鞆の浦周辺を巡る旅
 鞆の浦は西隣の尾道同様、古い町並みが残っていることや、いくつかの映画の舞台となったことなどを耳にしていました。歴史にも映画にも疎い私ですが、以前から一度は訪れてみたいと思っていたところです。COVID蔓延で四国をでることが憚れていましたが、感染状況は下火になってきて、過去2年間と異なり行動制限も緩和された6月。毎年1、2回は日帰り泊りがけツーリングを供にしていた20年来の知人・すーさんと2年半振りに何処かへ日帰りツーリングをという話が持ち上がりました。すーさんの山から海が見えるところという要望に私の希望も加えて、行先は鞆の浦から周辺の展望がありそうなコースを考えてみました。 (2022年 6月11日 記)

鞆の浦の町中を走る (2022.06.03)
 そんなコースは下図。早朝の鞆の浦をゆっくりと散策した後は、田島から横島へと橋で繋がった島に渡ります。いずれの島にも自転車で登ることができる展望地があるようでした。また、最後に走る県道251号線にも展望地があるようです。距離は80qほどと短めです。
コース  芦田川−鞆の浦−田島−横島−田島−後山公園展望台−芦田川
走行距離   80q   積算標高 1500m
最高地点   県道251号線ピーク  標高400m
走行日   2022年 6月 3日  天候:晴れ  FELT F1
 金曜日だったので、高速道路深夜割引利用のため午前3時半に徳島を出発。現地まで180q、6時過ぎにデポ地予定の芦田川河口近くにある運動公園に到着しました。ところが、入り口にはロープが張ってありました。幸い川沿いに数台駐車可能なスペースがあったので、そこに駐車。快晴の下、6時半過ぎにスタートです。小さな丘を越えると左手には海。逆光で少し霞んでいましたが、島が点在する長閑な海が広がっています(写真なし)。まだクルマも少ない県道23号線を走って、8qほどで鞆の浦の町へ。
芦田川河口をスタート 県道23号線、海が広がる ブルーライン? 鞆の浦に到着
  まずは港まで出てみました。対岸には、鞆の浦と言えば必ず出てくる常夜燈。常夜燈の右上が、この後訪れた医王寺です。港には沖にある走島に向かうフェリーが出航準備中で、仕事に向かうらしい人・クルマが乗り込んでいました。
 目覚め始めたばかりの町中を散策します。唯一の情報源はウェブから印刷してきた案内図。とりあえず、北へ遡って、寺社が続く山手で戻って来ることにします。港から一歩町中に入ると、格子を持つ建物。路面は比較的新しく見えるタイル張りです。電線が地中化されていれば、もっとすっきりした景観になると思うのですが、現地の事情があるのでしょう。
 そんなタイル張りの道が観光コースのメイン路のように思われました。もちろん、それに交差するように人が通れる程度の細い路地が多数。そろそろ通勤の時間帯が始まる頃でしたが、クルマが一台が漸く通れるかといった細い道も、地元の方は走り方を熟知しているようで停滞することなく走っていきます。
 石畳の北端までやってきたので、山手側の寺社が並ぶ道で引き返します。二人とも神社仏閣には疎いので、とりあえず、道順に訪問程度。数少ない情報で得ていたささやき橋は、気付かずに通り過ぎてしまうところでした。
沼名前神社 慈徳院 ささやき橋、妙蓮寺 安国寺
 一番南手にある医王寺からは町全体が眺められるとあったので、急坂を登って(途中からは押し)行ってみました。お寺の塀の外側に桜の木が植えられたスペースがあって、そこからの眺めも良かったのですが、医王寺に入って鐘楼まで行ってみると、港から町全体が見渡すことができ、ベンチまで設けられていました。朝の穏やかで静かな町と海を眺めながら、しばし休憩。その後は山門(裏手から登ってきたようでした)を通って下ります。途中、平賀源内生祠があったので立ち寄ってみましたが、周囲があまりに雑然としていたので写真は割愛。

医王寺・鐘楼にて、沖に走島

医王寺本堂
 下って再び港の常夜燈まで。お店らしい家屋も、まだまだ開店前。週末の昼なら今でも観光客が多いのかもしれませんが、人通りも少なく、ゆっくりすることができました。本当は、もっと事前情報も集めて、まだまだいっぱいある見所を回れば、もっと印象が異なってくるのでしょうが。
 鞆の浦に興味がある方からすれば、勿体ないと思われるかもしれませんが、続いて田島へ向かいます。途中、県道47号線を避けて海沿いの道へ進んでみると、平という町中の道が狭い区間は信号があって時間交互通行でした。平の町を過ぎると再び県道47号線に戻って進むと、沼隈で左折して内海大橋で田島へ。二つのアーチ橋がくの字にカーブしていることが特徴的な内海大橋。その理由は、浅い岩礁があったため下方を通過する船舶に支障をきたさないように設計されたそうです。走りながらだと、その特徴を上手く捉える写真が撮れませんでした。橋を渡ってすぐ左折して田島の海岸線沿いへ。

