落合峠 2014 秋  (附 竜ヶ峡 腕山放牧場)
 落合峠は、私がこれまでに自転車で走った徳島の道で、最も気に入っているコースです。アプローチの道程、周囲(特に標高1300〜1400m前後)の広葉樹林、峠からの眺望、どれをとっても一級と思っています。おまけに、いくつかのルートを組み合わせると他の峠や道も楽しめます。これまでに訪れたのは、ほとんどが新緑か紅葉の頃です。紅葉は、ほんの数日で条件が全く変わってしまうのですが、いつ訪れても「落合峠は裏切らない」というキャッチフレーズに相応しい感動を与えてくれる風景に出会います。
 初めて訪れた1994年は、深渕から少し進んだところで 「これ、本当に道なの」と驚くくらい、川底の岩がそのまま出ているようなところもあった未舗装の道(三加茂側)でした。なんとかそのまま進むと、烏帽子山登山口付近からは再び踏み込まれた比較的走りやすい地道になりました。当時は峠から南側(祖谷側)のほうが先に舗装されていました。峠北側(三加茂側)も2006年には完全舗装化されてしまったことが、ちょっと残念です。まあ、そのおかげでロードでも全く問題なく走れますが。最近はむしろ祖谷側の道路の痛み具合が激しいようです。落合峠は思い入れが強いだけに中途半端な記事は書きたくないことと、ここ数年毎年のように訪れ、その度に感激は増えることはあっても減ることなく、記録は増える一方で、なかなかまとめられないままになっていました。とりあえず、この秋の情報から。なお、下記のコース図は、ほぼ同じ走行となった2012年初夏のものです。今回は、下記のコースに、水の口峠やや南側から腕山牧場までの往復8q・標高差で200mほどが加わっています。   (2014年11月10日 記)

木々が染まりつつある落合峠への道にて
 2014年の10月前半は、週末毎に台風襲来。他にも予定があって、唯一なんとかなりそうだった25日。行くならこの日しかないと、前夜の飲み会も日が変わらないうちに撤収。帰り道、満天の星で翌日も期待できそうと思ったのに、当日朝起きてみると暗く重い雲。おまけに、家を出たところで小雨がぱらつく様相に気勢をそがれ、一度引き返したくらいでした。
コース  旧三加茂町役場−桟敷峠−落合峠−落合−祖谷・出合−竜ヶ峡−腕山放牧場−水の口峠−井川−旧三加茂町役場
走行距離   約120km   積算標高 2800m
最高地点   落合峠(標高約1500m) 桟敷峠(標高約1000m) 腕山(標高約1200m) 水の口峠(標高1000m)
走行日   2014年10月25日   天候:曇り   FELT F1
 それでも、やっぱりこの日しかないと出動です。下道で、デポ予定の旧三加茂町役場に午前8時前に到着しましたが、ここでもポツリポツリと小雨。少しばかり逡巡したものの、小雨程度なら濡れた紅葉もよかろうと、午前8時過ぎにスタート。まずは桟敷峠です。桟敷峠までは、あまり展望もなく、勾配もきつい(特に役場から8q付近前後2q)。見るべきところと言えば、登り始め道に沿う吉野川支流・加茂谷川の流れと途中までに点在する山村風景、それに峠少し手前の落葉松、さらに峠すぐ手前から見る三加茂の町から讃岐山脈遠望くらいでしょうか。いつも桟敷峠までの12q少々を約90分の予定としているのですが、なぜかこの日はゆっくり登ったのに80分弱で到着。峠への途中からは路面も乾いてきました。

桟敷峠から南へ下る道沿いの小さな流れ

松尾川の流れ
 峠で小休憩・補給。途中で脱いだ服を着込んで深渕までの標高差100mほどを下ります。この下り道に沿う小さな小川の流れも、お気に入りのひとつです。しかし、毎度のことならが、その良さを伝えられる写真が撮れません。

まだまだ落合峠への序章

烏帽子山登山口を少し超えたところで
 深渕からは、最初は右手に、ついで左手に松尾川の流れを見ながら登ります。初めて来た頃は、あまり気付かなかったのですが、来る度にこの流れの良さを再認識しています。一度は川岸まで降りて、少し歩いて眺めてみたいものです。車道からだと木々が邪魔をして、流れの全体像をうまく写すことができません。この地点では、木々の色づき具合は、まだまだでしたが、既に立ち止まること多くになってしまいました。見どころは、まだまだこれから、ということは十分わかっているのですがね。

