岡山県中部・姫新線周辺を走る
 新緑の頃を中心に、中国自動車道周辺を巡る周辺の道を足繁く通っていた時期がありました。COVIDの影響もあり、気が付けばしばらく訪れておらず、今回、岡山市で所用があったこともあり、ほぼ3年振りに彼の地を走ってきました。私にとって岡山県中央部の魅力は、道周辺あちこちに見られる雑木林の美しさ、石州瓦や黒塗りの瓦屋根をどっしりと構える民家の姿、そして四国とは異なるなだらかな地形が呈する穏やかな光景、等々。新緑には少し遅い時期となってしまいましたが、当然今回もそんな眺めを期待して向かった次第です。 (2023年 6月18日 記)

姫新線・美作落合駅にて (2023.05.20)
 この付近は何回か訪れているので、できるだけこれまで走った道を避けてコースを考えてみました。加えて、もうひとつの主目的は姫新線を訪ねること。撮り鉄、乗り鉄、その他いろいろ〇鉄と呼ばれる鉄道好きの方は多数。私は〇鉄と自称できるほどではありませんが、幼い頃から今に至るまで鉄道は見ることも乗ることも結構好きです。自転車ツーリングでも、近くに線路や駅があれば立ち寄ってみることが多いです。廃線直前の三江線を巡る旅は最高でした。姫新線も兵庫県内の一部区間を除いて岡山県内の区間は乗客数も少なく、廃線も取り沙汰されているようです。未だ現役であるうちにと、できるだけ姫新線沿線にも立ち寄ってみました。
コース 有漢−尾原−美作落合−月田−新見−県道78号線−有漢
走行距離  120q   積算標高 1900m
最高地点  県道390号線峠 標高 450m
走行日  2023年 5月20日 天候:曇り  GRAND BOIR SPORTIF
 午前7時20分過ぎ、有漢・常山公園をスタート。県道49号線へと進むと、早速石州瓦屋根の民家が現れました。手前にはブドウの棚が見えています。何度も走っている岡山県内ですが、これまで東西に走る道は細い道が多く、南北に走る道は太く交通量も多い印象が強く残っていました。ところが、この県道49号線は東西に近い走行ですが、緩やかな峠(吉備中央町・高梁市境)付近こそ一車線ですが、ほとんどが広い二車線道路でした。おまけに、周辺には落葉樹でなく四国に多い杉林が続いていました。
上  常山公園スタート
左  県道49号線沿いの民家
右上 真っすぐ進む 前方に岡山道
右  吉備中央町
 木造校舎跡が残る尾原集落で、県道66号線へと左折し、北上します。ここも二車線の立派な道です。多少交通量も増えました。これといった特徴も魅力もさほどない道を進んでいくと、これも緩やかな峠で真庭市に入ります。峠からすぐ、次に右折するところがあったのですが、通り過ぎてしまいそうになるくらいでした。
尾原集落付近 真庭市へ
 上述のように、これまで走った道をできるだけ外して計画したのですが、どうしても一部重なってしまうところがありました。実は、ここがそうでした。県道分岐部、下左の写真を撮っていたところ突然記憶が蘇ってきたのです。ああ、あの場所だ。もう7年も前。その時は北からこの分岐まで走ってきました。その時も県道66号線は味気ない道だったと記載しています。それに反して、ここからの県道333号線は半端なく荒れていたので強く記憶に残っていました。なのに計画段階では全く思い出せず、気にもしていなかったのです。進むと、7年前と全く変わりのない細く急勾配の下り道で、両側の木々は鬱蒼を繁っています。路面には枝葉が多数。小石も出水箇所もあります。大型車両はとても通行不可と思われ、普通車が精一杯といった感じです。写真:下中は少し余裕が出てきたところで撮った一枚。下右は、下って集落付近にあった大滝神社手前です。
左:県道66号線から県道333号線分岐部  中・右:県道333号線
 7年前は県道333号線を真っすぐ旭川まで下ったのですが、今回は途中・地形図では天間尾と記載されている付近から美作落合方面への道に進んでみます。下中の写真がその分岐部です。以前は右へ、今回は左へと進みます。下右の写真は、前回走った右手へと一歩入ったところ。ここまで見られなかった新緑に満ちています。県道333号線があんな道なので、一車線道路で記載されているものの県道でもないのでどんな道かと戦々恐々で進み始めた道は、下左の写真のように意外と路面状況は良好でした。
  
