杉のたわ (吾橋重末線) 
 あまり天候が芳しくなかった、この年の連休。前日石堂山に登ってきたばかりでしたが、この日も午前中は貴重な晴れが続くとあって、連日で県西部に向かいました。行先は、いつも魅力的な道の情報を提供してくれるくにさださんがブログで紹介され、以前から気になっていた県道45号線の南側で旧西祖谷山村・吉野川側の吾橋地区から尾根を越えて祖谷川側の重末地区に至る道(吾橋重末線・くにさださんの記録)です。 (2021年 5月25日 記)
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杉のたわ・少し手前から吾橋集落付近を見下ろす 左奥は梶ヶ森 (2021.05.04)
 くにさださんの記録を見て、こんなところに自転車の通れる道があったのかと国土地理院の地形図を確認すると、点線の徒歩道が記載されています(下の地形図参照)。Google map でも繋がっている道が確認できます。祖谷川側には祖谷川左岸の山腹に沿った軽車道が東祖谷方面に続いているようなので、いつか時間のある時に訪れてみようと思っていたのです。
コース  川口−大歩危−谷間豊永林道−吾橋−杉のたわ−祖谷−川口
走行距離   60q   積算標高 1100m
最高地点   杉のたわ  標高 約920m
走行日   2021年 5月 4日  天候:晴れ  シクロクロス
 午前5時起床、前日同様にクルマで一路西へ。ただデポ地予定の阿波川口までの距離は、ほぼ倍の100q。スタートは前日と同じ7時40分となりました。いつも利用している吉野川沿いの駐車場から見上げると、急な山肌に引地の集落。徳島県内の山村では当たり前に見られる光景ですが、何度見ても驚きです。空は快晴、気温は10℃。まずは国道32号線を南下します。休日の早朝ですが交通量も多少あり、時折大型トラックも通過していきます。この日はシクロクロス車だったこともあり、珍しく国道の左側・川側にある歩行者・自転車道を走ってみました。コンクリート舗装で少し段差があったりと走りやすい道ではありませんが、吉野川を望む光景がぐっと近づいてきます。日の出が早い5月とは言え、東側にある国見山の山影になって、まだ日の当たらない吉野川でしたが、小歩危・大歩危と川沿いに連続する岩盤や深く切り立った両側の山による谷の深さ・大きさを改めて認識しました。何度も通っていて当たり前になっていた光景ですが、こうしてゆっくりと見てみると日本でもあまり見かけない光景かと思います。
阿波川口・引地集落 国政橋 国道32号線・歩行者自転車道 大歩危駅
 JR大歩危駅に向かって国道32号線から県道45号線に左折、吉野川を渡り、またすぐに谷間豊永林道へ右折します。分岐部には以前からある途中通行止めの標示がそのままでした。相変わらず復旧されていないのでしょうか。この日は通行止めのずっと手前で左手に折れるので関係なかったのですが。谷間豊永林道に入ると、すぐに登りが続き、吉野川があっという間に眼下に落ちていきます(写真:下左)。それに伴い増す高度感と、変化していく展望が大好きです。そんな思いで走っていると、庭先で作業をされていたご夫婦と挨拶。ご婦人が「この先、いい道ですよ」と声をかけてくれました。同感、まったくその通りです。

