富郷、大田尾越と汗見川・猿田川 2021  
 「夏が来れば思い出す・・・」。尾瀬ならぬ富郷は、私にとってサイクリングの原点です。初めて訪れた時からもうすぐ50年。未だに自転車で走って再訪しているとは、当時は想像もできませんでした。1年半以上続くCOVIDの影響で遠出が出来ない日々が続いていましたが、そろそろ四国内なら1泊ツーリングも予定できそうかなと思われつつあった7月末。夏の定番になっていた富郷へ向かってみることにしました。富郷からは銅山川を遡って大永山を越えることも考えましたが、新居浜に下った後は灼熱地獄が予想されます。上手い具合に、通行止めになる期間が多くて、なかなか周回コースが取れない、これも大好きな汗見川沿いから白髪トンネルを越える県道264号線が通れそうなので、これまた久しぶりの大田尾越で周回してみることにしました。 (2021年 8月15日 記)

県道6号線、銅山川から大田尾越への登り (2021.07.31)
 COVIDの影響で中止になっている高速道路の休日割引。前週のように深夜割引を利用するほどの移動距離でもなく、午前5時過ぎに自宅を出て貞光まで下道。迷った末に美馬ICで高速道路に乗って、デポ地の三島公園からのスタートは午前6時半となりました。移動時間の短縮は僅か30分ですが、その後の走りを考えると、少しでも心の余裕ができたので、高速道路料金1500円弱は安くはないものの、良しとしましょう。
コース 伊予三島−富郷−大田尾越−汗見川−金砂湖−堀切峠−伊予三島
走行距離   140q   積算標高 2600m
最高地点   大田尾越  標高1113m  白髪トンネル 標高
走行日   2021年 7月31日  天候:晴れ  GIANT TCR
 高速道路脇の道を1qほど走ると国道319号線に左折します。法皇トンネルへの登り道は、いきなり10%程の勾配。一桁走行で始まりましたが、その後勾配が緩むことは何度も走ってよくわかっていることです。晴天続きだったこともあり、登る道からの燧灘の眺めは、あまり期待できないだろうと最初から諦めていました。しかし、登り始めてみると、思ったより遠望が効きます。上右の写真は、直線化された橋梁の上から北東方向。製紙工場の高い煙突の間に高屋神社のある稲積山が見えます。薄っすらとですが、荘内半島もその延長上に確認できます。ちょうど中央辺りが紫雲出山です。左手には伊吹島が見えています。下の3枚は具定展望台から。左は北西、土居から県道13号線・天満峠方面です。中は北へ。自転車の上は香川愛媛県境の余木崎付近でしょうか。荘内半島は、もうひとつ奥です。右は東へ向いて。一番奥が雲辺寺です。
    
 この道、初めて走った1973年時は、未舗装の部分も随分と残っていた1車線の道でしたが、今ではかなりの部分が2車線・直線化されて(特に前半)、自転車で登るには味気なく勾配もきつくなってしまいました。これも以前より照明が増えて明るくなったように思える法皇トンネル(写真:下左)を抜けて、下ると金砂湖(写真:下右)。そのまま西へ向かう県道6号線も2車線化され、昔のように道両側の樹が木陰を作ってくれることもなくなってしまいました。しかし、時間が経ったものの、トンネル内の涼しさと銅山川沿いに下ってからは瀬戸内側よりはっきりとわかるほど気温が下がっているのは昔通りです。残念ながら、まだ朝早いためか、ミンミンゼミの鳴き声も聞こえません。
 写真:下左の戻ヶ嶽の手前で、川沿いの旧道と分かれます。以前はこのポイントから下方に渕が望めたのですが、木々が大きくなって見えません。旧道の先に富郷キャンプ場があるのですが、分岐には「キャンプ場今年度閉鎖」の看板が出ていました。富郷ダムへと続く右手の道を進むと登りとなって、1973年以降10年以上に渡ってキャンプに通っていたポイントを確認。旧道もこの付近では川面から10m以上高所を走っていたのですが、現在の道は遥か上。そこから少し進んだところに橋があって、対岸の上方に集落があったことは当時から知っていましたが、今では川面からの高さが50m藤原大橋が集落までの高低差感を少なくしています。それにしても毎回思うことですが、富郷ダム完成後、この付近の銅山川は昔と異なり暗く黒っぽくなって、魅力が全くなくなってしまいました。
 上  毎年キャンプをしていた川原
