県道9号線・大野原川之江線、豊稔ダム
 豊稔ダムは日本最古(昭和5年完成)の石積み式アーチダムだそうです。私はダムに対してあまりいい印象は持っていないのですが、このダムは一見の価値があるかと思います。生まれ育ったのはこのダムから10kmばかり離れたところなのに、つい最近まで訪れたことはもちろん、その存在さえ知りませんでした。
 ここを中心として、25年ほど前にはまだ通じていなかった(当時川之江に住んでいて川之江側から走ったことがありましたが、途中で畑の中の道となって消失)大野原と川之江を結ぶ道(県道9号線)を走ってきました。豊稔ダム(標高約200m)からは、数キロで香川・愛媛県境付近の最も標高の高い所(標高約450m)に到着します。峠というよりも、道は山肌を縫うように走っています。西から北にかけての展望が開けており、眼下には、川之江〜伊予三島(現四国中央市・残念ながら製紙工場が多く、あまり美しい眺めとは言えませんが)の市街から、その後方は四国山地、さらに西北から北へと新居浜方面から高縄半島・芸予諸島を挟んで、条件が良ければ本州・尾道方面までが見渡せます。 (2012年 9月20日 記)

豊稔ダムとダム公園  県道9号線から
コース  貞光−桜堂−岡見堂−池田−曼陀トンネル−豊稔ダム−県道9号線−川之江−池田−貞光
走行距離   約150キロ     積算標高 約2000m
最高地点   県道9号線峠(標高約450m)
走行日   2012年 4月 15日   天候:晴れ   FELT F1
 桜の季節も終わりに近づいた4月半ば、仕事も落ち着いていて天候も良好と思われた休日。明日は何処か少し遠出が出来そうだと前夜から行き先を考慮していました。いくつかコースを考えたのですが、結局この時期限定のを訪ねることと、さらに脚を伸ばして久々に豊稔ダムに行ってみることとしました。県西部や剣山方面に向うときの定番・貞光の河川敷までクルマで移動。7時45分に出発しました。

穴吹・大田から柴内へ、路一面の花びら

桜堂にて、散り始め
 まずは桜堂を目指しました。初めて訪れた時は貞光側から登ったのですが、道がはっきりせず散々迷いながらの到達でした。しかしやっと到着した桜堂は、そのエドヒガンザクラ大きさと吉野川を見下ろす標高400m付近の背景に大満足。その後毎年のように訪れるきっかけとなりました。今年も一週間前に訪れたのですが、まだ咲き始めでした。再訪の今回は大田側から登りましたが、桜堂が満開時にはいつもまだ蕾の道中のソメイヨシノ(写真:上左)が散り始めだったので、おそらくもう遅いかとの懸念が頭をよぎりながらの登坂でした。

柴内小学校跡にて

柴内〜貞光間、南西方面へ
 到着した桜堂は、やはり満開は過ぎていました。これまた桜堂・エドヒガンが満開時には蕾状態の周囲にあるソメイヨシノは満開でした。僅か1週間で蕾から散り始め。もう少しゆっくり咲いていてと願いたいものですが、思い残すことなく短期間で散ってしまうのが桜の良さであるのかもしれません。幸い、いつも蕾の姿しか見ていなかった柴内小学校後の大きな桜(大きさだけなら桜堂に匹敵、種類は?)が満開であるをの見ることができたのは幸いでした。
 桜堂からは貞光方面に下りました。途中、剣山方面の眺めや斜面に散在する民家の風景も、見下ろす吉野川の展望と並んでお気に入りです。残念だったのは、昨年までは何ヶ所かで見られたミツマタの花(畑)を見かけることができなかったこと。少し時期がずれていたのかもしれません。桜堂への道は、2年前にはほとんど無かった案内板が貞光側からも穴吹・大田側からも随所にあって、初めて訪れる人にもわかりやすくなっていると思われました。個人的にはあまりメジャーな存在にはなってほしくないのですが・・・。

岡見堂から対岸

岡見堂のヒガンザクラ全景
 貞光へ下った後は、ま〜し〜さんドカさんが直前に訪れて情報を流してくれていた岡見堂へと向いました。ここへは初訪です。お二人の情報では、以前に走った大惣林道を帰路途中にあるらしいと認識していました。半田の町から土々呂の滝方面に向かって10qほど。吉野川支流・半田川に沿っての県道256号線は登り基調ですが、比較的緩やかな勾配で走りやすい道でした(大惣林道帰路の記憶はあまりなし)。
 なんとか迷わずに辿り着いた岡見堂。県道から少しばかり畦道を登ります。桜堂ほどの圧倒感はありませんが、山里の静かで落ち着いた、いい雰囲気でした。しかも、うれしいことに、お堂の両側に立つ2本のエドヒガンは、いずれもちょうど満開。南側の1本はやや立ち姿、北側は横に這うように広がっていて、半田川を挟んで対岸の山肌に広がる山村風景を背景に穏やかな日本の春、と言わんばかりでした。辿り着いた岡見堂登り口の県道には、一台の見慣れた自転車が。平キンちゃんでした。これから大惣林道を越えて剪宇峠方面に向かうという彼と別れて、私は半田方面に引き返しました。

