近くても意外と遠い、小豆島へ
 小豆島は徳島市内から直線距離だと50q少々。遠いということなはく、むしろすぐ近くなのですが、船で渡る必要があることがネックなのか意外と訪れることがありません。初めて走ったのは1974年、高校1年生の春。2回目は2011年夏。自転車旅を始めてもう50年にもなるのに、今回が漸く3回目。決して魅力がないわけではなく、知人からの情報では一般的な観光地以外にも魅力的なところが何ヶ所もあるようです。一度は紅葉の時期に走ってみたいと思っていましたが、今回は時期も遅くなって、しかも計画的にではなく、たまたま一日走れそうだったので思いついて訪ねてみました。 (2023年12月21日 記)

四方指から南東方面 (2023.12.02)
 コースはいくつか考えた末に、距離と積算標高を考えると以下のようになりました。ほぼありきたりの主要道ばかりですが、今回はこれまで走っていない外周の道をできるだけ走って全体像を掴むことと、高所からの鳥瞰好きとして四方指付近からの眺めは外せないと島中央部にも立ち寄ることを主な目的としたこともあってです。
 
コース  土庄−大部−四方指−福田−大角鼻−釈迦ヶ鼻−土庄
走行距離   125q   積算標高 2200m
最高地点   四方指  標高400m
走行日   2023年12月 2日  天候:晴れ  FELT F1
 小豆島(土庄)行のフェリー第一便の出航時刻は午前6時半です。その後の余裕を考えると第一便で島に渡ることが理想的ですが、7q余り離れたところをデポ地としたこともあって7時半出航の第二便で渡ることにしました。遅れないようにと余裕を持って日の出前に高松港に到着。港やJR高松駅周辺は走ったことがほとんどなかったので、乗船までの時間、付近を散策してみました。サンポート高松と呼ばれるこの地区は1990年代から2000年代始めにかけて埋め立ても含めて整備されたそうで、空間的に広く感じられる街づくりです。港周辺もよく整備されていて、散歩する人やジョギングの人の姿も沢山見られます。日の出前後の時を過ごすにはうってつけの場所でした。きっと、夕暮れ時も瀬戸の島々を眺めながら、ゆったりと過ごせるのではないかと思われました。
 
左上 屋島方面
上  向こう側に乗船するフェリー
左  屋島の左手奥に小豆島
右  世界初ガラス灯台・せとしるべ
 フェリーは定刻に出航。観光時期が過ぎているためか車両甲板の埋まり具合は半分以下。自転車は私と技能実習生らしく三人組の女性のみでした。土庄港まで、ちょうど1時間。デッキは風も強く寒そうだったので、船窓からの眺めで時を過ごします。西側には島々の間に瀬戸大橋の姿が確認できました。下船後は、まず世界一狭い海峡と言われる土渕海峡に立ち寄って、時計回りに県道263号線で西海岸から島北部の海岸線へと進みます。
フェリーから、せとしるべ 大槌島の向こうに瀬戸大橋 土庄港に入港 土渕海峡
 道は二車線の広いところもあれば、1.5車線の旧道の部分もありますが、交通量が少ないので走りやすいです。詳しく調べておけば何処か見所もあったのかもしれませんが、道沿いの光景や瀬戸内海など周りの景色を確認しながら先へ。同じ瀬戸内のせいでしょうか、荘内半島を周回する道にも似た雰囲気だなあと思いましたが、異なるのは海を挟んですぐ左手(北側)に本州・岡山県が見えることです。路肩には愛媛県のようなブルーラインこそないものの、この後も含めて適時○○まで何qの標示がありますし、道脇にも地図入りの標示が随所に設けられていて、結構役に立ちました。西風は強めでしたが(北海岸では追い風)、この時点では寒霞渓方面の山も晴れ渡っていました。
 下左の写真は、県道26号線に突き当たる屋形崎付近にて。写真が小さいのでわかりづらいですが、瀬戸内海の向こうには岡山・兵庫県境付近の島々や、そこにある民家まで確認できました。県道26号線を東に進んで、大坂城残石記念公園はほぼ素通り。下右の写真は、大部の町手前から東へ。手前に見える大部の町から島中央部へ向かうのですが、今回のコース設定で唯一外れる島北東部の海岸線が奥に見えています。石切り場のような光景もあって魅力ありそうです。今度はあそこも走らなくては。
 大部で交差点を右折して県道31号線へ向かう前に大部港へ立ち寄ってみました。確か日生とを結ぶフェリーがあるはずだと思っていたのですが、閑散としています。後で調べて知ったのですが、なんと前日・12月1日から休航となっていたそうです。
 交差点を右折すると寒霞渓方面へ向けて登りです。寒霞渓までの距離10qの標示がありました。目指す四方指展望台の標高は770mほどなので、平均勾配は7%ほど。苦手な勾配です。心して向かったのですが、序盤は意外と緩やかでした。時に10%を越えるところもありますが、4%程度のところが大部分。この分だと後半がきついのかなあと戦々恐々で進みます。道路脇には樫の仲間のような常緑樹が多く、落葉樹は1割くらいです。下右の写真は、標高200m付近から見た大部港方面。県道31号線からこのような北側の展望が広がるところは3ヶ所程度でした。地形図を見ると、つづら折れのコーナーが続くことがよくわかりますが、何処かで撮ろうと思っていて漸く撮った一枚が下左上の写真です。標高500mを越えた程度だったのでまだまだ先があると思っていたのに、この後すぐに県道27号線に突き当り、最後のコーナーでした。道沿いの木々は後半になると松や杉が多くなってきます。その割に路肩には落葉樹の落ち葉が堆く積もっていました。結局、大部から県道のT字路までクルマとは全く出会わず、独り占め。写真も少ないですが、勾配が思ったより緩やかだったこともあって気持ちよく登れる道でした。それでも8qほどに1時間要しました。