田島 県道306号線
 時計周りに2qほど進んだところで、この日二つ目の予定ポイント・内浦憩いの森公園へと右折。のっけから10%を越える坂が続きます。標高は200m程度ですが、ずっと12%前後の勾配が続きました(写真:下左)。ところが、到着した憩いの森、公園とは名ばかりで、訪れる人はほとんどいないようです。雑草が生い茂り、木々も繁って展望は全くありません。確か内海大橋の全貌が見えると、何かに写真もあった記憶だったのですが。かろうじて、終点手前の木々の間から内海大橋を見ることができました(写真:下右)。
 しかし、下ってからは、一車線の旧道然とした道で波打ち際を走り、クルマもほとんど通りません(写真:下左)。開放感に溢れていて、とても快適。こりゃあ、いい。そんな道で一周するのかと思っていたのですが(事前調査不足)、大畑という集落を越えると道は登りに。登りはすぐに終わってアップダウンかなと思っていたら、まだまだ登ります。結局、一番高いところで標高100mを越えていました。振り返ると海(写真:下右)。あれって高屋神社のある稲積山?と思われるシルエットが見えたのもこの付近だった記憶です。その時は、いやいや違うだろうと思っていたのですが・・・。
 そんな道を下って来ると、前方に田島と横島を繋ぐ睦橋が見えてきました。写真(下左)が小さくて橋がわかりませんが、手前が田島、左手が横島。 正面の奥は地図から百島だと思います。睦橋を渡って(写真:下中)、横島へ。この付近から横島の山肌上方にガードレールが見えていました。横島では切石山展望台へ登る予定でしたが、登る道は南岸から分岐しています。ガードレールが見えているのは北斜面だったので、その時は見えている道を走るのか疑問でした。
 田島へ渡った時も交通量が減ったと思いましたが、横島ではさらに減少。こちらも時計回りで進みますが、県道387号線はずっと波打ち際を走り、所々では防波堤もガードレールもなし。電柱の姿もなし。海水の透明度は徳島県南はもちろん、庵治半島周辺より劣っていますが、鞆の浦付近よりはずっと良好です。風も無く、暑くも寒くもない、まさにサイクリング日和。海上には適度に島が点在して、見飽きることがありません。生まれ育ちが西讃の海近くだったので、穏やかで島が点在する海は当たり前の光景でしたが、改めてその良さを認識しました。
横島、県道387号線
東海岸沿いを走る
 快適な道を走って、横山海岸という海水浴場にもなるところから、三つ目のポイント・切石山展望台を目指します。こちらも標高は200m少々。何処かで見晴らしがいいと目にしていたのですが、先の憩いの森のこともあり、果たして期待に沿う光景が見られるのか、ちょっと不安を持ちながら登ります。幸い、勾配は憩いの森に比べると少し緩めです。登っていくと、西側にしまなみの島々も見えてきました。写真:下左、すーさんのヘルメットの上から右手が因島、左の島が弓削島。道は王城という峰を回って北側に出ます。先程横島へ渡る付近から見えたところです。そこを過ぎると、ちょっとだけ下りがあって登り返し。最後は階段で標高差20mほどを歩きます(写真:下右)。
 到着した切石山展望台からの眺めは、先の憩いの森の残念とは打って変わって、素晴らしい景観でした。下の写真は真南からやや西寄り。右手奥が因島。因島の平坦部分(生名島も重なっているらしい)の奥には岩城島の積善山が特徴的な頭を出しています。中央やや左が弓削島。直下に横山海岸が見えています。標高220m程ですが、なかなか高度感があります。海岸線の左手の広場になったところが登り口。右手の山の中に登ってきた道の一部が見えています。手前の岩は、下から柱状の岩となって見えていました。下からみるとさほど高いようには思われませんでしたが、上からみると高度感が全く異なります。この手前には危険防止の柵が設けられています。
 南東には魚島諸島が点在して、単調な海にアクセントを加えています(写真:下左)。横にあった案内図によると、手前が百貫島、右後ろが豊島、左後方が高井神島だそうです。魚島は、もう少し左手で写っていません。写真:下右は、上の岩城島の積善山をズームアップ。造船所のクレーンも見えています。そういえば、岩城島、生名島と橋で繋がったぞうですね。
 写真:下左は同じ場所から西南方向。因島大橋が見えています。以前に登った向島・高見山の展望台も右端付近に確認できます。写真:下右は北方向。下に見えるのが、田島と横島を結ぶ睦橋。奥は本土、造船所が多いです。いや期待以上の眺めです。
