新見付近の道 と 布原信号場
 2017年10月の週末は3週続けて雨。しかも後半2週は季節外れの台風。せっかく紅葉の季節なのに、ちょっとしたポタリングさえままなりませんでした。11月に入って久しぶりに晴れの週末に恵まれました。前日までの疲れが残っていましたが、せっかくなのでと、このところよく訪れている中国地方内陸部に向かいました。自転車はロードで走る元気がなく、一番快適に走れるスポルティフ。そして、40数年振りに布原信号場にも立ち寄ってみることも目的のひとつです。(2017年11月10日 記)

旧布原信号場(現布原駅) にて
コース   新見−県道157号線−県道50号線−東城―県道12号線−谷田峠−桑平峠−県道21号線−伯備線沿い−布原信号場−新見
走行距離   120キロ   積算標高 約2000m
最高地点   桑平峠 (800)
走行日   2017年11月 5日   天候:快晴   スポルティフ
 午前4時半、自宅出発。瀬戸大橋から岡山道〜中国道で、デポ地・新見市民公園には、ほぼ予定通り7時過ぎに到着しました。外気温3℃、寒いです。途中、瀬戸大橋では、西手に満月に照らされた光る海と島のシルエットが幻想的でした。運転しているのでチラッと見ただけですが、何処かに停車してゆっくり味わいたい光景でした。
 岡山市を通過する頃には明るくなってきましたが、岡山道に入ると、この時期の定番・霧(雲海の中)が立ち込めていました。北房JCTからの中国道は、以前訪れた時、道沿いの紅葉が凄く良かったので今回も期待していたのですが、それほどでもなかったのが、ちょっと残念でした。走ったのは、ほぼ同じ月日でしたが、台風の影響もあったのかもしれません。
 朝靄の中、7時30分頃スタートです。昔ながらと思われる入り組んだ新見の街並みを抜けて、高梁川と伯備線に挟まれた県道8号線を走っていたところ、前方から下り列車がやってきました。なんと寝台特急・サンライズ出雲です。いまやサンライズ瀬戸とともに、唯一生き残っている寝台特急。全くの偶然でしたが、特徴的な窓の位置ですぐわかりました。残念ながら手間取って、写真は下中上の後姿一枚のみ。この後、何回か列車との遭遇がありましたが、少しは事前に通過時間をチェックしておくべきだったと後悔すること然り。
 国道182号線で新見市街を抜け、少し南下したところで、県道33号線へと右折します。まだ雲海が少し残る河村ダム(写真:上右上)を横目に走って、県道157号線に右折。山影と雲海で陽が差さないこともあって、とにかく寒かったです。前々日、半袖短パンで走っていたのに、この日は準冬装備でも寒いくらいでした。以前に訪れた吹屋ふるさと村もここからは10qほど南との表示がありました。
 県道157号線に入ると、次第と勾配が増してきました。後半は予想外に結構きつい坂道。峠手前は、2qで標高差200m余と平均勾配10%強。前日までの疲れと走り始めのうえに寒いこともあって、随分きつかったです。幸いクルマは時に通る程度で道の雰囲気も良く、脇には水量も多い沢が流れていたので、そんな光景に気を紛らわせながら登りました(写真:下左)。この日は一日を通して、こんな風に道沿いに水量の多い小川が何ヶ所も見られました。少し前まで雨が多かったためでしょうか。県道157号線は、かなり上方まで水量の多い沢が隣合わせでした。
 登りきって最上部の峠らしきところを越えると、一気の下りではなく、開けた平地状のところ(写真:上右・下左2枚、標高500m弱)に出たのは、これまで何回か走ったこの地域で良く経験されたことです。これも山容が穏やかな中国地方の特徴なのでしょう。ちなみに、スタート地点の新見駅付近の標高は170mくらいです。
 そんな広い田園風景の中、県道157号線から県道50号線に進みました。さらに県道108号線で西へ走るつもりでしたが行く手をみると雲海の中です(写真:下右)。展望なく寒そうだったので、そのまま県道50号線を進んで、芸備線・野馳駅近くで国道182号線へ出ました。
 野馳駅近くで、立派な民家を見たので、一枚(写真:下左上)。この国道182号線も懸念していたほどの交通量はなく、西進して広島県に入りました(写真:下中上)。
 東城駅(写真:下左下、ここは芸備線)に立ち寄って、これまた以前に走った国道314号線を2q程北へ走って、県道12号線へ右折します。この道は、田舎の細い道を予想していたのですが、曲がってしばらくは広い2車線の道でした。周囲の田畑には、稲刈り後(写真:下中下)。
 
