室戸岬周辺をめぐる道
 初めて室戸岬を訪れたのは1975年3月。もう40年近くも前のことになりました。当時、高校2年生。初ソロ野宿ツーリングでした。それから約15年後、室戸市で1年ほど仕事をしましたが、当時は室戸岬周辺を走ることはほとんどできませんでした。自転車で走り回ることはできなかったものの短期間とはいえ生活をした場所なので、単に旅として訪れた土地とは多少なりとも異なる思いもある地です。 (2013年 1月 30日 記)

室戸岬にて  2012.010.8
コース   牟岐−室戸岬−安田−馬路−二又−四郎ヶ野峠−野根−船津−宍喰−牟岐
走行距離   一周 約205キロ 
最高地点   四郎ヶ野峠(標高約430m)  積算標高差 約1500m
走行日・天候   2013年 1月12日 晴れ ロード  2012年 1月 8日 晴れ ロード  2008年1月13日 他
   1975年、早春。香川県は西端を出発して国道32号線から高知市を経て国道55号線で室戸岬へ。前年夏に同じコースで高知・種崎へ、その後松山へ向かう初めてのサイクルキャンピングを経験しました。真夏のためか荷物が多かったためか高知市までで随分くたびれたのですが、この時は春の穏やかな気候にも恵まれたためか、スイスイと走れて、室戸手前でキャンプ。1990年に住んでいた時の確認から、キャンプをしたのは室戸岬西側・行当岬を回ったところの元海岸だったと思います。
 翌日は、室戸岬を回って徳島方面へ(まさか2年後に住むことになるなど、その時は夢にも思ってませんでした)向かい、フェリーで大阪府南部・深日に渡りました。海岸線ばかり思っていた徳島への道、後半はまさかの山道連続で随分疲れた思い出が今でも鮮明に残っています。
 その後何度か室戸岬を訪れていますが、いずれも徳島起点となったために、初回以外はほとんど時計回りです。

大里松原海岸

徳島・高知県境、宍喰漁港
 冒頭の地図を見ていただいてもわかるように、室戸岬は南へ鋭角に突き出しています。このコース上で個人的に一番気に入っている&お勧めは、野根から室戸岬までの西海岸。ほぼ海岸線に沿って走る国道55号線は、本来交通量も少なく、入木、佐喜浜、尾崎、椎名と小さな集落を過ぎていく中、信号は岬までの35kmほどに2つのみ。標高差もほとんどありません。右手には、海岸段丘の急峻な山肌一面を、風に煽られて幹が靡くウバメガシなどの暖帯照葉樹林が覆っています。左手には、太平洋。背伸びするように持ち上がる波は、午前中なら陽光が透けて、パステル調の柔らかな青緑色。真冬でも南国・室戸の良さを満喫させてくれます。
 室戸岬は昔から台風の通り道として有名で、そのためか強風が吹き荒れるイメージが強いかもしれません。が、台風が直撃しない限りは、それほど風が強い日はありません。冬場など、徳島市内のほうがよほど北西風が強いくらい(一時期board sailingに入れ込んでいた影響で風にはちょっとうるさい)です。また海ばかりが強調されますが、半島とも呼べる室戸岬の内陸部は、標高1000m級の山々が尾根を形成しています。このことは、2005年に蛇谷林道・野根山街道を走った時に、初めて気づいたことでした。最近、深層水やジオパークなどで脚光を浴びている室戸市ですが、通算1年半(1987年〜1988年にも半年過ごした)住んだ経験から省みると、冬暖かく、夏は意外と涼しく、一年を通じてとても過ごしやすい地域でした。

甲浦漁港

生見海岸に集うサーファー達 2012.01.08
 さて、前置きが長くなりましたが、2013年1月12日は牟岐(B&G海洋センター)をデポ地としました。
 午前7時40分頃にスタート。淺川からは国道を離れて大里松原海岸に回りました。1998・99年と牟岐で仕事をしていた時にも何度か訪れたこの海岸は、とても広くて美しいのに、観光客も全くいないので、お気に入りの場所でした。大里松原海岸からは一度国道55号線に戻りましたが、宍喰からは国道の水床トンネルが嫌いなので、竹ヶ島方面への回り道で県境を越えました。甲浦へ出ると、阿佐東線の終着駅・甲浦駅を一度見てみようと寄り道。地元のボランティアと思われる方が、駅舎付近を清掃されていました。
 サーファーで賑わう(この日は波が穏やかで海に出ているサーファー少なく)生見海岸を横目に、野根を過ぎると左手に海を真横に見る海岸線の快走コースです。上述のように、室戸岬への道、一番の目玉はここからの40km弱。何もありません。あるのは左手に太平洋、右手には海岸段丘の急斜面に密生する暖帯照葉樹林。室戸岬に近づくにつれて、その植生はより一層特徴が明らかになります。
 加えて交通量は極めて少なく(この日はなぜか大型トラックが多かったですが)、室戸岬までの40km弱の間に信号は僅か2ヶ所。アップダウンはあっても10m程度。単調と言えば単調ですが、左手に広がる海をノンビリ見ながら走るも良し、TTよろしく疾走するのも良しのコースです。走りながらいつも思うことですが、この単調ながらも広大な風景を、うまく写真と撮られきることが私の技量ではできません。一番のお気に入り風景を写真で紹介できないのは、とても残念。写真:下の2枚は、以前にTOKUさんが主催されていた室戸TT・2005年初参加時のものです。

