Lombardia

Santuario Madonna del Ghisallo と Sentiero Valtellina  (2018.07.15)


Sentiero Valtellina を東へ
 初日は前夜宿泊したLecco(レッコ)から交通量の多い道をクルマで移動した後、Asso(アッソ)という町から、Santuario Madonna del Ghisallo(以下、ギザッロ教会)を訪れます。その後、Bellagio(ベラージオ)まで走り、フェリーでVarenna(バレンナ)へ渡り、交通量の多いコモ湖沿いの道を再びクルマで移動。コモ湖の北端付近から、自転車歩行者専用道・Sentiero Valtellina を東進する予定です(下記地図参照)。ギザッロ教会の名前は、自転車乗り・特にイタリアのレースに興味を持つ人なら、一度は目にしたことのある名前だと思います。「λ」の形をしたLago di Como(以下、コモ湖)の、ちょうど股の付近に位置する Magreglio(マグレリオ)という町外れにある小さな教会です。なぜ自転車乗りに有名なのかというと、1949年10月13日、ギザッロ教会の崇拝の対象となっている聖母マリアが、ローマ教皇ピウス12世により“公式に”サイクリストの守護聖人として宣言されたことで、この地が正真正銘の「サイクリストの聖地」となったからだそうです。

上赤枠付近の拡大が左の地図
 ギザッロ教会へは南北からアプローチできる道がありますが、今回は南側から向かいます。まずは、Leccoからクルマで移動します。Assoに向かったのですが、結構な登り道が続きました。Assoの駅から自転車で走り始めます(写真:下左2枚、下の地図参照)。走り始めは交通量が多かったのですが、自転車乗りの姿も多いです。この日は日曜日だったこともあるかもしれませんが、行程の後半はクルマの数より自転車乗りのほうがずっと多かったです。前夜宿泊したLeccoの街は、早朝からロードバイクに乗って颯爽と風を切って走る自転車乗りの姿を沢山見ましたが、ここでは年配の方の姿も多く、皆さんそれぞれの楽しみ方で走られているように思われました。
 ゆっくりとしたスピードで、それほどきつくはない勾配の坂道を走って辿り着いたギザッロ教会は、自転車乗りで溢れていました(写真:下)。教会横にあるFausto Coppi の銅像やモニュメントの前では、記念写真を撮る自転車乗りが順番待ちの状態です。
 小さな教会の内部を覗いてみると、過去に活躍した選手の自転車やジャージなどが天井近くまで壁一面に飾られています。その数があまりに多くなりすぎて、遂には隣に自転車博物館ができたそうです(下記)。もちろん、自転車だけでなく、ちゃんとした教会です。自転車博物館を見学して出てくると、ミサが始まっており、狭い教会内から溢れるくらいの人が参列されていました。地元の方でしょう、普段着の方が多く、自転車ジャージの人はほとんど見られませんでした。
 Leccoの町からはクルマと自転車で随分登った気がしましたが、それもそのはず。ギザッロ教会は、標高754mの地にあるのです。写真:ひとつ上、教会横の広場から、自転車乗りのみなさんが手摺越しに写真を撮っていますが、下のような光景が見られるのです。下左は北へ向いて、コモ湖とそこを囲む山々。一番奥はスイスとの国境近くと思われます。下右は東へ向いて。コモ湖対岸のLierna(リエルナ)という町が眼下に見えます。こちらも山が迫っていて、いずれも氷河によるU字谷だと思われます。ミラノから60qほど北にあるコモ湖はイタリアの避暑地として有名なことを以前から知っていましたが、こんなにも急峻な山々に囲まれているとは全く知りませんでした。
 上述のように、ギザッロ教会の横手には、真新しく見える瀟洒な造りの自転車博物館があります。入場料5ユーロ(教会は無料)。折角なので、入館してみました。教会よりはるかに多くの自転車や歴代のマリアローザなど多数の展示物が、広い屋内に余裕を持って飾られています。ゆっくり見ていたら2、3時間ほどかかりそうです。写真:下中上の一番手前は、Eddy Merckxが現役時代に使用していたもの。自転車もかなり古い時代のものから、比較的最近のものまで勢揃いしていました。
 まだまだゆっくりしていたかったギザッロ教会ですが、まだ1日の予定の1/3にも達していません。名残惜しくも、ジグザグの道が続くSP41をコモ湖の股にあたる場所に位置する Bellagio(ベラージオ)という街に向けて下ります。こちらからも、多くの自転車乗りが登ってきていました。e-bikeの姿もちょくちょく見かけます。写真:下左は、下り途中から北へ向けて撮ったもの。手前下方から突き出た半島状付近がBellagio。一番奥にある山脈の向こうはスイスです。途中、おひとりの自転車にトラブルがあり、町外れの自転車店で修理。Bianchiのマークが出ていますが、レンタルも行っているようでした。この付近では多くのお店がレンタルも手掛けているそうです。