 そんな2車線の道も、多飯が辻山登山口への分岐を越える辺りからは、1車線道になりました(写真:上右)。そのまま進むと、一時、山の中といった感じで、県道157号線同様、左手には小さな川が流れていて(写真:下左2枚)、勾配も緩く、走っていて気持ちのいい雰囲気の道が続きます。鮮やかではありませんが、落ち着いた色の紅葉が見られました。
 さらに進むと、県道448号線の分岐部付近では、また開けたところに出ました。地図を見ると、頭地という集落付近です。分岐手前の民家には大きな柿の木があって、鈴なりの実が成っていました(写真:下右2枚)。
 そこから少し走って最後の集落(写真:下左)を越えると、ほとんど交通量がないようで(事実、次の県道109号線の分岐部まで10qあまりで出会ったクルマなし)、道は次第に荒れてきました。
 間伐されていない杉が両側に鬱蒼と繁る路面には、小枝・枯葉が散乱。至る所で出水状態でした。ロードでも走れないことはない舗装状態ですが、ストレスが多いかと思います。ここの登りも、そんなに長いと思っていなかったのですが、約5q。勾配はきつくはないのですが、上述のような路面状態の上、展望もほとんどなかったので、淡々と登りました。途中から、横を流れていた川がどんどん下方へと遠ざかっていくのが水音で良く分かかりました。
 漸く県境の峠に到着すると、なぜか岡山県側の路面には、小枝も枯葉もほとんど見られません(写真:下中上)。どちらも峠から一番近い民家までは同じくらい距離があったので、地形と風による影響なのでしょうか。峠から5qほど下って、県道109号線へ左折します。県道12号線・峠までの荒れ具合がひどかったので、三桁No.の県道はもっと荒れているかと思っていたら、分岐部付近は2車線で幅広く、少し進んでみると田畑と持つ民家の小集落もあって開けていたのには、ちょっと驚きでした。しかし、集落を過ぎると、また1車線道となり、勾配も次第に急になってきました。ここも杉林が多く、県道12号線・広島県側ほどではありませんが、路面には小枝・枯葉が散乱。峠手前にある右急カーブ前では、10%を越える坂に、とうとう一服です(写真:下中下)。
 杉林を過ぎると路面の枯葉も少なくなり、峠からは問題なく下って、2車線の県道11号線へ。ここでは、ちょうどマラソン大会が行われていました。交通規制をしている人が、「自転車は気を付けて、どうぞ」と進ませてくれました。走っている人は、まばら(50mにひとりくらい)で、最終ランナーに近いのか、みなさんかなりゆっくりしたペースでした(2qあまり同じコース上を走行)。この付近も平地状(標高460m前後・写真なし)でした。県道11号線を東進して、伯備線沿いを並走する県道8号線に進みます。
 県道8号線を少し北上すると、谷田峠は岡山・島根県境です(写真:下左)。前方には、大倉山の端麗な姿。峠から1qほど下ったところで、県道210号線へ右折。分岐部で花見山スキー場という表示を見て、名前に記憶があるなあと思っていたら、県道111号線へ右折して少し走ったところで、デジャビュ。この田園風景の中を走る大きなカーブの道、どうも見覚えがあると思ったら、以前に逆走していました(写真:下右)。
 これまでに走ったことのある道を外してコース設定したつもりでしたが、気が付いていませんでした。まあ、逆走だったのと、ここを走ったことで3県にまたがったし、その田園付近を過ぎると、また記憶はほとんど残っていなかったので、良しとしましょう。しかも、立派な道なのに、ほとんど交通量がなく、登りですが気持ちよく走れました。13時頃でしたが、その時刻と登り坂ため暑くなって、この日初めてウインドブレーカ−と長指手袋を脱ぎました。
 三度目の岡山県に入る桑平峠(写真:下中上)からの下りも、登った記憶がほとんど残っていませんでした。下り切って、国道180号線を南へ向かいます。国道なので、さすがに交通量は増えましたが、それでも懸念していたほどではありません。写真:下中のような、黄葉した大きな落葉樹を持つ黒瓦の立派な民家(写真:下中下)が時に見られる以外には商店のある集落もほとんどなく、高梁川に沿った田舎っぽい道でした。そのまま国道180号線を南下してもよかったのですが、途中から県道11号線へと右折してみました。
 また峠かなあと、売り切れ状態の脚だけを心配していましたが、幸いそれほど登りもなく、下りになりました。途中から、さらに県道316号線へ左折(写真:下左)。沢に沿った狭い旧道でしたが、ガードレールのない中央部は苔生した道で、これぞサイクリングの道と言わんばかり。左手には、また水量の多い、しかもまずまず澄んだ水の渓流が勢いよく流れています。路面は濡れたところも所々にみられましたが、そんな道と周囲の光景を楽しみながら、慎重にゆっくりと下りました。
 
