汗見川と竜王林道
 何度か走ったことのある高知県道264号線。この道に沿う汗見川の流れは吉野川支流の中でも屈指だと思っているのですが、小さな渓なので事前の降水量によって流れ具合に結構な差があります。今回、直近に走ったXXさんから、とてもきれいだったとの情報をいただきました。確かに、その少し前に適量の雨が降っており、近場の鮎喰川もいい条件だったので、この時だと思って訪れてきました。峠を越えて、愛媛側・猿田川も見たかったのですが、県道5号線が通行止めのため、距離的にちょうどいい復路が取れないこともあり、14年前に走った仁尾ヶ内林道を、前回走っていない竜王林道を使って逆走するコースとしました。 (2018年11月30日 記)

汗見川の流れ
 徳島を午前6時過ぎに出発。いつもならできるだけ早く移動して走り始めるのですが、この日は主目的の汗見川が南北に流れるため、あまり早い時間だと山影になってしまうことが予想されることもあって、のんびりと下道でデポ地へ向かいました。値上げが続くガソリン代のこともあり、高速道路代節約も兼ねています。デポ地の本山・帰全山公園まで約130q。ほぼ予想通り、8時40分くらいに到着しました。5月にデポした広い駐車場は工事中で使用できなかったので、すぐ横の道脇の広場に駐車しました。
コース 本山−汗見川−竜王林道−仁尾ヶ内林道−立川川−本山
走行距離  60キロ   積算標高 約1200m
最高地点  吹屋付近 標高1200m
走行日  2018年10月21日 天候:晴れ シクロクロス
 8時50分に、早明浦ダム方面に向かって、吉野川本流左岸に沿う県道263号線を走り始めます。途中、沈下橋を眺めたりしながら県道264号線分岐部へ。汗見川が吉野川本流に流れ込むところに架かる橋の上から川面を覗き込むと、迎えてくれたのは大きな魚です。形からコイの類ではなく、イワナかマスのようにも見えます。大きさは50cm前後ありそうです。少し離れて、鮎と同じくらいの大きさの魚が群雄中(写真:下中上)。
 気温は9℃。9時過ぎ、県道264号線に入って、ゆっくりと汗見川を遡り始めます。まだ陽は低く、東の山影になっているところが多かったのですが、川は小さな蛇行を繰り返しているため、既に陽が当たっているところもチラホラ。そんなところでは、川の状況を確認するために、走り始めたばかりなのに停まってばかりです。陽が差し込んでいないところでも、汗見川の美しさを感じるところも沢山あります。少し紅葉し始めた木も、河岸に見かけました。
 汗見川沿いを1qほど走ったところでXXさん情報通り通行止めの表示があり、迂回路で川の対岸(右岸)へ渡ります(写真:上左下)。迂回路を1q弱ほど走ったところで小さな橋が見えたので、県道復帰の表示はなかったのですが、この辺りで県道に戻れるのかなと思って渡ったところ当たりでした。再び川の左岸(東側)・県道263号線を進みます。ちなみに、先の迂回路は、国土地理院地図によると、県道264号線が左岸から右岸に渡るところまで続いているようです。事前に確認していたら、そのまま直進していたのですが。
 ところで、県道264号線は汗見川の左岸(東側)をずっと走るイメージが強かったのですが、吉野川分岐から5qほど走ったところで右岸(西側)に渡ります。あれっ、対岸に渡って走る箇所なんてあったっけと、ちょっと驚きました。つくづく記憶はいい加減だなと思いしります。蛇行のため川が東西に流れるところでは、既に十分な陽が当たっています。陽が当たっていないところでも、時々川面を覗き込んで確認。陽が差せば透明度が一段と輝くのだろうなと、ちょっと残念な気持ちで先へ進みました。
 再び左岸に渡ったのは、もう奥白髪林道分岐の少し手前でした。この川を渡る橋と左手に分かれた道の部分は、記憶に残っていました。以前どちらに進むのかちょっと迷ったので、記憶に強く残っているのでしょう。しかし、いくつか堰があったことも、はっきり記憶していないことでした。快晴でしたが、上述のように東側の山影になって、川面に陽が当たっているところは全体の半分もありません。それでも、時折現れる陽の差すところは、惚れ惚れしてしまう透明度です。そして、その色調。青から緑、そして光線と川波の関係か、時にはオレンジ色を呈することもあります。川面の光り輝く様は、まさに私にとって形にならない宝石です。
