林道東又佐喜浜線
 
 いつも私の知らない魅力的な四国の道情報を提供してくれるくにさださん。2019年の正月には室戸岬近くの佐喜浜から羽根に抜ける林道東又佐喜浜線を走っておられ、そのツーリング記録をアップしてくれました。近辺の道は年に1度は走るのですが、そんな道があることは全く知りませんでした。国土地理院の地形図や Google map で確認すると、徒歩でしか歩けそうにない山道しか記載されていません。写真を見た限りでは、台風など自然災害のために崩落・通行止めになったら、なかなか復旧しそうにないような道に思われたので、早速訪れてみることにしました。  (2019年03月27日 記)
 
                                   林道東又佐喜浜線・佐喜浜側峠少し手前にて
コース   野根−佐喜浜−林道東又佐喜浜線−羽根−西の川−林道−東の川−大平舟場林道−佐喜浜−野根
走行距離   95キロ   積算標高 約1400m
最高地点   林道東又佐喜浜線・峠  標高720m
走行日   2019年 3月17日  天候:晴れ   シクロクロス
 
 午前5時起床で出発、デポ地の高知県東洋町の外れまで100q弱。7時過ぎには到着して、7時20分過ぎに室戸岬方面に向かってスタートします。写真:下左は、スタート地点から南へ。一番左端に薄っすら見えるのが室戸岬。林道入口となる佐喜浜は、その手前にぼんやりと見えています。快晴の下、まずは国道55号線を南下。佐喜浜には7時50分に到着。写真:下右は、国道55号線・新佐喜浜川橋の上から。これから向かう道は、奥に見える山の裏手を右手から回っていくようです。一番左手の山肌には、復路予定の林道大平舟場線をちらりと見ることができます。
 佐喜浜川の左岸に沿って県道368号線を遡り始めます。少し走ると右岸に移動。帰路となる林道大平舟場線は2回ほど下ったことがありますが、佐喜浜の町近くになるまで坂道だった記憶。それに対して、こちらは川に沿って平坦なところが結構続きます。川は想像していたより幅も広く水量も豊富できれい、河口に近いとは思えないような雰囲気です。川辺も自然に近い状態で、新緑の頃が良さそうです(写真:下中下)。何度も走っている国道から一歩入っただけで、こんな光景が広がっていたとは思ってもみませんでした。民家も無くなると一度未舗装となりますが、路面状況はまずまず。しかし、再び左岸に渡るとコンクリート舗装となり、路面も少し荒れてきました。川はまだまだ幅広く、ゆったりと流れています(写真:下右)。
 今回、このルートを走るにあたって、くにさださんの走行レポをしっかり読んで、要所と大まかな距離を暗記しました。その情報通り、佐喜浜からちょうど10qで、林道周辺の地図を描いた表示板に到着(写真:下左端)。林道東又佐喜浜線は、写真の右奥へ進みます。左手は、県道368号線。地形図では、土佐湾側の吉良川・西の川に沿って走る同じ県道368号線と点線では繋がっているように見えますが、20数年前に室戸で仕事をしていた時の吉良川在住の知人に調べてもらったところ、未通とのことでした。県道368号線の北側を回る林道東又佐喜浜線も、この真新しく見える表示板の記載(写真:下左から2枚目、赤の現在地から西へ向かい@の付近から南東方向への白い線)でも、これから向かう峠付近では点線で記されています。林道開通前に建てられたのでしょうか。しばらく走って、段林道の分岐(写真:下右端)を過ぎると、勾配が増してきました。表示板の解説によると、段集落には、昭和37年当時219人の住人がいて分校まであったそうです。住人の大部分は林業従事者だったとのこと。
 道沿い、写真:下左のような照葉樹林のところは、あまりありません。林道全線を通して道の両側を占めるのは、写真:下右のような杉林がほとんどです。まだまだ伐採には十分な樹齢には育っていない木が多く、かと言って全く手入れされていないという状況でもなく、今でも多少は人手が入っているように見えました。最初の表示板に記載されているのですが、2、3ヶ所ほど野根山街道に連絡している徒歩道の入り口が示されていました(写真:下右)。
