Lombardia

   Passo dello Stervio !!    (2018.07.16)


Passo delle Stervio
 2日目は、いよいよ今回最大の目的地・Passo dello Stervio に向かう予定です。ところが、前日の予報では天候があまり良くないと伝えられていました。走っている間ずっと好天だった前日も、バス移動中だった夕方は一時土砂降りになるほどでした。この日も朝の天候状況を見て予定を立てるということになりました。ところが、翌朝起きてみると外は快晴。悪天候の予報は良い方に外れ、一気にテンションがあがります。
 午前9時過ぎ、快晴のもと、Bormio を出発。峠までずっと SS38 一本道ですが、まずは道なりに北上します(下の地図参照)。Bormio の町を出ると、すぐに山が迫って来ます。Col d'Izoard(イゾアール峠)を思わせる瓦礫だらけのように見える岩石の斜面も、全てが大きいです(写真:下右)。比較的緩やかに感じられた序盤の道をゆっくり走っていると、追い越していく自転車乗りの姿が多数。クルマも時々通るのですが、段々と減って、自転車とクルマの数は同じくらいになってきました。登るに連れて、周囲の街は次第に眼下に遠ざかっていきます。写真:下中は、おそらく Premadio (プレマディオ)という街。このポイントを過ぎて少し進むと道は東向きとなり、Adda(アッダ)川に流れ込む深く大きい谷沿いを東に向いて登っていくようになります(下の地図参照)。
 
 左 路面に印刷された文字 距離間隔は確認できていませんが、Bormio と Steivio の名が交互に記されていました
 道脇には写真:下左のような峠までの距離表示がありましたが、フランスの有名な峠で見かけるような1q毎の表示はなかったようです。東進する道の途中、3か所のZ字のつづら折れがありました。その度に、高度がグンと上昇していきます。写真:下右は、つづら折れのひとつ。写真だと、周囲の山の大きさが伝わりません。中央奥にそびえる山の量感・高度感も圧倒的だったのですが・・・。
 広角にすると高度感がなくなるし、望遠にすると広さが伝わりません。勾配も実際より随分と緩やかに見えます。
 トンネルも数ヶ所ありました。そのうち1ヶ所は狭く、前後に信号があって対向と交互一方通行でした。いずれも、ほとんど素掘りの状態です。岩盤が硬くて、しっかりしているのでしょう。写真:下右下、トンネル内は明るく写っていますが、実際はもう少し暗かった記憶です。ちょっと立ち止まっていると、次々と自転車乗りが登ってきます。単独の人やチームジャージを着た数人のグループ、女性も当たり前に登ってきます。しかし、さすがに長い坂道、前日のSentiero Valtellina のような普通の自転車や小さな子供連れの姿は見かけません。ほとんどの人がロードバイクでした。
 トンネルを抜けると、直前に地図で確認していた・つづら折れ区間が前方遠くに見えてきました(写真:下左)。Passo dello Stelvio は、右手の山を回った裏側です。ジグザグの道から、左手を回っていくようです。ここまでで、全行程の60%くらいでしょうか。
 疲れてきたところに、追い打ちをかけるように勾配がきつくなってきました。気のせいかなと思っていたら、路面に14%の表示(上の写真:下の黄色い三角)がありました。
 天気は最高、道も最高、周囲の山々の光景は言うまでもなし! さらに進むと、つづら折れを近くまでやってきました。写真:下左は、つづら折れ区間の下方から。左手の滝状となって流れ落ちる川の水量も半端ない規模です。横に建つ家屋との比較で大きさがわかるかと思います。しかし、やはり見たそのものの迫力は伝えられません。うろ覚えの地図では、峠西側には峠手前と峠から随分離れたところにジグザグのつづら折れがあったように記憶していましたが、後者がここと思われました。写真:下右は、少し角度を変えて頭上を見上げたところ。稜線近くは切り立った岩肌です。その下には瓦礫のような岩石の斜面。ジグザグ道の最上部は、その下方を横切っています。
 下の地図、左はこの日の全行程です。オレンジ色の道を往復しました。右は、真中の赤枠付近を拡大したものです。つづら折れの道であることがよくわかります。この上下の写真は、この下右の地図付近でのものです。実は、冒頭の写真・峠東側のつづら折ればかりに目がいっていて、西側の途中にもこんなつづら折れがあることを知ったのは、出発も間近になってからでした。
 上地図の左下から見たのが二つ上の写真。この下の写真は、つづら折れを登りながら左下方向を見たものです。
 つづら折れを登っていきます。折り返す度に、高度は上がり、展望はより遠くまで広がっていきます。大分登ってきました。振り返ると、登ってきた道の背後にも大きな山容が連なっていました。写真:下右は、つづら折れの最初の付近から来た道を振り返ったところ。圧倒的な山容の中を走る道の光景は、見ているだけでも楽しいものです。登ってくる自転車乗りやオートバイが小さく見えます。左の2枚は、さらに登って、つづら折れを見下ろしたところです。
 写真:下左は、最後の折り返しの部分。下から見上げた時に、瓦礫のように見えた付近を登っていきます。ジグザグ道が終わっても、まだまだ道は登っていきます。この向こうには、どんな光景が待っているのでしょう。
 ジグザグをかなり登ったところから、登ってきた道を振り返ってみました。魅了され心に思い描いていた Passo dello Stelvio の光景は峠から東側のつづら折れでしたが、西側にもこんな素敵な道があるとは現地に行くまで全く知りませんでした。さらに登って一枚(写真:下)。つづら折れの全景と谷を東に向いて登ってきた道を一望。峠から東側の展望を見るまでもなく、ここまででも十二分に満足できる光景が広がっています。名前だけ知っていて訪れた Col du Galibier(ガリビエ峠)は、峠はもちろん、その前後の道程も含めて、これまで自転車で走った中で最高・別格の存在だと思っていますが、Passo dello Stelvio はここまでだけでも双璧を為す道・峠だと思われました。
 写真:下左は、つづら折れを登り切ったところから西へ。山頂付近に氷河のある山を遠くに見ることができました。写真:下右は、北方向。奥に見える山が、またとても大きな山塊だったのですが、どうも写真だと圧倒された大きさがわかりません。
 ジグザグのつづら折れを登り切ると、そこにはなだらかな草原が広がっていました。地図上から、ひょっとしたらとは思っていましたが、深く急峻な峪沿いの道を登ってきた上方に、こんな広い草原があるとは。ちょっと驚きです。道の勾配は少し緩やかになりました。おまけにうまい具合に吹いていた追い風のおかげで、快適。草原のほぼ中央部付近には、教会など今はもう使用されないような3つほどの建物と1910年代のいうから第一次世界大戦らしい慰霊碑が建っていました(写真:下右中)。
 草原では、牛たちがガランゴロンとカウベルを鳴らしながら、のんびりと草を食べています(写真:下左・動画)。そんな横を三々五々自転車乗りが走っていきます。そんななか、なんと手漕ぎの自転車の方が登っていかれました(写真:上右下)。それも結構なスピードです。いや、凄い!見上げると、稜線付近はギザギザの岩場です(写真:下中)。少し進んで振り返ったのが、下右の写真。谷筋を流れる水が、先程の滝につながっています。
    
