。お若いように見えた(30歳前後?)ので、これからは海外でしょうか?テント持参で野宿とのことでした。いろいろと20分ほど話して、先に出発する彼を見送って、ゆっくりと下り始めました。
 そうそう、峠ではまたまた方向感覚がおかしくなっていました。海の向こうに見えるのは網走方面と思っていたのが、なんと国後島でした。この後一日、国後島を左手に眺めながらの走行となりました。峠からの道は、カーブも緩やかで道幅広く快走コースでしたが、周囲の風景を見るのに忙しく、何度も立ち止まりながら、ゆっくりと下りました。雪渓が残っているところもありました。残念ながら、羅臼岳は頂を雲の中に隠していましたが、もし見えていたら、足取りはもっと遅くなったことでしょう。

羅臼側への下り、水平線上は国後島

羅臼港から、国後島
 羅臼に降りてくると、晴れ渡ってきました。道の駅・知床らうす付近では、温泉があるのか硫黄のにおいが漂っていました。予報ではここから向い風でしたが、うれしいことに追い風でした。左手に国後島を眺めながら、快適に走れました。国道355号線は多少のアップダウンがあるのみでした。晴れてはきたものの、知床半島の山頂付近は、まだ雲の中でした。時折、雪解け水を運ぶかのような小川を横切ります。振り返ると、所々に雪渓を残した知床連山が、だんだんと遠ざかっていきました。

知床連山から流れでる小さな川を渡る

遠ざかる知床連山
 知床半島の付け根付近辺りで、風向きが一転、向い風となりました。この日は、今回のツーリングで最長の180qほど走る予定でした。標津手前で内陸に入り、開陽台方面に進んでみることも考えてはいましたが、とても余裕がないので、そのまま海岸線沿いに沿って走ることにしました。その分少し時間ができたので、以前から気になっていた標津サーモン科学館へ昼食も兼ねて立ち寄ってみようと、国道244号線を右折。到着したサーモン科学館、三連休だからさぞ人で一杯だろうとの予想は外れて、広い駐車場には数台のクルマが停まっていたのみでした。サケ関連の食事をと覗いてみた食堂ももうひとつでした。

根釧原野を流れる川

サーモン科学館展望台から、根釧原野
 折角だからと入館したサーモン科学館。受付のお姉さんは美人で愛想も良かったのですが、館内は閑散としていて展示ももうひとつでした。上述の子供たちと一緒に来た時に回った千歳サケのふるさと館のほうが、遥かに充実しているように思われました、そんな科学館の中で、唯一気に入ったのが、展望台からの眺めでした。国道を走っているとほぼ平坦なので、周囲の大きな木々のために展望がなく、根釧原野の広大さを目の当たりにすることがなかなかできません。そんな中、この展望台は高々標高30mほどでしたが、周りに遮るものがないので、360度の展望があり、思わぬ拾い物をした気分になりました。結局、標津のコンビニで食糧補給となりました。ここで、その後のコースを検討しました。目的地・風連湖まで100q余。しかも、そこそこの向い風です。迷った挙句、もう一度来ることはない可能性が高いと思い、野付半島へ進んでみることにしました。トドワラまで片道20q超です。

野付半島、左手には変わらず国後島

原生花園も満開
 結果的には、この選択は大正解でした。往きは強烈な向い風。しかし、両側が海辺の細い砂洲上を走る道は、どこまでもまっすぐ。右手には、エゾスカシユリやハマナスの群落が満開でした。左手には、相変わらず手が届くような位置に国後島。島の海岸が崖になっているのが、肉眼でもはっきりわかるくらいでした。先端までのほぼ半分のナラワラで引き返しましたが、少しばかりでも走ってみて本当に良かったと思いました。復路は強い追い風に助けられて、往路の半分の時間で国道244号線の分岐部へ戻れました。

野付半島の道

ナラワラにて
 しかし、そこからが長かったです。風連湖までは、それほど遠くないと思っていたのに、向い風に翻弄されて行けども行けども近づきません。時折、根釧平野の一端を思わせる湿地帯を流れる川を横切りますが、いずれも泥炭地のためか赤茶色の川底です。お世辞にも美しいとは思えませんでしたが、こんな川にもサケが遡上するのでしょうか。
 気が付くと、いつの間にか国後島は見えなくなっていました。代わりに、左手斜め前方の水平線上に、あたかも蜃気楼のような街の影が揺らめいて見えました。ひょっとしたら歯舞か色丹島かと思いましたが、どうも違うようです。地図で確認すると、根室市のようでした。道路はぐるっと回っているので、まだ60qほどあるのですが、直線距離だと20q程でした。

