仁淀のひょうたん桜   付録: 中越家のしだれ桜  鳥形山
 四国の一本桜としては、最も有名と思われる仁淀のひょうたん桜。以前から一度は訪れてみたいと思っていましたが、同じ四国でありながら徳島からは180kmほどと結構距離があります。休日で満開、仕事も何もかも条件が揃うことはなかなかです。今回、私同様に以前から訪れてみたかったという盟友K氏が誘ってくれて、漸く実現しました。
 仁淀町のHPでは4月7日に満開宣言が出ていたので少し遅いかと危惧されましたが、なんとまさに満開。最高の条件でした。ここ数年、桜の季節には徳島県内を中心として、いくつかの名所を訪れてきました。昨年は日本の三大桜のひとつとも言われる根尾谷薄墨桜も訪れて、その姿に圧倒されましたが、このひょうたん桜は、それに勝るとも劣らぬ魅力を持っていました。いや一見の価値あり。    ( 2012年 1月21日更新)

ひょうたん桜
コース 伊野−ひょうたん桜−中越家−鳥形山−大峠−仏峠−伊野
走行距離  約140キロ  積算標高 約2700m
最高地点  鳥形山(標高 約1300m)  
走行日  2011年 4月10日 天候:晴れ PINARRELO PARIS
 徳島を午前5時30分に出発。先日まで6時過ぎまで暗かったのに、外はもうすっかり明るくなっていました。K氏を土成ICで迎えて、高知・伊野ICで下車。伊野の町(K氏と400km走時-2005.07.17-の記憶あり)から国道194号線を少し走ったところ・加田キャンプ場をデポ地としました。現地の土地勘がないので、出発前から何処をデポ地にするか迷っていました。この近辺、地図にはキャンプ場の表示が沢山載っていたのですが、この加田同様おそらく仁淀川沿いの河川敷であるかと思われます。水道とトイレ以外は、まさにただの河川敷でしたが、芽吹き始めた落葉樹が大きく繁っており、対岸の風景とともに自然のままの状態で、いい雰囲気でした。
 8時20分にスタート。まずは国道194号線を10kmあまり進んだところで左折。仁淀川本流に沿って県道18号線で越知方面へと向います。交通量がぐっと減って、とても走りやすく、サイクリングにはぴったりの道でした。ただ、仁淀川の水は、400km走時の印象より幾分濁っているように思われました。このところ雨量が少なかったためかもしれません。

加田キャンプ場、仁淀川河辺
 
ひょうたん桜を見上げる
 越知からは国道33号線で仁淀まで10km少々。さすがに交通量が少し増えますが、まだまだ走りやすい道が続きます。極僅かの登り。と言っても、右手の山肌には随所に満開と思われる桜がピンク色の彩りを点在させているのを横目に楽しみながら走る余裕がある程度です。
 仁淀町役場手前で、チェックしていたとおり「ひょうたん桜こちら」の表示を見つけて右折。登り始めには、地元の誘導ボランティアと思われる方が座っておられて挨拶。ここから3.6kmだったか、ひたすら登りです。それも10%を越える坂が連続。午前9時半くらいでしたが、既に半袖短パン姿でちょうどいいくらいでした。時折、後方から花見に向うと思われるクルマが追い抜いていきます。道は1車線で、この時期国道33号線からの道は登りのみ。下りは国道439号線にと、一方通行になっていました。

シバザクラとひょうたん桜

ひょうたん桜の向こうに、鳥形山を望む
 きついなあ、とK氏と話しながら、登ること30分ばかり。木々に覆われていた道が少し展望の開けるところに出てきて、つづら折れを2回ほど繰り返すと、そこは満開の桜、サクラ、さくら。既に10時前であったので、さすがにクルマも結構止まっています。ここでも地元のボランティアと思われる方が、「自転車はそのまま上にどうぞ」と進めてくれました。そして辿り着いたひょうたん桜。
 いや、想像していたより遥かに立派。写真では何度も見ていましたが、貞光・吉良や穴吹・内田の桜と同じエドヒガンなので、大樹であっても花数はさほど多くはないものと思っていました。しかし、目の前にしたひょうたん桜は、よく手入れが行き届いた満開のソメイヨシノと変わらないくらいの花数。その姿は、当方の拙い文や写真ではまったく十分にはお伝えできません。まさに一見の価値あり。