深緑の池田ダム湖半にて

曼陀トンネルにて
 時刻は既に10時を回っていましたが、半田からは国道192号線、江口で吉野川を渡って北岸の県道12号線を西に進みました。川島付近から三加茂あたりまでの吉野川中流域は、特に新緑の時期が魅力的です。国道、県道は若干交通量が多いのが難点なので、できるだけ土手上の道などの側道を選んで、吉野川川辺の風景を楽しみながらのんびりと走りました。
 池田ダム湖畔でも、萌え始めた新緑が柔らかな色合い。満水のダム湖・北岸を通って再び国道192号線に戻り、池田・佐野で県道8号線を右折、香川方面へと向かいました。県境は曼陀トンネルで越えるのですが、この道、私が10歳くらいの時(45年前)は有料道路でした。当時はまだ現在の国道32号線が工事中のところが多く、曼陀トンネルの道が格段に快適でした(クルマで2度通った不確かな記憶)。トンネルの徳島側にはソメイヨシノの並木があるのですが、老木化と誰も手入れをしないためでしょう、満開に近かったものの花数は少なく、いずれの樹も貧相でした。山肌に自生するヤマザクラの方が、ずっと見事でした。

豊稔ダムにて

豊稔ダム、放流中
 曼陀トンネルを抜けて香川県。県道8号線を数q下ると左に180°ターン。県道9号線に入って緩やかな登りを2kmほど進むと、豊稔ダムに到着しました。上述のように、このダム、生育地から10qほどしか離れていないのでですが、今から10年ほど前、当時脳出血で半身不随になっていた亡父の提案で訪れるまでは、その存在さえ全く知りませんでした。
 石積みアーチの全容はダムとしてはそれほど大きなものではありませんが、コンクリートのダムやロックフィル式のダムと異なり、建造物としての趣があります。香川県は降雨量が少ないので、いたるところにため池があるのですが(香川用水の完成後は少しずつ減少しているよう)、このダムも西讃の灌漑用水を主目的としたもののようです。
  
石積み式豊稔ダム 全容 (2002.08)
 その後も何度か訪れていますが、桜の季節に訪れたのは初めてでした。この年は春先に雨がまずまず降っていたので、前述の池田ダム湖や県道8号線沿いの五郷ダム湖同様、豊稔ダムもほぼ満水。運よく放水中でした。実は、もっと激しく水煙がたつくらいの放水時に遭遇したことがあるはずなのですが、なぜか写真がみつかりませんでした。周辺の桜も、ちょうど満開から散り始め。老若男女30人ほどがそれぞれにお弁当を食べたり、桜咲く穏やか春の一日を楽しんでいました。
 上の写真は、ちょうど10年前の夏。まだ小学生だった子供達の背後にある豊稔ダムは、放水していないとどこか廃墟のようにも見えます。何度目かの訪問となった豊稔ダムですが、放水と満開の桜に第一印象に負けないくらいの感動をいただきました。前夜に思いつきでやってきたのですが、本当に大正解でした。ダム手前では、満開の桜が風に煽られて、花吹雪。あわててカメラを構えたので、満足な写真は撮れませんでしたが、以前から一度風に舞う花びらを撮ってみたいという希望が思わぬところで実現しました。

桜吹雪、豊稔ダムにて

県道9号線から四国中央市方面を望む(2006年冬)
  ダムと桜に名残を惜しみつつ、県道9号線を愛媛方面へと進みました。これまた初めて豊稔ダムを訪れた時には想像できず、その後初めて県道9号線を川之江まで走った時にわかったことですが、ダム湖の奥には結構平地が広がっており、田畑や小さな集落さえあるのです。私は、ダム湖の奥は、もうただ山だけだと思っていたので随分驚きました。
 集落のはずれを過ぎると山は狭まり、道の勾配も増してきます。数q走ると燧灘方面の展望が広がってきますが、これまで何度か走った記憶では、あまり香川方面の展望はなかったと思います。一方最高地点手前付近では、愛媛方面の展望が広がってきます。製紙工場の煙突が目立つ四国中央市方面ですが、背後に迫る標高1600〜1700mの四国山地と燧灘の眺めは、この地ならではの眺めかと思います。条件が良ければ、しまなみ海道方面や本州の一部まで望めると思いますが、まだその場に恵まれたことがありません。冬場の朝夕などがベストかと想像しています。

県道9号線から川之江、四国山地方向を望む

県道9号線から川之江・切山地区
 この日も、春霞で四国山地や燧灘ははっきりとは見えませんでしたが、愛媛・川之江方面に下り始めた切山付近の風景が、また穏やかな日本の春そのものでした。ウインデーさんもその数日前に訪問された紀行をブログにアップされていましたが、点在する民家の屋根と満開の桜、そして新緑が目にも鮮やかでした。
 切山からは南方面へと下る細い道があるようで、いつか辿ってみようと思っているのですが、今回も地図の持参もなく前夜に思い立っての行動のため詳細も把握できていなかったので、いつものように県道9号線を川之江・山田井方面へと下りました。川之江は過って2年間住んだ街ですが、職場も新しい建物になり住んでいた宿舎は取り壊されてなくなり、何よりも山田井周辺は大きく様変わりしています。まあ、四半世紀も経っているのだから当たり前でしょうか。
 その後は金生川沿いに走って国道192号線へ。ここからもなぜか若干の追い風で、県境に向かっての緩い登り坂をなんとかこなせました。境目峠は当然トンネルは通らずに旧道へと進みました。峠の愛媛側は、ヤマザクラが満開でなかなか見事だったのですが、上手く写真を撮れませんでした。
 峠を下って佐野からはほぼ往路を逆に貞光まで。最後の20kmほどはこの日唯一の向かい風となり、平地なのに20km/h程度でしか走れません。貞光には、16時に到着。走行距離は160km、平坦コースと思っていましたが積算標高は2000mちょい、平均速度22.9km/h。桜堂こそ少々時期遅でしたが、岡見堂、豊稔ダム、切山と穏やかな日本の春を満喫できた一日でした。

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