泥のような川底

水平線上に見えるのは、根室の街
 厚床までの国道243号線は、平坦な湿地帯を走るところも多いのですが、所々で微妙なアップダウンもありました。ひとつひとつの標高差は高々10mほどなのですが、相変わらずの向い風で20km/hキープもできません。広大な湿原や原生林を貫く直線道路など、いつもなら大喜びする光景にも、次第に疲れてきて、楽しむ余裕がなくなってきました。

周囲は広大な湿原

国道243号線、直線道路が続く
 根室市から20数qほど手前の厚床に到着した時には、16時もすっかり回っていました。標津からここまでの約60qの間に、補給箇所は皆無でした。厚床で漸く見つけたコンビニで、知床峠で一緒になった大阪の青年と再び遭遇しました。「向い風にくたびれましたね。直線道路も最初は写真を撮りまくっていたけど、後半は気力消失」とお互い全く同意見でした。その後、根室や納沙布岬など翌日予定コースの情報をいただき、先発する彼を見送りました。

国道44号線沿い、刈り取られた牧草

国道44号線沿い
 幸い、厚床からは追い風に恵まれました。ちょっと回すとすぐに30q/h超です。道沿いには、この付近では予期していなかった牧草地帯が広がり、ちょうど刈り取りが終わって巻き取られた牧草があちこちに見られました。風連湖に到着する頃には、快晴だった空が、あっという間に一面の雲。まさか雨は降らないだろうなと思いながら、17時30分頃、風連湖畔の民宿に到着しました。

風連湖畔にて

2日目の宿

 宿のオーナーは、鳥に詳しいらしく、鳥関係の専門書が多数ありました。それを知ってのことでしょう、この日の宿泊者5名のうち3名が探鳥目的の方でした。鳥、特に写真が趣味の方々の話を、食事をしながら興味深く拝聴して、2日目終了。


3日目  風連湖から納沙布岬を回って、厚岸へ
 3日目は、日本最東端の納沙布岬を回って、厚岸まで。北太平洋シーサイドラインと呼ばれる、海岸沿いの道を走りました。

根室半島にて
コース  風連湖−根室−納沙布岬−根室−落石−霧多布−厚岸
走行距離   約170キロ   積算標高 1300m
最高地点   ほぼフラット
走行日など   2013年 7月22日 天候:曇り LOOK KG-96
 3日目。風連湖畔の民宿を午前8時に出発、まずは根室市を目指します。やや重たい雲の曇天、追い風で快調に到着。根室市から時計まわりで納沙布岬を回ろうとしていたですが、道表示を見落として危うく反時計回りになるところで気がついて修正です。根室市から納沙布岬まで約20q。ここでもまだ直線道路が続きました。
 根室半島は、標高20mくらいの平坦な台地状の地形でした。海岸線が少し切り立っている程度で、内陸部はなだらかな牧草地が広がっていました。小さい半島でも山状になっていることの多い日本では、珍しい光景でしょうか。一周する道は、海岸からほんの少し離れた台地状のところを走ることが多かったです。時折、馬の姿を見かけました。放牧されているようですが、いずれも道産子のようながっしりした体型が多かったです。

根室半島、点景

直線道路が続く
 知床峠と並んで今回の主な目的のひとつであった、日本最東端の納沙布岬。午前9時半頃に到着。ちょうど何かの催しがあったのか黒服の方が多数。岬からは、歯舞諸島も色丹島も見えず、岬自体もこれと言って見栄えもなく、何より人が多いのが嫌で、早々に立ち去りました。
 復路は昨日に続いての向い風です。往路と同じく、草原状の大地を右手に眺めながら、のんびりと走りました。ところで、この根室半島、太平洋側には小さな町が2つほどありましたが、オホーツク海側には、思い出したように民家が点在するのみでした。厳冬期はどうやって暮らしているのでしょう。再び根室市に戻って、午前11時前。

