Lombardia

    Passo di Gavia    (2018.07.18)


Passo di Gavia  峠から2qくらい手前にて
 Lombardia 4日目。この日、参加していたツアーは、午前中MTBをレンタルして Bormio(ボルミオ)近郊の山道を走って、午後はクルマで Lago di Garda(ガルダ湖)へ移動の予定でした。しかし、前日 Pass del Mortirolo(モルティローロ峠)を超えたところから見た山々の光景の向こう側にあると思われた Passo di Gavia(ガビア峠)は、きっと素晴らしい光景が待っているのだろうという妄想・誘惑が押さえ切れず、ツアーと離れて別行動をとることにしました。
 ちなみに、Passo di Gavia については、現地に行くまで、その名前さえほとんど知りませんでした。事前情報は、Pass del Mortiroloからの眺めからの想像だけ。
 現地でいただいた案内図で確認すると、Bormio から標高2652mの Passo di Gavia までは距離約23q、標高差は1400mくらいです(左地図:赤線)。午後の移動は14時くらい出発とのことでしたので、なんとか峠まで登って帰ってくることが出来るか。ということで、8時くらいに出発して12時まで走ったところで峠まで到達できなければ、そこから引き返してこようという算段をしました。前夜、ツアーコンダクターのKさんに別行動の了解と、交通量はさほど多くないとの情報をいただきました。ほぼ1本道なので迷うことはないだろうと思われます。単独行のつもりでしたが、Yoさんも同行したいとのことで心強い二人行となりました。左地図、赤線がこの日の行程(往復)です。左下の赤枠は、前日走った Pass del Mortirolo 付近です。
 予定より少し遅れて、8時30分頃 Bormio をスタート。この日も極上の天気です。街中を抜けると、後は SP29 で、ほとんど一本道。いきなり古い石積みのアーチ橋があったりして、心を高揚させてくれます(写真:下左)。前夜に Google map で確認していた Uzza(ウッツァ)、San Nicolo (サン・ニコロ)といった街を抜けていきます。Uzza の街では、建物をくり抜いたところを通過する一段と道路が狭くなったところがあったのですが、クルマもそこそこ通っていたので写真を撮れず仕舞い、残念。これまでも Passo dello Stervio でも見かけて気になっていた地名表示の赤斜線(写真:下右)、この日、Uzza や San Nicolo の街外れでも見かけて、その街はここで終わりという印であるらしいことを初めて認識しました。
 道は、Adda(アッダ)川の上支流・フリジドルフォ川に沿った谷を遡っていくのですが、左手には、山肌の上方半ばまで牧草地と思われる中に小綺麗な家々が点在しており、そこからさらに壁のように切り立った独特な形状の岩肌が天に向かって聳えて連なっています(写真:下右2枚、Cresta di Reit・標高3075m)。Sant' Antonio(サン・ト−ニオ) の街中では、SP29はそれまでのアスファルト舗装から石畳の道に変わりました。街の建物も、その石畳に同調したような造り。ちょっとゆっくりしたいところでしたが、まずは先に進んで、帰路に余裕があれば散策することにしました(写真:下左)。
    