 展望台からの眺めを十二分に堪能して、来た道を下ります。横山海岸まで出て、その後も海岸沿いの道かと思っていたら、一度海岸から離れて小高い丘を越えると、横島の西海岸へと出てきました。そのまま北上して再び睦橋を越えて、田島へ。田島に戻ると交通量が少し増えてきました。道も二車線となりました。内海大橋は、こちら側だけに歩行者・自転車道がついています。何枚か写真を撮りましたが、これが一番カーブしている全体像がわかるかと思います。
 左  横島西海岸
 左上 再び睦橋
 上  田島西海岸
 右  内海大橋
 再び沼隈に戻り、交通量の多い県道を避けて裏道へ進んだら少し迷いましたが、予定の臼木山へ向かう道へと進みました。この道はあまりクルマが通らないようで、県道251号線に出るまで一台のクルマにも出会いませんでした。だだ、ある程度登るまで憩いの森と同等以上くらいの12%を越える坂が続き、この日一番の難所でした。周囲は雑木林で、いい雰囲気なのですが(写真:下左)。下右の写真の付近までやって来ると、漸く勾配が緩んできました。木々の間に内海大橋が見えています。
 臼木山への分岐部には案内図もあったので向かってみたのですが、これが憩いの森以上に荒れていて、内海大橋が見えると思っていたのに木々で何も見えません。この日二つ目のハズレでした。下左の写真は、結局途中唯一見えた右上の場所からのズームアップ。下右はほぼ同じ場所から見た田島・箱崎地区。ここは憩いの森の手前くらいから木々を越えて見える場所があったのですが、こちらからのほうが全容が良くわかりました。左奥は切石山展望台からも見えた高井神島。
 一車線の道を進んで少し下ると、二車線の広い道に出ました。県道251号線です。進行方向とは逆に右折して、この日最後のポイント・後山公園展望台へ向かいます。辿り着いた後山公園、丘の上に三階建てくらいの木組みの展望台が設けられています。これは期待できるかなと登ってみると、大当たり。西は向島から南に瀬戸内海、北北西に福山市街までの展望が広がっていました。主座を占めるのは、もちろん瀬戸内海の眺めです。切石山展望台を勝る光景が広がっています。時間が経ったためでしょうか、切石山より北側なのに四国山地まで確認できます。写真:下右はほぼ真南に向いて。左手の島は円上島。中央やや右手が股島。四国山地(法皇山脈が正しい?)がちゃんと写っています。地図で確認すると四国中央市方面です。林道高野線を走った時の3段目左の写真が、四国側(少し西寄り)から福山付近を見たところです。
 そして、なんと高屋神社のある稲積山まで見えていました。下の写真、手前が走島、その右奥に重なるのが宇治島。走島の最高地点の左奥上に見えるのが紫雲出山です。紫雲出山は見る方向によって、随分と様相が異なります。その右手に連なるのが、稲積山から志保山に続く山並です。紫雲出山に反して、この山並は反対側の東南方向から見ても、南側から見ても良く似た形をしています。田島の南東海岸を走っていた時に、そうかなと思ったシルエットは間違いなかったようです。讃岐山脈もボンヤリとですが見えています。いつもは反対側から見ている光景です。鞆の浦の町並みも切石山展望台からの眺めも良かったですが、私的には後山展望台からの眺めがこの日の一押しです。
 なんだかうれしくて沢山写真を撮ったのですが、帰宅後確認すると、毎度のことですが碌なモノがありません、残念。瀬戸内海の大展望を満喫した後、県道251号線を北上します。この県道251号線、もともとは有料道路として建設されたそうです。何ヶ所か往年を偲ぶ今は使われていない建造物を見ることができました。道は幅広い二車線です。クルマは時折通る程度。大部分が大きな木々に覆われており、見晴らしはありません(写真:下左)。唯一、熊ヶ峰の西側、標高が一番高い付近で、西側・尾道方面からしまなみ海道にかけての展望が広がっていました(写真:下中)。下右は下る途中から見えた福山市の中心部。ビルの多さから徳島市より人口が多い街であることが納得。
  
 下り切って、芦田川沿いをデポ地まで。最後は向かい風となった海風でした。憩いの森と臼木山は期待外れでしたが、鞆の浦の町並み、切石山展望台から、そして後山公園展望台からの眺望は、期待を上回って余りあるものでした。

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