桜を巡るサイクリング 徳島編

 さくら・花見を目的として自転車を走らせ始めた最初の記憶は、日帰りサイクリングができるようになった2003年のことだと思います。職について20年が過ぎ、毎年のように転勤などでドタバタしていた年度末・始めから漸く開放されて、少し落ち着いてこの季節を過ごせるようになったこともひとつの理由かと思います。まずは近場の見所・仕事前の早朝でも訪れることができるところから始まり、時間を見つけて県内の噂に聞く桜を訪れるようになりました。自転車乗りの知人達には、もう既知のところばかりですが、私的桜を巡るサイクリング・徳島編としてまとめてみました。

 徳島県立農林水産総合技術支援センター農業大学校 (通称:農業大学・名西郡石井町)

 最初に訪れたのは、石井町にある農業大学校(正式名は上記のように徳島県立農林水産総合技術支援センター・農業大学というらしい)です。JR徳島駅から国道192号線を西進して、10数qばかり。農業大学校の表示で左折、南へと向います。田畑の中の細い道を進むと、やがて前方に桜並木が見えてきます。
 それ以前からよく耳にしていた桜の名所でしたが、訪れたのは2003年が初めてでした。道の両側から伸びるソメイヨシノは、二車線道路のほぼ中央部で覆いかぶさるような格好で、トンネル様を呈しています。この桜のトンネルはよく写真に撮られる場所で、訪れた時には写真を撮る人が三脚を立てていることが多いです。残念なのは、花見の有名どころではよく見られることですが、どぎつい色のボンボリが吊るされていること。満開の桜の下で、お酒を飲んだり美味しいものを食べながら花見を満喫するのもいいものだと思いますが、ただ咲いている満開の花を静かに眺めるのもいいのではないでしょうか。
 この並木道は農業大学校の西側に位置していますが、それ以外にも農業大学周囲には、多くのソメイヨシノが咲いています。学校の北側・正門の付近にも、見事なソメイヨシノが並んでします。また南側・やや山の斜面となりますが、写真:左のように、こちらにもソメイヨシノやヤマザクラ系の大樹が植えられています。
 有名なところなので、おそらく休日などは人でごった返していることと思います。初めて訪れた2003年以降何度も訪れていますが、平日でも休日でも早朝(午前7時くらい)に訪れるようにしています。
 写真:上は、2005年4月6日、左は2008年4月4日に撮影したものです。

徳島県農林水産総合技術支援センター畜産研究課 (旧県畜産試験場・板野郡上板町)

 上板町・徳島県農林水産総合技術支援センター(旧県畜産試験場)は、県道12号線を西進すると、右手に松島・千本桜の看板が出ている交差点を右折して、北へと進みます。阿讃広域農道からだと、上板町歴史民族資料館の西側交差点を左折してすぐです。初めて訪れた2004年は、場所がわかるかなあと心配していましたが、少し手前から「松島千本桜」の幟が県道沿い立っていたので迷うことなく到着できました。しかし、正門付近は警備員がいたりしてなんとなく中に入りにくそうだったので、試験場に沿って一周しました。
 そこで、出会ったのが上の写真です。農業大学の桜並木も良いですが、こちらは道がアスファルトでない分さらに情緒があるように思われます。桜も同じソメイヨシノだと思いますが、横に広がる農業大学校に比較すると樹高があって縦にも広がった感じがします。ここにも中判カメラを三脚にセットした人がいました。その横に自転車で乗り付けて、コンデジで撮るのはちょっと気が引けました。写真は、2004年4月10日も撮ったものです。
 畜産試験場(この名のほうが馴染み深い)も、それから何度か訪れています。鳥インフルエンザ問題で、満開にも関わるらず場内に入ることが出来ない年もありました。私は、いつも場内に入ることなく、上述のようにのように敷地に沿って一周することが多いです。左の写真は2005年4月10日。試験場の北側から南へ向けて撮った写真です。遠くには大川原高原が見えます。
 JR徳島駅付近からだと、片道約25km。自宅から往復すると、チラッと見物する時間を含めても2時間あまり要するので、平日の朝に訪れるのには、時間的になかなか厳しいところです。

袋井用水 (徳島市名東町)

 JR徳島駅から国道192号線を西進。約5kmほどで鮎喰川を渡る上鮎喰橋がありますが、橋手前の緩やかな坂の途中、クロスするように袋井用水があります。 実は、袋井用水から50mほどしか離れていないところに数年間住んでいたことがあります。今もお世辞にもきれいな水とは言えませんが、当時(40年近く前)はもっと汚れていました。そんな頃でも、蛍が飛んでいる姿を見つけて随分と驚いたことが記憶に残っています。それに比べて桜の印象は全く残っていません。ソメイヨシノの寿命(70年程らしい)や成長速度を考えると、住んでいた当時は幼木で最近のように見事な桜並木ではなかったのかもしれません。
 上述のように、用水の水は隣を流れる鮎喰川とは比較のしようが無いくらい濁っています。が、この時期だけは満開の桜が水面に写って用水の濁りを忘れさせてくれます。写真は国道より南側ですが、北側も風情があります。水面に映る満開の花を狙って通うのですが、なかなか気に入る写真は撮れません。納得できる一枚が撮れるまで毎年訪問でしょうか。写真は、2014年4月3日。

