大惣林道 と 石堂山  
 前年同様、四国外はもちろん、県外遠征も憚られた五月の連休。せめて県内の何処かへと思っていましたが、すっきりしない天気が続きました。唯一、5月3日は週間天気予報時から好天。ということで、何処か近場でいいところはないかなと地形図を眺めたり、「徳島250山}の頁をめくっていたところ、、石堂山に行き当たりました。久しぶりの大惣林道を走って、石堂神社から山頂まで、今の力でもなんとかなりそうだと思われました。当日は、快晴。久々の単独の山歩き、しかも初めての道と多少の不安はありましたが、無事予定通りに走って歩いた道は、予想を遥かに上回る素晴らしい景観が続きました。(2021年 5月15日記)

石堂山山頂すぐ北側にある御塔石 後方左は矢筈山 (2021.05.03)
コース 貞光−大惣林道−石堂神社−石堂山往復−大惣−半田−貞光
走行距離  自転車 55q 積算標高 1200m 歩き 6.4q 積算標高 500m
最高地点  石堂山  標高1636m
走行日  2021年 5月 3日  天候:快晴  FELT F1
 ちょっとでも余裕を持つために午前5時起床のつもりだったのですが、寝過ごしてしまいました。大急ぎで準備して、デポ地の貞光スタートは8時になってしまいました。まずは旧道沿い・うだつの街並みを眺めながら。うだつを持つ立派な家屋が何軒もあるのですが、電信柱と電線が景観を壊しています。それらがなければ、脇町のようにもっとすっきりしたいい眺めになるのにと思うのですが、インフラ整備にはお金もかかるし簡単にはいかないのでしょう。長瀬集落付近も旧国道を走ります。写真:下左から2枚目、いつも立ち止まってみる民家。小さいのでわかりにくいですが、左手には桐の花が満開です。気温は9℃と山影では寒いくらいでした。この日も、剣山へ向かうのだろうと思われるクルマが次から次へと走っていきました。貞光川を覗き込みながら走るのですが、最近の県内の川同様、透明度はあるのですが、大雨がないためか川底の色合いが茶色く、見映えはいまひとつでした。古見の分岐部には8時50分に到着。ここから片川に沿った県道308号線へ。クルマの通行は皆無になります。
貞光・うだつの街並み 宮平付近の家屋 古見の分岐、右奥へ 県道308号線沿い 新緑
 ここからは3回目です(2008年2016年)。2008年は雪の印象ばかりが強く残っていたのですが、前回走った時に県道308号線が思っていた以上に勾配がきつかったと記憶していたので、最初から心して向かいました。ところが前半は意外と緩やか。ちなみに、前回はシクロクロス車で走ったのですが、道路状況に問題ないと思われたので、今回は少しでも軽くとロードバイクです。道周囲の新緑は、まさに今が見頃といった具合。ただ、落葉樹林も記憶より範囲が狭いように思われ、杉林が結構多く見られました。左手を流れる片川の流れも、前回よりよく見通しが効くように思われましたが、少し時期が早かったためかもしれません。ただ上流であるいも関わらず、透明度は少し濁りがあるように見えました。

