飯野山へ  付:土器川サイクリング  
 平地に茶碗をひっくり返したような山の姿があちこちに見られる光景は讃岐平野の特徴ですが、その中でも一際端麗な円錐状の形で目立っているのが飯野山。讃岐富士と呼んだほうがよく通じるかもしれません。周りにある城山や五色台、青ノ山、大麻山などには、ほぼ頂上まで自転車で登っていける道がついているので何度も訪れていますが、飯野山は車道がありません。山頂からの展望もないと聞いていたので、これまで登ってみようと思ったこともありませんでした。ところが、最近得た情報では途中から讃岐平野の眺めがあるようです。遊歩道も整備されているようで、標高422mなら半日仕事としてちょうど手頃です。低山なので夏場は避けたい、涼しい季節のうちにと考えていたのですが、うまくタイミングが合わず、暑くなる一歩手前でやっと実現することができました。 (2021年 6月20日 記)

飯野山・山頂直下の展望台から西方向への眺望 (2021.06.11)
コース  ことなみ−国道438号線−飯野山−土器川沿い−ことなみ
走行距離   65q   積算標高 900m (ハイキング含む)
最高地点   飯野山  標高422m
走行日   2021年 6月11日  天候:曇り/晴れ  GIANT TCR
 午前6時前に自宅を出発。下道で貞光から三頭山トンネルを越えて、デポ地の道の駅・ことなみ到着は7時半。登るだけでは面白くないかと、前後は自転車で走っていくことにしました。片道ちょうど30qほど。往路は下りなので、朝は少し肌寒いくらいでした。途中から土器川右岸を走ることも考えていましたが、この日のメインは飯野山ハイキング。まずはまっすぐ山にと国道438号線を北上します。飯野山の姿は意外と手前の山が邪魔をして、結構近くへ行くまで正面視することができませんでした。国道のまま飯野山の東側へ進み、高速道路の側道で山の北側を回ります。何処で坂出JCTと瀬戸大橋が見えないかと期待していたのですが、展望のあるところはありませんでした。事前に確認しておいた側道からの入り道を確認して、少しきつい勾配の坂を登って、最後は100m余りの未舗装路を進んだところが駐車場でした。平日で天気もあまり芳しくない日だったので、あまり人はいないだろうと思っていたのに、到着した広くはない駐車場は20台余りのクルマでほぼ満杯。何かイベントでも開催されているのかと思ったくらいでした。登っていくうちにわかったことですが、ちょっと登るには手頃な山で、地元の人にとっては定番のコースなのでしょう。
土器川、左奥は大麻山 飯山町上法軍付近から 高松道を越えて 登山口への入り道
 ハイキングのスタートは9時過ぎ。今回選択したのは、3ヶ所ある登山道の中で、一番緩やかで展望もあるという丸亀側から。登山口で、既に下山後らしい談笑していた3名の方に挨拶して、念のため道を確認。「讃岐富士登山口」と書かれたところを進みます。上の地形図、ほぼ9時に当たる付近が登り口。まずは北へ向いて進んでいきます。折り返しのところまでは結構道幅も広く、階段状になっているところもあります。周囲は雑木林。もう少し早い季節なら、もっと明るく鮮やかだったでしょう。高速道路の側道を走っていた時に確認した坂出側の登り口からとの合流点からは、折り返して反時計回りに山肌を南へ進むようになります。道幅は半分以下になりましたが、いい雰囲気が続きます(写真:下右)。登っていくと、既に下って来る方と時々擦れ違います。みなさん、早朝の散歩程度の感覚で登られているようです。
 左 飯野山登山口
    (讃岐富士登山口と明記)
 右 南方向へ向かう辺り
 上・左上 北方向へ向かう部分
 
 当日は、すっきりしない天気でしたし、もともとそんなに展望も期待していなかったのですが、まもなくいいほうに予想は裏切られました。まだどれほども登っていないところで、いきなり西側の展望が広がりました(写真:下3枚・2枚目は少し上方から同じ方向で)。西には、讃岐平野を貫いて伸びる高松道。写真が小さいですが、左:後方の山、左は我拝師山、右は削られた山肌から天霧山でしょうか。中:北西方向には、荘内半島・紫雲出山(右上・海の向こう側)。右:手前を横断するのは土器川、その向こうの小高い山は丸亀城、多度津の造船所の背後には瀬戸内海、高見島などが見えています。
  