地蔵越 (徳島市名東町)

 上記の袋井用水直前の信号で国道192号線を南へと曲がり、県道203号線で眉山を越えて園瀬川方面へと抜ける途中にあるのが地蔵越です。地蔵越は、取り立てて桜の名所というところではありません。大きな一本桜があるわけでもなく、桜並木があるわけでもありません。もちろん、花見目的で訪れる人もほとんどいないと思います。
 ただ、峠から南側に下った付近から南東方向斜面の、まだ新緑も伸び切らぬ山肌に、遠目にはボンヤリと薄桃色が綿花のようにも見えるヤマザクラの様は、ここだけのものではありませんが、標高150mほどの坂とともに、時間的にも早朝のサイクリングが可能で個人的な好みの場所のひとつです。峠からすぐのところには白色系の桜(正式名称不明)も何本かあって、山肌に点在するヤマザクラ系のやや濃い目の花色が、早朝の時間帯には、ちょうと朝日の斜光線に透明感を持って輝きます。
 峠の北側にも、道沿いに何本かのお気に入りの桜の木があります。2011年秋には、峠付近で季節はずれのサクラの開花を見ました。写真は、上下とも2010年4月3日。

文化の森 (徳島市八万町)

 上記の県道203号線、地蔵越を下ってそのまま南西方向に進むと、まもなく隣を流れる園瀬川の川向うに、文化の森が見えてきます。文化の森には、県立図書館や博物館などの施設が集まっています。初めて訪れたのは、1993年頃。もう成人して久しい息子が3歳くらいの頃でした。施設もまだ新しかったと思います。建物も周囲の庭も、とてもきれい清潔で、私の働く職場と異なり天国みたいな職場(当時同僚の奥様が勤務中)だと思いました。子供が小さい頃は、雨の日は博物館内、晴れの日は周囲の歩道を歩いたり、山肌にある遊具場に連れていったりしたものですが、当時の桜の記憶はありません。
 写真は2008年4月4日のものです。県道203号線から園瀬川を越える橋を渡って文化の森に至るのですが、写真はこの橋から南東方向を撮ったものです。ただ、徳島環状線の道路建設に伴って、写真左方のサクラは切り取られてしまいました。園瀬川に沿ったサクラ並木はなかなか見応えがあったのですが、もうこのような風景は見ることができません。写真ではもうひとつはっきりしませんが、上の地蔵越同様、ここでも川沿いの桜並木の後方・山肌にヤマザクラがボンヤリと桜色を呈することも、お気に入りの場所であることの要素でした。

徳島中央公園 (通称:城山公園)

 JR徳島駅裏手にある徳島中央公園、通称城山公園。城山の南側・徳島城博物館周辺は言わずと知れた花見では有名な場所で、ソメイヨシノの木々が園内の通路にトンネル状になったり、お堀端に並ぶ満開の姿は見応えがあります。が、如何せん、満開の時期にはいわゆる花見客で混雑して、地面には朝からブルーシートで陣取られ、木々の間には多数のぼんぼり。ゆっくりと楽しむには、少し興覚めな光景です。
 その点、城山の北側・助任川沿いに近年植えられた蜂須賀桜は、植えられた場所や開花時期がソメイヨシノより2週間以上早い(写真:上 2014年3月19日)こともあって、ゆっくりと楽しむことができます。年々大きくなる木々はトンネル状となって、その濃い色の鮮やかさを際立たせています。写真:下右は、助任川対岸から見た川面に映った姿。撮影日は、2016年3月5日です。
 お城の姿形は全くない城山ですが、標高50mほどの山頂は広場(随分以前は神社のような建物があったと思います・確認すると護国神社2002年移築解体)となっていて周囲にはソメイヨシノが植えられています。こちらも、徳島城博物館周辺に比べると、人出は少ないです。写真:上左、2010年4月2日。

原田家の蜂須賀桜 (徳島市かちどき橋)

