信州 桜を巡るツーリング 2014


 7年ぶりに申し込んだツール・ド・八ヶ岳 2014。マウンテンサイクリング IN 乗鞍やツール・ド・美ヶ原など信州で開催されるヒルクライム大会には、その頃までよく参加していたのですが、時間的都合でいつもとんぼ返りでした。その少し前に手にしていた「麗しの桜」(三栄書房:2010年出版)などで、信州には沢山の桜の見所があることを確認していたのですが、偶然見つけたさわやか信州旅.net・信州さくらだよりというHPによると、2014年のツール・ド・八ヶ岳開催時は、ちょうど伊那路の桜が満開にあたるようです。ということで、大会の前後時間の許す限り、伊那路を中心にいくつかの桜を訪ねてみることにしました。
 (2018.04.20)

黒船桜 (下伊那郡阿智村清内路  2014.04.19)

 まず向かったのは、道順から一番手前に位置する黒船桜(ペリー来航時に植えられたということで、黒船桜と呼ばれるそうです)。中央道・恵那山トンネルを抜けた園原ICで下車。県道89号線から国道256号線を自転車で北上します。この道、何処へ続くのかと帰宅後確認したところ、なんと妻籠に続いています。そういえば以前に妻籠から大平峠へ向かった時、左へ進む分岐で右方向へ広い道が続いていた記憶があります。
 今回のツーリングでは、上述のさわやか信州旅.net 信州さくらだよりで場所や開花状況など多少の情報を得ていたのですが、初めてのところばかりなので土地勘もなく、実際の桜樹の状況や観光状況などは全くわからないままで、ちょっと不安でした。期待して訪れたものの思ったほどではなかった、という落胆が大きくはないか等々・・・。しかし、10qほど走って到着した黒船桜で、そんな不安は一掃されました。まだ満開には少し早いとの情報もあったのですが、まさに今が満開といわんばかりでした。満開のみならず、その樹の大きさに圧倒されます。下の写真、橋上から写真を撮る人との比較で、樹容が想像できるかと思います。


 樹高といい、幹回りとしい、四国ではちょっとお目にかかったことのない大きさです。しかも花数が多く、色も鮮やかです。枝垂れ桜だそうですが、末端の枝垂れ具合はやや控えめ。しかし、この樹の大きさにはその枝振りがお似合いと思いました。そんな素晴らしい桜なのに、花見客が予想していたより随分と少なかったことは、ちょっと意外でした。到着したのは午前10時過ぎでしたが、花見客は10名ほど。その後少し増えてきましたが、20名にも満たない程度でした。信州の有名どころなら、関東方面からも含めて多数の観光客がいることを覚悟していただけに、人混みが嫌いな私にとっては有難い状況でした。周囲に余分な装飾もなく当たり前のように咲いている満開の桜の下では、地元の婆様が畑で鋤をふるっていました。



 満開の桜の樹自体はもちろん、余分な飾りもなく、極当たり前のように咲いている(しかも花見客が少ない)、もうこの1本を見ただけで十分やって来た価値があったと大満足です。唯一思い残したのは、駒つなぎの桜の場所を思い違いしていて、すぐ近くだったのにパスしてしまったことですが、こちらは開花始めたばかりとのことだったので、引き返すこともなくそのまま見送って次の目的地へと向かいました。黒船桜のある清内路までの国道256号線沿いには、樹齢数十年以上と思われる結構立派な桜が随所に見かけます。どれもほぼ満開で、ひらひらと舞う花びらが、ゆっくりと走るサイクリングを歓迎してくれているかのようでした。
 写真は載せていませんが、この国道256号線は「はなもも街道」・「花の街道」と呼ばれているそうで、阿智周辺ではスカーレットからやや濃い目の桃色、そして白色のはなももがまぶしいくらいに満開でした。飯田市付近では、街路樹のリンゴの花も咲いていました。

氏乗の枝垂れ桜 (下伊那郡喬木村氏乗  2014.04.19)