 右上 藤原大橋
 右  富郷ダム
 左  戻ヶ嶽  
   そのまま富郷ダムを通過して別子方面へと進みます。この付近の県道6号線は、全て富郷ダム完成前後に造られた幅広い2車線道です。旧道はもちろん、旧道沿いにあった集落もダム湖に沈んでしまいました。城師は、1973年時に一緒にキャンプした仲間のひとりの縁故で小学校の宿舎(夏休み中で空いていた)でキャンプ後3泊したところです。当時の面影は何処にもなく、トンネルの名前と県道沿いに地名表示が残るばかりになってしまいました。このところ晴天が続いていたので、ダム湖の貯水量も少な目です。道とともに小さな公園のような施設もできています。細川家は400年近い歴史があるそうで、ダム完成時に移転改築されたものだそうです。別子銅山最盛期には1万人以上が暮らしていたという旧別子村も、今は市役所支所や中学校付近(県道6号線で唯一勾配がきつい区間)でも、民家は数えるばかりに減っています。
水位が下がっている金砂湖 細川家住宅 地名だけが残る城師 筏津で左折
 県道47号線と名前を変えて大永山トンネル方面に続く道(この道も1985年の時点でも新居浜には抜けられませんでした・大永山トンネル開通は1990年)から筏津で左折して、大田尾越を目指します。スタートから34qほどで、ちょうど2時間経過したところでした。大田尾越への登りも随分と久しぶりです。前回訪れたのは何時だったのだろう、と走りながら思い出そうとしますが、わかりません。帰宅後確認すると前回は2012年。もう10年近くも前で、その時は高知県側からでした。初めて走ったのは2002年。もう20年も前ですが、記憶通り勾配は緩やか、5%くらいでしょうか。これも記憶通り、道脇には落葉樹林が多く木陰も多いです(トップの写真)。まだ時刻も早かったので気温も上がらず。
 上  峠手前から二ツ岳
 右上 大田尾越(南から北へ)
 右  大田尾越の標示
 左  大田尾越への登り
 大田尾越には9時過ぎに到着。予想していたより早く、ちょっと心に余裕ができました。峠から見晴らしは記憶通りほとんどないのですが、少し北側に二ツ岳など赤石山系の稜線をチラリと確認できるところがありました。そのまま南・高知県側下にります。峠の北・愛媛側では道沿いはほとんどが雑木林ですが、南側では間伐・下枝打ちの行き届いた見事な杉林がありました。大規模な伐採中のところもあり。高知側は植林された杉林も多く見られましたが、もちろん写真:下右のように落葉雑木林もあります。こんな好みのところも多いのですが、やはり下り時の写真撮影は減ってしまいます。それにしても、この付近から見る山々は大きく深いです。写真:下左ではうまく、伝わらないか。
 今回、途中から白滝の里方面へ向かってみることも考えていました。以前から横道があること、何か施設があるらしいことは知っていました。上述のように時間的余裕がありそうだったこともあり、この機会を外すと次回はないかと寄り道することに。その分岐部まではすぐだろうと思っていたのですが、結構下ります。見逃してないよなと思いながら下っていくと、写真:下左上のような分岐部。奥から下ってきて、県道6号線は左手。手前に登り返しです。すぐに水谷という数軒の集落があって、その後は山肌をトラバースするような微妙な登り。途中、写真:下右のように吉野川支流大北川と県道6号線が見えるところがありました。その左手の谷筋から下っていくのかと思い先へ進むと、まだ道は登っていきます。緩やかでも登りの山道は思ったより進まないので長く遠く感じます。この日唯一初めて走る道だったこの区間、この道であってるよなと思いながら進むと、ひとつ小さな尾根を越えると、建物が現れました。白滝の里・里の茶屋というところです。茶屋はひっそりしていたのですが、そのすぐ下方には自然王国・白滝の里という施設があって、結構多くの家族連れなどがいました。ここから県道6号線合流地点までの下りは、県道6号線よりずっと広く立派でした。ただし急勾配なので逆走はしんどいかも。
 上  白滝の里 里の茶屋
 左上 県道6号線・白滝方面分岐部
 左  手入れの行き届いた杉林
 右  県道6号線を見下ろす
