剣山へ
 剣山は徳島県内最高峰。四国内はもちろん、西日本でも石鎚山に次ぐ第二峰であることはよく知られています。冬季を除けば、見ノ越までクルマで、そこからリフトを利用すると標高差は250mほど。名前と異なりなだらかな山頂には、誰でも気軽に到達できる山です。見ノ越までは年に1、2度は走っている私ですが、なかなか剣山山頂まで足を伸ばす機会はありません。ちゃんと記憶に残っているのは家族で登った25年程前と、ドカさん企画で名頃から丸石山に登って稜線沿いに剣山まで歩いた2015年の2回だけ。そんな剣山へ、7年振りに登ってきました。当初は丸笹山へ向かう予定でしたが、途中で偶然出会ったふくてんさんと夫婦池のピークを越えたところから見た剣山とジロウギュウの眺めが素晴らしかったので、急遽行先を剣山に変更。今回の記録は、期待を遥かに上回った山頂からの展望を中心に。 (2022年 7月17日 記)

剣山山頂から東へ 展望台の上方は淡路島・諭鶴羽山脈 右手に紀伊水道に浮かぶ沼島 後方は和歌山・加太付近
 あったかなかったかの梅雨が明けたと、6月末に宣言された2022年。以前は梅雨明け1週間は落ち着いた天候が続くと言われていましたが、最近は気候変動のためか不安定な日々が続きます。加えて、どうも出不精になってしまい、その週末も近場でお茶を濁そうかなと思っていました。が、自転車仲間が積極的に行動されている様子に、ちょっと頑張ってみるかとサイクリング+ハイキングを企てました。体力的に不安があったので、貞光から登山口まで国道438号線往復で、当初の目的地は丸笹山でした。
コース   貞光−見ノ越−剣山ハイキング−見ノ越−貞光
走行距離   85q   積算標高 1700m (歩きを含む)
最高地点   剣山山頂  標高1955m
走行日   2022年 7月 2日  天候:晴れ  GIANT TCR
 少しでも涼しい時間帯に、そして余裕を持つためにと、できるだけ早い時間のスタートを考えていましたが、結局自宅出発は午前5時。デポ地・貞光の河川敷をスタートしたのは、6時15分過ぎでした。徳島市内の気温は25℃でしたが、貞光では22℃。涼しい中、まずは貞光・うだつの町並みを見ながら、ゆっくりと走り始めます。国道438号線に入って、一宇、小島峠への分岐部、木屋平への分岐部と、走り馴染んだ道を進んでいきます。この道、初めて走ったのは1980年10月。最近は随分と道路が改良されて、道幅が広がった部分が増えてきました。木屋平の分岐部までは、極緩やか(3%以下)に登っていきます。帰宅後、昨年登った時の記録を確認すると、そこまでAv.20q/hrで走れていたようですが、今年はAv.17q/hr。ゆっくりしか走れなくなったおかげで、木屋平への分岐部手前にある河内集落では、お堂があることに初めて気づきました。
うだつの町並み(貞光) 一宇、気温22℃ 河内集落のお堂 木屋平への分岐部
 木屋平の分岐部を過ぎると、まもなくこのルートで最も急勾配の区間です。この急勾配が嫌で、見ノ越に向かうのには、距離は長くなるものの穴吹方面からや木屋平への分岐から中尾山経由、もしくは祖谷方面から向かうことが多かったこれまで。が、最近、このさほど長くはない急勾配を除けば、その前後はあまりきつくないと認識出来たことや距離も一番短いこともあって、サイクリング+ハイキングを考える時には見ノ越直登のこのコースが最適と考えています。急坂をクリアして、葛籠のお堂で一服(写真:下左)。そこから少し走ると、見ノ越までの最終集落・桑平です。谷を挟んだ向こう側の民家もまだまだ人が在住のようです。
  
桑平集落