 緩やかな登りを進んでいくと、やっと雑木林の新緑が楽しめる道となってきました。写真:下左、自転車の先に野呂との標示が出ています。この左手上方に集落があるのが、少し手前から確認できていました。徳島の山間部ほどの標高差や急な斜面ではありませんが、近隣に通じる道より一段高いところに民家がある光景は、岡山道を北上すると賀陽IC前後から左右に目にすることができ、これも好きな光景のひとつです。そのすぐ先には狭い谷間を利用した水田がありました。田植え直前のようです。
 北上を続けると、まもなく前方で道が急勾配になるのが見えてきました。進んでいくと再び杉林となった中を、勾配は20%を越えて、とうとう足付き。下左下の写真は、押しながら撮った一枚。下左上はその坂を振り返って、下中上はその先も続く急勾配ですが、急な角度がさっぱりわかりません。なだらかな中国山地での急勾配に驚いたのですが、その登り切ったところが峠ではなく平地に近い丘陵地であることは岡山・中国地方ならではの光景・地形です。地形図では高の巣と記載されている、ひとつ西手を走ってきた道と合流する峠付近は開けた地形で集落も田畑もあって二車線道でした(写真:下中下)。が、北へ進むとすぐに一車線となって、下右の写真のような杉林となりました。ここは間伐されて幹も太く樹高のある樹が揃っていますが、ここまで結構鬱蒼とした檜杉林が多く見られましたた。この後もこれまでの岡山中部の印象を覆すような檜杉林の姿が多く見られました。
  そんな杉林が多い道を下っていくと、旭川に出てきました。この付近もずっと以前に掠めていたことにも、帰宅後に気付いた次第です。ここからは姫新線を楽しむ道です。まずは美作落合駅へ。以前に立ち寄った西隣の美作追分駅は旧い造りの落ち着いた無人駅だったので、似たような雰囲気を予想していたのですが、訪れてみると結構新しく立派な駅舎でした(トップ・下右の写真)。駅周辺は民家も疎らでひっそりしていた美作追分と異なり、美作落合はそこそこの町だったこともありますが、構内の清掃や装飾も行き届いており、おそらく委託だろうと思われる女性の姿が窓口の中に見えました。2本あるホームも陸橋で結ばれています。ただ時刻表を見ると便数は少なく、お昼前後には上下便合わせても2時間程間が空くようでした。どうも走っている間に列車の姿が見える可能性は低そうに思われました。
  上 旭川に出てきた
左 美作落合駅・ホーム
右 美作落合駅・正面
 美作落合駅からは、旭川の左岸を走って古見駅へ向かいます。川沿いの土手には綺麗なアスファルト舗装の道が付いていましたが、連続していないようで残念。落合の町がそこそこの大きさだったので、もっと交通量が多いと思った左岸の道ですが案外閑散としていました。右岸に国道国道313号線が走っていて、そちらが主要道でした。そんなことも見落としていました。道は、左手に旭川(おそらく通常より水量は多い)、右手には直線区間が多い姫新線を眺めながら進みます。
 美作落合駅の次に向かった古見駅は、県道390号線へ曲がる予定だった信号機のある交差点がなければ行き過ぎてしまうところでした。民家の間の狭い路地が入り口です。プラットホームに直結しており、もともと駅舎もないようでした。ちょうど長い直線区間の途中にあります。写真:下2枚、左は新見方面、右は姫路方面です。
 古見駅からは、姫新線に沿って久世〜勝山と回る道が主要道ですが、いずれも街中のようでしたので田舎道と思われた県道390号線で月田駅に進むことにしていました。勝山には旧い町並みがあるらしいので、どうしようかとも迷ったのですが、後で勝山の町並みも以前に走っていることを確認。記憶は薄れるばかりです。さて、田舎道を期待して旭川を渡って進んだ県道390号線ですが、周囲は圃場された水田が続いており、何処も田植え真っ最中。県道390号線も圃場に合わせたのか、真っすぐの広い二車線道。階段状の水田に沿ってゆるりと登っていきますが、あまりに開け過ぎていて、ちょっと期待外れでした。山裾まで近付いてくると漸く旧道になり、棚田も曲線を呈してきました。
 広域農道とクロスして峠を越えると、下の写真のようにつづら折れの道が出てきました。やっと予想イメージ通りの道になりました。周囲の雑木林の新緑も鮮やかです。
 峠から西側はずっと一車線の旧道で、月田の街外れに出てきます。旭川支流月田川を渡って、どれほども走らないところに月田駅がありました。月田駅周辺には何件かの製材所がありました。これまで述べたように意外と杉や檜の林が多かったのですが、月田はその集積地なのかもしれません。月田駅も木材使用を全面に押し出した造りでした。
上 姫新線・月田駅
左 県道390号線から月田
 駅舎を抜けて、プラットホームへ出てみました。写真:下、左が新見方面、右が姫路方面です。姫路方面には保線作業中の方々の姿が見えます。駅手前で線路が微妙にカーブしていますが、左の写真を見てわかるように、以前は2番線ホームがあったようです。ホームには大きな桜の古木。満開時にも訪れてみたいものです。月田駅前は、昔は栄えていたのだろうと思われる雰囲気を残した建物が何軒か見られました。
 上述のように、運行本数が少なく通過する列車を見られる可能性は低いと思っていたのですが、月田駅で確認したところ10分程後に下り列車が通過するようです。少し進んだところに県道32号線がトンネルとなった区間があり旧道が姫新線に沿っているので、そこまで進んで待ち構えることにしました。これを逃すと後はないと、数分待っていたところ列車の走行音がしてきて、車両が橋梁を通過。うまく一枚撮影できたのですが、その後旧道を進んでみると、この撮影場所より鉄道と道、そして周囲の田畑などの光景がずっといい場所がすぐ後にありました。第6月田川橋梁のところです。写真を撮ったのは、第5月田川橋梁。