ひょうたん桜一帯、遠景
 ひょうたん桜は当然のことながら、道を挟んで隣にも4本ほどのヒガンザクラ系と思われる大樹。この1本1本でも、他のところにあれば、十分に名の通った1本桜として通用すると思われました。その他にも周囲には桜が植えられ、いずれも満開。足元にはシバザクラと菜の花が彩りを添えています。人が多いのは、仕方が無いでしょう。多くの公園などと異なり、ボンボリなどの飾りや興ざめな音楽などが一切ないのがまた良かったです。加えて、ひょうたん桜から集落の名称を桜と変更したという周囲の山村風景や、仁淀川支流対岸の山肌が、ひょうたん桜の姿をますます引き立てます。
 正直言って、ここまで素晴らしいとは予想していませんでした。もっともっとゆっくりしていたかったのですが、折角遠路高知までやってきたので、この機会に立ち寄ってみたいところもあります。後ろ髪を引かれる思いで、ひょうたん桜からさよならです。上述のように帰路は、国道439号線方面へと別の道を降りるのですが、ちょっと走ったところで右手上方に比較的大きそうなしだれ桜の姿が見えました。K氏と、せっかくだからあそこまで登ってみようと進んでみました。

ひょうたん桜から少し上ったところのしだれ桜

ひょうたん桜から少し上ったところのしだれ桜
 これがまた立派でした。個人宅の庭にあるのですが、明王寺のしだれ桜にも引けをとらないくらい。全容を入れようとすると、金網のフェンスが入ってしまうのがちょっと残念でした。振り返ってみると、ひょうたん桜一帯が一望できました。クルマで来られた方々でここまで足を伸ばされる方はほとんどいないようです。よくこの地を知っていると思われる2、3名の方がカメラを構えているだけでした。そこもまた後ろ髪を引かれる思いで、下りました。下って国道439号線、再度国道33号線へと向いますが、その途中ひょうたん桜一帯を見上げるポイントがありました。

わかりにくいけど、ひょうたん桜を写す人々

国道439号線から見上げた、ひょうたん桜一帯
 ひょうたん桜からは、これまた1本桜として有名な中越家のしだれ桜を目指しました。上述のしだれ桜でまったりしていたところ、カメラを構えていた年配の女性から「しだれ桜は行かないのですか?」と聞かれました。「この後訪問するつもりですが、もうちょっと遅いのでは」(HPでは5日くらいに見頃となっていました)と、尋ねたところ、「多分大丈夫でしょう」とのこと。これから行く予定というその方から「あっちはもっと山ですから、がんばってください」とエールを送られました。
 国道439号線から再び国道33号線へと戻り、北上。しばらく走ると大渡ダムが現れます。この対岸には公園があり、道もあるようでした。が、ずっと繋がっているのかもうひとつはっきりしなかったので、大渡ダム大橋までは国道33号線を走りました。が、国道はアップダウンも交通量も多く、後で確認したら西岸もずっと道が続いているようで、そちらを進むべきだったと後悔しました。それにしても、ダム湖の周辺も桜が満開でした。人造湖とはいえ、満開の桜が凪いだ湖面に映る姿もまた趣があります。

大渡ダム湖半の桜

中越家のしだれ桜
 大渡ダム大橋からは、西岸を走りました。国道33号線に比べて交通量もほとんどなく平坦で、おまけに花見をしながらで、快適でした。別枝大橋との合流部(案内板・距離表示あり)からは登りとなりました。ちょうど正午を過ぎた辺りで、花見と思われるクルマが次々を追い抜いていきます。道は細くなって、ひょうたん桜のところとは異なり一方通行とはなっていないので、度々すれ違いでクルマが立ち往生です。10%近い坂で止められると、再スタートが大変でした。
 その後訪れる予定の鳥形山への道から別れて、しばらく走ると中越家に到着。駐車場もないので(下方にあり)、僅か10台ばかりのクルマでもごった返していました。しかし、この中越家のしだれ桜も、今まさに満開でした。こちらも明王寺以上かと思われる樹容です。例によって、写真はその素晴らしさを全く伝えられていません。しかもこれまた個人宅。玄関先からは住んでいる方の声が聞こえてきます。大勢の観光客は迷惑意外の何者でもないかもしれませんが、年に数日のこと。観光客もみなさん良識を守っての観桜のようでした。