 実は、汗見川に入ってしばらくは、鮎喰川や穴吹川とあまり変わらないように見え、まあこんなものかなと思う程度だったのです。が、進むにつれて、本来の素晴らしさを見せつけてくれます。特に、奥白髪林道分岐(写真:上中下)前後付近が一番魅力的でした。川が小さいので、あまり大きな渕はありませんが、ちょっと深さを増すと、碧の濃さが一段と深まります。一方、水深10cmにも満たない瀬も多数ありますが、それもまた好みです。何度か訪れている中で、この日の水量は 1、2を争うくらい。透明度は言うまでもありません。雨が降らない時が続いた後では、これほどの水量はなく、見映えは随分と異なります。やはりやって来て良かったなあ。
 
 奥白髪林道の分岐では、通行止めの表示がないことを確認します。竜王林道を登った後、最悪の場合はこちらで引き返すこともありえると考えていたからです。県道264号線をさらに進むと、道の勾配は少し増して、汗見川も次第に下方へと遠ざかっていきます。川面は見えなくなって、水の流れる音が聞こえるばかり。
 汗見川を十二分に堪能した後は、お初の竜王林道です。ここまで18qにほぼ2時間。出会ったクルマは、地元の方と思われる軽トラ2台のみ。ここでも、まずは通行止めの表示がないことを確認します。分岐から少しくらいは舗装しているかなと思う間もなく、いきなり地道が始まりました。もう汗見川の流れる水音も聞こえません。
 路面には真新しい轍こそないものの、それなりにクルマが入っているようで、路面は結構踏み込まれていて安定した状態でした。途中一ヶ所、谷筋からの土石流を解除したようなところがあった以外は落石もなく、落ち葉や小枝の散乱もほとんどありませんでした。
 県道の分岐部からは、1q毎に30cmくらいの板(竜王林道起点の表示と同じもの)の表示があり、いい目安になりました(もっとも事前には6qだと思っていた峠までの距離は8qでした)。後半はやや緩やかなところもあったのですが、約8qで700mの登り。1q毎の表示で確認していたら、平均して1qに10分要していました。時速6q。勾配のきついところでは12分、5q/hr。路面は危惧していたより遥かに上等で、スキルとパワーのある人なら28Cのロードバイクでも走行可と思われるくらいでした(ただし峠から東側は無理と思います)。
 途中、広がった前方を見上げると、工石山山頂付近は紅葉です(写真:上右上)。登るに従って、道周辺にも多少の紅葉が見られるようになってきました。今回、紅葉は少し早いだろうとあまり期待していなかったのですが、汗見川の流れを楽しんだ上に色付いた木々を多少なりと楽しむことができたことは予想外でした。
 峠部には、ちょうど正午に到着しました。14年前の記憶では、この付近から西側への展望が広がっていたように思っていたのですが、道周辺の木々が成長したのか、ほとんど展望がありません。幸い、峠少し手前のところに見晴らしのいいところがあったので、そこで写真を撮っていました(写真:上右)。地図と照らし合わせてみると、左手のとんがりが兵庫山で、手前中央やや右の三角山は玉取山でしょうか? その奥に見えるのは、赤石山系の二ツ岳付近かと思われます。 写真:上中上は、仁尾ヶ内方面から西へ向かって撮ったものです。今回は右手から登ってきて、手前に進みます。14年前は手前から登ってきて、左手の奥白髪林道へ進みました。
 稜線を越えたら下りだとばかり思っていたのに、工石山登山口の近くまでまだ登りが続きました。路面は、泥状でぬかるんでいるところも何ヶ所かありました。工石山方面は、落葉してしまっている木々も多数(写真:上中下)。
 峠で補給休憩の後、仁尾ヶ内林道へと向かいます。峠からすぐのところに南東側に向かって伸びる道があるのは、14年前にも確認していました(写真:上左下)。国土地理院地図やGoogle mapでは立川川沿い・成川地区への分岐から繋がっているので、2015年末に成川側から進んでみたのですが、もう少しで稜線という手前で道が消失していました。しかし、峠から少し進んだところから南方向に見えるススキの草原状のところ(写真:右)を越えるところまで登ってきていたので、もうほんの僅かの距離(200mもないのではないかと思われます)で繋がっていないだけのようです。