 黒船桜で、すっかり満足してしまったのですが、続いて喬木村の氏乗(うじのり)の枝垂れ桜へ向かってみました。喬木町役場までクルマで移動。自転車に乗り換えて、県道251号線を南東方向に進みます。この道も何処に続くのかと確認すると、しらびそ峠方面への連絡路(K氏と訪れた4年前長いトンネルがあったのでパスした道)でした。2qほど直線道を進んだところで通行止め・回り道の表示がありましたが、本日解除中の上書きがあり、そのまま進みました。道は一気に狭くなり、クルマ一台がようやく通れる程度です。路面状況はまずまずでしたが、天竜川支流の小川川に沿う道は、緩やかな登りで狭い川谷に沿って蛇行。しかし交通量はほとんどなく、快適でした。


 はっきりした桜の所在地は確認できておらず役場から10qくらいかと思っていましたが、6qばかり走ったところで狭い谷が広がり、そこが氏乗地区でした。件の桜は、ちょっとした高台にあります。1909年頃、喬木第二尋常高等小学校氏乗分教場の校庭に植えられたそうです。ここもほぼ満開。そして期待を裏切らない大樹でした。黒船桜に比べると幹の太さや横への広がりは及ばないものの、圧倒的な樹高と垂れ下がる枝振り、花数の多さでは負けていません。分教場の小さ運動場跡と思われる広場周囲にも数本のソメイヨシノらしき桜があり、こちらは散り始めでした。



 小川川に沿う対岸から見ると、その大きさが良く分かるのですが、近寄ってみると木元にはスイセンンが満開、見上げると流れ落ちる滝のような花つきです。ここも黒船桜にも増して観光客が少なく、20〜30分ほど眺めていた間に入れ替わり立ち代わり数名が訪れたのみ。ほとんど独占状態で気兼ねなく花見を満喫できました。

大草城跡公園の桜 (上伊那郡中川村大草  2014.04.19)

 喬木村から県道18号線を北上して、次に向かったのは中川村の大草城址公園。ここは目当ての一本桜があるのではなく、通り道でもあったので、ちょっと立ち寄ってみるか程度の気持ちでした。想像していたよりこじんまりした公園でしたが、週末なのに、これまた予想より人出が随分と少なかったです。おかげで、ゆっくりと散策することができました。
 城跡公園だけに、さすがに花見用のぼんぼりなどがたてられていましたが、あまり広くはない城跡に植えられた10種類以上・200本の桜は、それはそれでなかなか見事でした。加えて、これも信州ならでは。桜の向こうに南アルプスの山々が聳える背景。四国では絶対に見ることができない光景です。


 通常の枝垂れ桜やソメイヨシノは散り始めていましたが、何本か植わっていた濃厚な八重咲の枝垂れ桜・ヤエベニシダレは、ちょうど満開でした(写真:下右)。大きな樹ではありませんが、花数が半端なく多く八重咲きなので、これはこれでまた豪奢でした。写真は掲載していませんが、黄緑色の鬱金もちょうど満開。まだ咲き始め・蕾の樹もあり、種類が多いので、ある程度の期間、次々と満開の桜を楽しめるようです。


 
 この日は少し霞んでいて、7年前のような稜線を雪に飾られた山々をくっきりとみることはできなかったことがちょっと残念でしたが、小高い丘に位置する大草城跡公園から見える天竜川沿いの河岸段丘に点在する民家や畑の風景も、四国ではお目にかかれない光景です。

西丸尾の桜 (上伊那郡中川村大草  2014.04.19)

 大草城址公園の駐車場にあった地図で、この日もう1ヵ所訪問したかった西丸尾の桜が表示されているのに気付きました。意外と近いようです。事前にもうひとつはっきりした場所が確認できていなかったので(当時スマホも不所持)幸いでした。道の分岐とおおよそ距離、そして目印になる建物2つを頭に叩き込んで、自転車で出発です。途中に2か所ほどの概略地図に加えて、3か所ばかり「西丸尾の桜」矢印の表示があったので、山肌に沿ったアップダウンと左右にカーブする道が続きましたが迷うことはありませんでした。
 辿り着いた西丸尾は、個人宅の桜だそうです。数名のカメラマンが、少し離れた道から三脚を構えていました。ここも見物客は総勢で10名弱。樹齢400年以上という枝垂れ桜、ここも満開でした。