 写真:下右は、草原地帯をほぼ登り切った辺りから来た道を振り返ったところ。道は、稜線付近がイタリア・スイス国境と思われる岩山に至る草原の山肌を、大きく弧を描くように進んでいます。ちょっと小さくてわかりづらいですが、またもう一人、手漕ぎの自転車で登ってくる人の姿が見えます。写真を撮っていたら、追いついてきました。女性だったのでさらに驚きましたが、ウィーンというような独特の音がするので、よく見ると電動アシストが装備されていました。これも e-bike の様です。併走者と思われる男性がMTBで横を走っていました。
 さらに少し登ると、またつづら折れが始ます。そこで、これまで見逃してきたのか、峠までの曲がり角数を示した表示を見かけました(写真:下左下)。ここからは、後幾つと数えながら進みました。草原の終わり、再び登り坂が急になるところは大きくカーブをしていて、左手への分岐があります。左手へ進むと、Umbrail Pass(ウンブライル峠)でスイス国境とのこと。分岐部に立つこれまた使用されていないらしい建物(写真:下左上)は、税関だったとの記載を何処かで見かけました。
 
 その辺りで、後3qくらいの表示があった記憶です。写真:下右、前方の稜線やや左手、建物の見えるところが Passo dello Stelvio のようです。さあ、もう少しだと思って進み始めたのですが、ここから急に体が重くなってきました。ハンガーノックかなと手持ちの補給食を食べたのですが、一向に改善しません。頭も痛くなってきた。ひょっとして軽い高山病? ゆっくり登ってきたし、同じくらいの標高である乗鞍ではレース中でも空気が薄いなんてことは感じたことがなかったのですが・・・。それだけではないと思われますが、この分岐からの勾配は手持ち地図の表示・7〜8%よりずっときつく10%は越えているように思われました。
 