 時々ゆっくり走る私達を追い抜いていく自転車乗りや、もう Passo di Gavia まで登ってきた帰りなのか対向する自転車乗りの姿も見かけます。ゆっくり走っているのでも勿体ないくらいの光景(街も山も)が続きます。が、Sant' Antonio の街を抜けると谷が狭くなって、道の両側に樹高のある針葉樹林が広がり左右の見晴らしがなくなりました。と思いながら後ろを振り返って見ると・・・、また絶景(写真:下左)。
 Passo di Gavia の登り口・Santa Caterina(サンタ・カテリーナ)までの行程は緩やかだろうと思っていたのですが、意外とずっとそこそこの勾配の登り道が続きました。距離的には峠までの半分・13qくらいでしたが、既に1時間を要していました。スキーリゾートかと思われる Santa Caterina の街は、窓際に花を飾ったホテルらしい建物が沢山並んでいました。街の中では、また石畳区間がありました(写真:下右上)。Santa Caterina の街を抜けると、いよいよ Passo di Gavia への本格的な登りです。道脇には Etape du Tour 時にも見かけたことのある「峠は通行可」の表示(写真:下右下)。Yoさんも走りながら同じようなところで写真を撮っているのが笑えます。
 左  振り返ると・・・
 上  Santa Caterina の町へ
 右  Gavia 峠への登り口
 Santa Caterina(サンタ・カテリーナ)の街を抜けてしばらくは、針葉樹林の中を、つづら折れの道が続きます。同じ SP-29 ですが、さほど多くなかった交通量は、さらに減ってクルマは時に通る程度です。自転車乗りのほうが多いくらい。時折針葉樹林の間から北側に広々とした斜面を持つ山を見ることができました。Santa Caterina の街を挟んで北側に位置する Monte Confinale という山のようです(写真:下左)。標高は、3370m。森林限界、植生の限界が高度に伴って境界されているのがよくわかります。前半は、この山容に圧倒されながら登り続けましたた。写真:下右下で、Yoさんが指さしているのが、この光景です。
 ただでさえゆっくりなので、後から走ってきた人に抜かれることはあっても、先行する人に追いつくことはありません。多いという程ではありませんが、次々と登ってくる自転車乗り達(写真:下右2枚)。大分登ったところで、こちら側にも牧草地と思われる草原の斜面に農家らしい建物が点在するところに出てきました。放牧された牛の姿も見えます。Santa Caterina の街を挟んだ Monte Confinale はもちろん、北西方面には Uzza や San Nicolo 付近で見上げていた岩壁が遠くに見えます(写真:下左の左端)。
 もうひとつ圧倒された光景が北東方向には大きな谷沿いに広がる展望です(写真:下左)。フリジドルフォ川の上流。こちらも周囲は 3000m級の山々で囲まれています。奥の山は、Monte Cevedale でしょうか(写真:下右下)、標高3769m。ほぼ富士山と同じ高さです。谷沿いに点在する小さな村との対比が、その大きさを際立たせているのですが、小さな写真だとスケール感がわかりにくいかと思います。どちらの光景も、登るほど、その展望は迫力を増していきます。その都度、立ち止まって写真撮影。このふたつの光景が見られる中を走れたというだけでも、Passo di Gavia に向かってきて良かったと思えたくらいでした。が、さらに進むとその先には・・・。
 牧草地付近を過ぎると、森林限界を超えたようで、木々(大部分は針葉樹)の姿が消え、道は南方向へと向かっていきます。今度は、右手・東側に谷を隔てて大きな山塊が迫ってきました(写真:下右)。
 そんな道を進んでいくと、前方には断層様の斜線が走る、垂直とはいわないまでも、かなり切り立った大きな岩盤が見えてきました(写真:下3枚)。ここも迫力満点。写真では、やはり岩盤の大きさ、角度、高低差が、うまく表されていませんが・・・。上の地図、ジグザグの地点から少し南側にあるU字のコーナーになったところがここです。