 お堂を越えると勾配は緩やかになる記憶でしたが、時速はずっと7〜8km/hrを示しています。この後、ヘアピンが続くのですが、今回初めてその数が7つであることを確認しました。ちなみに、お堂のところもヘアピンですが、その次のヘアピンが第一と記載されています。ヘアピンを繰り返すつづら折れ区間では、落葉樹のトンネルが続くとばかり思っていたのですが、意外と植林された杉林が続くところもありました(写真:下左2枚)。おまけに、勾配は5〜6%程度だと思っていたのですが、8%前後が続きます。漸くヘアピン区間が終わると、スキー場手前で木々が伐採されて北側の展望が広がるポイントがあります。この日、スタート時には山の景色は霞んで見えていたので、それほど展望は期待していませんでした。ところが、この地点から北を眺めると、思いの外、空気が澄んでいるようで見晴らしが効きます。下右の写真、一番奥の稜線が讃岐山脈。最高部は大滝山付近だと思います。右手の鞍部の下方を高松から脇町へ抜ける国道193号線が走っています。その上に雲が見えますが、雲の上には小豆島が見えています。何度も走っている道ですが、ここから小豆島が確認できたのは初めてだと思います。
 もう少し高ければ、もっといい光景が見られるかと、いつもは立ち寄らないスキー場跡へ進んでみます。が、ロープが張ってあり荒れていたので国道に戻ったところ、偶然にも30分後に貞光をスタートしたというふくてんさんが追いついてきました。聞くと、剣山へ登るつもりとのこと。私は丸笹山へなどと走りながら話しているうちに、登ったことがないというふくてんさんと一緒に丸笹山へ向かうことになりました。とりあえず、一度見ノ越まで行って水分補給。私も丸笹山への登山口を越えて、剣山やジロウギュウ三嶺などが眺められる定点ポイントへ行くつもりでしたので、向かったところ・・・。定点ポイントからの剣山とジロウギュウの眺めが半端なく明瞭です。剣山は見ノ越付近から山頂少し手前まで一面落葉樹の森なのですが、1本1本の木々が陰影はっきりを立体感を持って浮かび上がっています。クマザサで覆われたジロウギュウも同様です。写真がそのくっきり感を全く表せていないのですが、少なくとも20回以上訪れているこのポイントから、これほど明瞭な光景が見えた記憶はありません。ふくてんさんも同様だったようで、二人して歓声。この光景ならと、迷わず行先を剣山へと変更しました。
 到着した見ノ越では、いつもの湧き水で水補給。ところが、梅雨明けの土曜日、天気も上々だというのに、見ノ越の駐車場はガラガラです。山シーズン週末には、いくつかある広い駐車場が満杯になって路上にも縦列駐車が伸びているのが普通なのに、いったいどうしたことでしょう。この疑問は最後まで解決しないまま。まあ人が少ないほうが私には有難い。10時前にリフト乗り場へ。リフトにもほとんど人影がありませんでした。
 剣山・ジロウギュウの眺めに続いて驚嘆したのが、リフトで登る途中から西手に見えた光景です(写真:下右)。左手奥の秀麗な山容が三嶺。右手に切れるのは塔の丸です。その二峰が見えることは当然予想していましたが、その間に愛媛の山々が見えています。かなり遠方まで、くっきり。帰宅後地形図で確認すると、塩塚峰は塔の丸の後方に隠れるようですが、石鎚山は三嶺の右手に位置するようです。ということで、笹ヶ峰瓶ヶ森付近は当然、その付近の山は全て見えているはずですが、残念ながら何処が何処だか把握できません。またまた二人とも思わず歓声を上げて見入ります。もっと大きな写真なら、もう少し雰囲気が伝わるかもしれません。