 相変わらず続く杉林の道を進んでいると、とあるコーナーで前方に何かモソモソと動いています。イノシシかなと思ったら、なんとニホンカモシカです(写真:下右上)。まだ幼獣のようで、怪我をしていたのでもないのでしょうが、私を見ても全く立ち去る様子がありません。カメラを構えて、ゆっくり写すことができました。自転車に乗った人間を見るのは、初めてだったのかもしれません。野根山街道への徒歩道分岐以外にも作業用と思われる林道分岐があります(写真:下中、下右下)。
 左  杉林の中を進む道
 上  大道南林道分岐部
 上右 ニホンカモシカ
 右  かなぎのつえ 入り口
 先へ進むと、だんだんと道が荒れてきました。なんとか乗車してきましたが、写真:下左のところは、パンクの恐れも考えて、押しとしました。乗車できても歩くようなスピードで進んでいると、斜面上方からガサゴソ。見上げたら、またニホンカモシカです。先程から時間にして10分くらいだったので、同じ個体でしょうか。物珍しくて付いてきたのか、相変わらず逃げることなく、じっとこちらを見ています。
 その後、勾配はさらに増してきました。これも、くにさださん情報通りです。きついところでは、無理をせずに諦めて少し押し。その先に長い直線の緩やかな部分が一度だけありました。確か、峠まで最後の2qは10%以上と記憶していたのですが。しかし、そこを過ぎると間違いなく、10〜14%の表示が連続。写真:下左は、峠までもう少しの地点。緩やかに見えますが、左の表示14%に間違いなさそうな激坂でした。写真ではわかりにくいですが、路面もかなり荒れています。それにしても、植林された杉を切って、無理やり通したと言わんばかりの道が続きます。一方、登ってきた道を見下ろせるところは、ほとんどありません。写真:下右は、峠の少し手前にあった、唯一と言っていい場所。そこから確認できるのも中腹程度までで、登り始めの川付近は見ることができません。野根山街道は、奥に見える山のまだ左手のようです。
 佐喜浜から2時間あまり、漸く峠に辿り着きました(写真:下左)。距離は18qほどです。ちょうど10時でした。峠手前も、やたらきついなあと振り返ったら、ここも14%の表示です(写真:下右)。峠では、西から(海から)強烈な風が吹いていました。
 峠から西側は、比較的展望が広がっていて、これから下っていく道が、ずっと先まで見えます(写真:下左)。道や法面はまだ新しいように思われ、東側より広く、路面状況も少しましな感じでした。国土地理院地形図で点線で繋がっているのは徒歩道、林道は東西からの実線で中断されている道が繋がったものです。上の表示板の地図で点線で示されている部分がこの付近。峠からは土佐湾が見えるかとも思ったのですが、霞んでいることもあってか確認できませんでした。言い忘れていましたが、佐喜浜から山に入り始めると、時折霧雨のような雨粒が当たりました。まさか、雨? 空を見ると、いつの間にか雲の姿。雨の予報はなかったはずなので、合羽は持っていません。ちょっとだけ、懸念しながら下りへ。写真:下右は、最初の(地形図だと羽根側実線最後)コーナーを回ったところから峠方向。峠から2qほどの地点です。
 次の右コーナーを回ると、羽根川に沿った造りの古い道になりました。未舗装ですが、32CのCXでも問題ない程度の路面。横を流れる羽根川は、水量も多く透明度も良好です。勾配があるためか深い淵こそあまり見かけませんが、山深い安居渓谷のブルーには敵わないものの、川好きの私にとって十分な眺めが続きます。何処かで川と一緒の写真を思いながら下りますが、落葉した灌木が邪魔をして適当な場所がなく、とりあえず1枚(写真:下左上)。路面状況は、峠より西側のほうが東側より全体として良いように思われましたが、やはり写真:下中上のようなところもあります。慎重に走るよりも、ここも降りて押しです。この前後だったと思いますが、またまたニホンカモシカと出会いました。この時も、それほど大きな個体ではなかったのですが、先程と異なり全速力で逃げていかれ、写真を撮る余裕はありませんでした。