 もう休み休み。時々抜いていく自転車乗りとは、苦笑いの挨拶です。タンデムに乗ったカップルも登っていきました。写真撮影という名目で、休憩を取りまくりです。下の写真は、峠までもう少しのところまで登ってきて、振り返って北東方向を眺めたところです。左手中に見える建物が先程の分岐。その少し右手に見える建物が Umbrail Pass・スイス国境だと思います。さらに右手は、スイス側に向かって下っていく道です。こちらもいい感じのように見えます。この付近の地図を最初に見た時、Umbrail Pass と Passo dello Stelvio を100qほどで周回するコースがとれるので、可能ならそのように走りたいなと思っていました。が、まだ元気のあった数年前ならともかく、現状の体調ではとても無理でした。
 もう這う這うの体で、なんとか Passo dello Stelvio に到着しました。写真:下左下、この標識は峠から Bormio 側に少し下ったところある表示で、本当の峠は200mくらい先にあります。休憩ついでに写真を撮って、少し走って、やっと峠に到着。Bormio から3時間半くらいかかりました。
 峠には、登っていた途中では考えられないくらい大勢の人で賑わっていました。自転車、オートバイ、そしてクルマでやってきた人達。人の多さに加えて、何軒もの土産物店が並んでいることにも驚きました。峠の向こうに見える氷河を抱いた山は、Oltres(オルトレス)という山のようです(写真:下右)。峠の表示は他の多くの峠同様、貼られた多数のステッカーで、ほとんど文字が見えない状態でした(写真:下左中)。2758mとの表示が見えますが、2757mとの記載が本当?お店の前には2760mなんて記載もありました。まあ、この光景の前では、どちらでもいいようなことに思えます。Bormio の字の上にある赤斜線は町の境界(ここまで)という表示らしいことは、この3日後・Passo di Gavia に向かう途中に気づいたことです。写真:下右の一番奥に進むと、待ちに待った光景(冒頭の写真)が目の前に現れます。
 峠から右手(南)のほうに、少し登っていけそうな道があったので進んでみました。右手上方には氷河があってスキーをしている人の姿も見られます。ここから、さらに Tuckettspitze (トゥッケトスピッチェ山)方面へゴンドラで登れるようです(写真:下右下)。このゴンドラに乗って高度を稼ぐと、また違った目で Passo dello Stervio を見ることができるのでしょう。写真:下左は、右手に登って少し先に進んだところから見た峠東側の眺めです。
 そして、心に描き続けていた、あの光景。何度も写真では見ていましたが、その場に立って見た壮大さは圧倒的でした。冒頭の写真は手持ちのカメラの一番広角で撮ったのですが、右手の Oltres 山からの斜面が写っていないので、迫力は半分以下。また広角なので、高度感は実際より大分減弱されて見えます。下の写真のように、少しズームアップすると、背後の山の大きさ、谷底へ落ち込んでいく道の様子がよくわかるかと思います。元気があれば少し下って登り返したのですが、その時は疲れ切っていたのと、この光景が見られたことだけで満足して、下ってみることは考えもできませんでした。
 写真:下中は、南側へ少し登って、峠付近全体を見下ろした1枚。奥の稜線の向こう側はスイスです。峠には何軒かのホテルやレストラン(手前)、そして上述のように土産物店(道の向こう側)が並んでいます。写真:下左は少し位置を変えて、立ち並んだ土産物店を中心に撮ったもの。土産物店では Passo dello Stelvio をあしらった自転車ジャージも多数並んでいました。その他、何処の観光地でも見かけるようなピンバッジやTシャツ、etc。ほとんど建物のない山道を登ってきたところの賑わいは、興覚めとも思われるかもしれないし、それはそれでまたいいものだと思われるかもしれません。峠にお店なんて Col du Galibier では皆無だったし、Col d'AubisqueCol du Tourmalet でも2軒のカフェ(兼、宿)だけだった記憶なので、ここは、かなりメジャーな観光地なのでしょう。写真:下右、山の上に立つ建物(Dreisprachenspitze)は、スイス・イタリア国境に位置します。また、下左の写真でもわかるように、オートバイで訪れる人も多く、自転車乗りだけでなくオートバイ乗りにとっても憧れの地のようです。さらに、二つ上の写真のようにランボルギーニやポルシェ、アストンマーチンなどの高級車やオープンカーも数多く走っていました。
 とにかく好天に恵まれて、この旅で一番の目的だった光景を(道程も含めて予想を遥かに越えて素晴らしかった)見られたことに大満足。ちょっと足が重たくなったことも吹っ飛んでしまいました。とは言うものの、こうして振り返ってみると、沢山写真を撮ったつもりだったのに、なんでもっとあんなところやこんなところも撮らなかったのだろうとか、もう少しこうしていたらとか、と悔やむことも多数です。同じような写真ばかりで、申し訳ないけど、もう一枚。それくらい、この光景には惚れ込んでいます。下方から登って来る自転車乗りの姿が点々と見えるのが、よくわかると思います。
 いつまで見ていても飽きない光景。反対側へ下ったら、さらに世界が広がるのでしょうが、残念ながら引き返さなくてはなりません。下りも、名残惜しく、あまりスピードは出さないで光景を目に焼き付けながら、ゆっくりと走りました。途中上述の三叉路を右折して Umbrail Pass(ウンブライル峠)へ立ち寄ってみました(写真:下左)。この先はスイスです。こちらは、Passo dello Stelvio と異なり閑散としていました。
Umbrail Pass から Passo dello Stervio 方面
スイス国旗の下側付近が Passo dello Stelvio
 国境には、これも第一次世界大戦のものと思われる慰霊碑がありました(写真:上右)。イタリアとスイス国旗がはためいています。説明書きも沢山ありましたが、読めないので近寄ってみることもなく帰路へと引き返しました。相変わらず天候は上々でしたが、下りは寒いくらいなので持ってきた上着を全部着込みました。もう一度やってくることはまずないだろうなあと、途中何度か立ち止まりながら Bormio へ。

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