 県道316号線から出た伯備線に沿った県道8号線も、もっと交通量があるのかと思っていたら、それほどでもなく有難かったです。途中、数名の撮鉄ちゃんが三脚を構えているポイントあり。スピードを緩めて振り返ってみたら、線路がS字カーブでいい雰囲気です。何か特別な列車でも通るのかな。それとも定番ポイントなのでしょうか。何処かで列車と擦れ違えるかと思いながら走りましたが、なかなか出会えません。足立駅で小休憩(写真:下右)。時刻表を見ると、前後に走る鈍行列車はないようでしたが、特急は停車しないので擦れ違うかもしれないと思っていたら、足立駅から少し走ったところで、下り特急と擦れ違い。手間取って、写真はボケた後姿のみ。
 横を流れる高梁川支流・西川の流れも、伯備線が山肌と川周囲の風景に溶け込んで魅力的でした(写真:下左)。伯備線に沿っているくらいだから、そこそこの道だろうと思っていましたが、所々で1車線、鉄橋下では上下分離となったところもあり、民家や商業施設は全くなかったので、奥深い山の中のようにも思われるくらいでした。川と道は、随所で伯備線と鉄橋でクロスします。ここで列車と出会えればと思いましたが、なかなかそうはいきません。国道182号線に突き当たる手前で、今度は上り特急がやってきましたが、これまた写真撮影が間に合いませんでした。
 さて、県道8号線から国道182号線に出てほんの少し西へ走った後は、この日、目的のひとつにもしていた布原信号場(信号所とばかり記憶していましたが、信号場が正しいらしい)を目指します。備中神代駅(写真:下左&中)に立ち寄って時刻表を再度確認しますが、やはり前後に鈍行列車は無いようです。特急も先程上下線を見送ったところだから、しばらく来ないでしょう。
 まあ、いいや、と布原信号場方面に向けて緩い登り道を進みます。この付近は阿哲峡と呼ばれる渓谷で、道は随分と川面から高所を走っています(そして川面峠を越えて新見市街へ至る)。周囲は大部分が雑木林で、素晴らしい紅葉というほどではなかったのですが、自転車で走るには勾配も緩やかでクルマもほとんど通らず凄く楽しめる道でした(写真:下右)。右手は切り立った崖と思われますが、繁った雑木で川はもちろん、渓谷も全く見えません。
 
