雲早山へ
 11月3日は晴れの特異日のひとつだとか。この時期、例年なら四国でも標高1000mを越える山の紅葉は終わっています。ところが、この年は何処も2週間ほど色付くのが遅れていて、毎年通う山や峠は漸く何処も紅葉の見頃との情報が入ってきました。本来なら迷わず定番の落合峠へ向かうところですが、仕事の都合もあって時間が足りません。前日にも知人から殿川内渓谷の紅葉も見頃だとの情報をいただきましたが、こちらもちょっと時間が足りません。ということで、当初から予定してた柴小屋から剣山スーパー林道経由で雲早山ハイキングへ向かうことにしました。雲早山に登るのは2016年以来2度目です。前回もそれなりにいいところだと思ったのですが、今回は天候にも恵まれ、山頂から360°の大展望が楽しめ、雲早山の素晴らしさを再認識した次第です。 (2021年11月18日 記)

雲早山山頂から高城山方面 (2021.11.03)
 走ったコースは下の地図、点線は未舗装路です。左下のはてなマークがひっくり返ったような実線がハイキングコース。
コース  神山−柴小屋−スーパー林道−雲早山ハイキング−神山
走行距離   45q   積算標高 1600m
最高地点   雲早山山頂  標高1496m
走行日   2021年11月 3日  天候:晴れ  GIANT CONTEND
 朝早めに仕事を済ませて、神山までクルマで移動。スタートは午前7時40分過ぎとなりました。石積みが美しい、稲刈りも終わった農村風景を横目に剣山スーパー林道方面に進むと、道両側はすぐに植林された杉林に囲まれます。前半は10%ほどの勾配が断続的に続きますが、中盤には緩やかなところも出てきます。そんな道が悲願寺への分岐がある標高950m付近まで延々と続きます。しかし、杉林は間伐などの手入れが比較的行き届いていて、暗い感じはあまりありません。見晴らしはほとんどなく単調と言えば単調ですが、クルマがほとんど通らないこともあり意外と好きな道です。唯一、悲願寺分岐手前に紅葉し始めた広葉樹の雑木林が、極短い区間ですがありました。
神山農村風景 ほとんどが杉林 唯一の雑木林 大川原方面
 この道が好きな最大の理由は、標高1000mを越える柴小屋の東屋辺りから稜線にかけて、北東側に広がる吉野川下流〜徳島市方面の眺望(写真:下左)があるためもしれません。この日もまずまずの条件でした(その後雲早山山頂からの大展望が待っていたのですが)。写真ではわかりませんが、淡路島や沼島も比較的はっきりと見えて、大鳴門橋も確認できました。北方向には讃岐山脈の向こうに小豆島が見えています。条件がいいと播磨灘から播州地方まで確認することができます。東には大川原方面への山並みが連なっています。大川原との直線距離は10q弱。大川原からは、条件がいいと本州・紀州山地が見えることを確認しているので、柴小屋からもおそらく本州が見える日があると思います。

北、讃岐山脈の奥、雲の下に小豆島

眉山・徳島市街、ズームアップ
 そんな光景を木々の間から眺めながら進むと、スタートから2時間程で剣山スーパー林道合流部に到着。その少し手前には、落葉松が10本ほど。樹高はそれほどないのですが、黄色く染まりつつある状態でした。剣山スーパー林道合流部付近の山肌は、もう落葉している樹も多く見られました。下右の写真は、北側斜面。実際はもう少し色鮮やかでした。奥に横切るのは讃岐山脈、その手前の山並み、一番右手は焼山寺山です。高越山が手前の稜線と讃岐山脈の稜線のクロスするとことに頭を出しています。
左  黄葉しつつある落葉松
左上 稜線付近、落葉後も多い
上  剣山スーパー林道へ
右  北側斜面の紅葉 最奥は阿讃山脈
 さて、剣山スーパー林道です。何度か走っている柴小屋〜土須峠区間です。これまでの走行から比較的荒れている印象が強かったのですが、走り始めてみるとそれほどでもありません。紅葉見物でバイクやクルマが沢山走った後だからかと思いながら進むと、まもなく路面は荒れてきました。意外だったのは、直前に雨が降ったのは3日程前だったのに、結構大きな水たまりが残っていたことです。下右の写真は、ちょうど稜線の北側から一度南側へ出たところ。切り立った山肌の上に道があるので、後日走った殿川内渓谷(中央の谷筋)を眼下に一望することができます。この時は、殿川内渓谷で、それほどの紅葉が望めるとは思えませんでした。この展望のある付近前後が結構荒れていたのですが、走りながら確か以前もそうだったと記憶を思い起こしていました。

