南予の道、遊子・水荷浦の段畑
 海洋堂ホビー館・四万十紀行でも述べたように、同じ四国内でも東端に位置する徳島市からだと愛媛県や高知県の西南部までは相当に距離があります。もう少し近いだろうと思っていたのですが、このツーリング時に改めてその遠さを思い知りました。
 9月の連休時に、天候が良ければ一日遠出をしようと考えていました。行き先は、走ったことのない愛媛県西南部の道。計画を立てていたところに、すーさんけんさんが同じように何処か遠出を考えていたのを耳にして、おふたりを誘った次第です。コースは宇和島郊外から南に向って、あまりクルマが多くなさそうな道をつないで山と海を楽しめそうなコースをいくつか考え、当日の状況でアドリブ的に走ることにしました。いつの間にやら、もう3年も前の話になってしまいましたが・・・。   (2012年 7月21日 記)

遊子・水荷浦の段畑にて
 
コース  宇和島−県道4号−広見篠山林道−遊子−宇和島
走行距離  約120キロ  積算標高 約2300m
最高地点  篠山(標高860m)
走行日  2009年 9月22日 天候:曇 PINARELLO PARIS
 「雨が降っていますが、出発します」というけんさんからのメールで、漸く準備を開始。けんさん宅からだと、たかだか数km離れた我が家周辺は曇り空でしたが、さあ行くぞという高揚した気持ちにはならない天候でした。おまけに高速道路を西に進むにつれて時折小雨となってきました。およそ300km走って漸く宇和島市の郊外に到着したのは、既に午前9時前。適当なデポ地が見つからず、ちょっとうろついた後、結局路肩の広い道沿いに駐車となりました。幸い、走り始める頃には雨も上がっていました。
 まずは県道46号線を進みました。国道56号線・松尾トンネルをパスするこの道は、1車線でほとんど交通量がありませんでした。勾配も緩やかで、大坂峠・引田側のような感じ。とても走りやすかったのですが、交通量が少ないためか路面は所々苔むしてして滑りやすいのが唯一の難点でした。ゆっくりと登り、下りも登りとさして変わらないスピードで下りました。

県道46号線の小さな峠

篠山への登り
 下りきった御内川沿いで県道4号線に合流しました。ここで、この日初登場のすーさんの秘密兵器・GPSが威力を発揮。「もう少し走ると橋があって左折で〜す」と、道案内(声はすーさんですが)。
 県道4号線に入ると県道46号線は異なり、幅の広い2車線の新しい道でした。相変わらず交通量は少ないので、愛媛高知県境に向っての緩やかな登りを、ワイワイと喋りながら楽しく走りました。高知県に入ると下りとなり道幅も再び狭くなりましたが、自転車乗りにとっては、こんな道のほうがうれしいものです。県境から四万十川支流・松田川に沿って緩やかに下っていく道沿いには、常緑大樹が繁っていて、徳島の川沿いの植生とは全く異なっていました。

標高700〜800m付近、大規模林道・広見篠山線

広見篠山線を走る
 スタート地点から30kmほどで、篠山方面への登り、県道332号線へと右折です。この道は先の県道46号線以上に交通量がないと思われ、路面の中央部はほぼ苔で覆われていました。約10kmで標高差600m余。ダンシングしようとするとすぐにスリップです。けんさんすーさんは快調に登っていきます。私は次第に遅れ、とうとう二人の姿は見えなくなってしまいました。
 篠山登山口(すーさんのGPSで標高777m)から少し下ると、篠山トンネルの南口合流地点に到着しました。ここから西は大規模林道・広見篠山線です。当初の計画では篠山トンネルを経由する8の字コースも考えていましたが、入り口でさえ真っ暗で1車線のトンネル、しかも約1.6kmもの長さなので、パスすることに即決しました。

広見篠山新道から、北・宇和島方面

広見篠山林道分岐部
 そこから13kmほど続く、広見篠山林道は、標高700m〜800mをトラバースする広々とした道でした。ここもほとんど交通量がありませんでした。道自体は、如何にも「はじめに道ありき」という風で趣はありませんが、南方向に広がる宇和海への展望や山東南斜面の広大さは、なかなか見応えがありました。途中からは、稜線の北側に出ます。今度は宇和島方面の展望が楽しめました。
 さらに西進して県道46号線との合流地点で、その後の予定を相談しました。出遅れと私のペースが遅いために、さらに南へと下ることは時間的に無理と判断、県道46線を北上することになりました。本日の走り始めだった県道46号線、ここも同じ様に細く交通量の少ない道で、ノンビリと走ることができました。ずっと下りかと思っていましたが、途中で小さな丘越えがひとつありました。