 徳島中央公園から南へ1.5qほど。クルマの往来が激しい国道55号線から、ちょっと西手に入った小さな通りに旧徳島藩主・蜂須賀公の家臣だった原田家があります。原田家と蜂須賀桜の存在は、開花の季節になると地元局などが毎年取り上げていたので知っていたのですが、正確な場所を知って初めて訪れたのは2012年くらいだったと思います。庭にある大きな蜂須賀桜は、江戸時代までは徳島城に植えられていたそうですが、廃藩置県に伴い蜂須賀公から原田家に委譲されたそうです。
 蜂須賀桜は、ヤマトザクラとカンヒザクラの一代交雑種でカンザクラの一種だそうです。ソメイヨシノはもちろん、比較的早く咲く枝垂れ桜系よりもさらに早い時期に開花することと、その濃い色調が特徴です。最近は、上記の助任川沿いを始め、県内の所々で蜂須賀桜の姿を目にするようになりました。上の写真は2014年3月19日、下の2枚は2013年3月15日に撮影したものです。
 この原田家武家屋敷は国登録有形文化財だそうです。満開の時期、年に2日ほどだったか一般公開もされています。私は、いつも早朝に伺うのですが、表の門は開かれていて庭に入ることが出来ます。質実な建物は、樹齢250年という蜂須賀桜と調和しているのですが、周囲は立て込んだ住宅地のため、建物と満開の桜の全体像をうまく捉えることがなかなかできません。

一宮神社裏のしだれ桜 (徳島市一宮町)

 徳島市内から神山町・川井峠に向かう県道21号線から国道438号線沿線には、随所で見事な枝垂れ桜が見られます。まずは、四国霊場十三番札所・大日寺の道向かいにある一宮神社裏の枝垂れ桜です。この桜の話を知人から聞いたのは、2010年春先でした。2009年から片手間にやっている畑仕事の場所から500mほどしか離れていないので頻繁に通る道筋なのですが、その存在に全く気づきませんでした。
 訪れてみると、なかなか立派な枝垂れ桜です。一宮神社脇の細い道を入っていくと、小さな畑の前方に2本の大きな枝垂れ桜がその姿を現します。周囲の小さな畑は個人の所有だと思いますが、桜は近場の方が共有で作業を行っているそうです。手入れがいいのでしょう、花数も多く、量感たっぷりで見応え十分。撮影は2014年3月30日。
 左手奥の山際には、自生かと思われる大きなヤマザクラの姿。豪華絢爛な枝垂れ桜はもちろん素晴らしいですが、ヤマザクラの恥らうような清楚な姿もまた味わいがあります。左の写真は、2010年4月4日。枝垂れ桜の向こう側に、少し芽吹き始めた葉を伴っているのが、そのヤマザクラ。
 神社のすぐ裏手なのですが、県道21号線からはその姿を見ることはもちろん、存在さえ全く気付くことができません。自転車仲間にはすっかり有名になりましたが、まだまだ穴場的存在でしょうか。JR徳島駅からだと、眉山の北周りでも南回りでも、ほぼ等距離の15km弱。後述の明王寺や川井峠を訪れる前後に寄ってみるだけでなく、ここだけ訪れるのでも十分な価値があると思います。駐車場はないので、やはり自転車で訪れることがお勧め。あまり有名にならないほうが、私的には有難いのですが。

サンピアゴルフ場手前の桜並木 (徳島市入田町)

 県道21号線、四国霊場13番札所・大日寺のすぐ西手のT字路を、南側・徳島市球技場方面に曲がり1q弱坂道を登ると、サンピアゴルフ場への分岐があります。この分岐部からゴルフ場入口まで、道の両側にソメイヨシノの並木があります。長さは250mくらいでしょうか。上の一宮神社とは、目と鼻の先です。樹高といい、横への広がりといい、伸びやかに育っていて、花付きも良好です。緩くカーブをした道沿い、もう少しインパクトのある写真を撮りたいのですが、広い路肩にクルマが停まっていることが多いです。

市山煙火の桜 (小松島市立江町)

 市山煙火(打ち上げ花火を製造している事業所)の素晴らしい桜に気付いたのはいつのことか、はっきりした記憶がありません。写真として残っているのは、2005年が最初です。国道55号線赤石トンネル付近の東側を走る県道136号線。この道が通勤路であったのは、1996年頃のことです。道沿いに大きな桜の樹があるのに気付いたのは、この頃だったのかもしれません。徳島市内方面からなら、県道136号線の小高い丘を下った右手の山際に、この桜があります(JR徳島駅から約15km)。
 おそらくソメイヨシノだと思いますが、大きさが半端ではありません。手前の道に佇む人との比較から、この樹の大きさがわかるかと思います。写真では1本の樹のように見えますが、2本の大きな樹が重なり合っています。少し離れた県道から見ても近くまで寄って見ても、素晴らしい大樹です。満開になる4月始めは、平日仕事前に往復しようと訪れる早朝には陽が当たっていません。小高い丘の北側斜面であるため陽が当たる時間が限られていると思いますが、圧倒的な花の量で見る者の心を満たしてくれます。写真:上と下左は、2011年4月8日撮影。下右の写真は、休日の昼間に訪れた2010年4月4日。一瞬の風に花びらが舞う様、慌てて手持ちですが、舞い散る花吹雪の写真も一度撮ってみたいものです。
 立江から少し南に位置する羽ノ浦・岩脇地区にも、ソメイヨシノの並木があります。県道276号線を挟んで北側・明現神社と取星寺辺りにも桜は多く、1990年代始め近くに住んでいた頃には、花見の時期は屋台も出てにぎわっていたことを思い出します。桜並木は当時よりも、ずっと大きく立派になっています。また、自転車で訪れてみようと思っています。一方、立江から北側に位置する恩山寺(立江寺は四国霊場19番、恩山寺は18番札所、市山煙火はその間にあります)、1993年頃は寺の裏庭から山にかけて見事な桜山だったのですが、最近訪れたところ、全く荒れ果てて桜の樹も花数が少なく衰えていました。樹の寿命にはまだ少し早いと思うのですが。

