富  郷   心のふるさと


今はもう見ることができない、富郷付近・銅山川の流れ
 「富郷」・とみさと と読みます。正式には愛媛県伊予三島市(現・四国中央市)富郷町、吉野川の支流・銅山川上流のほとりにある地名です。

 初めて富郷を訪れたのは、1973年・高校1年生の時、もう40年近くも前のことでした。夏休みにサイクルキャンピングに行こうと、同級生4人で計画したのが始まりでした。当初は剣山を含めた東四国一周を計画していたのですが、学校の許可(いろいろと面倒であったので無視すれば良かったのですが、真面目に届け出た)が下りず、計画変更。友人の親族が仕事で城師(富郷より少し上流、ここもダムで水没)に勤務されていたので、そこで数日間を過ごすという計画を提出してなんとか却下され、その道中として訪れたのが富郷です。


新緑の頃


澄んだ流れは、今はもう・・・

 製紙工場の悪臭で辟易する川之江市・伊予三島市(現・四国中央市)を抜けると法皇トンネルへの登りとなります。この道、当時はまだ地道がかなり残っており、文字通り汗と土埃にまみれてのツーリングでした。
 標高400m付近の展望台から眼下に広がる東予・燧灘の風景や、法皇トンネルの脇から流れ出てくる水の冷たさも、自転車ツーリングの楽しさを十二分に堪能させてくれるものでしたが、なんと言っても、たどり着いた富郷付近の銅山川の流れが最高でした。汗とほこりで疲れ切った私たちは、何をするよりも先に川へ飛び込みました。その透明度と冷たさ。汗だくであった体でも、5分もしないうちに肌寒くなって日向ぼっこが必要になるほどの冷たさでした。


峠の貞光側から南西方面

保賀山峠から南南西方面

 その体験は、それまで私が持っていた川の概念(山浅い香川で育った私にとって、川は小さく、水は少なく濁っており、川で泳ぐなんて想像ができなかった)を根底から覆しました。ほとんど何の予備知識もないままに訪れた富郷でしたが、以来病み付きとなり、私を始めとする仲間たちは、それから10年以上にわたって毎年のように富郷を訪れました。(徳島に長らく住むようになって鮎喰川や勝浦川、穴吹川などに親しむ昨今から見ると、当時の富郷付近は、上流に別子ダムもあり、客観的にみると飛びぬけて素晴らしい川というわけではなかったかとも思いますが)

 しかし、その富郷の川も、今はもうありません。


戻ヶ嶽にて


緩やかに流れて


木立の隙間から

 私たちがキャンプを楽しんでいた、まさにその地に、ダムができてしまったのです。初めて訪れた頃から、ダムができるかもしれないという話は、それとなく聞いていましたが、1984年・1985年に川之江に住んでいた時に訪れた時も、私の得た知識・情報が少なかったせいかも知れませんが、まだまだダムができるような雰囲気はありませんでした。ところがその数年後に訪れた時は、山肌の遥か上方に道をつける工事が始まっており、仕事でなかなか訪れることができなくなった頃、とうとうダムができたという話を耳にしました。その頃は、すでにダムについての考え方(いずれ詳しく書こうと思っています)が、自分の中でもはっきりしていたので、「富郷よ、おまえもか!」というあきらめ、と悲観・落胆の気持ちでいっぱいでした。

 数年前に(見るのも嫌だったのですが)当地を訪れたところ、放水中だったためか水量こそ、そこそこあるものの、水の色が全く変わってしまい、それを映してか周りの木々も黒っぽくくすんでいました(特に富郷ダム直下となった写真:上左、戻ヶ嶽付近)。失われたものは私の郷愁のみなのでしょうか?


渕では、あくまでも緑に深く


瀬では、浅く軽やかに

 ここに載せた写真は、いずれも1984年および1985年に撮ったものです。当然ながらデジタルカメラではなくポジフィルムです。あのエメラルドブルーの澄んだ美しい水の姿をなんとか捕らえたかったのですが・・・、技量不足でその素晴らしさを十分伝えられないのが残念です。まだまだ高価なフィルムであったので、デジタル時代の最近のように沢山の枚数を撮っていません。おまけにスキャナで取り込むのがいまひとつで、ただでさえもうひとつな写真の質がさらに低下しているので、当時の実際は正確には全く伝わらないかと思います。
 当時、仕事で川之江に住んでいたのですが、地元、伊予三島・川之江の人でも富郷・銅山川を知らない、訪れたことが無い人が職場内でも随分と多くいました。あの清冽な流れをもっと多くの人が知り、現在のような時代であれば、富郷ダムの是非についても、もっと議論されることがあったのではないか、と思っても後の祭でしょうか?

紅葉も随所に


2枚目の写真とほぼ同位置から

 
 上の3枚の写真は秋の富郷です。紅葉もなかなか見るべきものがありました。こちらも1984年の写真です。
 富郷については、まだまだ語りつくせないことが多くあります。
 また、おいおい更新して行くつもりです。

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