納沙布岬へ

納沙布岬にて
 根室から厚岸までは、内陸の国道44号線を進むか、太平洋側の県道・北太平洋シーサイドラインを進むか、ちょっと迷っていました。大阪の青年からは、後者を走っても意外と海が見られる区間はないこと、天気が良くなければ国道44号線を進むのがベターかもと聞いていました。曇天でしたが、おそらくより魅力があるだろうと思われたシーサイドラインを走ることにしました。厚岸まで、ほとんど食料補給できる場所がないことも聞いていたので、根室で少し多めに調達しておきました。

県道142号線、ここでも直線道路

県道142号線、草原大地が広がる
 根室からは、しがらく強烈な向い風とアップダウンに翻弄されましたが、まもなくあまり見えないと聞いていた海が見えてきました。草原状の大地の上を進みますが、遠くに見える岬も台地状。海岸段丘でしょうか?そんな風景をちょっと見ることができただけでも、シーサイドラインに進んで良かったと思いました。
 黒石を過ぎると再び海から離れ、まるで前日走った国道243号線を彷彿とさせる道両側が原生林の直線道路が続きました。森林のおかげで向い風が和らいだのは幸いでした。そんな原生林の中を走る道も結構続きましたが、話に聞いて予想していたよりは海岸線を見ながら走れる部分が多かったです。ルートラボのとおり、ノコギリ状のアップダウンが続くのですが、向い風は弱まって、ゆっくり走る分には、それほど苦痛はありません。むしろ、次々と異なる風景を展開してくれるのが楽しいくらいでした。

県道142号線、行く先は

県道142号線、振り返って
 海が見える度に休憩していたのですが、浜中付近だったか駐車場で立てかけていた自転車が風で倒れました。あららっと自転車のところで戻ったところ、フレームポンプのバルブ部分が外れていました。その辺に転がっているだろうと隈なく探してみたのですが、どうしても見つかりません。この後まだ70qほど走らなくてはなりません(翌日以降も)。予備チューブはあるものの、パンクしたら空気を入れることができないので、その後はちょっと慎重に走る羽目になりました。

県道142号線、アップダウンもあり

←ムツゴロウ王国 の表示
 その直後に、15mほどの長さの見事な昆布を干している浜辺が連続していたのですが、意気消沈していて写真を撮らないままでした。その時は、まだまだそんな光景が続くだろうと思っていたのですが、結局その付近だけでした。
 霧多布に近づくと、霧が次第と濃くなってきました。到着した霧多布は濃霧の中となりましたが、とりあえず岬へ行ってみました。霧が晴れていたらどんな光景が広がるのかわかりませんが、霧中の霧多布もそれなりにいい雰囲気でした。

霧多布岬にて

霧中の霧多布
 岬から戻った街中で、根室以来のコンビニ発見。予想通り、この60qの間は、道脇に2ヶ所ほどで自販機を認めただけでした。信号も2、3だったと思います。霧で少し濡れるくらいでしたが、雨具を必要とするほどではありませんでした。しかし肌寒いくらいで、ウィンドブレーカーを着こみました。厚岸方面に少し進んだところで、道沿いに霧多布湿原を見渡せるところが続きました。エゾカンゾウやヒメオウギアヤメが満開でした。
 湿原を過ぎると、少し内陸に向かって坂道です。霧で余分なものが見えないためか、その付近もいい雰囲気でした。立ち止まって写真を撮っていたところ、追い越していったクルマが引き返してきました。なんと風連湖の宿で一緒だったご夫婦でした。落石から探鳥船に乗ったはず。「どうでしたか?」と聞くと、ご主人は満面の笑みを浮かべながら、デジカメの写真を見せてくれました。そこには、エトピカリが今まさに海面から飛び立とうとしている姿が。いやあ、やりましたね。

霧多布湿原、アヤメ、エゾカンゾウ満開

道道123号線もまた、霧の中
 パンクを心配しながらでしたが、なんとか厚岸が近づいてきました。ちょっと余裕もでてきて、あやめが原というところに立ち寄ってみました。霧中の原生林を少し海岸方向へ進むと広い駐車場がありました。その向こうには、野生馬かと思ったら放牧されているらしい馬。肝心のアヤメは、最盛期を少し過ぎているようでした。霧で海岸方面は何も見えないだろうと思われたので、入り口を少し進んだところで引き返しました。

あやめが原にて

あやめが原への道
 おそらく海岸段丘上を走っていたと思われる道道123号線を下りきると、厚岸大橋を渡って厚岸の街中へ無事到着。この日の宿は、駅前のビジネスホテルでしたが、噂通りにビジネスホテルとは思われない、この地ならではの牡蠣三昧の豪華な夕食付でした。さらに、宿到着前にコンビニで調達したワインを飲んで、3日目終了。