桜づつみ公園 (板野郡藍住町)

 徳島自動車道が旧吉野川を横断するすぐ近くにある、桜づつみ公園。広い駐車場と小さな子供を遊ばせるのにちょうどいいくらいの公園があります。写真のソメイヨシノの並木は、旧吉野川右岸に沿って150mほど。いずれもしっかりした幹で、花数も多く、今が樹の一番いい時期なのかと思われます。

神山森林公園 (神山町)

 言わずと知れた、徳島の花見の所のひとつです。桜の季節に限らず、新緑時や紅葉の時も楽しめます。公園へと至る道沿いにはソメイヨシノの並木、山頂にある広い公園内にも沢山の桜が植えられていて、満開の前後には桜まつりも開催され、多数の花見行楽客でにぎわっています。
 上の写真は、ほぼ中腹付近。登る道の途中から前方の山肌に見えた光景です。右手前は道路沿いのソメイヨシノ、背後はヤマザクラでしょうか。撮影は2007年4月1日。もう10年以上前なので、今では随分と変わっているかもしれません。
 左の写真は登り口から200mも進まない付近。数本の御衣黄が植えられています。ソメイヨシノと比べると開花時期が遅いことや、緑がかった花びらの色が特徴的です。初めて見た時(大阪の造幣局でした)は、随分変わった色のサクラがあるのだなあと驚いたものです。写真は、2011年4月17日です。同じ御衣黄が、南側(裏手)に下る道沿いにも2本ほど植えられていますが、陽当たりが悪いためか、正面側の樹に比べると随分細くて花数も少ないです。山頂の公園内に御衣黄が植えられているかどうかは、確認していません。

国道438号線・府能旧道 (佐那河内村)

 私を含め、以前からの自転車仲間には、府能の国道438号線旧道(特に佐那河内側)を走ることが好きな人が多いように思います。旧道故の緩やかな勾配、少ない交通量、あまり多いとはいえないまでも棚田の光景など、のんびりとサイクリングを楽しむ魅力が詰まっている道と言っていいでしょうか。
 写真:上は、旧府能トンネル南側。下左の写真とともに、2007年4月1日に撮影。下右は2017年4月8日撮影ですから10年の隔たりがあるのですが、周囲の光景も含めて、ほとんど変化はないように思われます。棚田に水が張られるのは、まだもう少し後。桜に開花時期に田植えとなれば、いい絵になるのでしょうが、こればかりはどうしようもないですね。代わりに、菜の花が彩ってくれています。

八百萬神之御殿 (美馬市・脇町)

 八百萬の桜の存在を知ったのは、当HPの師匠であるHANO氏のHPでです。吉野川を見下ろす絶好のロケーションに満開の桜が素晴らしく、是非一度訪れたいと思ったのですが、当時地図には全くそれらしき表示が出ていませんでした。場所を確認することがなかなかできなかったのですが、漸く確認して訪れたのは、2006年春。
 脇町から国道193号線を北上していると、間もなく右手に多数の幟が見えてきて、登り口には迷うことなく辿り着けました。しかし、そこからが大変。道を間違えたのではないかと思うような暗い杉林の細く曲がりくねった急勾配の道が続きます。一応舗装はされていましたが、かなりの悪路でした。早朝に訪れたためクルマの通行はほとんどなかったのですが、桜の見頃の時期には警備員が交通整理(時間一方通行)しているようでした。八百萬神之神殿について詳細は知りませんが、拝観料ならぬ入園料がひとり1000円!とかなり高額です。しかし、、一度訪れる価値はあると思います。
 私が訪れたのは休日でしたが早朝であったため、訪れていた人は数名程度。施設の係らしい人がいたので、ちょっと話を聞いてみました。ソメイヨシノと思われる桜が大部分ですが、あまりに花の色が濃いので、「ソメイヨシノですか?」と尋ねたところ、「これが本当のソメイヨシノの色、他のところは全く手入れをしないので色が白っぽいのだ」とのことでした。ソメイヨシノとしては花色が濃いのが写真でわかるかと思います(色補正なし)
 栄養たっぷりに育ったソメイヨシノですが、その樹々の勢いや多さだけではなく、吉野川(写真:上)や、その支流・曽江谷川(写真:下左)を見下ろす標高500m弱に位置することの背景が、桜を一層引き立てていました。写真はいずれも 2006年4月8日に撮ったものです。もう10年以上も前ですが、さらに豊かな桜の森になっていることと思います。