県道31号線 最終コーナー

県道31号線
 T字路のところに四望頂という展望台があったので、立ち寄ってみました。寒霞渓を登って来るロープウェイも見えて、ここだけでも十分と思えるほどの眺めです。残念ながら、朝日で日陰となる寒霞渓は、光る海とのコントラストが強く写真では黒く飛んでしまいました。写真:下左は南・内海湾方面。下右は、西側。順光に近いので、ややのっぺりした感じで立体感に欠けますが、奇岩が並び折り重なる状況はわかるかと思います。目を見張る程の大きさはありませんが、一見の価値はあるでしょうか。
 四望頂からの眺めを楽しんだ後は県道27号線を西へ、目的のひとつ・四方指方面へ。ちなみに前回は寒霞渓ロープウェイ山頂駅付近から登ってきた小豆島ブルーライン(県道29号線)を引き返したようですが、1974年は同じこの区間を走っているはずですが、当然記憶はほとんど残っていません。標高差はまだ200mほどあって、ここからの坂が急勾配でした。途中で東南方向へ展望が広がるポイントありました(写真:下)。この後向かう予定の大角鼻が海へ突き出しています。海を挟んで向こうには四国。自転車を停めて写真を撮っていたら、下ってきた島内観光バスも停車して乗客に展望を楽しんで貰っているようでした。ビューポイントのひとつなのでしょうか。
 到着した四方指・美しの原からは、南側を中心とした展望が広がっていました。写真下左は、寒霞渓ロープウェイの山頂駅付近。風化と浸食によって形成された特徴的な崖の山肌が一望できます。下右は北東、家島諸島・西島の奥は相生から姫路方面の眺望です。霞んでいるのが残念ですが、いつもは大坂峠から北へ遠くに眺めている播州地方が随分と近くに見えます。眺めを楽しんでいたら、私よりは高齢のデジイチを持った人が話しかけてきました。朝は天気が良かったのでやってきたが意外と雲が多くなったとか、いくつかの見所も教えてくれました。この後立ち寄るつもりだった、すぐ北西にある展望台についてはあまりここと見晴らしは変わらないとのことだったのでパスすることに。
 下の写真は、南西に向いて。五剣山と屋島が見えています。屋島の右手には高松市街の一部が見えていたし、五剣山の左上には讃岐山脈・大川山が確認できます。帰りのフェリーからは、大川山の右手奥に徳島・矢筈山も見えたし、さらに左手(東)には剣山ジロウギュウも確認できました。やや霞んでいましたが、展望は抜群。ゆっくりしていたかったのですが、後の予定があることと寒かったので退散。ちょうどこの前後の時間帯のみ山頂付近には雲が覆っていたことが残念。視界のいい時に要再訪です。
 登ってきた道を四望頂方面へ引き返します。往路・登り時にも気に入っていた県道27号線(小豆島スカイライン)、落葉樹はすっかり葉を落として裸木となっていましたが、樹高のある木々が連なっていて、いい雰囲気です。ここも新緑時やほんの少し見頃に遅れた紅葉時に再訪が必要です。その頃は交通量も多いでしょうが。四望頂からは寒霞渓ロープウェイ山頂駅方面に登り返し、そのまま素通りでさらに県道29号線(小豆島ブルーライン)を東進。登りはもう少し続きます。道周囲の雰囲気は県道27号線とよく似ていて、広葉樹の混じり具合は登ってきた県道21号線よりずっと多くて見映えあり。最高地点から下り始めて2qほど進んだところで、島の北東・福田港に向かう県道246号線へと左折。ここからも初めての道です。