 リフトの西島駅に到着後、再度落ち着いて西・愛媛方面の展望を堪能しました。それから、ゆっくりと山頂を目指します。ここで、また驚きの光景。写真下、登る途中から北東方面への眺めです。一番手前に谷筋は、木屋平を流れる穴吹川上流です。右手の日陰になっている稜線の向こう側に林道木屋平木沢線が走っていると思われます。写真のほぼ中央、山肌の上方に集落が見えますが、すぐ上の鞍部が川井峠です。峠から左手に繋がる三角山が東宮山。峠の上に見える稜線の三角山は焼山寺山です。焼山寺山の稜線が右下へ下っていく上に重なるのが、神山森林公園のある東西龍王山。この重なりの間に鮎喰川が流れています。いつも鮎喰川の土手から眺めている剣山をちょうど反対方向から見ています。さらに龍王山の右上に眉山。徳島市内もボンヤリと見えています。その奥には紀伊水道。眉山の右上には沼島の姿、一番右奥は本州・和歌山加太付近。最奥に見える山は淡路島です。徳島市内の上が諭鶴羽山脈、左手の平坦部が福良付近。その左手、一番高いところが先山かと思います。この眺めは2015年に下った時にも写真を撮っていますが、淡路島や本州まで見えるとは。山頂までの間に、何度も立ち止まっては眺め、なかなか先へ進めません。
 漸く山頂にやってきました。クマザサの緑と青空のコントラストが鮮やかです。 ふくてんさんジロウギュウ往復も考えられていたようですが、私は余力なし。どうぞ、行ってきてくださいと声をかけましたが、剣山山頂だけで十分満喫できる眺めだったので、一緒にゆっくりすることになりました。
 ということで、山頂からの眺めを。下は北西へ向いて。手前に走ってきた夫婦池から見ノ越に至る国道438号線が見えています。その後方、日陰になった山肌の次に見える稜線は津志嶽から黒笠山に至る稜線だと思います。石堂山矢筈山は左に切れています。最後方の稜線が讃岐山脈で、右手の平たい三角が大川山。津志嶽の稜線と讃岐山脈のと間に僅かに見える稜線は、半田から桟敷峠に向かう時に通る六地蔵付近でしょう。讃岐山脈の稜線ほぼ中央付近やや左手後方から、山がひとつ頭を出しているのがわかるでしょうか。金毘羅さんのある大麻山です。雲辺寺紫雲出山も見えるのではと思ったのですが、残念ながら矢筈山辺りの後方に隠れるようです。
 下左の写真は、真北から少し西寄り。上の写真の右側です。クマザサの草原が広がっている手前の山が丸笹山です。予定通りの丸笹山に登っていてもそれなりにいい条件で満足したと思うのですが、標高差が200m以上ある剣山からの眺めには到底敵わなかったと思います。重なる貞光川沿いの山並を越えて、一番奥の稜線が讃岐山脈です。左手に上の写真でも見られる大川山が確認できます。右端付近が竜王山。下右の写真は、下左の稜線鞍部のズームアップです。山肌の左手に見える集落は、滝ノ奥です。鞍部の向こうに、薄っすらと山が見えています。地形図からは高鉢山辺りでしょうか。讃岐富士・飯野山は大川山に重なっているようです。さらに奥には城山が見えているのですが、写真では極薄っすらで確認できるかどうか。肉眼では本州まで見えていました。ちなみに、瀬戸大橋が城山の左側に見えるはずですが、確認できませんでした。
 下は、山頂からほぼ真北へ向いて。中央を横切るのが阿讃山脈、鞍部は相栗峠付近です。その向こうに高松市街が見えています。霞んでいますが、市街からすぐ左上に女木島。右手に男木島を挟んで、頂部が平らな台形の島が豊島です。さらに奥に岡山県児島半島が見えています。肉眼では、もう少しはっきり見えたのですが。
 上の写真から少し右(東)手(写真:下左)。手前に見える町並みは、脇町付近です。その後方は、讃岐山脈と矢筈山女体山の連なり。一番奥の稜線は小豆島です。写真:下右は、さらに右(東)手へ。手前は丸笹山から中尾山に至る稜線です。その次の稜線が讃岐山脈。さらに奥・左端に小豆島の東端付近。その右手は家島諸島。肉眼では播州地方もボンヤリ見えていました。
 駐車場のクルマが少なかっただけに、山頂付近の人影も少な目です(それでもざっと100人近くはいたのでしょうが)。広々として、いい気持ち。下右の写真は、稜線沿いの道でジロウギュウへ向かう人々。一度下って、登り返し。片道40分ほどかかるはずです。ジロウギュウ山頂付近の人の姿も10人もいるかどうかでした。