向麻山 (吉野川市鴨島町)

 向麻山(こうのやま)は、鴨島町にある標高90mほどの小高い丘です。JR徳島駅からだと、国道192号線を西へ 17kmほど。ここの桜を知ったのは、自転車仲間平キンちゃんのおかげです。すぐ横を走る国道192号線は幾度と無く自転車でもクルマでも通っていたのですが、桜の名所である以前に向麻山の存在さえも全く知りませんでした。山(丘と言ったほうが的確)には、枝垂れ桜、ソメイヨシノ、ヤマザクラなどが沢山植えられていて、公園としても整備されています。花見の季節には、多数の人でにぎわうようなので、いつも早朝に訪れています。 平日通勤前に往復できるのは、この辺りまでが限度です。
 初めて訪れたのは2009年3月28日(写真:下左)。当時からソメイヨシノやヤマザクラはかなり大きい樹が見られましたが、枝垂れ桜はまだまだ小振りの樹が多い印象でした。その後 2016年(写真:上)、2017年(写真:下右)に訪れた時には、枝垂れ桜も随分大きくなっていました。他の桜の樹勢も強く、いずれも花数も多く、数種類が重なり合って咲く様は、昼間に見ても艶やかです。初めて訪れた時の印象を上回るところが少ない中で、向麻山は、これからもまだまだ見映えを増していくように思われます。小高い丘様の山頂手前まで、クルマでも登れる道が続いています。山頂には芝生広場があり、さらに西側を少し登ったところに小さな神社があります。徳島市内方面や吉野川、西条大橋もすぐそこに見ることができます。
 

梨ノ峠・北側 (吉野川市鴨島町 県道31号線)

 神山町と鴨島町を結ぶ県道31号線の峠が、梨ノ峠。標高は400mほどありますが、峠からの展望は全くありません。が、少し北へ下ると吉野川方面の展望が広がるところがあります。その前後、つづら折れになった道沿いにソメイヨシノの並木が続きますが、少し樹勢が衰えているように思われます。写真は2007年4月1日のものなので、現在では、もっと花数が減っているかもしれません。記憶にある限り、桜の時期に訪れたのは、この1回だけのように思います。写真のすぐ右手に上記・向麻山があります。

掘割峠 (吉野川市川島町 県道43号線)

 掘割峠の標高は約330m。上記の梨ノ峠より低いのですが、川中島である善入寺島一面に整然と区画されたパッチワーク様の畑を中心とした吉野川下流域を一望できるポイントとして、個人的にはお気に入りの場所です。峠の南北(特に北側)の道沿いにもソメイヨシノなどの桜が植えられています。時々訪れるのですが、桜の時期にうまく合わせられたのは、今のところ、写真の2011年4月9日1回だけです。上記・梨ノ峠の北山麓から掘割峠の北山麓に向かって、チェリーロードと名付けられた桜並木道があるのですが、こちらも満開の時に訪れたことがありません。

西光寺手前の民家 (名西郡神山町下分)

 下記の明王寺はとても有名で、みなさんご存知と思いますが、その少し手前(徳島側から)鮎喰川を挟んで南岸(右岸)に西光寺というお寺があります。このお寺にもソメイヨシノや枝垂れ桜が沢山植えられていて満開の頃はなかなか見事なのですが、そのお寺のすぐ下にある民家の軒先にある枝垂れ桜は大樹で庭を覆うくらいの枝振りです。鮎喰川沿いをゆっくり走りながらキョロキョロしていたところ、偶然目に入ってきたのが、その存在を知る発端でした。写真:2017年4月8日。西光寺から。

鮎喰川と桜 (名西郡神山町)

 鮎喰川の流れが大好きで、よく川沿いの道を走ります。 降雨状況により随分変化しますが、水面の透明感が最も増すのは冬場かと思います。早春になると、周囲の木々がここぞとばかりに芽吹き始めます。鮮やかなライトグリーンに映えるのは、阿川の梅江田の菜の花。桜に先立って、彩りを加えてくれます。神山町に入ると、道際に沢山の枝垂れ桜が植えられていることに気づかれると思います。満開の頃は、とても華やかなのですが、人知れずひっそりと咲く桜もいいですね。透明度が高く、深い碧の川面を背景に桜の花が映えるのではないかと思い何度か向かっていますが、なかなかいい構図に出会えません。写真は2011年4月9日。