片川の流れ
 古見の分岐からの距離と積算標高から、こんな勾配が続くわけはないと思っていたら、やはり中盤過ぎて勾配は急になってきました。ちょうど林道大横線という新しい標示を見た付近からだったでしょうか。大横線は以前からあるようなコンクリート舗装の急坂ですが、地形図を見ると大横という集落に向かう点線の道でしょうか。その少し奥に、これも記憶に残っていなかった民家が一軒。陽当たりのいい斜面の畑は、耕されて野菜が植えられていました。結果的にはこの民家が一番奥。写真を撮りたかったのですが、飼い犬が喧しく吠えていたのと、この前後が一番の急勾配であったこともあり、写真なし。その後、大惣林道へと名を変える地点まで、ずっときつめの勾配が続きました。 前回は落合峠から小島峠を越えて3つ目の登りだったので当然ですが、今回は一つ目の登りであるにも関わらず難渋しました。
 大惣林道起点には 9時50分に到着(写真:下左)。片川に沿って西進してきた道は、ここで180°方向転換して東へと進みます。標高は800mを越えたところ。有難かったのは、ここからの道が予想よりさらに緩やかだったことです。一部下りになったところもありました。アスファルト舗装が大部分で、路面は県道308号線より良好なくらいです。途中、地形図で確認していた石堂神社への登り口(写真:下右上)を見かけました。そのすぐ先で探鳥らしき年配の方(クルマ)と出会って挨拶しましたが、古見から大惣までで人と出会ったのは、この方一人でした(石堂山除く)。大惣林道が稜線に東端を回ってまた西進するところに、林道大惣大宗線という分岐(写真:下右下)があることは以前通りでした。地形図では大宗という地名を見つけることができません。何処かに繋がっているのか?地形図では大横方面に点線の道が繋がっているので、そちらに下るのでしょうか。

石堂神社への登り口

林道大惣大宗線の標示
 写真:下左は、東端から手前の付近から東方向。左下の谷沿いを走ってきました。写真が小さくてわかりにくいですが、手前の稜線のすぐ上、奥の山肌に小さな集落が見えます。方向から剪宇集落ではないかと思います。下右の写真は、東端を回って尾根の北側に出て少し進んだところから。記憶に残っていた、半田方面の眺めが見られる唯一の場所です。が、手前に木々が繁ったり、もう少し成長すると、この眺めも見られなくなりそうです。
 石堂神社方面への分岐は東端からまもなくかなと思っていましたが、思っていたより距離がありました。その手前に分岐があったので、GPS(便利は時代です)で確認し、もう少し先であることを確認、進むとちゃんと神社の登りも立った分岐がありました(ひとつ下、左の写真)。ちょうどその少し手前でしたが、道上に何か動物がいます。シカにしては動きが遅いし、タヌキにしては速い。良く見ると、キツネでした。林の中に入り込んだ後、一度立ち止まってこちらを見ていたのですが、シャッターと押す寸前に姿を消しました。北海道以外で自転車で走っていてキツネを見たのは初めてです。
 石堂神社方面へと進むと、道は予想通り未舗装となりましたが、半分くらいはロードバイクでも乗車可能でした。が、パンクが嫌なので、無難に押すことも躊躇いません。標高1000mも越えて、周囲の落葉樹はどれも芽吹き始めたところ。透き通った萌黄色。途中、コンクリート舗装の部分もありましたが、最後に押しても大変な20%を軽く超えるような坂(写真:下右)を登りきると、石堂神社が見えました(ひとつ下の写真:左)。10時50分に到着。貞光からの距離は30qちょいで、平均速度は10q程度。
    
 ところで、この前日、石鎚山や剣山では時ならぬ積雪に見舞われたとの報道がありました。石堂神社まで登って来る途中、木々の間から南西方向に見える稜線付近にも、明かな残雪と思われる光景がのぞいていました。山とは言え、5月の四国で雪化粧とは驚きです。まさか登山道は積雪・凍結なんてことは・・・。まあ、その時は撤退するのみです。そんな稜線の光景を撮ろうと思ったのですが、道中は木々が邪魔をして、すっきり見通せるところがありませんでした。一服した後、神社(赤い屋根)の右手にある登り口から山歩きスタート、時刻は11時。サドルの後ろにある標示には、石堂山まで3.2qと記されています。