上勝町と神山町を二度出入り

少し荒れた路面
 道は再び稜線の北側に移動して走っていきます。下左の写真、ほぼ中央部に見える尖った峰は東宮山です。そのすぐ右手奥が奥野々山から高越山の稜線。一番奥は、何度も出てきますが、阿讃山脈。しばらく走ると、荒れた路面は少しばかり落ち着いてきました。
 剣山スーパー林道に入ったところから紅葉はそれなりにいい染まり具合だと思っていたのですが、4qほど走ったところから落葉樹が増えて、見映えがぐっと増してきました(写真:下左)。と思ったら、まもなく記憶に残っている雲早山登山口に到着。靴を履き替えて、写真:下右の左手に見える樹の下にある鳥居をくぐってハイキング開始です。下左の写真の奥の谷筋を登っていきます。
 前回登った時は11月後半だったので、ほぼ落葉していた広葉樹は、ちょうと紅葉も見頃くらいでした。それでも登山道はほとんど落ち葉に覆われていて、前回同様何処が道なかわからないところも所々にあります。2度ほど小さな流れを横切るところもあるのですが、見晴らしの効く明るい広葉樹林の中なので、多少間違っても随所にあるピンク色のテープの目印で軌道修正。
左 谷沿いを進む
上 登り始め
右 落葉高木・樹名記録忘れ
 比較的大きな高木もあって、いくつかの幹には樹名の札がついていました。目耳にしたことのある名がほとんどでしたが、樹肌や葉では名前は識別できません。札の写真も撮っておけば良かったとは後の祭り。赤く染まった木の葉はほとんどないのですが、黄色く染まった落葉樹林が作る木漏れ日の中を歩く道は、足元に少し難があるものの心地良い。写真:下左、稜線が見えてきましたが、確かこのまま稜線に出なかった筈との記憶は正しく、右手の山肌へと進みます。
 歩人の姿が全く写っていませんが、登山口には登山者と思われるクルマが数台止まっていました。途中出会ったのは、追い抜いた一組のご夫婦だけでした。写真:下右、これも記憶に残っていた光景、苔生した石群。訪れたことはないのですが、上勝の山犬嶽はこの規模を大きくしたような感じなのでしょうか。
 歩き始めて30分あまりで稜線に出てきました(写真:下中)。右手へ進みます。左手を進むと高丸山へ向かうようです。稜線に出ると勾配は緩やかになって、立ち枯れの樹も混じる道(写真:下右)を進むと、まもなく山頂に到着。登り口から50分ほどでした。
    