 上の写真では大きさが分かりにくいですが、黒船桜とほぼ同程度と思われました。枝垂れ桜としては短めの枝振りなども、何処か黒船桜と似ているようにも思えます。主幹が氏乗より遥かに太くて強靭。この大きさを伝えたいと周辺をウロウロしてみたのですが、、やはりうまく捉えられません。下の写真は、民家の土蔵を含めて撮ったものです。母屋は、この左手。枝垂れ桜は、庭の一部に植えられているようです。

 
 それにしても伊那路には、本当に素晴らしい桜がたくさんあります。ここまでの4ヶ所以外にも何ヶ所かチェックしていたのですが、満開時期がずれていたりで当初からパスしたところもありました。しかし、ただ道を走っているだけでも目立つ桜の木があちこちで見られます。満開前後の数日かけて、名もない桜も含めて、周辺をゆっくりと回れれば最高ですね。

小諸城跡(懐古園)  (小諸市  2014.04.20)

 ツール・ド・八ヶ岳も無事完走しました。お昼に終了したので、少し時間があります。スタート地点の八千穂から諏訪方面に抜けるには、大会で使用している国道299号線・メルヘン街道は翌日まで通行止め。佐久方面の北回りか、清里方面の南回りかの大回りが必要です。この年には、下の海野宿に寄りたかったので、北回りにしました。ということで、いつもなら人の多いところは避けるのですが、こんな機会もないだろうと海野宿手前の小諸城跡・懐古園にも立ち寄ってみました。


 さすがに人は多いですが、満開の桜、日曜日の午後なのに、駐車場も問題なく入れました。園内に入っても、人混みでごった返すという感じは全くなく、みんなそれぞれに桜を楽しんでいます。ただ歩いて眺めている人、カメラを構えている人、そしてブルーシートの上で花見酒を楽しむ人達。相対的な人数のせいか、花見酒を楽しむ人の間隔も空いていて、また傍若無人な大声を出すグループも見かけず、とてもいい感じでした。少し肌寒いくらいでしたが、昼寝をする人の姿も見られました。



  ほとんどがソメイヨシノかと思われましたが、一部にヤマザクラなどもあり。大草城跡公園でも見かけたヤエベニシダレの大木があるそうですが、見つけることができませんでした。

海野宿近くの桜 (東御市本海野  2014.04.20)

 海野宿。ここを初めて訪れたのは、1979年。北国海道の宿場町として栄えたところで、当時の面影が残っているらしいと聞いて訪れたのですが、街道沿いに並ぶ家々も随分くたびれていて、かろうじて宿場町の面影を留めているかの状況でした。歴史から忘れ去れたような状況にも思えましたが、それでも往年を忍ばせる落ち着いた通りの風景には魅了されたものです。確か街道は、まだ未舗装だった記憶です。2010年9月に信州を走った時に立ち寄るつもりだったのですが、時間切れと脚売り切れのため訪れし損ねており、今回ぜひ再訪しようと思っていました。


 訪れてみて、びっくり。破風に近い状態や、少し傾いた家、廃屋も見られた通りが一変。どの家もきれいに整備され、そんな家を利用したいろんなお店もあるようです。東御市のHPを見ると、1986年に「日本の道百選」、1987年に「重要伝統的建造物群保存地区」に選定を受けたとのことですので、私が初めて訪れた1979年以降に、次第と整備されていったようです。
 ここも4月中旬の日曜日にも関わらず、ほとんど観光客の姿がなかったのが良かったです。午後少し遅めだったためでしょうか。駐車場もほとんど空でした。通りは数百メートルなので、ゆっくり歩いて往復。



 散策を終えて、駐車場からクルマを千曲川に向かったところ、35年前にはなかったはずの新道には、これまたソメイヨシノが今が盛りとばかりに満開でした。その後も帰路・国道142号線、笠取峠を下る途中でも山村の民家周囲に何本かの満開の桜を見たりで、最後まで花見を楽しめた桜三昧の伊那路行となりました。

 この後、随時追加アップ予定です。

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