北東・播州方面の眺めは少ない

福田の町
 下り始めると、最初は1.5車線の比較的緩やかな坂。標高もあるので何処かから家島諸島や播州地方が手に取るように見えるのでは、という期待で度々目を北東方面に向けますが木々の切れ間がありません。福田の町がすぐ近くになる頃になって漸く展望が広がりましたが(写真:下左)、ほぼ東向きで家島諸島も播州地方も左手稜線の後方に隠れてしまいました。写真ではわかりませんが、水平線上には右手から淡路島、左手から姫路から神戸方面が見えており、ほぼ中央部に明石大橋があるはずです。県道21号線同様クルマには出会わないかもと思いましたが、2台と擦れ違い。この広場から福田の町までは急勾配でした。
 下り切った福田の町は姫路からのフェリーが発着していますが(上の日生−大部と異なり現存)、こじんまりとしていて観光客を相手にするようなお店も無いように見えました。写真:下右は、町から1q少々南へ進んだ福田海岸の展望所から。防波堤?で繋がる小島(固有名詞)の向こうに家島諸島が見え隠れしています。
 東海岸はいつも大坂峠から遠目に切り立っている様相を眺めていたのですが、実際に海岸線沿いを走ってみると、その通りでした(下の写真)。急峻な山肌や以前もしくは現在も石や土砂を採取していると思われるところ(淡路島からも確認できる)が連続します。何枚か写真を撮ってみたが、なかなかその迫力を伝えられる一枚がありません。
 下左の写真、下に見える集落は地形図で岩谷と記載されているところ。島内にいくつかある大阪城石垣石切丁場跡のひとつがあるようです。下右は東海岸線で福田に次ぐ集落・橘地区。背後ある山頂付近が岩場の崖となった山は、地形図で千羽ヶ嶽・拇指嶽と記載されているところだと思われます。地形図には山頂まで徒歩道の記載がありますが、登るのはなかなかハードルが高そうです。この東海岸線を走る道路は県道だとばかり思っていたのですが、土庄港と福田港を結ぶ国道436号線、国道でした。
 橘地区を過ぎると橘トンネル手前で斜め右手・県道248号線へと進み、四方指から見下ろしていた大角鼻を目指します。道は県道248号線となり、一車線で曲がりくねってアップダウンが連続します。一番高いところで標高150mほど。道の大部分は海岸線から離れた標高50mほどのところを走っています。写真:下右の通り、海岸線には道がありません(奥に家島諸島)。途中、対向する高校生くらいの自転車乗り二人組と擦れ違いました。いずれも所謂ママチャリ風の電動アシストだったのでレンタルの観光客でしょうか。
 道自体には周囲の植生なども含めて特徴もないのですが、私的には走って最適な飽きない道でした。下の写真は、もうすぐ大角鼻というところから振り返って。その手前で、山頂近くに何やら建物があることに気付いていたのですが、Google map によると小豆島霊場第3番観音寺奥の院とあるところでしょうか。帰宅後確認すると、道がついているので一度訪れてみたいものです。
 そんな道を走りながら、大角鼻灯台に到着。もう少し見映えがあるかと期待していたのですが、手前には木々が繁っているし門には鍵がかかって、下右上のような写真しか撮れません。下左は、大角鼻の手前から南南東方面。右手は白鳥付近から鳴門・島田島、左手からは淡路島の姿が見えており、鳴門大橋も確認することが出来ました。大角鼻を回り込むと、木々の間から、この後向かう予定の釈迦ヶ鼻方面が確認できました(写真:下右下)。左後方には五剣山・庵治半島、中央奥付近は屋島が見えています。