 早明浦ダム湖畔に出てきました。県道17号線との合流地点は思っていたより西側で、大川村役場より西でした。そこから微妙な向かい風と極小さなアップダウンに加えて、少しばかり上がってきた気温と木陰が少なくなったため、湖畔沿いの平地にも関わらずじわじわとダメージをくらいます。早明浦ダムで一休み。時刻は11時過ぎ。ここまでの走行距離は70qほどで、全行程のやっと半分。ここから気温がどれだけ上がるかが、この日一番の問題と思われました。
 上  県道6号線から県道17号線へ
 左上 大北川を渡って県道6号線へ
 左  早明浦ダム正面
 右  早明浦ダム湖畔・上津川橋
 さて、ここからはお楽しみ・汗見川に沿って県道264号線を遡ります。吉野集落の自販機で水補給。小さな堰があって広く浅くなった吉野川合流部直前の汗見川では、家族連れが数組、水遊びを楽しんでいました。県道264号線を遡り始めると、高校生くらいか自転車に乗ったこれも川遊びと思われる数人と擦れ違ったり追い抜いたり。私が富郷を初めて訪れたのも、これくらいの年齢だったのだなあ。ところで、この2、3年徳島県東部ではまとまった雨がなくて、鮎喰川はもちろん、穴吹川や貞光川でも水底の岩が茶色くなってしまっています。汗見川はどうだろう、と心配しながら走り始めます。川面を覗き込みながら進んでいくと、やはり下流の支流より数段勝る透明度です。ただ目が肥えた?ためか、流れの遅いところでは以前ほど川底の岩が綺麗ではありません。特に渕ではそれが顕著に思えましたが、それでも澱んでいるというほどではなかったです。
 ところで、何度も言うように、この県道264号線や東隣りの県道5号線、そして大田尾越の県道6号線も土砂崩れなどで通行止めになっていることが結構多く、なかなか周回するコースが組めません。今回は四国地方道路情報提供システムで事前に通行止めのないことなどを確認していたのですが、現地に行ってみると舗装工事などで時間通行止めのところが2か所ありました。1か所目は自転車はどうぞと通していただけました。2か所目も、幸いちょうとお昼休み直前だったので、10分ほど待っただけで先へ進むことができました。場所は奥白髪林道の少し手前、川の右岸から左岸へ渡る橋の直前です。湯気の出ている敷きたてのアスファルトの上を慎重に。
 左 アスファルト舗装工事中
 中 夏雲(待ち時間に)
 右 奥白髪林道分岐部
 そのまま進むと、記憶通り奥白髪林道分岐付近前後から竜王林道付近は、一段と透明度が上がって冴えた川面の光景が続きます。少し走っては立ち止まるの繰り返しで、なかなか先へ進めません。
 竜王林道への分岐を過ぎると、谷は深くなって汗見川はずっと下方になり、川を楽しむことはできなくなります。正午も過ぎて最も暑くなる時間帯になってきましたが、道は旧道のため勾配はさほどきつくなく、周囲の木々の木陰で直射日光を浴びることも少なく、標高も上がってきて、懸念していた暑さに辟易するということはありませんでした。マイペースでゆっくりと登っていきます。クルマも全く通らず、川面は見えなくなりましたが、いい道が続きます。前方遠くには、愛媛高知県境の稜線も見えてきました。
 左  県道264号線
 上  県境の稜線が見えてきた
 右上 県道264号線
 右  竜王林道への分岐部
 かなり上方で短いトンネルが2か所あった(写真:下上2枚)ことは、全く記憶に残っていませんでした。竜王林道までは2018年に走っているのですが、よく考えてみると、その先は2009年に走って以来かもしれません。途中、何処かで沢の水が調達できる(飲水用ではなく体を冷やすため)だろうと思っていたのですが、直近にほとんど雨が降っていなかったこともあってか、水場が全くありません。吉野集落後唯一あった自販機でもう1本水を補給しておけば良かったと思いながら、なんとか峠まで持つだろうと走っていたところ、山側の苔に水が滴るところがあったのでボトルに回収。汗だくというほどにはならない程度でしたが、手足に頭とぶっかけると冷たくて生き返ったような気分。そのすぐ先に、登ってきた汗見川の谷筋が見渡せるポイントがありました(写真:下右)。この光景が見えるのは、ここだけだったと思います。白髪トンネル(写真:下中下)は、そのすぐ先でした。白髪トンネル、2021年8月にトンネル修理のため50分通行止め10分通行可の案内がありました。相変わらず照明のない真っ暗のトンネルですが、照明ではなく路面改良のようです。日曜日は休止とのこと。トンネル到着は13時半。