雪が残る稜線付近

石堂神社右手 登り口
 地形図と「徳島250山」で多少状況を予想していたのですが、神社裏からはいきなりそこそこの登りで始まりました。こりゃ、とても石堂山には辿り着けないかもと危惧されましたが、まもなく稜線に出て尾根沿いの緩やかな道になりました。道は、石堂神社への道同様、新芽が萌え出た落葉樹の中を進んで行きます(写真:下右)。この先ずっとそうでしたが、よく見かけるピンクの道標べテープは全くありませんでした。全く初めての道でしたが、結構しっかりした山道が続いており、山頂までの何か所かに距離表示もあって、迷うこともなく、また目安もついて有難かったです。下左の写真は、神社裏手の皆伐された斜面の上に出たところから南方面。ずっと気になっていた矢筈山から、おそらく黒笠山方面の稜線が一望できました。ただし、この時点では、まだどれが矢筈山か石堂山かわかっていませんでした。標高差によって、前日の雪が残っているところ、新芽が芽吹き始めたところと未だのところ、常緑樹と落葉樹の違いも良くわかります。
 そこから少し進んだところからは、北側の展望が広がっていました(写真:下右)。大気の条件はそれほど良好ではありませんが、それなりの遠望はありました。手前は、最近落合峠へ行く時によく通る六地蔵付近の高冷地野菜畑です。真中の稜線が阿讃山脈で、鞍部の右手は滝の奥辺りでしょう。一番奥にうっすらと見えるのは城山と五色台。確かに、城山の山頂からは条件がいいと阿讃山脈の奥に矢筈山付近と思われる頭が覗かせているのを確認することができます。条件揃えば、瀬戸内海や本州まで見えること間違いなし。しばらくは気持ちの良い稜線の道が続きます。標高が上がると、芽吹きの程度が時計の逆回りのように戻っていきます(写真:下左)。実際は写真で見るよりも、もう少し芽吹いていましたが。
 さらに進むと白滝山への手前になったのでしょう、それまでの緩やかな道が、山肌をジグザグに進む勾配もきつい道となりました。参考にしている「徳島250山」に確かそんな記載があったなあと思い至ります。そこまで快適に歩いていましたが、一気にペースダウン。やっとやっと登る次第です。斜面もきつくなってきたので、降りられなくなることはないだろうなと、時折振り返って確認します。ちょうどその辺りから、下草はクマザサになりました(写真:下左)。もう少しすれば、クマザサの緑も生き生きとしてくるでしょう。
 北に位置する白滝山や火打山と南に位置する石堂山や矢筈山の分岐には、「徳島250山」記載通り所要50分で到着(写真:下中)。右手から進んできて、手前へ。石堂山までの距離は、1.3qと記されていました。そこからは、再び尾根沿いの道となりました(写真:下右)。
    
 そのまま登り続けるのかと思ってら、少し下っては登り返すことが2回ほどありました。尾根道は快適ですが、登り返しでは大分脚にダメージが出てきていました。下る箇所では、帰路は登りだなあとも思いながら。それにしても、初心者の上に久々の山歩きなので、距離間隔が全くつかめません。写真:下右は、稜線で少し開けたところから矢筈山方面(奥右手)を見たところ。この時点でも石堂山が何処かわからず、結構後半まで矢筈山が石堂山かとも思っていました。石堂山かと思っていたので、あんなところまで、後40分で辿り着けるのだろうかなどと不安になります。石堂山の手前には、なにやら特徴的な岩があるらしいと「徳島250山」で知っていたのですが、矢筈山の手前にもなんだかそれらしきものも見えるような気がしたことも、誤認したひとつの原因です。
 当初から、無理せずいつでも撤退を、と弱気でした。まずは白滝山との分岐部まで行くことができれば、目標達成と考えても良いかなと。雪や凍結があれば、その時点で行き返そうとも思っていたのですが、分岐部から先も時に日陰となったところに僅かばかり凍結した雪が残っている程度でした。少しぬかるんだところもあって、慎重に進みます。進んでいくと、写真:下、中央のピーク、そこではなく、石堂山山頂はその先に隠れていた記憶です。
 上のピーク付近に、大きな岩が重なるようにしてありました(写真:下右上)。記憶にある岩とは少し感じが違うなあ。看板があったのですが、文字がはっきり読み取れません。後で確認すると大工小屋石と呼ばれるところでした。その先に、トップの写真。今度は間違いなしです、御塔石。確か、この岩から山頂はもうすぐだったので、この時点でやっと先の山が矢筈山であることを確信しました。御塔石の横には「山頂まで150m」の標示があったのですが、その150mが随分と長く感じられました。下左の写真は、少し進んで振り返って御塔石を眺めたところ。少し木々の葉が伸びたほうが、コントラストがついて御塔石の存在がわかりやすいようです。

