おにゅう峠と熊川宿
 おにゅう峠という存在を知ったのは、いつも素敵な写真と洗練された文章で綴られる神戸の知人・ペダルさんのブログで前年秋の走行記事を拝見したことがきっかけでした。聞いたこともない名の峠でしたが、調べてみると紅葉や雲海でも有名で、滋賀県と福井県境、鯖街道にもからむ道だそうです。きっと新緑の時期もいいだろうとの予想して、ゴールデンウィーク後半に走ってきました。いつものすーさんが同行。 (2019年5月10日記)

新緑の林道上根来線・おにゅう峠手前(福井県側)
コース   小浜−林道上根来線−おにゅう峠−林道小入谷線−県道781号線−国道367号線−国道303線−熊川宿−小浜
走行距離   85キロ   積算標高 約1400m
最高地点   おにゅう峠 標高830m
走行日   2019年 5月 3日  天候:晴れ  FELT F1
 午前4時半、徳島出発。渋滞にも遭わず舞鶴道を経て、デポ地の小浜市総合運動場には7時半前に到着しました。まずは国道162号線を小浜市街方面に向かって走り始めます。国道27号線を2kmほど進んだところで、県道35号線へ右折。しばらくは極々緩い登りの2車線の広い道でした。交通量はほとんどありません。
 横を流れる川は、遠敷川と書いておにゅうがわと国土地理院地図には記載されています。これから向かう・おにゅう峠はウェブで検索をすると滋賀県側の朽木小入谷(おにゅうだに)の小入と記載されていることが多いようです。遠敷川と同じ読みなのは何か意味があるのかなと思って調べてみましたが、はっきりわかりませんでした。峠の両側なので、偶然の一致ではないと思うのですが。小さな川ながらも、水量はそこそこ保たれています。写真:下左上は下根来(しもねごり)の集落。道沿いは伸び始めた芽が柔らかい新緑の雑木林が多く見られましたが、下中下の写真のように間伐の行き届いた杉林のところもありました。
 上根来集落の手前からは、急勾配の短いつづら折れで高度を稼ぎます。集落の手前には、新緑が鮮やかな大きな樹(写真:下右)。ふたり同時に歓声を挙げたほどの樹高と枝の広がり、そして透明度の高い若葉。この後、峠付近ではブナも見られましたが、これに勝る魅力的な大木をみることはありませんでした。
 峠手前最終となる上根来の集落には、集落の由来などが書かれた表示がありましたが、人が住んでいる気配はほとんど感じられません。トレランと思われる人が休憩中でした。集落を過ぎると、まもなく朽ちて林道上根来線以外は読めなくなった標示があって、さらにその少し先には新しく立派な鯖街道の表示がありました。トレランの方は、こちらを進まれたのかもしれません。その後、2ヶ所ほど林道と交差した地点にも小さな板の鯖街道の表示がありました。歩く人も多いのでしょうか。アスファルト舗装は上々の路面状況でしたが、遠敷川から離れて標高が上がっていくと、時には道の上に落石がみられました(写真:下右)。
左上:上根来の集落
上  :真新しい鯖街道の表示
左  ;上根来以外は読めない表示
 さらに進むと、ペダルさん情報通り、未舗装となりました(写真:下左)。しかし、道は踏み固められて平らで、多少は石があるものの、ゆっくりなので25Cのタイヤで全く問題ありません。ランドナーなら心地良い道であること間違いなしです。おまけに勾配もそれほどきつくなく、新緑を楽しむ余裕も多少はあるくらい。なによりも、クルマもほとんど通らず、喧しいバイクも通らないのがいい、恰好のサイクリング道です。
 