明王寺 (名西郡神山町下分)

 鮎喰川上流・神山にある明王寺に大きな枝垂れ桜があると知って、初めて訪れたのは2005年のことでした。徳島市内では桜の開花がまだまだの状況でしたので、ソメイヨシノより開花が早い枝垂れ桜でも、市内より気温の低い神山なら、ちょうどいいくらいかと思って訪れてみたところ、既に葉桜でした。その後、地元のマスコミや友人からの情報を頼りに、ほぼ毎年訪れています。ただJR徳島駅から、約40kmばかり。平日早朝に訪れるのには、ちょっと無理があります。有名なので、満開の頃には休日なら早朝に訪れないと人だらけ。午前8時前なら、まだ人影は少ないかと思われます。
 お寺の敷地内から土塀を乗り越えて溢れ出すように垂れる枝に多くの花をつける姿は圧倒的です。境内には、2本の大きな枝垂れ桜があります。それぞれの開花時期は微妙に異なっていて、西側の樹が東側の樹より、毎年数日早く満開となるようです。西側の樹のほうが大きく、その樹高はお寺の屋根瓦を遥かに越えています。写真:上は2本が重なっています。下左は東側、右は西側の樹です。下の2本の花色が少し異なるのは、開花時期と写真のためで、実際はほぼ同じような色合いです。

川井峠付近 (美馬市木屋平・旧木屋平村)

 神山町と旧木屋平村との境である川井峠。峠はトンネルですが、木屋平側にも桜の見所が何ヶ所もあります。明王寺から川井峠までは15kmほど、上述のように2005年に明王寺に初訪問した時に既に葉桜であったので、事前情報もないままに足を伸ばして訪れたのが川井峠の枝垂れ桜との初対面でした。
 トンネル西側にある神社にも多数の枝垂れ桜が植えられおり、最近ではそちらが花見のメインになっているようにも思われますが、個人的には、そこから2kmほど木屋平側に下ったところにある民家の枝垂れ桜が一番の見所と思っています。 写真は2008年4月13日、シバザクラと菜の花、水仙とのコラボレーションが素晴らしく、誰でも様になる写真が撮れたました。しかし、その後シバザクラや菜の花の姿があまり見られなくなっているように思えます。
 上の民家から少し下ったところにある2軒の庭先にも、それぞれ素晴らしい枝垂れ桜が見られます。1本の樹としては、こちら(下左の写真)のほうが大きく、見映えもあると思います。この2つの民家付近から峠寄りに、国道438号線から大北集落方面へと向う道が分岐していますが、分岐を少し進んだところにも大きな枝垂れ桜があります。
 この大北方面の道で木屋平の小さな町まで下ったところから少し登り返したところ、国道438号線からなら大桜温泉方面への分岐を曲がって下った大桜温泉近くには、これまた大きなエドヒガンがあります。枝垂れ桜のような豪華絢爛さはありませんが、おおっと唸る大樹です。写真:上右は、2010年3月22日撮影。袂を走るsmakさんとの比較で樹高がわかるかと思います。背後は正善山。

三木家住宅周辺 (美馬市木屋平三ツ木)

 民家としては徳島県内最古で国重要文化財の三木家住宅。ここへは木屋平の中心部からだと国道492号線を穴吹方面に下る途中・三ツ木で左手・西側へ登る道を進むことになります。途中の山肌に大きなエドヒガンが一本あるのですが、うまく撮れた写真がありません。
 三木家周辺には枝垂れ桜が多数植えられいます。その少し奥の三ツ木八幡神社に隣接する広場周辺にも多数の桜が植えられています。まだ若い樹が多いので、今後見映えがさらに良くなると思います。また穴吹川を挟んで対岸の山肌に点在するヤマザクラの姿も、幽玄です(写真:下右)。上の写真は、2013年4月13日、下2枚は2008年4月13日。年によって開花時期が2週間も異なっています。

内田のエドヒガンザクラ・世の中桜 (美馬市穴吹字内田)