4日目  厚岸から帯広へ 輪行で札幌
 この日は、札幌に住む息子と会うために、札幌泊。遅くても20時前には札幌着を目指して、途中から輪行予定です。釧路湿原付近をゆっくり回って、昼頃釧路から輪行という案も考えましたが、結局帯広まで走ることにしました。懸念は、フレームポンプなし。パンクしないことを祈るばかりでした。

十勝平野の畑
コース  厚岸−釧路−白糠−浦幌−帯広==札幌
走行距離   約170キロ   積算標高 600m
最高地点   ほぼフラット
走行日など   2013年 7月23日 天候:晴れ・曇り  LOOK KG-96
 厚岸のホテルは朝食もいいという情報を得ていたのですが、午前7時過ぎからとのことでしたので、その後の予定を考え残念ながらキャンセル。午前6時過ぎに出発しました。早朝の厚岸は、前日同様霧の中でした。国道44号線で、まずは釧路を目指します。この日のコースは主要国道なので、交通量も多く見所もあまりないだろうと、さほど期待はしていませんでした。

霧の厚岸を出発

JR大楽毛の駅にて
 釧路までは緩やかな追い風に助けられ、また交通量も早朝だったためか少なく、快適に走れました。周囲の風景は、可もなく不可もなくといったところでしょうか。釧路手前の郊外、全国何処でも共通のバイパス沿いの景観(大手量販店が並ぶ)の中、全国チェーンのファストフード店で朝食。釧路市内に入ってしまうと通過に時間がかかるだろうと、少し北へパスする道筋で市内を抜けました。釧路手前からは、霧も晴れて気温も上がってきました。何処かにフレームポンプを売っている店はないかと目を凝らしていましたが、結局見つかりませんでした。
 釧路からは国道38号線となりました。釧路の西にある大楽毛というところは、30数年前に初めて北海道を走った時に雨宿りをした駅です。当時、周辺はほとんど原野だった記憶ですが、現在は4車線道路に沿って建物が密集していました。駅は現在も無人駅ですが、当時の木造駅舎の面影は周囲の景観同様全く残っていませんでした。

国道38号線、やっぱり直線道路

国道38号線、アップダウンも多少あり
 白糠付近では、海岸線に沿った長い直線道路。前日のシーサイドラインに比較すると、さすがに交通量は多かったのですが、それでも予想よりは少なく、さほどストレスを感じずに走ることができました。
 音別を過ぎると、国道38号線は海岸線沿いから山手へと向かいます。海沿いにも道があるようなのですが、途中ロードバイクでは厳しそうな地道区間がありそうなのでパスしました。しかし、この区間が曲者でした。3か所ほどあったトンネル、いずれも短いのですが、トンネル前後の改良されたらしい道の幅広さと異なり、旧道のままの狭さ。加えて路面状況が半端なく悪く、ガタガタでした。一応一級国道ですが、三級国道でもこれほど路面状況が悪いトンネルは滅多にありません。23Cのタイヤでは危険なくらいで、後ろから車が来ると避けようもありません。早々に脱出を試みましたが、ここだけは、二度と御免です。

国道38号線、この後海岸線から離れる

国道38号線、狭いトンネル
 山手を下ると、浦幌。ちょうどお昼です。またまたコンビニで補給休憩。予定よりもいいペースで、帯広からは早めの列車に乗れそうです。ここからは内陸の帯広に向かって北方向に十勝川を遡ります。国道38号線は、そこそこの交通量がありましたが、道が広いのに加えて強烈な追い風で快走です。見渡す限りというほどではありませんが、道周囲には満開のジャガイモ畑、各種の麦類、牧草地が広がっていました。

十勝川

十勝川河川敷、ハルニレの樹
 帯広まで20qほどの地点で、地図にも出ていたハルニレの樹の表示を見つけて、進んでみました。十勝川少し下った河川敷に大きな2本のハルニレの樹がありました。周囲は牧草地のようです。ただおおっ唸るほどの光景ではありませんでした。帯広には13時半頃に到着。途中釧路同様、フレームポンプを売っているような店がないか気に留めながら走ったのですが、自転車屋もDIYのお店も見つかりませんでした。