中越家のしだれ桜

中越家のしだれ桜
鳥形山へ

 さて、桜三昧の後は鳥形山へと向いました。実は、今回の計画当初から鳥形山へ登ろうと考えていたのですが、直前に中津明神山の存在を知り、どちらへコースを取るか少々迷っていたのです。結局中津明神山は折り返しになるようなので、今回は周回可能な鳥形山へと向いました。地図上から、ひょうたん桜への道のような細い急勾配の道が続くのではと身構えていたのですが、意外にも2車線のりっぱな(味の無い)緩やかな道が続きます。こりゃ快適、いつまで続くのかな、と話しながら進んでいたところ「鳥形山、こちら」と左折の表示。しかしそこはにはロープが張られ通行禁止。おまけにダートです。小さな川を挟んで並行した道があるのですが、こちらも荒れていてとても怪しい。反してまっすぐには2車線の立派な道が続いています。二人でしばし悩みましたが、手持ちの地図と照らし合わせると、やはり左折するのが正しいよう。ということで、怪しい道を左折。
 幸い判断は正しかったようで、都という集落(もうほとんど人はいないかと思われた)までは、これまたここまでで疲れた脚にも快適な緩やかな道が続きました。分岐部付近の荒れた様相もすぐに解消し、昔ながらの緩やかなアスファルトが続きます。このまま山頂までなら良かったのですが、最後の4kmほどはまたまた10%前後の勾配の連続となりました。標高を稼いでいくと、前方に「ややっ雪が残っている」と見間違ったくらいの白い岩。石灰岩でした。この鳥形山は、四国カルストのすぐ東隣になるのですが、石灰の産地です。

鳥形山から北西へ、大川嶺を望む

鳥形山から北方向、中津明神山を望む
 その石灰を採る日鉱鉱山の入り口を過ぎても10%くらいの坂が続きます。疲れで、なんだか頭がボーっとしてきました。なんとか這うようなスピードで登り詰めた山頂近くには、またまたゲートがあって、それより先は日鉱鉱山所有で通行禁止。そういえば、少し手前に登山道があったようでした。少し引き返し遊歩道を確認、自転車を降りて山頂まで歩きました。
 山頂には櫓のような木で組まれた展望台があって、登ると360度の大パノラマです。残念ながら春霞でしたが、北には中津明神山が聳えています。その後方にはうっすらと石鎚山や瓶ヶ森も見えました。北西方向には、以前にやはりK氏と走った大川嶺が山頂付近に雪を残して見えました。南には、要塞かと見紛う、ちょっと日本国内とは思いにくい採石場。2009年に四国カルストを南側から登って降りた後、四万十川源流を訪ねて国道439号線矢筈峠からさらに登ったところから振り返って異様な姿を見つけて、当時その存在を全く知らなかったので随分驚いたものです。下右の写真の後方に、下左の写真を撮った山頂が隠れているようです。

鳥形山・石灰採石場

国道439号線・矢筈峠からみた鳥形山  09.09.13
 鳥形山から360度の展望を十分に堪能した後は、国道439号線方面へと下りました。こちらも結構急勾配です。国道439号線まで下って、長者トンネルを越えて少し走ったところから県道18号線へと右折しました。右折時に「工事中・全面通行止め」の表示がありましたが日曜日で作業はお休み、自転車なら担いででもなんとか通過できるだろうと進みました。案の定、工事箇所はほんの少しだけで問題なく通過できました。
 そこから少し走ったところに小さな集落がありました。県道18号線に沿うようにしてある集落は、おそらく以前の道のままと思われる1車線の細く緩やかな勾配の県道両脇には、ぎっしりと家並みが続いて最近の新しい道沿いにはない情緒がありました(残念ながら写真なし)。しかも家並みは寂れているようなことは全くなく活気がありました。県道18号線は旧道故、勾配は非常に緩やかで、サイクリングには絶好の道でした。加えてクルマがほとんど通りません。峠から東側は時刻が遅かったためもあるのか、ちょっと鬱蒼とも思われる杉林で暗い感じでした。仁淀川の支流に沿って下ると、再び越知町に出てきました。
 ここからデポ地までの道筋は、K氏と相談して県道300号線を経由することとしました。越知周辺では県道298号線、301号線と入り組んでいて、ちょっと迷いました。越知郊外はもう田植えでした。仏峠へと向う道も、旧道の緩やかな勾配でとても走りやすい道でした。途中、茶畑も多数。もうかなり疲れていて、仏峠ももっと手前とばかり思うほど距離感覚が鈍っていました。再び国道194号線に戻ってきた時は、既に17時。ここからは仁淀川本流に沿って緩やかな下りなのですが、残念ながら心持向かい風。そんな道を、いつもなら最後に爆走するK氏も今回は全く走れていないとのことで、35km/hrくらいで控えめに牽いていただけました。

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