第11月田川橋梁
 併走する旧道が無くなって本道に戻ると、まもなく富原駅。ここは県道に面していました。こじんまりとした無人駅です。ここまで、どの駅も無人でも綺麗な水洗トイレがあって、清掃も行き届いていました。駅舎の一部が集会所のようになっているところもありました。おそらく地元の方々がお世話・管理されているのかと思われますが、最初にトイレが無くなり、そして駅舎もどんどん撤去されつつあるJR四国の駅とはえらい違いです。赤字路線だらけのJR四国と異なり、人口の多い京阪神や山陽新幹線も有するJR西日本との違いでしょうか。富原駅から道は緩やかに登って傍示峠というところがあるのですが、ここは旭川系と西側を流れる高梁川系の分水嶺のようです。その峠の東側に、石州瓦や吹屋付近で見かけるのとは少し異なるテラコッタ風のグラデーションのある屋根瓦の大きく広い庭も美しい民家がありました。残念ながら写真なし。
  
 傍示峠から下って刑部駅。「おさかべ」とは読み仮名がないと読めません。まだ建造されてどれほども時間が経っていない新築のように見えましたが、やはり無人駅です。ホームに出てみると、ここは現役の2番線がありました。委託の業者がはいっているのかもしれませんが、やはり構内は清掃が行き届いていました。
 下左の写真は、刑部・丹治部駅間。艶のある黒い瓦屋根に、なまこ壁。田植えがなされたばかりの水田との間には茶畑の姿が見えます。茶畑、四国の山間部ではよく見られるのですが、中国地方ではあまり見た記憶がありません。大小の違いは多少あれ、農村地区では同じような造りの民家が多く見られます。石州瓦屋根の民家と並んで、大好きな光景です。この民家の少し西側に丹治部駅がありました。ここまでの駅と少し異なり、一昔か二昔前の洋風を狙った造りの駅舎は、屋根も壁も汚れが目立っていました。が、構内は他の駅と同様清掃が行き届いていました。

丹治部駅正面

丹治部駅ホーム
 この日、姫新線で訪れる最後の駅となった岩山駅。月田駅同様、ここも2番線ホームがレールは撤去された状態で残っていました。JR四国の各路線と同様、乗客数が少なく赤字の姫新線。兵庫県内区間では周辺人口もあるため乗客増加のための活動もあるようですが、今回走った区間は廃線も危惧されています。それなのに、同じような四国の駅とは随分と異なる状況です。サイクリングついでに立ち寄っただけではその理由はわかりませんが、姫新線の認識を新たにできた一日ともなりました。
 岩山駅の先で姫新線から離れて山道へ入ろうとしたところ、なんど全面通行止の標示です。ここからの道は田舎道だと楽しみにしていたのですが。引き返すにも距離があり、仕方なく新見市街を掠めて予定の道に戻ることにしました。予想通り新見市街・国道180号線の交通量は多く気を遣う道でしたが、県道78号線へと左折する手前で石蟹駅を見て、以前にここから西側の山手に登ったことを思い出しました。進んだ県道78号線もバイパス化されつつあるようで二車線・直線化されていましたが、写真:下左は旧道が残っていたのでそちらへ進んだところです。期待通りの様相が待っていたのですが、旧道はこの先で通行止めとなって、バイパスに強制降下。

予定の道、全面通行止

県道78旧道も途中通行止 左手へ
 その後県道50号線となって東へ進みますが、南北に走る道の分岐部には通行止めの標示が2ヶ所ほどで見られましたた。予定していた再び県道78号線となる分岐部にも通行止めの標示です(写真:下左上)。ありゃここまで来て・・・、とへこみそうになりましたが、よく見ると右下に休工事日の記載があって、この日は通行可でした。ほっとして進んでいくと、写真:下右のところは二車線ですが、まもなく一車線道となって、登り。頂部から下りになって進んでいったところに件の工事場所らしいところがあって、信号で交互通行でした。
 
 下り切ると、国道313号線へ出ます。有漢までもう少しです。そのまま国道を進むとトンネルがあったので回避すべく、少し北からトンネルの東側を走る軽車道へと進みました。15%ほどの坂を登り切って多和山峠というところで Google map で道を確認したのですが、見誤って左手に進んでしまいました。その道沿いは新緑に覆われた素敵な道でしたが、3qほど下ったところで、どうもおかしいなと思いました。登り始めた近くに戻ってきていたのです。
 疲れ切った脚で、峠まで引き返し。峠の南側で、今度こそ左手に進んだら良かったのですが、無難に国道313号線に出て、結局は随分と無駄に遠回りする羽目になってしまいました。通行止めや最後にこんなオチが付きましたが、姫新線の一部も満喫できた一日となりました。ところで、この日はもう少し晴れると思っていたのですが、ほぼ終盤まで曇天が続きました。新緑をはじめ、やはり晴天下の走行がいいものですが、こと気温が上がらなかったという点に関しては、良かったのかもしれません。

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