 まだ登っていく途中からは、東方面に徳島県の山々が遠望できました。最初に剣山かなと思ったのは、矢筈山のようです。重なってわかりづらいですが、左手前が烏帽子山のように思えます(写真:下左)。その少し南奥には、剣山、三嶺、天狗塚と並んで見えます。写真:下右、最奥の稜線、左手端が剣山、ほぼ中央部が三嶺、右端付近のとんがりが天狗塚に間違いないと思います。
   
 漸く下りになってすぐのところで、道端に4台ほどのクルマが停車中。工石山登山者のものでしょう。そこから少し走ったところで、いきなり仁尾ヶ内林道が封鎖されていました。右手に迂回路との表示があります(写真撮り忘れ)。ちょうどモトクロスに乗った方が休息中(遅れている同行者を待っているとか)だったので訊ねてみると、下から登ってきたとのことです。下れるのには間違いないので、ちょっと安心しました。が、2015年末に走った成川方面に下る道に出るのなら結構荒れていた記憶なので嫌だなと思ったのですが仕方がありません。モトクロスの方も、「結構荒れてました」とのこと。
 ところが、下り始めると、路面状況は危惧していたほど荒れていません。途中、よく間伐された杉林の中を走るところも多く、路面も比較的轍がしまって走りやすいところもありました(写真:下左2枚)。しかし、下るにしたがって、荒れたところが多くなってきました。サドルに座ることは、ほとんどできません。ただ乗車ができないほどのところは、谷筋から土石が流れ込んでいた1ヶ所、10mばかりのところだけでした。
 そんな道を下って、なんとか仁尾ヶ内林道の本線に戻しました(成川側の道ではなかったことは進んでいくうち&帰宅後国土地理院地図で確認)。通行止めの本線と下ってきた道(仁尾ヶ内作業道という名らしいです)の路面状況の違いがよくわかる一枚(写真:下右から2枚目)。本線に戻って、やっと一安心と思いましたが、しばらくは結構荒れた地道が続きました(写真:下右端)。
 さらに下ると、漸くコンクリート舗装となりましたが、県道5号線まで後2qくらいと思われる地点から、何ヶ所かひどい崩落ありました。2ヶ所は(仁尾ヶ内集落への入り口付近と思われます)完全に道が崩落。1ヶ所は、そのすぐ上の小道を無理やり通れるようにしていましたが、道中央部でひび割れ。川側は崩落寸前です。写真:下左は、その迂回路で、本来の道は崖下に消失しています。迂回路も崩落寸前です。対岸・奥に見える道は、成川方面へ繋がる道と帰宅後国土地理院地図で確認。迂回路には仁尾ヶ内区長名で 「この道は歩道です。自己責任で通ってください」との表示がありました(写真:下中上)。もう一ヶ所は仮設の橋で繋がっていました(写真なし)。 その他にも、山側から流れてきた土石を取り除いただけというところが何ヶ所もありました。横を流れる立川川の清冽さが痛々しく感じるくらい。川の中にも、何処からか上流から根こそぎ流れてきた大きな樹を何本も見かけました。
 無事県道5号線に辿り着いて、もう大丈夫かと思ったのですが、ここでも1ヶ所、50m以上にわたっての崩落と、直径10m弱の陥没1ヶ所ありました(写真:上右下)。さらにマスコミ報道で耳にしていたのですが、高知道の上り車線。道路西側の斜面大崩落で、立川トンネル南口の道が完全に消失していました。急ピッチで工事中でしたが、崩落はおろか、ちょっとした落石もなかった汗見側と尾根筋ひとつ違っただけで、これだけ酷い被害が出ているとは想像もできませんでした。昨今話題になる局所的豪雨のなせる業なのでしょうか。
 その後は、汗見川にも劣らぬ清流・立川川に沿って走ります。が、今度は午後の日差しで西側の山影になってしまったこともあるのですが、時折陽が差している川面を覗き込んでみても、あまりの道路被害状況の厳しさを思うと、写真を撮る気持ちも失せてしまっていました。
 県道262号線で、デポ地に戻ったのは14時20分くらい。ほぼ60qだったので、6時間(最近は平坦コースでも3時間かかる)と計算していましたが、予定通りでした。帰路は時間節約のため土成ICまで高速道路利用。往路は早朝の比較的交通量の少ない時間帯で2時間半くらいかかったところを、1時間20分くらいと約1時間時間短縮できました。

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