 備中神代駅から3q程走った付近から布原信号場に向かう道が下っています。また登り返しになるかもしれませんが、ここを外すわけにはいきません。ゆっくりと下って、西川の細い橋を渡って鉄橋のほうに向かおうかと思っていたところ、上流から近づいて来る列車の音。振り返ると、貨物列車がやってきました。いや、ラッキー。見映えのいい場所へ移動しようなんて余裕は全くなく、とりあえずその場でシャッターを押すのが精一杯でした(写真:下左)。
 それから信号場に向かってみました。ワンマン車乗り場という表示がある小さなプラットホームもあります。地図上では駅のマークがあるのですが、伯備線の時刻表には載っていないなあと思っていたら、伯備線の列車は通過のみで、芸備線(備中神代駅で分離)の列車が停車するそうです。布原信号場は、1987年の国鉄民営化の時に、信号場から駅に格上げとなったとのこと。周辺に民家は数軒、ここに至る道も狭く坂とカーブばかりで、駅利用は平均1日1人らしく、いわゆる秘境駅の範疇にも入るらしいです。
 そんなところに、どうして40数年前(1971年か1972年か不明)に私が行ったかというと、同世代の方ならご存じかもしれません。当時消えつつあった(四国では既に廃止されていた)蒸気機関車が走っていたのです。しかもD51三重連。その一番の撮影ポイントが布原信号場だったのです。新見は一大機関区だった記憶です。
 情報の乏しい当時、どのようにして運行時間などを知ったのか記憶も定かでありません。深夜発の列車に乗って、宇高連絡船で本州に渡り、岡山からの新見までの伯備線は蒸気機関車に牽かれる鈍行列車でした。布原信号場の場所も、いい加減にしか知らなかった中学生を、宇高連絡船内でたまたま隣席になった同じく布原信号場に写真を撮りに行くという宇和島からやってきたという二人組が新見駅から一緒にタクシーで連れて行ってくれた記憶と、到着した信号場周囲・対岸の山肌(一番の撮影ポイント)に、100人以上がカメラを構えていたことだけは今でも鮮明に残っている記憶です。その時も、確かゆっくり準備をする間もなく、三重連がやってきたなあ。
 
 40数年振りに訪れた信号場は、ほとんど記憶に残っていなくて、鉄橋もこんなに小さく短かかったっけという感じでした(写真:上右)。多数の人がカメラを構えて並んでいた対岸の山肌は、今はもうすっかり雑木が繁っています。間違っていなければ、当時三重連人気にあやかって、山肌の木々は切られて、有料の撮影場所になっていたような記憶です。ちなみに、三重連とは機関車が3台連結されて牽引している状態、2台の場合は重連といいます。
 しばらく感傷に浸った後、河村ダム方面に道が続いているようだったので向かってみました。が、もう一度対岸に渡る橋の向こう側は、ほとんど人・クルマが入っていないような荒れた路面状況だったので、来た道を引き返すことにしました。ちょうど橋のところまで戻ってきたところで、なんと今度は下り特急登場。これまた全く心構えができていなかったので、なんとか一枚撮れたのみ(写真:下中)。いや、やっぱりもう少し事前調査が必要だなあ、とつくづく反省です。
 下った道を再び登り返し川面峠を越えて、新見市街へ下りました。新見駅にも、ちょっと立ち寄ってみました。ちょうど上り特急と下り鈍行列車が発車するところでした。駅前は、当時も閑散とした雰囲気だった朧げな記憶ですが、今も衰退手前の地方小都市といった感じでした。構内を少し覗き込んで、デポ地に帰還したのは、16時頃でした。
   
 布原信号場以外に何があるというコースでもありませんが、今回は少し前まで雨が多かったこともあってか、いずれの道沿いも小さな沢でさえも水流が多く、また一面枝葉に覆われた道もありましたが、ただ走っていて楽しめる道が続いたサイクリングでした。

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