 穴吹の山奥に、世の中桜と呼ばれる大きなエドヒガンザクラがあると盟友K氏から聞き、ついでに案内していただいたのは 2009年4月5日。穴吹から国道492号線を木屋平方面へ進み、古宮橋というところで右折。すぐに3つの分岐がありますが、一番右手は剪宇峠方面、一番左手は杖立峠方面で、内田(世の中桜)の表示があるの真ん中の道を進みます。最後の民家を越え、さらにコンクリート舗装から最後はロードバイクではちょっと躊躇われる地道を進みます。途中で山道を歩いて登る「世の中桜、こちら」の表示がありますが、近くまで林道があるそうなので、さらに先へと進みました。最後は完全な山道になって少々迷ってしまいましたが、少し引き返して植林された杉林の谷間に、その姿を見つけることができました。
 杉木立の斜面に生える一本桜、幹回りは徳島一ではないでしょうか。ほとんど手入れはされていないと思われ、また日当たりもあまり良くないためか、訪れた時はまだ3分咲きくらいだったこともあってか、華やかさにこそ欠けましたが、下記の吉良や桜堂の樹を遥かに越える大きさには圧倒されました。下左の写真、身長182cmのK氏との比較で幹回りの大きさがわかるかと思います。訪れた時は、満開には少し早かったです。当時でも花数は少な目、10年後の現在はどうなっているでしょう。

桜堂 (美馬郡つるぎ町貞光字柴内)

 桜堂のエドヒガンザクラの存在を知ったのは、2010年早春。本屋で「麗しの桜・一本桜300景」という一冊の雑誌をめくっていてのことでした。貞光を見下ろす山肌に立つ大きな桜の写真は、とても印象的で、是非訪れてみたくなりました。本には簡単な地図も載っていたので、記憶を頼りに初めて訪れたのは 2010年3月22日のことでした。明王寺で偶然一緒になったsmakさんと川井峠・大桜のエドヒガンを見た後、穴吹へと下り、貞光側からアプローチしました。ところが、事前に詳細を把握できていなかったので、まず登り口の分岐で迷いました。その後も、てっきり貞光川を望む西斜面にあると思い込んでいたので、急勾配の道を登りながら迷う一方でした。きっとあるだろうと思っていた表示は全くありません。間違ってしまったかと尾根筋をひとつ越えて北側斜面に進んだところで、手書きの小さな「桜堂→」の表示を見つけて、やっと一安心しました。
 漸く辿り着いた桜堂、それはそれは見事な一本桜でした。エドヒガンは花が小さい上に花数も少ない印象があったのですが、ここのエドヒガンはとても花数が多くて、華があります。22日に訪れた時には満開には少し早かったので、28日に再訪したくらい気に入ってしまいました。上と下左の写真は28日です。ちょうど満開。下右は22日。樹高があって花数も多い桜を回るようにしてある道、背後の阿讃山脈と吉野川流域(吉野川そのものは見えません)、そしてこじんまりと佇むお堂、背景立地条件も最高です。
 その後、毎年とはいかないのですが、何度か訪れています。訪れる度に、北側登り口・貞光太田、西側の貞光川沿いからの道いずれにも桜堂の表示が増えてきて、今では迷うことはないと思います。ただ、残念なことに、2016年3月に訪れた時には、樹の先端付近がなくなって、樹高が随分と低くなったように思われました。
 下の写真は、桜堂の横にある旧柴内小学校跡の大きな桜(2012年4月12日撮影・種類不明)。桜堂のエドヒガンに劣らない樹高と花数を持っており、これもお気に入りの樹だったのですが、こちらも2017年に訪れた時には樹の先端付近と東側の枝が取り払われたように見え、少し見映えが落ちていました。台風などの自然災害でしょうか。
 太田方面からの道だと、道沿いにはソメイヨシノの並木があります。エドヒガンとは開花時期が異なるので両方を同時に楽しむことは難しいですが、一度ほぼ同時期に咲いていたことがありました。この道途中から見下ろす吉野川の眺望も素晴らしいです。西側から貞光川を挟んだ対岸の眺めも良く、下の吉良のエドヒガンザクラも遠くに確認することができます。同じ時期に咲いていたミツマタは、少し数を減らしているように思われます。最近では、桜堂と旧柴内小学校跡の間に植えられたソメイヨシノが随分と大きく勢いを増してきていますが、吉野川を見下ろす山肌に立つエドヒガンは、まだまだ一見の価値があると思います。

吉良のエドヒガンザクラ (美馬郡つるぎ町吉良)

 吉良のエドヒガンザクラを知ったのは、2008年頃かと思います。自宅からは50数キロ離れているので、平日訪問は無理。友人のブログで開花状況を教えていただき、初めて訪れることができたのは2009年3月末の週末のことでした。国道438号線を剣山方面に6qほど進み、小さな集落で吉良・エドヒガンザクラの表示を見つけて右折したまでは良かったものの、それからは急勾配で鬱蒼とした杉林の坂道で、本当にこの坂の先に目指す桜があるのかと、ちょっと不安になったくらいでした。
 おそらく平均で10%を越えると思われる坂道を1km以上走ると、少し開けた山肌に出ました。まず出迎えてくれたのは、比較的新しい土蔵脇に立つ満開の枝垂れ桜。そこからさらに農道のようなこれまた急勾配の道を進むと、前方にうっすらと淡桃色の大樹が現れてきました。その付近まで来ると、道はやっと緩やかになってきました。小さな畑を持つ集落の一番高い位置に、このエドヒガンがあります。この樹に出会うまで、いわゆる一本桜と呼ばれる桜の大樹は全く知りませんでしたので、そのインパクトは強烈でした。まさに、見上げんばかりの大樹です。
 満開の期間中、付近一帯は反時計回りに一方通行のようです。上述の土蔵近くで分岐します。エドヒガンが一番高いところにあり、そこから下って来る道沿いの民家にも、枝垂れ桜など沢山の桜が植えられていて、ほぼ同時期に満開です。こちらだけでも、見るに値する光景です。

