川への想い   

    2016  Les Plus Beaux Villages de France    (2016.07.12)


Gordes (ゴルド)全景
 Les Plus Beaux Villages de France(フランスの美しい村)という存在を知ったのは、偶然目にした「フランスの美しい村・全踏破の旅」吉村和敏著:講談社という本を読んでからのことですから、もう10年以上も前のことになります。小ぶりの本なので掲載されている写真は小さいのですが、村々のちょっとした風景に、とても魅了されてしまいました。協会に認定された美しい村はフランス全土に散在しているのですが、中央山岳からピレネー方面に比較的多く見られます。2011年 Etape du Tour 参加時には、そんな村の比較的近くに宿泊したので何処か寄れないものかと思ったものですが、残念ながら訪れるには時間的余裕がありませんでした。いつか、美しい村のひとつでも訪ねることができたら・・・。2016年 Etape du Tour では、レース後 NImes(ニーム)に移動してフリーの日が一日あることを確認していました。調べてみると、距離は少々ありそうですが、Gordes(ゴルド)をはじめプロバンスの美しい村を2、3か所訪れることができるのでないかと思われました。
 Etape du Tour で走ったのは、上左の地図の右上付近・ジュネーブとシャモニー・シャンベリーでできる3角形の中心付近。翌日、Nimes までバス移動。上右の地図は、左の赤枠付近の拡大です。当初は Nimes からまっすぐ東へ走って Gordes に向かう予定でした。ところが、前日の移動時、ツアーではフリーの日 Bedoin(べドアン)までバス移動して Mont Ventoux(赤三角印)に登ることにするとのこと。Bedoin からだと Nimes から向かうより Gordes までの距離が半分以下(片道30q程)になります。スタート時間は遅くなりますが、逆に余裕ができそうだったので Bedoin まで一緒に行くことにしました。徳島から一緒に参加していたま〜し〜さんと二人で行くつもりだったのですが、2日後には Tour de France 観戦のため再び Mont Ventoux やってくることもあって、賛同者が増え総勢7人でのツーリングとなりました。
 ゆっくりと朝食を食べて、午前8時半ホテルをバスで出発します。バスの車窓からは、認定された美しい村でなくても、私の目には十分美しい光景が続きます。下左は、Avignon(アビニョン)近くで渡る Le Rhone(ローヌ川)。糸杉にひまわり畑と小麦畑も続きます(写真:下右)。
 写真:下左端、遠くに Mont Ventoux が見えてきました。左から2枚目は、Carpentras(カルパントラ)付近で見かけた移動遊園地の一部。フランスでは結構見かける光景だそうです。ローマ時代のものでしょうか、水道橋も。Mont Ventoux に近づいてい来ると、ロータリーには自転車のモニュメント。ちゃんと傾斜して登っています。
 
 10時過ぎ Mont Ventoux の麓 Bedoin に到着。小さな町には驚くほどの自転車乗りで賑わっていました。そんな観光客を目当てにしたらしい自転車グッズを売る店も多数見かけます。街を通り過ぎた Mont Ventoux 登り口の大きな広場にバスを駐車。2日後のツール本番の観戦に向けたキャンピングカーが既に多数停まっていて、手を振ってくれる人も(写真:下左から2枚目)。午前10時半、Mont Ventou に向かう人達と別れて、最新のGPSを装備したOさんの先導で Gordes へ向かいます。
 上述のように、当初は Nimes から向かう予定でアナログ地図のコピーを準備していたのですが、Bedoin 出発となり途中の地図がありません。しかし、上記のように同行してくれたOさんが最新のGPSを装備していたので、目的地・Gordes へナビゲートしていただけました。途中、Mormoiron(モルモアロン)、Mazan(マザン)という町を経由していくのですが、自分で考えずに付いていくだけだと何処を走っているのかもうひとつ十分把握ができません。GPSが選ぶ道は、主要道を外れたマイナーな道も多く、逆にブドウ畑の中を走るなど、フランス南部の田舎道を予想以上に楽しむことができました。
 時に通過する小さな街で早めの昼食をとることも考えましたが、適当なお店が見つからず、そのまま先へ進みます。認定はされていなくても美しい村々を眺めながら進むと、前方の小高い丘の上に集落の姿が見えてきました(写真:下右端)。
 Nimes からでは予定していなかった Les Plus Beaux Villages de France のひとつの村・Venasque(ヴナスク)です。全く事前チェックができていませんでしが、立ち寄ってみることにしました。Les Plus Beaux Villages de France の認定を示す表示板を確認し、坂道を登り始めます。
左 Venasque 北側の入り口