大工小屋石

足元の日陰に残雪
 石堂山山頂には12時20分過ぎに到着。ここまで誰にも会わなかったので独占かなと思ったのですが、4名とわんちゃん1匹のグループが休憩中でした。ちょっと挨拶して、証拠写真を撮ってすぐに復路へ。下左の写真は、石堂山山頂から矢筈山。中は山頂。右は落合峠から矢筈山へ向かう稜線の向こうに見えた天狗塚(ズームアップ)。
    
 復路は登ってきた道を戻ります。登り時に振り返りながら見た光景を、ゆっくりと眺めながら慎重に。下の写真は山頂から少し下ったところから東方面に向いて。登ってきたルートが一望できます。中央やや右手に見える谷筋が、自転車でこちらに向いて登ってきた県道308号線・片川です。写真の中央部付近で、林道大惣線となって奥へ進み、左手の稜線の一番奥を回り込むようにして尾根の北側(左側)に出て、またこちらに向かってきます。石堂神社はどの辺りでしょうか。この左手の稜線をずっとこちらに向かって歩いてきました。左手、一番奥に見えるのは高越山です。
 下左の写真は少し下って、稜線の北側。吉野川に沿う町と、奥は阿讃山脈です。下右の写真は、上の写真とほぼ同じ位置からズームアップ。左から右手に伸びる山が高越山。その裾野にぼんやりと吉野川と北岸に続く町、そしてわかりにくいですが、高越山の左上には淡路島も薄っすらと確認できました。
 
 久しぶりに歩いたので、帰路は脚が痛くなってきました。ちょうど白滝山分岐手前で、大きな三脚を担いだ方が前方に。一度白滝山方面に向かわれた後、下ってきたので先に道を譲りました。勾配のきつところが続いたので慎重に下っていたら、その方の姿はすぐに見えなくなってしまいました。分岐部からの急坂もなんとか無事切り抜けて、緩やかになった尾根沿いの道を、登りよりも遅いくらいの速度でゆっくり下ります。際だって大きな樹はありませんが、芽吹き始めた落葉樹の中を楽しみながら。
 下は国土地理院地形図から。右手からの黄色い道路が県道308号線。折り返しからが林道大惣線ですが、地形図では繋がっていません。→のように進んで、下図の左上付近で再び折り返し。1120mの三角点左からの実線が石堂神社への道。神社マークからほぼ稜線で石堂山です。上の矢印は、下った大惣方面への道です。
 石堂神社まで戻ってくると、三脚を持っていた人が休憩中だったので、山か木の写真を撮っているのかとお聞きしたところ、クマタカを狙っていたとのことでした。写真機材だけで10sあるという装備に驚きましたが、向こうは自転車で登ってきたことに驚いていたようです。そうそう、大分下ってきたところで、登って来る私より少し若いと思われるご夫婦に出会いました。お二人とも自転車にも乗られるそうで、自転車を見て驚いたと言われましたが、この時間からできれば矢筈山往復というお二人に私は驚きました。まあ、みんなそれぞれですね。その後は、大惣から半田へと、これも2016年と比較してもさらに良好になったと思われる道を下りました。途中挫折も覚悟していましたが、無事当初の目的を達成できた上に、予想を上回る光景も目にすることができ、久しぶりに心の底から満足できた一日となりました。

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