 少し手前から人の話し声が聞こえていたのですが、到着した山頂には数名の賑やかなグループが先着していました(写真:下右)。稜線に出た時から、北東(徳島市)方面の展望がいいことに気付いていましたが、山頂に到着して改めて前回とは全く異なる360°の大展望にビックリ。前回も雲の中というわけでもなく、高城山などははっきり見えていた記憶ですが、今回の眺めは予想外でした。トップの写真は、西・高城山方面です。剣山はちょうど高城山の後に隠れているようで、右手奥は矢筈山付近のようです。下左は徳島市内方面を少しズームアップ。手前の稜線の奥に飛び出しているのが柴小屋山付近だと思います。右手に眉山。写真ではわかりませんが、淡路島も見えています。ズームアップすると、柴小屋からと同様、大鳴門橋も確認できました。
 下左の写真は、東方面。真中の谷筋を流れるのが勝浦川。見えている町は、羽ノ浦から阿南市。下右は、その少し南側。左手奥に伊島が見えています。右手奥から左に伸びるのが明神山から続く蒲生田岬。紀伊水道の奥には和歌山も見えているように思えましたが、幻かも。ちょうどこの2枚の写真の間、すぐ手前に高丸山が見えていました。
 写真:下左、南へ向いて。谷筋は国道193号線が走る旧木沢村。谷間に見える集落は大用知付近でしょうか。奥には、室戸方面に向かって山が重なります。上右の写真と下左の写真の間・東南方面には、海陽町辺りも見えました。もちろん太平洋も。下右は北へ向いて。手前の稜線が鮎喰川と吉野川本流との間を隔てる山並み。奥は阿讃山脈で、その奥に小豆島がうっすらと見えています。肉眼では、その右手に播磨灘と家島諸島も見えていました。
 いや、鳥瞰好きの私にとってはたまらない光景です。風もなく、陽射しは心地良い暖かさ。満ち足りた時間を過ごしました。心満ち足りて、来た道を下っていたら、谷沿いに入ってきたところで、何やら気配が。ふと顔を横に向けると、ニホンシカです。その距離、10mそこそこ。カモシカとは立ち止まって目を合わせたことが2、3度ありましたが、二ホンシカは出会った途端飛び跳ねて逃げ去ることばかりでした。ところが、今回は何故か私など知らぬふりで悠々と何かを啄んでいます。2頭いたのですが、目があった後も全く気にする様子がありません。s写真を撮ろうとカメラを向けても、知らぬ顔でした。ゆるりと歩いていくニホンシカ達に別れを告げて、下ります。沢を渡る付近で、道を見失って間違いに気づき、10mほど引き返しました。登りもそうでしたが、道が落ち葉で隠れてしまい、ちょっと分かりにくいところがあるのです。
左 高木広葉樹
上 すぐ横にニホンシカ
右・右上 小さな谷の流れ
 いやあ、良かった良かったと大満足で自転車を置いた登山口まで戻ってきました。後は下るだけだと、再び自転車で下り始めたところ、雲早山登り口から土須峠の手前までの紅葉がまた一段と鮮やかでした。例によって、立ち止まるの連続です。
 柴小屋から登山口までより、ずっと紅葉・黄葉した木々が多く、色鮮やか。眼を惹くような紅色こそありませんが、薄い黄色からオレンジ色、茶色系と微妙に異なる色合いが心を惹きます。ハイキング後は下り道だけなので、余裕を持って停止の繰り返し。
 止まっては、上も見上げます。青空にも映える。漸く辿り着いた国道193号線・雲早トンネル南口付近(写真:下右)もいい色付き加減でした。
 土須トンネルを抜けると、アスファルト舗装の下りで快走と思っていたのですが、山腹の北側斜面の紅葉もちょうど見頃でなかなか見映えです。ここがこれほど見事だとは予想していませんでした。ここでも、何度か立ち止まって、写真撮影。残念ながら北側斜面の上に雲も出てきて陽が差さず、くすんだ色の写真しかありません。写真:下右、後方の稜線が雲早山付近だと思います。
 そのまま下るのもなんだったので、観月茶屋のところから神通滝方面への林道を下ろうと思ったのですが、その前にやってきた時と同様通行止めでした。ところが、立ち止まったことで、またひとつ新たな発見。ちょうど大鳴門橋が見えたのです(写真:下左)。何度も通っている道ですが、下りの時はスピードが出ているし、登り時にも気付いたことがありませんでした。
 下り切って、最後は鮎喰川の上流を楽しみながら、神山へ。初志貫徹?で雲早山へ向かって良かった、山行きは天候が良い時がもちろんですが、それも空気の澄んで眺望が良い時が最高です。

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