 下ってきたBellagioの街は観光客で大混雑でした。湖畔沿いの狭い道はクルマで大渋滞でしたが、自転車は狭い道の脇を通ってなんとか先へ進むことができきました。写真:下左下は、湖岸沿いの遊歩道の光景。さすがにイタリアでは有名な避暑地、人も多いです。フェリー乗り場に到着すると、Varenna行きが出航したところで、次の便まで少し時間があったのでカフェのテラスで昼食。注文したのは定番のピッツァ。大きいです。食べ終える頃にフェリーがやってきたので、急いで乗船します。写真:下右は、向かうVarennaがある東湖岸ではなく、反対側の西湖岸。稜線付近は標高1000mを軽く超えているはずです。
 Bellagio付近はλ型コモ湖の中心・分岐部にあたるので、いくつかのフェリー航路があるようでした。Varennaへの便数も1時間に1本程度と多いです。Valenna からは時間と交通量などから、コモ湖のほぼ北端にあたる Colico Piano(コリコ・ピアーノ)という街までクルマで移動して、そこから自転車で東進する予定となったので、コモ湖の光景をゆっくり楽しめるのは、このフェリーに乗っている30分ほどの間だけとなってしまいました。と言うことで、出航直後から船のあっちへ行ったりこっちへ来たり、ウロウロして湖の光景を目に焼き付けます。フェリーが進むにつれて、Lecco 方面・南東側奥への展望も広がります。
 写真:上左はフェリーから振り返って。Bellagioの町は写真の左手付近です。奥はλ型のコモ湖の右下方向です。写真:上右は、進行方向・北へ向いて。ヨットの帆が多く見られます。どちらを向いても急峻な山肌が湖岸から天に向かっています。湖畔沿いには、オレンジ色の屋根とベージュを中心としたパステル調の壁の家が所々で密集しています。山腹の途中までも民家が続いているところもあって見飽きることがありません。どちらを向いても、山と湖に町が調和した光景が見られます。そうこうするうちに、Varennaに到着。写真:下右は、フェリーが港に着岸する少し前に見たVarennaの町です。
 実際、バスで走った Varenna から Colico Piano に向かうSP72(下の地図、左下から湖岸沿いの道)は、湖を眺めながら走るには交通量も多く、路肩は狭い上にトンネルも多く、自転車で走るにはちょっと厳しそうな道でした。クルマが少なければ楽しい道に思えましたが、交通量を考えるとストレスが多いばかりか、少し危険かと思われるくらいでした。
 Colico Piano(コリコ・ピアーノ)という街のすぐ南側にある Corte(コルテ)という地区の Via Laghetto(ラゲット通り)から Sentiero Valtellina (バルテリーナの小径とでも訳せばいいのでしょうか?)という自転車・歩行者道を走り始めます。上の地図、オレンジ色線は高速道路・SS38。Sentiero Valtellinaは、その北側に流れるAdda(アッダ)川に沿って作られています。Colico Piano からこの日の宿泊地 Bormio(ボルミオ)まで114qに渡って続くこの道を、当初は70qほど東にある Tirano(ティラノ)まで走る予定でした。スタート時点で既に14時くらいだったと思います。最近の私的サイクリングペース・20q/hrで3時間半くらい。夏時間と高緯度で遅い時間まで明るいとはいえ、そこまで走るのは結構厳しいかなと思われました。
 Colio PianoからSentiero Valtellina に入ってすぐの辺り(3枚とも)
 写真:中、糸杉の光景は至るところで見られたのですが、写っているものがほとんどありません
 少し走ると、両側は一面のトウモロコシ畑です(写真:下2枚)。この後も周辺に見える畑の作物は、大部分がトウモロコシでした。飼料用でしょうか。遠くには、これから向かっていく方向に切り立った山が見えますが、かなり高い大きな山が進行方向の右手(南側)にずっと見え続けていました。その大きさと存在感に、何枚も写真を撮ったものの圧倒された山容を伝えられるものがなくて掲載なしです。
 Colico Piano は湖岸沿いの観光拠点地のひとつようでした。湖岸脇の広場は整然としており、カフェなどが並んでいます(写真:下右)。写真:下左は、Colico Piano から少し走ったところ。この日は西風が結構強く吹いていて(追い風でした)、コモ湖にはカイトセーリングやボードセーリングを楽しむ人が多数。セイルの大きさは4m2少々といったところでしょうか。20数年前、ボードセーリングに入れ込んでいた私にとっては、懐かしく、ちょっとうらやましい光景でした。
 湖畔には日光浴をする人の姿も多数見えます。その向こうにSentiero Valtellina を走っていく自転車乗りの姿が見えます。Sentiero Valtellinaは、ここからコモ湖を離れてアッダ川に沿って東進するようになります。道には自転車だけではなく、歩く人や犬と散歩する人も頻繁に見かけます。道の幅は、ずっと下の写真くらいで一定。最初に少しだけ未舗装の部分がありましたが、後は上質のアスファルト舗装がほとんどでした。こんな道が北イタリア全土に続いているのかと思いましたが、Sentiero Valtellina のHPを見ると、ここだけのようです。
    