海に浮かぶ作業場

写真を撮りながら・・・
 県道4号線と国道56号線をちょっとだけ経由して、津島町からは海沿いの県道37号線へと進みました。県道46号線最後ですーさんが引き倒したのに対抗するように、今度はけんさんがどんどんペースアップ。とうとう平地でも私が切れてしまいました。幸い、ちょうど道が二股に分かれて迷うところがあったので、ペースダウン。海沿い方向へ進んでみると、結局は行き止まりで引き返すことになりましたが、随所に海上に浮かぶ小屋が見られました。何か中で作業をしているようですが、よくわかりませんでした。宇和海と言えば、真珠の養殖が盛んですが、その関係の仕事だったのでしょうか?

光る宇和海

宇和海を眺めながら
 篠山林道から南下しなかったため時間的余裕ができたので、ここからは私にあわせて大幅にペースダウン。海沿いのこのコースは当初からの予定でした。南宇和の海はさぞ美しい海だろうと予想してのコース取りでしたが、意外と濁っていました。一部では赤潮?と思われる赤褐色のところもありました。天候の関係でしょうか? ちょっと期待はずれで残念。
 そんな落胆を一掃してしまったのが、遊子・水荷浦の段畑の光景でした。その存在は、朝日新聞の付録「旅案内・日本全国地図」に小さな写真が一枚載っていたのと、single trackさんのブログで以前に一度目にして、こんなところがあるんだなあ、とちょっと気に留めていた程度でした。主要道からはかなり外れていて、正確な場所や規模、ましてや歴史など全く知りませんでした。

遊子・水荷浦の段畑・遠景
 県道37号線から県道346号線分岐部に「水荷浦段畑こちら」の表示を見つけました。その後も随所に案内があるので「ひょっとすると、とても有名なところなのかなあ」と3人で喋りながら進んでいくと、目に飛び込んできたのが上の写真。稜線(約80m)までぎっしり重なった段畑。

段畑の道を歩く

段畑にて
 写真ではその規模がよくわからないかもしれません。実際に段畑の道を歩いてみると、写真上のような状体。こちらのブログに、様々な角度からの写真が載っていて、段畑の様子が良くわかるかと思います。積み上げられた石は、丸いものもありますが、大部分が鋭的。結構隙間もあって、崩れやしないかと心配になるくらいです。積み上げるの、一段だけでも大変だろうに。

思わず立ち尽してしまう眺め
 宇和海をバックに見る段畑の風景は穏やかな表情でしたが、写真でわかるように、ひとつひとつの畑は非常に幅が狭いのです。少しばかり野良仕事の真似事をしている身としては、こんな耕地で作物を作ることの大変さ(機械は使用できない、水はどうする、肥料養分もすぐにながれてしまうなどなど)は想像を絶するほどです。写真で見ていただけの時は、絵になる風景だなあ程度にしか思っていませんでしが、この段畑について、私と同じような思考過程を辿られた方が詳細を書かれているので、ご一読を。

宇和島方面を望む

段畑前の港から、鬼が城山方面
 段畑の頂上・稜線まで歩いてあがると、ここでもすーさんのGPSが威力を発揮。さらに岬先端を回る道があるとの情報で、引き返さずに先へと進みました。写真はありませんが、随所に放置されて雑木に埋もれかけて荒れた段畑を見ることができました。一部ではまだ作付けがされているところもありました。写真では、時期の関係からか何も植えつけられていませんが、サツマイモなどが栽培されるらしいです。裸地になっていた畑の土は、お世辞にも肥沃な土とはほど遠いように見えました。作物を収穫することはもちろん、景観を維持するだけでもなかなか大変なことだろうと思われました。
 段畑下の港からは、東方面に海を挟んで高い山が見えましたが(この頃、漸く青空が見え始めました)、以前に走った鬼が城山方面と思われました。その手前の小高い山がスタート・ゴール地点の松尾トンネル付近と思われます。海岸沿いを少し走った後、小さな丘を越えてデポ地点に帰着。帰路は暗くなり、松山手前までは渋滞にもあって大変でしたが、滅多に行けない四国西南部の山と海を楽しめた一日となりました。

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