ジロウギュウ山頂

ジロウギュウへの道
 下左の写真は、6つ上の写真とほぼ同じ方向です。右端の三角山が東宮山、その後方の稜線中央部付近に焼山寺山。右手奥に西龍王山が切れかけています。一番奥に淡路島。下右は、徳島市街方面をズームアップ。一番手前の稜線の中央部すぐ後方に神山森林公園のある東西の龍王山。ちょっと分かりにくいですが、中央のくぼんだように見える部分が森林公園の中心部です。その右後ろに眉山。もっと拡大すると、パゴダや電波塔も確認できます。東西に横走する吉野川とその周辺の市街が確認できますが、残念ながら我が家は眉山の後方に隠れています。奥に鳴門海峡を挟んで、後方は淡路島・諭鶴羽山脈。沼島は画面右手に切れています。頂上に到着した直後よりも、少し時間が経った後のほうが鳴門海峡付近の海の色がはっきりしてきたのは、光線の関係でしょうか。
 下の写真は、東へ向いて。手前の山肌をトラバースする道筋が見えますが、剣山スーパー林道だと思います。その後方の稜線、やや左手の最高部に高城山の雨雲レーダーが見えています。その右手奥に見えるピークは高丸山のようです。肉眼では紀伊水道から紀伊山地の山々まで朧気ながらも確認できたのですが、写真ではわかりませんね。
 下は、上の写真から少し南へ。こちらが、ほぼ真東に近いかもしれません。手前には一ノ森へ向かって歩く人の姿。左奥の稜線の上に、紀伊水道に浮かぶ伊島の姿が見えるのがわかるでしょうか。左奥の稜線と中央部その手前の稜線の間に見える一番奥の薄く見える稜線が明神山付近だと思います。ここでも上同様、肉眼では紀伊水道の向こうに紀伊半島の陸地が見えていました。剣山山頂から伊島までは直線距離で66qくらい、和歌山・日御碕までは90qほどです。
 南方面の写真がありません。室戸方面には山々が重なっており、何処が何処だか認識できませんでした。蛇谷林道のピークからは剣山が見えていたので、何処かには見えている筈です。下左の写真は、西南西方向をズームアップ。中央の稜線、右手に三嶺が切れています。真中・奥は梶ヶ森。山頂の電波塔で梶ヶ森であることがわかります。下左はその少し北へ。ほぼ真西から少し南へ振れています。手前が三嶺。三嶺山頂のすぐ右横に稜線が見えています。地形図で剣山から三嶺に至る直線を伸ばすと、石鎚山はすぐ北。この稜線が石鎚山でしょうか。右手にも高い稜線が連なっていますが、笹ヶ峰から東黒森山瓶ヶ森へ至る山々かと思われます。
 いろんな方向で何枚も写真を撮ったはずですが、確認すると意外と抜け落ちているところがあります。例えば、三嶺の後方南側に見えていた天狗塚矢筈山付近、それに南方向と、南西方向に土佐湾へ隔てて見えていた須崎辺り等々。動画で、ぐるりと360°録画しておくのが良かったかとも思うのですが、どうも動画で上手く捉えることができた試しがありません。が、これも練習、また試みてみます。
 貞光から走り始めた時には予想もしていなかった素晴らしい360°の展望を見せてくれた剣山。山頂には11時前くらいに到着して12時半前くらいまで、そんな光景に見入っていました。見飽きることがなかったのですが、下山。夫婦池の付近までの登り返しの後は30q以上ずっと下りですが、標高700mくらいを境に気温が上昇。貞光から数q手前の端山付近からは、緩い下りでも日影でなければ身の危険を感じる焼けるような暑さでした。なんと、気温36℃。最後は、まさに天国から地獄へといった状況でした。なかなかこんないい条件に当たるとは思われませんが、いい思いをしたので、また行ってみたいと思っています。

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