岡見堂のエドヒガンザクラ (美馬郡つるぎ町半田字紙屋)

 つるぎ町半田の奥に、岡見堂という桜の名所があることを知ったのは、自転車仲間のま〜し〜さんドカさんからの情報でした。場所は、以前にK氏平キンちゃんと雪中行軍を行った大惣林道を下ってきた辺りのようでした。向かったのは、2012年4月12日のことです。半田の町から土々呂の滝方面へ向って10kmほど、吉野川支流・半田川に沿う県道258号線を遡ります。道幅は狭い1車線ですが、交通量は少なく、勾配は比較的緩やかで走りやすい道です。
 迷わずに辿り着いた岡見堂は、いい意味で期待を大きく裏切る景観でした。ちょうどほぼ満開。お堂の両側に立派な2本のエドヒガン(写真:下右)。南側の1本はやや立ち姿、北側は横に広がる枝振りです。樹齢は300年ほどとか。同じ日、先に訪れた上記の桜堂とはまた一味異なる良さがあります。お堂に登ってみると、広がる枝の向こうに、半田川対岸の葛城集落が見えます。あちらの道沿いにも、点々と満開の桜の姿を見ることができました。

下久保のエドヒガンザクラ (三好市井川町井内東)

 その前年、古い自転車仲間のshinさん情報で、下久保のエドヒガンの存在を知りました。正確な場所は不明でしたが、国土地理院地図で下久保を確かめ、訪れたのは2017年4月9日。井川町・辻から井内谷川に沿って3qばかり遡ると、前上方にそれらしい薄桃色に染まった樹が見えてきました。地形図を見て予想していた分岐部より手前に、真新しい「下久保のエドヒガン・こちら」の表示を見つけました。その道を進んだところ、10数%の急勾配が2qほど続きました。途中何ヶ所か、件のエドヒガンらしき樹を遠望できるポイントがありましたが、きつい上にあまり展望もなく、結構大回りしているように思えます。もし、自転車で行かれる方がいたら、表示に惑わされずに、もうひとつ奥の道を進むことをお勧めします。
 かなり大回りの行程で、エドヒガンより少し上方と思われる地点に到着後、先へ進んでみると右手下方にエドヒガンが見えてきました。予想以上に大きな樹です。少し下ってエドヒガンのもとへ。近くには、一眼レフ(フィルムカメラ)を構えた人など3名のカメラマンがいただけ。樹は1本と思っていましたたが、よく見ると2本。いずれも満開だったのですが、常連さんと思われる人の話では、2本の樹が一緒に咲いているのは珍しいとのことでした。おまけに、この年は花数が多く、当たり年だったそうでした。
 
 確かに、見上げると花数はかなり多く、吉良はもちろん、桜堂より遥かに多いように思われました。西側の樹は、既に散り始め。弱い風に、ひらひらと優雅に花びらが舞い落ちます。とても素敵な光景だったのですが、写真にはうまく撮れず。井内谷川対岸にも、かなり高所まで民家が点在しており、それを繋ぐ道と随所に満開らしい桜と思われる薄桃色が見えました。そちらの道を登ってみても、いい桜見物ができるかもしれません。

大坂峠のさくら (板野郡板野町大坂)
 大坂峠は、香川・徳島を結ぶ県道1号線の峠。県境は峠より3q弱ほど北側です。特に峠から北側は、瀬戸内海・播磨灘や東讃から淡路島までの展望が広がり、旧道故の緩い勾配もあって大好きで、以前から足繁く通っています。
 県道1号線沿いには、ほとんど桜は見られませんが、山肌にはポツポツとヤマザクラが季節になると花を咲かせます。
 写真は、2007年4月7日。県道沿いではなく、峠の少し南側から分岐して登る、あせび公園での一枚。当時、あせび公園付近では、ソメイヨシノが沢山咲いていたのですが、最近は手入れされていないためか、樹の成長も悪く、花数も随分と減ったように思われます。
 

 こうやって、書き並べてみると、随分古い写真が多くなってきました。10年以上訪れておらず、情報がかなり変わっている可能性があるところも多いと思われます。今後、新しい桜の見所や、上記の場所で新たに気に入った写真が撮れれば、適時追加・入れ替え予定です。

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