左上・吾橋小学校、右へ進む

左上へ進む
 谷間豊永林道を杉のたわ方面に向かう道を見逃さないように進みます。吾橋小学校の標示(写真:上右上)を過ぎて小さな谷川を渡ったところで、折れ返すように左折する道の分岐(写真:上右下)。地形図で確認していたところに間違いありません(この日も念のため要所の地形図をプリントアウトして持ってきていました)。吾橋の標示もあったので、迷わず左折します。その先も地形図では分岐部が2、3あるのですが、いずれも同じ道に戻るようになっています。結果的には、道なりに走っていると間違いなく杉のたわ方面に向かっていくようです。
 地形図では下吾橋・上吾橋と記載されていますが、民家は連続して点在しているように思われました。恥ずかしい話ですが、この時初めて吾橋が旧西祖谷山村であることに気付きました。峠から吉野川側は旧山城町だとばかり思い込んでいたのです(もっとも現在はいずれも三好市に含まれていますが)。点在する民家は、何処も庭先まで手入れが行き届いているところが多く、空き家はほとんどないように見えました。谷間豊永林道の少し南・有瀬地区ほど多くはありませんが、吾橋地区にも茶畑が点在しています。茶摘みには、まだ少し間があるようでした。以前に走った吾橋後山農免道路が集落の何処かに出てきているはずですが、もうひとつはっきりと確認できませんでした。
 上吾橋地区も一番上方付近にあった五所神社の大杉は見事でした(下の写真)。その存在に気付いたのは、いくつかあった折り返しコーナーを回った神社の手前でした。樹高はそれほどでもないように見えますが、幹回りは宿屋杉を思わせるくらいの、ちょっと見かけない太さです。どう写せばこの大きさが伝わるかなあと少しばかり立ち位置を変えてみましたが、うまく捉えられません。帰宅後くにさださんの写真を確認して、納得。こう写せば大きさがよくわかります。ところで、この日、ひとつ問題がありました。3日ほど前からの左胸背部痛がだんだんと強くなってきていたのです。なんとか自転車には乗れるのですが、立漕ぎは痛くてできません。乗り降りもちょっと不自由なくらい。打ち付けた覚えはないのですが、肋骨骨折の痛みと同じです。というわけで、写真を撮るための停車回数も、いつもより随分と減ってしまいました。
 上吾橋地区を過ぎると、吉野川は谷間に沈んで見えなくなってしまいました。代わって吉野川左岸の黒瀧山や野鹿池山の山容が視野のほとんどを占めるようになります(写真:トップ・下右)。その2枚の写真・左奥に見えているのは梶ヶ森です。登っている途中にも見えており、山頂付近に電波塔が確認できていたのですが、つづら折れを繰り返す道で方向感覚が少しぶれて違うのかと思っていました。しかし、拡大すると間違いなく4つほどの電波塔ができます(写真:下左)。
 上吾橋の集落を過ぎた辺りまでは、道幅も広く舗装もきれいで予想外にいい路面状況だったのですが、その後は次第に枯葉などが増えてきました。それでもロードバイクでも十分走行可能な状況で、シクロクロス車なら全く問題ありません。ところが、進んでいく道は途中で方向を変えて西(北西)へ向いていきます。東へ向いて行くとばかり思っていたのですが・・・。道周囲は新緑の雑木林もありますが、鬱蒼とした杉林も増えてきて路面にはクルマの轍以外は杉枯葉が積もるようになってきました。上吾橋からは1本道で分岐はなかったよなあ、気付かないうちに何処かで間違えたのかな。
 下の地形図は今回参照にしたものです。上吾橋の標示から杉のたわ方面は、徒歩道が東進しています。てっきりこの道に沿って行くものと思っていたのですが、実際の車道は一度折り返して北西方向に進んで、再度また折り返して東へと進んでいました。Google map ではちゃんと記載されているのですが、毎度のことですが、事前にちゃんと確認していませんでした。ここに限らず、ずっと以前からある道でも地形図に記載がないところ(前日走った大惣林道もそのひとつ)は結構あるようです。この時も、現地でGPSで確認して初めてわかった次第。
 一安心して北西方向へ進むと、写真:上右のような杉林の中でまた折り返して、今後は間違いなく東方面へと進んでいきます。標高が上がれば展望ももっと広がるかなと期待していたのですが、周囲は雑木や杉が繁っていて、まったく展望はありません。そんな道を進むと、まもなく峠に到着しました(写真:下右)。時刻はちょうど10時。スタート地点の阿波川口からは20q。それほどきつい勾配でも無かったのですが、後半は歩くようなスピードでした。
 峠も展望は全くないので、小休憩の後、祖谷川側に下ります。くにさださんの記録でチラッと記憶に残っていた「峠から東側は道が少し荒れている」との記憶通り、路面状況は西側より少し荒れていました。下りだったこともあるのかもしれませんが、ロードバイクではストレスが多そうです。周囲は植林された杉林が続きます。途中、木々の隙間から、きっと中津山だろうと思われる山容や天狗塚の特徴的な峰がチラリと見えました。しかし何処かから全容が見えるかもしれないとの期待も空しく、いつの間にか手前の山に隠れてしまう標高まで降りてしまいました。写真:下右下は、杉林が終わって小さな分岐部で。吹付の山肌に林道重末・有瀬線の標示が埋め込まれていました。写真:下右上は、最初に現れた民家。下右中は、そのすぐ先の急な斜面で畑作業中だったお二人。世界重要農業資産システムに認定された傾斜地農耕システムの一コマでしょうか。
 下の写真は、重末の集落まで下ってきて、同じ祖谷川右岸・谷筋が反対の重末地区です。可能なら奥に見える山を左から回り込むようにして山腹に続いているはずの道を進むつもりだったのですが・・・。
 下左の写真は、上の写真のところまで下って、下ってきた反対側の重末地区を振り返ったところです。峠は、この画面の左上。この付近も吾橋地区同様、廃屋となった家屋はほとんど無いように見受けられました。下右上の写真は、下左の写真の少し右手側。写真の右下方が祖谷川です。下右下は、吾橋地区でもひとつふたつ見かけたお堂。この重末付近でも2つほど見かけました。古い造りに見えましたが、良く見ると戸はアルミサッシでした。どれも手入れが行き届いていて、どんな目的かわかりませんが活用されていることは間違いないようです。
 その後、当初は今久保地区まで走り、さらに東祖谷山村方面に地形図では実線で繋がる道へ進んでみようかと考えていました。しかし、上述のように背中の痛みが続くことに加えて時間的余裕もあまりなくなってきました。とりあえず今久保集落まで走ってきました(写真:下左)。向かってみようと思っていた分岐には新しい標示があります(写真:下右上)。そのまま下ると、かずら橋方面。予定は右手の中尾方面です。ここから先は地形図以外の情報を持ち合わせていません(Google map では途切れています)。まあ行けるところまで走ってみて、無理と思ったら引き返そうと進んでみました。右折してすぐ、道脇に全面通行止めの看板があったのですが、置き方がもう既に用は終わったかの感じだった上に、その先の路面もきれいなアスファルトでクルマも頻繁に通っているように見受けられたので、そのまま進んでみました。道は地形図通り、大きなつづら折れで緩やかに登っていきます。2つ目の折り返しコーナーを曲がって500m弱進んだところで、工事中の看板。先を見てみると、谷筋のところで道が崩落しています(写真:下右下)。手前にはショベルカーが道を通せんぼ。休日で工事もお休みのようで、ブルーシートがかけられた部分も人と自転車は通れそうな幅は十分あると思われました。時刻は11時過ぎでしたが、背部痛もあって無難に撤退することにしました。工事期間は11月30日までとなっていました。