あまり多くない紅葉(多くは黄葉)もところどころに

標高1100m付近
 烏帽子山登山口の270度左カーブを曲がると、雑木林の中を走る道の光景がますます好みになってきます。先日(2014.11.02)九州の山道を走りながら、落合峠はどうして私を惹きつけて止まないのかと考えていたところ、余分なものが一切ないということに気づきました。すなわち、ガードレール、電柱・電線などの人工物です。日本中、どこへ行っても電線が目につき、カーブにはガードレールが必ずありますから。何も余分なものがないはずの道で、今回目についたのは道脇の木々に結ばれたピンクの紐。伐採か何かのサインなのでしょうか。どぎついピンクが光景を台無しにしていたので、写真にはできるだけ写らないように。

標高1300m付近

黄金色に輝く
 記憶を辿ると1、2年前くらいからでしょうか、この付近は全般に間伐が進んでいるようで、広葉樹林以外の杉林にも少し明るさを感じました。烏帽子山登山口から少し進んだところにある滝の手前・対岸に大きな広葉樹が数本あるのですが、ここがちょうど染まりはじめ状況でした。これは、1300m付近が期待できそうだと思って進んでみると・・・。

続いた台風のためか、落ち葉は少な目

赤、橙、黄、茶
 冒頭にも書いた、この道で最も気に入っているポイントである標高1300付近の広葉樹林。まさに見頃でした。これまでの来訪時には、いつもやや遅い時が多く、この木々は紅葉せずに落葉するのかな、なんてさえ思ったくらいでしたが。いや、最高、最高。小雨にも惑わされずにやってきて良かった。もう、立ち止まってばかり。挙句の果てには、自転車を押して歩き始める始末。

黄葉、輝き

標高1400m付近
 青空も見え始め、時折日差しも差してきました。何度も訪れていると、いつかは期待を裏切られるのではと思うことが多くなった最近ですが、今回も裏切られないどころか大満足。桟敷峠までの走行時間感覚だと、11時には落合峠に到着できそうだと思っていたのに大幅に遅れ、峠に到着したのは、11時半も回っていました。

落合峠手前から烏帽子山方面

落合峠手前から北へ、最奥が讃岐山脈、その手前が腕山
 峠付近では、当然大休止と共に、あっちへ行ったり、こっちへ来たり。天候が悪そうだったので、さすがにハイキングは考えていませんでしたが。烏帽子山方面の紅葉は、最盛期を過ぎていて、少しモノトーン気味。北側・腕山方面の背後には、讃岐山脈。肉眼ではさらにその奥にうっすらと讃岐平野の山の頂上を見ることができました。地図から考えると大麻山かと思われました。矢筈山方面に少し登ったら、格段展望が良くなるのですが・・・。

落合峠から南へ、天狗塚方面

矢筈山の中腹斜面、半ば落葉
 三嶺・天狗塚方面も抜群というほどではありませんでしたが、まずまずの眺望でした。矢筈山の山腹は、最盛期は過ぎているものの、まだまだ見頃の紅葉が残っている状況でした。来た道を引き返しても十分楽しめると思いましたが、天候も回復しつつあったので祖谷方面に下ることにしました。

矢筈山、西斜面

落合集落の少し手前
 下り始めても、あっちへ向いたり、こっちを見たり、振り返ったりで、全くスピードがあがりません。下るとともに、中腹では紅葉がちょうど見ごろ。落合峠や矢筈山を見上げた光景や、中腹の何ヶ所かで立ち止まっては写真を撮ったのですが、これまたあの素晴らしさをお伝えできる写真なし。だらだらと写真を並べましたが、一枚でもインパクトのある写真あれば、それで充分なのですが。

落合の集落 その1

落合の集落 その2
 落合の集落まで降りてきました。道沿いには、この1年ほどで茅葺き屋根の民家が何軒か再生されたようです。対岸と西方向の急峻な斜面に点在する民家、これも先日走った九州の山地や、なだらかな中国地方の山地では見ることのできない居住形態かと思います。平家の落人伝説もある祖谷ですが、山腹のほうが谷川沿いより日当たりが良く気温も高いのだろうと思います。しかし、上り下りや斜面の畑作も大変でしょうに。