 行きかう自転車乗りは、ほとんどがゆっくりサイクリングをする人ばかりです。ツーリングを見られるサイドバックを装備した人や、ロードバイクやMTBでない、一般的な自転車で走る人の姿のほうが、むしろ多いくらいです。家族連れも多数。廃線跡にも見えますが、そうではなく、農道や古い道を改修したように見えました。スピードを出して走る人達は、一般道を走っているようです。
 道はほとんど平坦で、追い風にも助けられ気持ち良く走れました。なにより、クルマは全く通らないし、道周囲はもちろん、遠くに見える山々を眺めているだけでも心が和みます。速く走ることは勿体ない、ペースもゆっくりです。写真:上左、横を流れるアッダ川、水量は豊富ですが、ヨーロッパの多くの河川同様、透明度はあまりありません。
 途中で2ヶ所ほど屋根付き橋を見かけました。どちらも比較的新しい造りで、ひとつはSentiero Valtellinaそのもので渡ったのですが、残念ながらボケた一枚だけ(写真:下右下)。いずれも南予で見られるものに似ていました。周辺の山の標高はどれくらいなのでしょう。あまりに大き過ぎて、見当がつきません。斜面の中腹辺りにも教会の尖塔を中心とした集落が、あちこちに見られました。屋根付き橋を渡って、道は川の南岸から北岸に移動します。
 進んでいくと、雰囲気のある石積みのアーチ橋に遭遇しました(写真:下)。Ponte di Ganda という橋のようです。Sentiero Valtellina のHPにも載っているので、観光ポイントと思われます。道は橋を渡らずに真っ直ぐでしたが、ちょっと渡ってみました。地元の方も通っていました。好天で気温も上がって、暑いなあ、ボトルの水も少なくなってきたなあと思っていたところ、ちょうどこの橋の袂に水場がありました(写真:下左下)。有難い、頭からかぶって、手足にぶっかけて、生き返りました。とても冷たく、美味しかったです。もちろん、ボトルにも補給。San Bello(サン・ベッロ)という集落でした。
Ponte di Ganda と 水場
 一息ついて走り始めたところ、先行していた人が、どうも工事中で進めないようだと、さらに先行して他の道を探しにいった人を待機していました。ちょっと前に追い抜いて行ったベスパに乗った若いカップル(この部分は一般道併用区間でした)も戻ってきたので身振り手振りで状況を尋ねると、やはり通行は無理のようです。帰国後調べると通行止め地点は Desco(デスコ)という集落だったようです。仕方なく引き返して(写真:下右)南岸へと渡りましたが、すぐ東側にあるアッダ川の支流を越えるには高規格道路のような交通量が多くクルマのスピードも速い道・SS38を少しばかり走らなくてはいけないようです。時刻も既に17時を回っており、目的だった Tirano(ティラノ)までは、まだColico Pianoから走ってきたのと同じくらいの距離があります。ということで、Tiranoまで走ることは諦めて、ここで回収車を待つこととなりました。写真:下左は、Ponte di Ganda からアッダ川とそれに沿う走ってきたSentiero Valtellina(右手)を振り返ったところ。
 結局、この日の終着点となったのは Talamona(タラモ−ナ)という町。町中の小さな食料品店(既に閉店していました)の2階にある La Terrazza Cocktails Bar というお店で、回収車の到着を待つのを兼ねて休憩・水分補給。応対してくれたのは、とても愛想のいい女主人で、出発時もテラスに出て見送ってくれました(写真:下右上)。
Talamonaの町
 その後迎えに来た回収車に乗のりこんで、この日の宿泊地・Bormio(ボルミオ)へ向かったのですが、当初の目的地・Tiranoまではバスでも結構時間がかかり、自転車ではとても無理だったなあと思われました。日暮れの Tirano で小休憩。Santuario della Beata という教会脇の北上する路上には、鉄道軌道。どうも2日後に利用する予定の Bernina Express の線路のように思われました。Tirano を過ぎた辺りから天候が急変し土砂降りとなりましたが、幸いBormioに到着する頃には小康状態となりました。

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