A
B

@
 ここまでの勾配は、きつくもなく緩くもなくという程度でしたが、この岩盤の下方を横走するように回り込んで走っていく前後は一番きつく、事前に現地の観光案内所で入手していた標高差入りのマップ確認していた10%越えの付近と思われました。このマップの存在が、この日 Passo di Gavia へ向かう情報の唯一の拠り所でした。その後も、しばらく急勾配の道が続きます(写真:下2枚)。
 北側に見えた山や北東の谷を含む光景は背後に姿を消し、変わって左手・東側に谷を挟んで、さらに迫ってきた山塊(写真:上2枚)を横目に登り続けると、前方に氷河を抱いた高峰が見えてきました(写真:下)。そこまでの広大な眺めも、それだけでも満足と書きましたが、ここからの山は荒々しさと荘厳さを加えて、もうただただ見とれるばかり。正面に見えてきたのは、Passo di Gavia の東側に鎮座する Corno dei Tre Signori 、標高3360m。下右下2枚は、東手の山塊。その奥には、稜線近くに氷河が連なる山が見えてきました(写真:下右上)。
 ゆっくり走っていましたが、登り予定時間の正午までには余裕を持って Passo di Gavia に到着できそうだと見通しがついて、さらに立ち止まる回数が増えてきました。森林限界を超えてからの光景は、また違った迫力で、近づいてきた周囲の山々の大きさにこれまで以上に圧倒される一方。
 あっちを見ても、こっちを見ても、唸るばかり。思い切ってやってきて本当に良かった。振り返ると(写真:下左)、一度見えなくなっていた北側の Monte Confinale の山々が再び見えてきました。その背後には、さらに標高のある山の姿も。前方と左手には氷河の山、自転車とともに記念撮影(写真:下左2枚)。
 峠までもう一息と思われるところまでやってきました。前方には建物と何かの記念碑のようなものが見えます(写真:下)。地図を見ると、峠の手前には湖があるはず。まだ峠ではないようです。
 その記念碑に遅れて到着してみると、先着したYoさんが翻るイタリア国旗の傍らで憑かれて放心したかのように山に見入っています(写真:下左)。これは凄い。道の左手・東側には、氷河を抱いた高峰が林立しています(写真:ひとつ下右)。振り返ると、先程岩盤を見上げていた付近の背後だった稜線近くまで一面の草原が広がっています。背後には Monte Confinale の山々(写真:下右上)。地図で確認すると、峠の1q少々手前です。写真:下右下の建物は、レストラン兼ホテルのようです。ほぼ同じ位置から南へ向いて、Corno dei Tre Signori の峰を背景に一枚。光景の素晴らしさに、ゆっくり登ってきても多少はある疲れも吹っ飛んでしまいます。広角で撮っているので、ひとつ前の写真同様、稜線は随分と遠くに感じられますが、肉眼で見ると、すぐにでも登っていけそうなくらい近くに見えました。
 標高が上がったので、登り始めの Santa Caterina の街の背後にあった Monte Confinale(3370m)の稜線を越えて、Gran Zebru(グラン・ゼブル標高3851m)と思われる高峰が姿を見せてきました。この山の存在感も圧倒的でした。ズームアップすると、こんな感じ(写真:下左)。写真:下右は、上述のように東側に聳える Ghiacciaio della Sforzelina の山頂付近と氷河をズームアップ。一番高いところは、Punta S.Matteo (標高3678m)という峰でしょうか。写真だと小さいので、実際に見た感じは、写真より遥かな圧倒感で迫ってきます。ちなみに、山の名称はこちらを参照(誤認の可能性あり)。
 どの写真も、ほとんどクルマが写っていないのは、できるだけクルマが通る時を避けていることもありますが、実際あまり通らないので、時に左側を走っても全く問題ありません。ロードバイクだけでなく、MTBの方の姿もちらほら、E-bikeの方も何名か見かけました。
 勾配が緩やかになった道を進むと、地図で確認していた Gavia 湖( Google map では white Lake と記載)が見えてきました。前方には、なだらかな草原の向こうに切り立った山塊が見られます。これが、前日に登った Passo del Mortirolo を少し下ったところから遠くに見えた山々を反対側から見たところかと思われます。Passo di Gavia には予定制限時間一杯の正午前に到着。まずは、峠の表示があるところで記念撮影(写真:下右下)。
 峠手前の湖に沿って

 左:奥の稜線
   Pass del Mortirolo から
   見ていたところだと思われる
 振り返ると、次々と自転車乗りが登って来ます(写真:下右)。峠には道を挟んで二つほど、レストランを兼ねたホテル様の建物がありました。テラスの柵には、Bormio からの距離表示や標高などが記載された案内板がありました。背景色はマリアローザ。反対側から登ってきた人のためにも同じような案内板がありました。峠の全体像は、写真:下左上。背後の山は、Monte Gavia(標高3223m)。峠の標高が2621mですが、直ぐにでも登れそうな雰囲気です(実際はそうはいかないでしょうが)。
 左3枚 峠周辺の光景
 右   峠から振り返って
 峠の南側には小高い丘があって、何人かが散策している姿が見えました(写真:下左)。また少し異なった光景が見られるのではないかと登ってみました。自転車は専用のラックに引っ掛けたのですが、上背のある私でも脚が短くサドルが低いためか前輪が地に着きません(写真:上左下)。丘に登って、まずは登ってきたほうを振り返ってみます。Gavia湖の向こうに、登る途中で唸りながら、また何度も立ち止まって眺めていた氷河を抱いた山々が見えます(写真:下右上)。Yoさんとその光景に感激していたら、近くにいた人が写真を撮ってくれました。
 左  峠・南側の丘
 上  丘から峠方面
 右上 丘から北へ、Gavia湖
 右下 Yoさんと
 西南方向に目を転じると、峠からまだ少し登っているようにも見える道に点々と走っていく自転車乗りの姿が見えます。背後の山は、写真:上左、後方の山肌です。この手前の谷筋を下っていくようです。 ズームアップすると、写真:下、こんな感じです。上述したように、写真だと小さいので、実際の圧倒感はこんなものではありません。
 下の写真は、左:北側に見える Gran Zebru(グラン・ゼブル標高3851m)、中:峠の東北東を遮る Ghiacciaio della Sforzelina の山々と氷河、右:南側の谷、はるか遠くをズームアップ。Monte Adamello(標高3554m)付近でしょうか。見飽きることのない展望が広がっており、風もなく暖かかったので、ゆっくりと眺めていました。
    