祖谷川の流れ その1

祖谷川の流れ その2
 下りきって国道439号線。時間はもう12時半を回っていた記憶です。この道沿いでは、いろいろと地元の観光情報の新しい表示が増えていました。祖谷川沿いを走る時は、いつも川面を覗き込むのですが、この日は水量も多く、また透明度も高く、これまで訪れたうちで一番条件がいいのではと思われました。

祖谷川渓谷

川面まで標高差100m以上か
 いつものように観光客の多いかずら橋はパスして、そのまま県道32号線を進みました。同じように小便小僧もパス。この付近が谷底から道までの標高差が最もあるのではないかと思われます。また、川の西側・国見山東斜面は、非常に大きく懐が広く見応えがあるのですが、写真で全容と撮ろうと広角にすると平べったくなって高低差が全く感じられなくなり、ズームアップすると広がりが感じられず、ここもまたどう写したらその広さと高低差のダイナミックな姿を捉えられるのかわからないままです。上の写真2枚、いずれも現実の高低差が全く伝えられていません。


竜ヶ岳 その1


竜ヶ岳 その2
 出合に到着したのは、午後2時前くらいだったでしょうか。ここから水の口峠まで約20q、標高差800mほど。途中に微妙なアップダウンもあるので、意外と堪える道です。峠まで2時間の予定だとすると、暗くなる前に帰着できるか。ちょっと考えましたが、やはりここも前へと進みました。松尾川の流れも澄んでいますが、祖谷川と比べると川底の石がやや白っぽいのと山影で暗いところが多く、少し地味な感じです。出合までほとんど乾いていた路面も、再び濡れたところが多くなってきました。竜ヶ峡の紅葉は、やはりまだ少し早いようでした。ここも対岸頭上を見上げるような断崖の険しさを、うまく撮り切ることができません。

松尾ダムやや上方から、烏帽子山方面

 腕山放牧場から南東、中津山
 いつも気づくのがこの辺りになるのですが、松尾ダムへの分岐地点では、標高で900mもあるのですね。ダム湖の一部である深渕の標高を考えると、当然なのですが。烏帽子山は、落合峠側からみても、180度反対の松尾ダム側から見ても、烏帽子の名がピッタリのシルエットです。松尾ダムの分岐(ここから桟敷峠下に続く道は舗装されたそうです)から水の口峠までは勾配が少し緩やかになる記憶でしたが、この日は先に続いた台風の影響か、腕山放牧場分岐部までの道が随分と荒れていました。落ち葉、小枝、小石が散乱。こんなに荒れていた記憶はありません。


腕山放牧場、東方面


水の口峠への道
 腕山放牧場分岐部に到着したのは、もう午後4時前だったでしょうか。以前から一度足を延ばしてみたかった腕山放牧場。今回も当初はここへ登って、時間があれば周辺散策なんて考えていたのですが、時間が押し迫ってきました。分岐から放牧場まで3.7qの表示。今調べると標高差で200mほどでした。時間的に片道25分くらい?ギリギリと思いましたが、またまた強引に先へ。意外と登っていました。所々に泥状の部分もありましたが、牧場へのクルマが走るためか、松尾ダム分岐からほどは荒れていませんでした。
 ほぼ予想通り20分ほどで到着した放牧場は、青空が広がってきたこともあり、遅い時間でしたが、まだまだ明るく、広々した光景はとてもさわやかでした。南西方向には中津山が聳えており、西方向には四国山地・愛媛方面の山々が連なっているのを見ることができました。少し歩いてみたかったのですが、時間切れ。分岐部まで下った後、右手に流れる緩やかな小さな流れ(川の源流を思わせる、これまたお気に入りポイントのひとつ)に沿って水の口峠までの道を楽しみながら押し迫った時間も忘れてのんびり走りました。と、川がほぼ消失するあたりで、まだ幼獣と思われるニホンカモシカに遭遇。さらに、水の口峠では、さほど大きくないイノシシが行く手に立ち止まっているのにも出合いました。動き始めて去るまで、こちらもしばし待って、その後は一気に井川まで下って日が暮れる前には帰着することができました。

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