 峠まで未舗装が続くのかなと思っていたら、所々でコンクリート舗装の部分もありました(写真:下左)。コンクリート舗装は、おおよそ急勾配となる区間です。未舗装区間の方が、勾配と路面状況を考えると走りやすいくらいでした。写真:下右、峠までもう少し。後方の稜線の中央やや右手の窪んだところが峠です。その左手にガードレールが見えます。ガードレールと言えば、この道、景観を害するガードレールが比較的少なかったことも、良かったことのひとつです。 
 写真:下左、平坦そうに見えますが、結構急勾配なコンクリート舗装区間。標高600mを越えると、北方面への展望が広がってきました。空気が澄んでいれば、稜線の向こうに日本海が見えるのでしょうか。写真:下右は、峠少し手前から振り返って。このジグザグの谷筋を登ってきました。右手に先程走ってきた道が見えます。その少し左手・画面ほぼ中央付近に上根来の集落がちらっと見えています。一番奥辺りが小浜市街と思われます。ここも条件が良ければ日本海が見えた可能性大でしょう。
 結局、国道から右折して峠までに出会ったのは、前述のトレランの方と下って来た一台のクルマだけでした。峠には、スタートしてから2時間後に到着(写真:下中上)。小さな祠(写真:省略)と新しい石碑(写真:下左下)がありました。石碑におにゅう峠とひらがなで記されているのは、上述の遠敷川と朽木小入谷をひっかけているのでしょうか。ところで、この表示を見るまで、峠はてっきり福井県と京都府の境だとばかり思っていました。如何にいい加減にしか事前チェックができていないことがよくわかります。峠の標高は820mくらい。写真を撮っている人と、トレッキングらしいご夫婦が休憩されていた。
 峠から南側(滋賀県)の風景は、常緑樹と落葉樹が点々と混ざる植生も含めて、北側とは少し趣が異なっていました。霞んだ中に折り重なる山々(写真:下右)。この日、舞鶴道途中でも雲海が見られたので、早朝なら雲海から頭を出すような山々の光景が見られたのかもしれません。目を下方手前に転ずると、これから降りていく最初の集落・小入谷が見えます(写真:下中下、中央付近)。
 峠から南側は、全線アスファルト舗装でした。ウェブで検索した時に、とても印象的な道が見えるところの写真があったと朧げに記憶していたのは、写真:下左の場所だったのでしょうか。ラピュタの道をも思わせるとイメージしていましたが、ちょっと期待外れだったというか、思い込みが強すぎたのかもしれません。雲海が出ていたり、紅葉の時期だったりすると、また違った印象になるのかもしれません。下って来ると、こちらにも手入れの行き届いた杉林(写真:下右上)。小入谷の集落は、少し開けた平地にあって、明るく、数軒ある庭先や田畑には人の姿も何人か見かけました(写真:下右下)。
 
 小入谷集落の外れで、県道781号線へ右折。小高い丘のような峠を越えると、後は国道367号線合流地点まで緩やかに下る快走路でした。道幅は狭いですが、交通量は少なく走りやすい。所々にある集落近辺では田植えが始まっていましたが、植林された杉林の中を走ることが多かったです。山に入ると杉林だらけの徳島県ですが、この付近は杉畑とでも呼びたいような平地や川沿いにも植林された杉林があり、いずれも間伐が行き届いていました。
 国道367号線は少し交通量が多いだろうと予想していましたが、いきなり大渋滞でビックリ。10連休のせいかと思っていたら、少し先の檜峠で工事のため信号待ち一方通行となっていたためでした。渋滞するクルマの横をすり抜け、峠を下ったところで、トンネルを避けるべく旧道で水坂峠へ(写真:下右端)。こちらは、ほとんどクルマが通らないのではと予想して進んだのですが、意外にも2km弱の間に10台以上のクルマが通っていきました。
 国道303号線に入って、熊川宿の道の駅で小休憩。道の駅はクルマも多く混雑していましたが、熊川宿の旧道に入ってみると、意外にも観光客は少な目でした。歩くようなスピードで、南から北へ1q弱の街道を進んでみました。
上 街道の一番小浜寄りから
右 意外にも観光客は少な目
左 祭りの山車
 1977年秋に京都から国道367号線〜国道303号線を走って小浜に抜けているのですが、40年以上も前の記憶は熊川宿も含めてほとんど残っていません。熊川宿は、道の舗装状態や家屋や水路などの状況から、その後に修復されている可能性が高いように思われました。また、軒先に御神燈と記された提灯が吊るされている家が目につきましたが、街道の北端付近で山車や法被姿の人が見られたので祭りだったようです。調べてみると、白石神社例祭でしょうか。
 熊川宿の通りを出た後は、交通量の多い国道303号線を避けて、農道や旧道を進みました。ちょうどJR小浜線を走る列車がやってきたので一枚(写真:下右)。デポ地に戻ってきたのは14時前でしたが、この日から4日間の予定だったので、翌日からのことも考え、初日終了としました。
 おにゅう峠は、雲海と紅葉の頃がベストシーズンのようですが、新緑の道も非常に良かったです。ロードバイクで走るなら、未舗装路が登りとなる今回の小浜側からのアプローチがお奨めかと思われます。

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