岬へ (TOKUさん主催:室戸TT)  2005.04.29

夫婦岩付近にて (TOKUさん主催:室戸TT) 2005.04.29
 徳島市内から室戸岬までは、およそ135km。一日で往復される方もあるようですが、私は未経験。なんとか走りきれないこともないかと思いますが、それよりは岬を回るコースが魅力的。また岬には室戸スカイラインという尾根沿いを走る道がありますが、結構な急勾配。前後の走行距離を考えるといつもパスしてしまうのですが、測候所(1990年には風速60mを記録して風力計が壊れたらしい)や室戸岬灯台、四国霊場24番札所・最御崎寺もあり、また海岸段丘上からの見晴らしのいい地点もあり、こちらを登ってみることもお奨めです。
 国道55号線を進んでいくと、時計回りでも反時計回りでも、地図で見るほどの鋭角さは感じないまま、極々緩やかなカーブで、いつの間にか岬を回ってしまうような感じです。写真:下の2枚は2008年、リョウさんのお仲間達(当時60歳代:全国トップ級の方々)と徳島市内から走っていった時のものです。こんな感じで、いつの間にか岬を回ってしまいます。そうそう、岬の東側・高岡辺りには、強風から守るための強固な石垣塀を持つ家が今でもほんの少しだけ残っていました。

リョウさんのお仲間達と 2008.01.13

リョウさんのお仲間達と 2008.01.13
 岬を回ると、西側は、室戸市街、吉良川、羽根、奈半利と東側より少し大きな町が続き、交通量も東海岸に比較すると随分多くなります。山肌も遠ざかり、ツーリング道としての魅力には、やや乏しくなります。吉良川では数年前から旧道沿いの町並みをアピールしているので、今回初めて立ち寄ってみました。また吉良川近くの黒耳というところは、美味しいビワの産地です。
 吉良川からは東の川に沿って、大平舟場林道で佐喜浜に抜けることもできます(野根山街道参照)。峠から佐喜浜の眺めがいいですが、それ以外にはこれといった見所はないものの、ここも交通量がほとんどなく、ノンビリと走れる道です。

風除けの強固な石垣(室戸市・高岡付近)

吉良川の旧道
 室戸岬から奈半利・安田までは、ただ淡々と走ってしまう道です。この区間、そこそこの町が点在するものの、いまどき珍しく昨年までコンビニがありませんでした。今年(2013年)は、奈半利駅横に一軒できていました。
 2012年1月8日は、奈半利から国道493号線で奈半利川沿いに四郎ヶ野峠へと向かい、旧海南町からは海部川沿いに少し遡って、支流・玉笠川沿いを遡り、やれやれ峠を越えました。国道493号線は、過去に2、3度走ったことがあると記憶していましたが、奈半利側から走ったのは、この時が初めてだったかもしれません。四郎ヶ野峠までずっと単調に登りだと思っていたのに、途中で平鍋ダムというダムがあって、一度登って下るところがあったのは、記憶に全くないことでした。このダム前後以外は、道はほぼ2車線で交通量も少なく快適なコースです。

安田川沿い、明神橋にて

奈半利川沿い、北側温泉横 2012.010.8
 2013年は、安田から安田川に沿って馬路方面へと県道12号線を遡りました。馬路という町もあるし、その奥には魚梁瀬という町もあるのですが、奈半利川沿いの国道より狭い道でした。道自体は交通量も少なく、非常に緩やかに登っていく、ツーリングとしても楽しめ、ロード練習として理想的な走りやすい道です。途中、明神橋というところで写真を撮りましたが、橋の袂にはやや朽ちつつある「サイクリングロード」の看板が出ていました。橋の向こうはトンネルです。道沿いには何ヶ所か小さなトンネルを見ることができました。往年の森林鉄道跡を利用したサイクリングロードのように思われました。安田川は随所で工事をしているところがあり、川水が澄んできたなあと思ったら濁り始めるの繰り返し。本来の川の姿は、きっともっと美しいだろうと想像していただけに、少々残念でした。
 馬路を過ぎると、安田川は西川・東川の二つに分岐します。東川に沿って緩やかに登り続けると安田川と奈半利川の分水嶺が新久木トンネル。少し走って下ると、県道54号線に合流します。左折すると魚梁瀬方面。今回は当然右折して二又方面に。道は、緩やかに下っていきます。

二又付近から魚梁瀬方面

四郎ヶ野峠にて
 二又で国道493号線に。この合流地点から四郎ヶ野峠までは、もう少し近いと思っていたのですが案外距離がありました。これまで、奈半利川の石は、何処かにも書いたと思いますが、吉野川や那賀川の青石に比べて白っぽいなあと思っていました。今回安田川を遡っていて、こちらの石は少し黒っぽいなあと思ったのですが、新久木トンネルを越えて奈半利川へと進んでみると、これまでの白っぽいと思っていた印象とは異なって同じように黒っぽく思われました。その時の川の状況や時間などにより、色調も多少異なって見えるのかもしれません。

野根川

野根川沿い、県道101号線
 なんとか四郎ヶ野峠を登りきって野根に降りた後は、野根川に沿って船津方面へと遡りました。ここも以前に一度走ったことがあるように思っていましたが、全く覚えなし。野根川の流れは予想外に美しく、仕事上のお知り合いにここで鮎釣りをされている方がいることを思い出して納得でした。川の流れもきれいで、横を走る県道101号線も写真:上のように鄙びて交通量もほとんどなく、とても走りやすい道でした。途中、以前に一度走った生見からの道合流地点を確認できました。
 その後、小さな峠(トンネル)を超えて宍喰に出たのですが、時間切れ&脚売り切れで、予定していた昨年のようにヤレヤレ峠を回ることなく、国道55号線直行でデポ地へ帰還。
 寒い冬でも、比較的暖かく、交通量も少なく快適に走れる室戸周辺をめぐる道は、冬の定番となりつつあります。
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