大角鼻灯台

左奥・五剣山、右手前・釈迦ヶ鼻
 大角鼻を回っても標高50m前後を走る県道248号線を北上すると、海岸線に沿う道路と脇にオートキャンプ場らしきところが見えてきました(写真:下左)。地形図を確認すると道は二手に分かれていたので、海岸線には下りずそのまま県道を進みます。左手前に見える山は有名な二十四の瞳映画村に向かう半島の付け根付近、奥の稜線右手が先程登ってきた四方指付近です。県道で下り切って内海の町に入ると醤油醸造所などあって、観光客の姿も多くなってきました。さらに国道436号線に入ると交通量も一気に増えてきます。下右の写真は内海の町も通り過ぎて、草壁港を振り返って。この左手には寒霞渓が西に傾き始めた陽光に立体感を持って見えていたのですが、手前に電線や建物が邪魔をして、いい撮影ポインがトありませんでした。
 午後になると落ち着くかと思われた北西風は相変わらずで、そこそこの向かい風。立ち止まって振り返ると、先程南側から見た千羽ヶ嶽付近の特徴的な尖った岩山が確認できました(写真:下左)。下右の写真は同じ場所から南南東を見たものです。左手が二十四の瞳映画村のある半島、右手がこれから向かう予定の釈迦ヶ鼻、その間・奥に大串半島から小田、津田のゴルフ場のある山付近が見えています。12月になって陽の傾きが早く、残された時間が微妙になってきました。
 国道号436線から釈迦ヶ鼻方面に向かう県道251号線の分岐には14時半過ぎに到着。16時半のフェリーに乗りたいと思っていたので、15時まで進んで、その時の状況で釈迦ヶ鼻まで進むか、途中でショートカットする道を進むかを決めることにしました。県道251号線に入ると交通量は激減。写真:下左は、先程走ってきた大角鼻方面。元写真では拡大すると灯台の姿が確認できました。なんとか岬まで向かえそうだったので先へ進みます。
 大角鼻へ向かう県道248号線に比べるとアップダウンの少ない県道251号線でしたが、県道を外れて最後の谷尻集落を過ぎると急勾配の登りになりました。標高100mほどまで登り切って下り始めると、地蔵崎灯台が見えてきました。下の写真、ちょうど灯台の真上が大麻山のようです。右端が与治山付近だと思います。香川県東部から鳴門・島田島への海岸線が思っていたより随分と長く見えます。
     
 一方、意外だったのは、釈迦ヶ鼻が真北すぐ近くに見える香川・大串半島が意外と遠く、西寄りに見えたことです。下の写真は、上の写真と同じ場所からすぐ右手を撮ったものですが、左手の山が津田のゴルフ場があるところで、大串半島は右手端、中央が小田付近。後方の稜線は香川・矢筈山、女体山付近です。大串半島は、もっとこちら・釈迦ヶ鼻方面に飛び出てきているように見えるとばかり思っていました。
     
 灯台到着は15時10分を回っていました。大丈夫と思って釈迦ヶ鼻まで進んだのですが、16時20分発(と思い込んでいた)フェリーに間に合うか、ちょっと不安になってきました。最終便ではないので遅れたら一便後にすればいいだけの話ですが。事前に立てた計画の朧げな記憶では、土庄港まで20q余。平地でもあまり余裕はないと思われましたが、先を見ると結構遠く、再び国道436号線に復帰する池田町までは、まだ2、3のアップダウンがあります。
 右の写真は、標高115mほどの富士峠付近から北側を見たところ。まだまだ標高のあるところに道が走っているのが右手前に見えます。池田の町は右奥に隠れていて、土庄は左手に切れています。走って楽しい道なのですが、少々急ぎ旅。
 アップダウンをやり過ごして、国道436号線に出てきた時は16時前になっていました。土庄港まで7qの標示を見つけたので、ギリギリ間に合うかと向かい風に頑張ってペダルを回していたところ、しばらく進んだところで例の路面標示に土庄港まで14qの標示。あれっ、さっきは17qの見間違い? 右の写真でも池田から土庄まで14q以上もあるようには見えません。しかし、進むと13q、12qと標示があり、こりゃとても間に合わない、次の便にしようと力が抜けたすぐ後に、路面標示とは異なる土庄港まで3qの標示がぶら下がっていました。状況からもこちらが正しいだろうと、最後のひと踏ん張り。結局後者が正しく、しかもフェリーの出航時刻は16時30分で結果的には余裕で間に合いました。道中、何度も役に立った路面の標示ですが、最後の記載は何だったのでしょう。往路と異なり、帰路のフェリーは大型観光バスも数台いて満車。客室も隣国の観光客で混んでいました。
 今年も紅葉のタイミングを外してしまったと諦めていた小豆島ですが、ふと思い立って走ってみると、季節外れの上にありきたりの道ばかりでしたが、初めての道が多かったことを除いても十分に満足・楽しめた一日となりました。特に大角鼻と釈迦ヶ鼻への道と眺めは、どちらも思っていた以上に好みに一致。北海岸線と西海岸線も土庄−内海間と異なり交通量は少なく、島自体の景観といつもは遠くに眺める家島諸島や播州地方を間近に、淡路島や四国を違う視点から眺めながら気持ちよく走れる道でした。もう少し霞んでいなければ最高でしたが、贅沢な望みかもしれません。また思いついたが吉日でやってこようと思います。

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