 一服後、愛媛県側に下り始めます。愛媛側は県道126号線と名前が変わります。両隣の県道5号線・6号線は県境でも名前が変わらないのですが、この違いは? 下り始めると、手入れの行き届いた杉林が結構下方まで続いています。下の写真のように、ちゃんと陽射しが地面まで届いていることが、間伐や下枝打ちが為されていることをよく示しています。これも全く記憶に残っていなかったことでした。道があることと、四国にしては山肌の傾斜が比較的なだらかなところが多いので、人の手が入りやすいためでしょうか。
 例の未舗装区間は、相変わらず(写真:上右・下左)。数えてみると、細切れに5か所。一番長いところで100m程、短い区間は20m弱。初めて走った1985年から変わっていないので、今後もそのままなのだと思います。断続的に未舗装のままの理由は何なのでしょう。思ったよりずっと長い杉植林の中を下り、上猿田の集落に出てきました(写真:下右)。廃屋も目につきましたが、畑も作られてまだ暮らしている住居もあるようです。奥に見えるのは、赤星山でしょうか。
 猿田川の川面は、上猿田の少し下方から見られると思っていたのですが、走ってみるとかなり下って、銅山川の合流地点からあまり距離がないところで、漸く川面を確認することができました。川の勾配があるだけに水の流れが速く、その分川底の自浄作用もいいようで、汗見川以上の透明度です。
 渕も思わず飛び込みたいくらいのところがありました。川面まで道路から数mくらいの落差があるのですが、簡単に降りることができる場所がありません。もしあれば、きっと水浴びしていたこと間違いなし。汗見川よりさらに小さな支流ですが、猿田川も魅力的です。
    
 銅山川の合流点まで戻ってくると、時刻は14時半でした。当初は往路を引き返す予定でしたが、少し時間がありそうだったので、法皇トンネル回避も含めて、これまた私的サイクリングの原点・堀切峠を回って帰ることにしました。少し遠回りになるし、苦手意識のある堀切峠への最後の登りまで脚があるかなと多少気になったのですが。平野橋を渡らずに、国道319号線で金砂湖沿いを走っていきます。この道は拡張されたところはほとんどなく、1車線の旧道のままです。当時はまだ未舗装部分があったような記憶ですが、あやふやです。翠波橋も当時からありました。向こう岸には民家もないと思うのですが、綺麗に塗装されていました。柳瀬ダム下にある平野集落の姿も、以前とあまり変わりないように見えます。仙龍寺からの登りは思っていたほどきつくなく、疲れた脚でも問題なく登れました。国道319号線から堀切峠への道に分岐する手前から新宮ダム湖、奥に塩塚峰が見えました(写真:下右)。
 上  金砂湖沿い国道319号線
 左上 翠波橋
 左  日浦集落
 右  新宮ダム湖と右奥・塩塚峰
 分岐部から少し進むと堀切峠。高知道や堀切トンネル(県道5号線)ができる前は、川之江方面から金砂湖や旧新宮村に入る唯一メインの道だった堀切峠も、交通量もほとんど無くなってしまい、今はもうただの切通になってしまいました。標高490mとの標示に感激した峠の表示板も何処にも見当たりません。峠からは少しでも西側へ下ろうと、最初のコーナーから三角寺方面への道へ進んでみました。一度くらいは走っているような気もするのですが、佐礼という集落付近で棚田があって燧灘方面の展望が広がる光景(写真:下右)は記憶になかったので初めてだったのかもしれません。

国道319号線との分岐部

堀切峠
 三角寺には立ち寄ることなく、前を通過しただけ。お寺の下にある分岐を左手に進めば法皇スカイライン方面だとばかり思っていたのですが、地形図などを見直すと、そちらからデポ地の三島公園へと道は繋がっているようです。が、かなり複雑。その時は気付かなかったので、道通り右手に下ると、意外と東側に戻ってしまいました。さすがに平地まで下ってきたら随分暑くなったのですが、それ以外はなかなか快適に走れました。度重なる通行止めさえ無ければ、涼しくて走りやすく夏の定番としたいと思いましたが、果たしてこのコースを何時まで自走できることやら・・・。

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