 少し進んだところで、今度は大麻山全体が見えるところがありました(写真:下右)。自転車で登っていける道は山の北側、有名な金毘羅さんは一番南寄りです。手前を流れる土器川には、運動公園が整備された河川敷が見えます。写真:下左は、その大麻山南端付近から南方面をアップ。右手から左下がりの山が大麻山です。山手前のビル群は琴平の街でしょう。奥に連なるのは讃岐山脈です。左手、少し低くなったところの奥に独立峰が見えます。方向から低い部分は猪ノ鼻峠付近で、奥に薄っすら見える独立峰は国見山のようです。だとすると、讃岐山脈の中央付近は中蓮寺峰、讃岐山脈と大麻山の裾野の間に見えるのは尾瀬山でしょうか。
 登っていく道は、その大部分が雑木林に覆われています。数少ない分岐部には必ず行く先標示があって、展望のあるところには説明の絵図もあったりする整備状況から考えると、もともと少し木々が切れたところもあったのでしょうが、おそらく展望がより効くように木が一部伐採されているのだと思われました。下左の写真は、ほぼ南へ向いて。手前にまっすぐ走っているのは、走ってきた国道438号線です。奥手前の山に白く見える建物はレオマワールド。その左上の三角山は猫山。その奥左上は大川山(案内板があったので確認できました)。そのさらに後方右手に薄っすらと矢筈山付近が見えているのですが、これは記載されていませんでした。右手奥は竜王山方面ですね。猫山のすぐ左手の鞍部が以前走った阿弥陀越えです。猫山に連なる一番右手は城山で、大川山の麓から猫山〜城山の裏手をぐるっと回って走ってきました。土器川はこの右手です。
 雑木林は落葉樹もあれば常緑樹もあり。そんな中で目についたのはビワの木。小振りですが綺麗な橙色の実をつけた木が結構多く見られました。自生なのでしょうか(わかりにくいけど上右上の写真)。上右下の写真は、左手から飯山側登り口からの道と合流するところ。さらに右手へは山頂への近道。緩やかな手前方向へ進みます。登っていると少し汗ばむ程度の気温でした。整備された道ですが、路面だけは削り出た岩や石ころも多くて、登る分より下りのほうが疲れました。ほとんどの部分では展望はないので、黙々と登っていたら、突然すぐ隣に城山が現れて驚きました(写真:下左)。先に目に入った高速道路を見て、一体何処を見ているのだろうと思ったくらい。歩いているうちに、いつのまにか南側から東側に回り込んでいたようです。
 そこからすぐのところで、坂出側からの登り道と合流するところがありました。坂出側からは丸亀側からと合流するのだと地形図では思っていたのですが、その合流付近からこの合流地点に向かう勾配のきつい道があるようです(上の地形図には記載されていません)。下右の写真は、その合流点のすぐ傍から見える北への展望。中央に伸びる瀬戸中央自動車道・瀬戸大橋。右手前は角山、左手は聖通寺山です。右手は番の洲で繋がっている沙弥島。奥に見えるのは鷲羽山方面。靄っているのが残念です。
 上右の写真ポイントからまもなく、道はまっすぐ南へと方向を変え、まもなく到着した山頂は、話通り全く展望はありません。登り口から45分。登って来る間に20名ほどの方(8割方私より年長と思われました)と擦れ違いましたが、山頂には年配のご夫婦と女性ひとりの3人のみ。薬師堂の回りを一周してみましたが、大きな飯野山の石碑はあったものの、標高を記載した標示は見当たりませんでした。西手に「おじょもの足跡・展望台まで30m」とあったので、少し下るように進んでみました。巨石と呼ぶには小さい岩があり、その反対側にしっかりした展望台が設けられていました。トップの写真はそこから。左手の山は我拝師山、右手の山肌が削られた山は天霧山。我拝師山の奥は、高屋神社から連なる志保山です。その右手が七宝山で鞍部は何度も通っている吉津峠ですが、その奥に薄っすらと何やら山影が見えます(写真:下右端)。ズームアップした形と地形図から伊吹島のようです。条件が良ければ、燧灘が見えること間違いなし。さらに夕日も。トップの写真では左側に切れていますが、志保山の南側にはズームアップすると三豊平野と香川愛媛県境の稜線が確認できました(下右から2枚目の写真)。
山頂の薬師堂 おじょもの足跡 志保山南側、三豊平野 志保山北側、奥に伊吹島