 写真:下左下は、羽根林道との分岐部。下ってきたのは右手から。その少し手前から舗装路になりました。左手奥へ進むと羽根林道、以前に走った野根山街道方面に繋がっているそうです。いつか走れる日が来るでしょうか。手前の橋を渡って左岸へ。写真:下右は、その橋の上から上流へ向けて。その後も羽根川に沿った舗装路を緩やかに下っていきますが、舗装路となってちょっと気が緩んでいたのか、少し荒れていたところで前輪パンク。ブロックが無くなって、ほとんどスリック状態だったフロントタイヤ、ここまでよく持ったなあ。確認すると、尖った石片が突き刺さっていました。
 計画段階で、林道峠から羽根の国道55号線まで約20qと確認して、意外と長いなあと驚いたものですが、蛇行する川に沿って、次から次へと同じような光景が連続します。民家の姿が見えてきたのは、随分と下ってからでした。羽根の町近くでは、もう水田に水が貼られて、カエルの鳴き声が聞こえていました(写真:下左)。国道55号線に出ると、幸いなことに結構な追い風。数キロ先の吉良川まで快調に走って、吉良川大橋手前で西の川に沿って県道368号線へ左折です(写真:下中、向こうに見えるのは、室戸岬ではなく、その手前の行当岬です)。
 県道368号線に入ると、しばらくは川に沿った水田(ここではまだ水が入っていなかった)のある平坦地が続きましたが、中の川という集落を過ぎると両側から山が迫ってきて平地部分はなくなりました(写真:左の辺り)。この西の川も鮎喰川くらいの透明度がありました。
 中の川集落から西の川から東の川に抜ける道への分岐がある釣の口集落まではすぐだと思っていたですが、疲れてきたためか思ったより長く感じました。地形図通り集落のほぼ真ん中に東の川方面に抜ける分岐・林道日南釣の口線を確認し、登り始めます。うろ覚えのルートラボで短いもののかなり急勾配との記憶だったので心して臨みましたが、それほどでもありません。やはり舗装路は楽です。杉林の坂道を淡々と登って展望もない峠を越えると、東の川方面は少し視界が広がっていました。
釣の口集落 林道日南釣の地線・西の川側 林道日南釣の地線・峠 林道日南釣の地線・東の川側
 下って日南集落からは、林道大平舟場線。もう既知の道、勾配はきつくないはずと安心して進み始めました。
東の川 林道大平舟場線・峠
 ところが、手前に木材集積所があった写真:左(川と道が一緒に撮れた唯一の場所)のところを過ぎると、なんだか路面状況が怪しくなってきました。最近クルマが通った跡がないように思われるのです。通行止めの表示は見かけなかった筈ですが、まさか何処かで崩落している?
 この道で佐喜浜に抜けられないと、大幅な遠回りが必要です。進むにつれて、不安が増してきました。野根山の帰路に通った後にもう1回走っていると思っていたのですが、どうも思い違いのようです。とすると、なんと14年振り。道状況が変わっていても何の不思議もありません。
 なんとか峠について下り始めましたが、不安はますます増大。山側からの小さな崩落があったり、路面には落石が至るところに散乱、道中央部ばかりかほぼ全面苔生しているところさえ見られます。枯れ枝も折れることなくそのまま。どう見ても、しばらくクルマが通った気配がありません。とりあえず唯一佐喜浜方面の展望があるところで写真:右を撮ったものの、後は自転車を担いでも通れない崩落がないことだけを祈りながら(引き返す元気もない)、荒れた路面を気にしつつ、写真を撮る気持ちの余裕もなく、ゆっくりと下りました。
 結局、大きな崩落はなく、佐喜浜まで下れたのですが(佐喜浜側にも通行止めの表示はなし)、この道は今後使用されないまま自然に廃道となってしまう運命なのでしょうか。ボトルの水も僅かとなっていたので無事下って来れて良かったのですが、釈然としない気持ちばかりが残りました。後は、国道55号線を、これまた幸い強めの追い風に背を押してもらってデポ地へ。

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