十勝郊外、ジャガイモ畑

十勝郊外、牧草地帯
 帯広駅前で輪行の準備をして駅構内へ入ったところ、なんだか騒々しい雰囲気でした。どうしたのかと思ったら、事故があって列車が大幅に遅れているとのことでした。幸い運休にはなっておらず、予定していた2時間前の列車が2時間後くらいに出発するというので、それに乗車することにしました。で、輪行前に見つけていた駅前の「ぱんちょう」という豚丼のお店に向かいました。今回のツーリングのお昼としては、初めて贅沢。

十勝郊外、ジャガイモと小麦畑

ぱんちょうで豚丼
 漸く乗り込んだ列車は超満員で、デッキで3時間揺られて、19時前に札幌駅に到着しました。列車内(デッキ)が暑かったので、札幌駅を出るとクーラーがかかっているのかと思うくらい涼しく感じました。
 駅横のホテルにチェックイン、手早くシャワーを浴びてすっきりした後、息子と合流。まずは、駅近くの量販店で翌日のためにフレームポンプを購入。すっかり札幌人となった息子の案内でススキノへ。たっぷり飲んで食べて、滅多に話さない息子と2年分くらいの話をして、4日目終了。

5日目  最終日 札幌から支笏湖を巡って千歳
 最終日、午後の便で新千歳空港から帰路。早朝に札幌市内をうろついて、支笏湖を経由して新千歳空港に向かう予定となりました。

道道16号線・支笏湖道路
コース  札幌−支笏湖−新千歳空港・・・関西空港=徳島
走行距離   約100キロ  積算標高 900m
最高地点   峠(標高600m)
走行日など   2013年 7月24日  天候:曇り/晴 LOOK KG-96
 最終日。クルマの少ない時間帯にスタートして、混雑する前の札幌の街中を抜けるつもりでしたが、前夜少々飲み過ぎのため、結局スタートしたのは午前7時過ぎ。まずは、定番・北大構内へ。毎度のことですが、何回立ち寄っても、大樹が点在する緑の多い構内には魅せられます。クラーク像の前で空気を入れ足しておこうとしたところ、ノズルが米式になっていて、あっという間に空気が抜けてしまいました。ノズルをフレンチに変換して空気を入れ直し。
 人が増えてきた構内の大通りを足早に縦断して、次の目的地・モエレ公園に向かいました。札幌の道は碁盤の目のように東西南北に走っていると思っていたのですが、郊外に出ると結構斜めの道も多く、ちょっとわかりにくいところもありました。おまけに信号が多く、予想外に時間がかかってしまいました。

北大構内にて

北大構内、南北の大通り
 モエレ公園から市内を縦断して札幌郊外南部へ。ここも信号やらで結構時間を要してしまいました。市内でもう1ヶ所寄ってみたかった羊ケ丘ですが、そこまでで気力が失せてしまい、そのまま支笏湖方面へと進みました。真駒内を過ぎる頃には、多かった交通量も随分と減ってきました。道は緩やかに登っていきます。周囲は郊外になったと思うや、原生林。ひょっとしたら雨が降り始めるかという空模様だったのですが、気になったのは雷雨注意報でした。雷様は御免こうむりたいもの。
 地図で確認していた通り、国道453号線に並走して幅2mほどの自転車道(滝野上野幌自転車道)がありました。舗装状況も良好でしたが、本来の国道の交通量も少なかったので、敢えて自転車道を走るほどでもなく、大部分は車道を走りました。

モエレ公園からの展望

国道453号線に並走する自転車道
 辿り着いた峠からは、オコタンペ湖方面に向かって道が分岐していましたが、そのまま支笏湖へと下りました。下り切って支笏湖畔を4分の1ほど走って支笏湖温泉へ。平日だったためか、人はまばらでした。

支笏湖湖畔にて

支笏湖湖畔にて
 その後は、数年前に家族と千歳空港からクルマで走った時に、自転車で走るにはとても良さそうな道だと思っていた道道16号線で千歳方面へと下りました。下り基調で楽だったこともありますが、何より周囲の大部分が落葉高木大樹が続いていて、予想以上に楽しめました。平行して作られている自転車道は国道に沿っていたり、支笏湖から流れ出る千歳川に沿って走っていたりで、前年に訪れたAnnecy郊外を彷彿とさせる光景でした。