 予想外の展望に心を満たして、下山。上述のように、道は結構凸凹で石ころも多く、慎重に下りました。各展望ポイントでは再び足を止めて光景を眺めます。歩いていてちょうどいいタイミングで異なった方向の展望が現れるので、飽きることがありません。私のような鳥瞰好きにはたまらない楽しさでした。
 下って、まだ11時前でしたが、事前に確認していた、すぐ近くのうどん屋でうどんを。うまい(うどん通ではありませんが)。また近くに来たら寄ろうと思います。その後は、土器川を渡って左岸の土手上を遡りました。この道も地形図で確認した以外には何の情報も持ち合わせていませんでした。進んでみると、すぐに飯野山から見えていた河川敷の運動公園です(写真:下左)。飯野山から見た通り、広くてとてもきれいに整備されています。駐車場やトイレもあって、デポ地としても活用できそうです。その少し南側には、土器川生物公園という大きなビオトープのようなところがあります。内部まで巡ってはいませんが、ここも一度ゆっくり訪れる価値はありそうです。そんな河川敷の中にも自転車道・遊歩道があるように見えましたが、今回は土手上の道を進みました。交通量は多少なりとあると思っていたのですが、並行する道が多いためか、土手上の道はクルマがほとんど通りません。特に何があるということもない、当たり前の四国の田舎道ですが、クルマがいない道は快適です。真夏は日影がないので厳しいでしょうが。途中、2か所ほど河川敷に下る部分があったり、琴電琴平線の下とくぐったり(ちょうど電車が通過)と多少の変化はあります。土手沿いの道が途切れて、国道438号線に出た後、今度は右岸に移動して、田圃の中の道を走っていきました。2度ほど行き止まりになって引き返しましたが、国道を走るよりずっと楽しく快適です。
 香東川沿いにも川に沿ってずっと自転車道があり、そちらは多少走ったことがあるのですが、自転車でゆっくり走るには土器川沿いの道はそれに劣らぬ環境かと思います。山深い徳島や高知の川と比較すると物足りない・魅力のない川ばかりだと思っていた香川の河川ですが、生まれ育ったすぐ近くの財田川や今回の土器川など、河口から源流まで遡って見るのも一考かもしれません。まずは、遠望が効く条件のいい日に飯野山再訪です。
 さて、おまけです。これまで登ったところから見た飯野山の姿・七景。
 下左の写真は、2021年2月27日に登った尾瀬山からの一枚。画面の左上付近に飯野山が見えます。その左には瀬戸大橋、岡山県も見えています。右手前は満濃池ですが、その上が猫山。猫山の上(奥)が五色台、その左手が城山(きやま)です。ちなみに猫山から左手に繋がる山のピークも城山ですが、こちらは「しろやま」。城山から猫山への稜線は、飯野山から見た形と左右逆ですが、全く同じですね。
 上の写真は、2019年11月10日。左の猫山の右手の鞍部・阿弥陀越えを少し下ったところから。
 続いて、下左の写真は、2009年9月20日、青ノ山から見た飯野山。これも飯野山の右手に猫山から城山の稜線がよくわかります。猫山後方には讃岐山脈・大川山。写真が小さいのでわかりにくいですが、オリジナルでは右端・奥に矢筈山付近が見えています。この日は大気条件がかなり良かったようです。下右は2004年8月14日、大麻山から。上の大麻山の北側・一番高い付近から。この日は靄っていますね。
 下左は、2005年1月2日、紫雲出山から瀬戸内海を経て。飯野山は何処から見ても、その姿で一目瞭然です。左手が城山(きやま)、その左が五色台。下右上は、2017年8月26日。その城山から。城山のほうが飯野山よりちょっとだけ標高が高く、もう少し見渡せる場所があれば、もっと飯野山全体が見える写真を撮っていたはずですから、手前の木が邪魔をしていたのでしょう。小さいですが、右上に紫雲出山が見えています。下左の写真とちょうど反対側から見た図ですね。下右下、2016年10月30日。こりゃ何処に飯野山が見えるのかと言われるかもしれません。落合峠から矢筈山側に少し登った稜線から北へ。はっきり見える稜線は阿讃山脈です。ブログでは大川山と記していますが、大川山はもう少し右手で間違いのようです。稜線のピークの左手上に飯野山の山頂付近がボンヤリ見えています。右手のほうには瀬戸大橋も陽炎のように見えているのですが。
 いろんな角度から見る飯野山・ツーリング、という企画もいいかもしれません。

 ご意見・ご感想・新しい情報はこちらへ

ツーリング徳島へ戻る  TOPに戻る

inserted by FC2 system