 しかし、制限時間があり、いつまでも居るわけにもいきません。引き返し始めますが、名残惜しく目に焼き付けようと何度も立ち止まります。
 Gavia 湖の傍らで写真を撮っていたところ、下方から凄いスピードで走ってくる自転車乗りがいます。まるで平地を巡行しているようです。それまでにも何人か速い人を見かけましたが、明らかに走りの質が全く異なっています。なんだか周囲にオーラが漂っています。カチューシャのチームジャージを着ていましたが・・・。目の前を通過していくと、そのすぐ後を、なんとカチューシャのチームカーが走っていきました。その後、次々と数名のカチューシャジャージがやってきました。本物のカチューシャチームです。この日は Tour de France 真っ最中だったので、2軍? それでも、全く走りが違います。いや、素晴らしい光景の上に、これまたいいものを見せていただきました。
 往路時は、振り返った見た光景を前方に見ながら、ゆっくりと下ります。右手には、苔が生えているかのようにも見える山肌。稜線の一番高い山は、Pizzo Tresero (標高3594m)と思われます(写真:下右)。写真ではわかりませんが、所々に滝のように急角度で流れ落ちる水の筋が見えます。流れ落ちてくるのは、氷河から融けてきたものでしょう。広角気味で全体を捉えようとすると、やはり高度感がなくなってしまいます。
 左手前方に下っていく(登ってきた)道が見えます。谷底には、Santa Caterina の街もちらりと見えてきました(写真:下左)。振り返ると、氷河の山々も手前の山肌に隠れるようになってきました(写真:下右)。
 往路時 Uzza や San Nicolo 付近で見上げていた岩壁と山肌に点在する集落(写真:下左)、そして3000m級の山々に囲まれたフリジドルフォ川の上流の眺め(写真:下右下)。往路で何度も立ち止まって見た光景ですが、飽きることがありません。ちょうど森林限界から下方になった辺りで、これまた凄いスピードでありながら、とても安定した走り方でカチューシャの一団が下っていきました(写真:下右上)。自転車も速いですが、チームカーも車道として決して広くはない道を躊躇なく飛ばしていきます。こちらも圧巻でした。
 下るのは速いです。麓の Santa Caterina まで下ってきました。ここからも、それなりの下り坂なので、楽ちん。ホテルの出発時間には余裕を持って到着できそうです。
左2枚 Santa Caterina の街
上   Sant' Antonio の町
右   Sant' Antonio から北の山肌
 往路ではいいところだなあと思いながら通り過ごしたSant' Antonio までやってきました。Bormio まではあと3qほどです。石畳の道と古い街並みを楽しみます。壮大なスケールの山もいいですが、こうした街並みに親しむことも、また大きな楽しみのひとつです。
    
 満喫しながら進んでいたところ、ちょうど石畳がアスファルト舗装に変わる辺りで後輪がパンク。ちょうどあった水飲み場で修理しますが、時間が迫ってきたので焦るとうまくいきません。Yoさんには先に行っていただき、現状を知らせていただくことにしました。が、ほどなく復旧。大急ぎで戻ったところ、みなさんまだまだ準備中でした。Passo di Gavia 思い切って別行動をとって、本当に良かった。快く承諾していただいたKさんにも感謝です。

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