原生林の中を走る道道16号線

道道16号線に沿った自転車道
 千歳郊外に入ると、一気に交通量が増えました。何処かで昼食をと思ったものの適当な店が見つからず、結局コンビニで水分補給だけをして、新千歳空港に向かいました。以前に苫小牧側から入った時にも感じたことですが、おそよ自転車で空港入りする人はいないと考えられているようで、自動車専用道かと思うような道を進んで空港に到着。

千歳川に沿った自転車道

自転車道、千歳側入り口
 空港には随分余裕をもって到着したつもりでしたが、手続きをしてちょっと腹ごしらえをしていたら、あっという間に搭乗時刻になりました。

夏の雲の上を飛ぶ

高松上空
 帰路は窓側だったので、函館付近から新潟沖、若狭湾付近から最後は高松、さらに阿讃山脈を越えて吉野川の流れに、大川原の風車まで眼下に鳥瞰して、淡路上空から関西空港へ到着。最後に空からの日本縦断も楽しんで、5日間の旅が終わりました。

番外編
 上述のように、30数年ぶりの5日間におよぶツーリング。今回に限らず、コース設定は、この数年日帰りでも頻用している、昭文社のツーリングマップルを眺めて決めることが主となっています。モーターバイク用ですが、いろいろ書き込みもあり、大変参考になります。地形から風景を想像して、なんとなく良さそうだなあと思う道を繋げて、またできるだけそれまでに走ったことのある道を避けて描いています。ウェブサイトなど、いくらでも情報があるのでしょうが、地図以外にあまり情報収集はしないので、見落としている名所も多いかと思いますが。あとはルートラボで距離や標高差を確認したりして(結構ざっとしか見ていないので、よく後悔していますが)、おおよその予定を立てています。

2泊目の民宿の朝食

1泊目の宿の夕食(一部)
 さて、泊りがけのツーリング、以前なら大阪の青年のようにテント持参で野宿でしたが、さすがに荷(機材はすごく改良されているのでしょうが)を持つ気力も体力もなくなってきました。また、テント泊では疲れがとれないと思われ、最近は1日のコースから、到着地点となりそうな付近で宿を探して(こちらはウェブで)予約です。これも、行き当たりばったりという時間的・精神的余裕がなくなったこともあります。ウェブで検索をかけると、料金や内容はもちろん、口コミまであり、夜中でも予約できるので便利と言えば大変便利です。
 今回も、ウェブで検索をかけて予約。
 1日目は、ウトロ。豪華なホテルが立ち並んだ海沿いから山手に入って奥まったところにあった宿は、料金がそこだけ格段に安かっただけに、見た目はちょっとという風袋でしたが、食事は(食通ではない私にとっては)上等でした。北海道で有名な毛ガニ、蟹は生のワタリガニをゆでて食べるのが一番と思っていて、毛ガニはさほど美味しいと思ったことがなかった私ですが、ここで頂いたものは身がしっかりとしており、これまでの認識を覆してくれました。
 2日目は、風連湖ほとりの民宿。ここも外観は民宿らしくない無骨な造りでしたが、上述のようにオーナーは動植物に造詣の深い方のようで、鳥類を中心としていろいろな話を聞くことができました。朝食には、近くで採れた材料を用いた6種類の自家製ジャム(写真の6つ並んだ小皿)が美味しかったです。右奥の原材料はマタタビ。名前は有名ですが、実物を知らないと言えば、早速図鑑で教えていただきました。で、翌日、走行中に何度か自生しているのを確認できました。
 3日目は、駅前のビジネスホテル。玄関脇で自転車を立てていたら、中へ入れてくださいと、声をかけていただけました。ウェブ情報で食事がとてもいいとのことを目にしていましたが、その通りというかそれ以上。厚岸は、ほぼ年中牡蠣を食することができるそうで、この日も焼き物、フライに鍋と牡蠣三昧でした。もちろん、それ以外にも北の幸が多数。朝食は出発時刻の関係で食べず終いでしたが、同等の外食をすれば食費だけで宿泊費が飛ぶくらいコストパフォーマンス抜群(1泊2食で7000円)でした。
 4日目は、駅横のシティホテル。ここは素泊まりでしたが、駅直結で輪行には非常に便利。おまけに5000円で、これまでの3倍くらいのダブルの広い部屋を用意してくれました。ただ、ほんの2年半前の話ですが、昨年札幌の宿を予約しようと思ったら、価格は上がっているは、予約できるホテルが非常に少ないなど、たった2年の間に随分状況が変わっているようです。

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