通行止め
 今久保集落分岐まで引き返して、かずら橋方面へ下ります。何処か上方からかずら橋を眺められる場所があるかなと確認しながら下ったところ、ありました。下左の写真、画面の一番下にかずら橋が写っています。本当は、もう少し橋下の川面を入れて高度感を出したかったのですが、すぐ手前に以前からあるクルマも通ることができる橋が並行しているので、その橋をカットするとこんな写真になってしまいました。川原を散策する人の姿も結構見られます。下右は、これから下っていく県道32号線・善徳バイパス。左奥に国見山が見えています。
 その後は、県道32号線で出合から祖谷口へ。道は所々で広くなったところもありますが、1973年に初めて走った時とほとんど変わりありません。相変わらずの切り立った深い祖谷川の谷と国見山のどっしりと大きな山容には、何度走っても心を捕まれる光景です。往路で再認識した小歩危大歩危の眺め以上に、祖谷渓谷この付近の景観は、山の多い日本でも稀有な光景だと思います。これもいつものことですが、国見山東斜面の迫力ある姿を、どうしたらうまく写真に収められるのでしょう。谷の深さも。県道32号線から川面までは、深いところで200m近い落差があるのです。
  
 写真:上右の写真は、県道32号線が祖谷口橋で国道32号線に出る南手山斜面にある川崎集落。この集落内を経由して、国見山方面へ向かう道が途中まであるようです。こちらもいつか一度走ってみたいと思っています。

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