Les Plus Beaux Villages de France
  認定の表示
 オーバーハングした岩壁の下を登っていくと、村の入り口に到着しました。建物のトンネル様の入口から中に入るのは、村の人々の生活を邪魔するかのように思われ、ちょっと入るのが躊躇われる感じさえしました。
 中へ入ってみると、狭い道を挟んで村全体が統一された古い建物で落ち着いた佇まい。ベージュ色の壁を伝う蔓バラや蔦の緑が控えめなアクセント。無駄な装飾が一切なく、観光客もあまりおらず、過去にタイムトラベルしたかのような静かな光景でした。高台にある村は、歩いても数分で端から端までいけるくらいです。
 東側のテラスからは Mont Ventoux までの平原が一望できました。写真:下左、奥のうっすら見える山の頂上が Mont Ventoux です。その麓の街・Bedoin から、写真の左手を大きく回ってやってきました。もう少しゆっくりしていても良かったのですが、その後の予定から時間の配分がはっきりしなかったので、先へと進みます。
 高台から一度下って、Gordes へはD177で Col des Trois Termes という峠を越えていきます。Tour de France 12 stage のコースでもあるこの道は、ツールのためか舗装し直されたばかりでした。道は交通量もほとんどなく、緩やかなカーブを描きながら適度な勾配。周囲は樹木が少なめの切り立った岩が目立つ山間部を走っており、サイクリングには絶好のコースでした(下の写真)。辿り着いた Col des Trois Termes には翌々日にツールのコースであることの表示がありました。この1m四方ほどの黄色い掲示板(下から2段目の写真)は、この後コース上を走ることが多かったので何度か見かけることになりました。
 峠から Gordes へはD177で Senanque(セナンク)方面から向かうつもりだったのですが、峠には一方通行の表示があって時計方向に回り道のようです。峠から一度D244で東方向に少し進み、Nimes からだと西南方向から進んでくる予定だったD15を北側から下るようにして Gordes に向かいます。Gordes に近づくと、まさかの大渋滞です。閑散としていた Vanasque とは大違い。狭い道に渋滞するクルマで同行の7人は分断されましたが、街の手前でOさんが昼食に良さそうなカフェを見つけました。ちょうど12時半くらい。狭い歩道に自転車を置こうとしていると警察官がやってきて、少し上にある駐車場に置けとのこと。100mほど戻ったところにあった公共の駐車場の片隅に自転車をまとめておいて、カフェへ向かいます。木陰のテラスで、パスタとコーラ。みんなそれぞれに注文したのですが、発音が悪いため、うまく伝わらず届いたのが、写真:下右端。しかも、Kさんが注文したものと取り間違えていたことを食べてから気づいた次第。シーフード満載で美味しかったです。
 食後、中心部への入り口へ向かおうとすると雑踏で大混雑。時間的余裕もあまりなかったため、村の中心部に入ることは諦めて、事前に本と地図で確認していた撮影ポイントと思われる方向に向けて移動しました。道を確認して、辿り着いたポイントから振り返ってみると・・・。何処かで見かけた、「写真などで知っていても訪れた人のみんなが歓声を上げる」という表現に納得の光景です(トップ&下の写真)。事前情報を得ていた私も含めて、全員が歓声。いや百聞は一見に如かず、そして一見の価値ありの光景です。この光景を一目見ることができただけで、Etape du Tour 完走と同等かそれ以上に、やって来て良かった、という思いが込み上げてきました。
 村の中へ行けなかったので、高所から望遠で村の様子を伺います。崩れそうな急な狭い崖に、当たり前のようにびっしりと民家が立ち並んでいます。日本なら有り得ない立地条件です。白く咲いている木々は夾竹桃。ピンク色の花も多数見かけましたが、日本で見かける色より軽やかな感じです。乾いた大気のためでしょうか。狭い坂道の路地をゆっくりと探索している観光客らしい姿も見えます。民家は様々なの形態なのですが、屋根と壁の色調が同じであることが統一された美しさを生じています。
 丘を埋め尽くすように立ちこんだ家並みは、それだけでも見応えがあるのですが、後方に広がる平原との対比が、全体の印象を一段と高めています。飽きない光景ですが、時間はさほどありません。たったこれだけの滞在で立ち去るのには忍びない・・・。時間があれば回れるかなと思っていた Roussillon(ルション)や Menerbes(メネルプ)に向かうことは、とても無理でした。Gordes を含めて、いつか再訪することができるでしょうか。
 帰路は、D177で Senanque 方面から Col des Trois Termes へ戻ります。Senanque までの道は細く、クルマは対抗できません。往路の峠からが一方通行だったわけです(写真:下左)。これも気になっていた Abbaye Nortre Dame de Senanque(セナンク修道院)のラベンダー畑は、少し最盛期を過ぎていたようで、D177から遠目に眺めただけですが、思ったほど広くもなく期待していたほどではありませんでした(写真:下右)。
 Senanque からの登りでは力が入らず、ひとり遅れて、峠でみなさんに待っていただく羽目になってしまいました。Col des Trois Termes から Vanasque までは往路と同じ道で戻ります。登りも良かったですが、下りもまた一味異なった良さがありました。ビデオを置いてきたことを後悔。Vanasque からは、往路と少し違った道となりました。
 前方に見える Mont Ventoux がいい目印になります。上述のように Tour de France 12 stage のコース(案内看板:写真上左端が随所にあり)上を走ることが多くなりましたが、主要道ではなくブドウ畑を横断するような道が多かったです。下左の写真、Mont Ventoux 山頂のテレビ塔もはっきり見えてきました。しかし、緩い丘状の登りでも、ひとり遅れるばかり。どうも体調が悪かったようでした。16時過ぎ、Bedoin へ無事帰着することができました。下右上は Bedoin の街角にて。下は Mont Ventoux への登りスタート地点です。
 夢にまではみませんでしたが、Gordes を訪れるという今回の Etape du Tour ツアーの大きな目的のひとつを達成、しかも想像していた以上に素晴らしい光景を目の当たりにできて、最高の一日を過ごすことができました。

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