落ち葉の道  落合峠2021秋
 落合峠に至る道は、私が徳島県内で最も好きなところです。もう10年以上、新緑の頃紅葉の季節には可能な限り毎年のように訪れています。何度訪れても、その都度、新たな感動を得ることができ、飽きることがない魅力的な道です。この年の秋は遅くまで気温が高い日が続き、主な紅葉の見所は何処も例年より2週間くらい見頃が遅れていて、もうひとつ見通しが立てませんでした。どうかなと思いながら、例年より2週間以上も遅れて訪れた落合峠。登り始めには、今年はハズレかと思われたのですが、進んでみると大当たり。これまでとはまた一味異なる記憶に残るサイクリングとなりました。 (2021年12月 3日 記)

落葉散る道 (2021.11.05)
 この日の天候は上々の予報でした。久しぶりに矢筈山に登ることも考えて、靴とズボンも用意しての出発です。時間的なことも考えて、コースは最短距離の桟敷峠経由で落合峠往復です。午前6時過ぎに自宅を出たのですが、西に進む途中に眺める讃岐山脈や剣山方面の眺めがもうひとつです。矢筈山へ登る目的は、前回靄っていて見ることのできなかった360°の展望を楽しむため。ちょっとテンションが下がります。
コース  三野健康防災公園−県道44号線−桟敷峠・落合峠往復
走行距離   65q   積算標高 1900m
最高地点   落合峠  標高1520m
走行日   2021年11月 5日  天候:晴れ/雲  GIANT TCR
 デポ地・吉野川北岸・河川敷にある三野健康防災公園に到着した時、辺りは深い霧に覆われていました。が、準備をしている間にどんどんと晴れてきました。7時40分過ぎ、スタート。この時点で、昨今の脚力を考えると矢筈山への往復は時間的に厳しいかと思われましたが、まあダメ元でと靴をズボンも背負っていきます。
 北岸を1q程遡って、東三好橋を渡る頃には、もうすっかり晴れ渡ってきました(写真:下左)。風もなくて、川面は鏡のようです。中流域は、吉野川の中でも私の最も好きなところです。西の方には少し雲が残っていて、池田辺りは雲海かもしれないなと思いながら橋を渡りました。南岸に渡って県道264号線から県道44号線に入ると、既に一部の木々は紅葉(黄葉)しています(写真:上右端)。例年、ここで紅葉していると、落合峠はもちろん、桟敷峠付近でもほとんど紅葉は終わっています。ありゃ、やっぱり遅かったか、というのが第一印象でした。
 上述のように、ほぼ毎年やってきている落合峠ですが、県道44号線は勾配がきつく、見晴らしも見所もほとんどないので、最近は半田側から六地蔵方面を経由して向かうことがほとんど。半田側からだと距離も長くなり積算標高も増えるのですが、その分若干勾配が緩く山村光景も楽しめますし、複雑に入り組んだ道のおかげでいくつかのルートも取れます。県道44号線で桟敷峠に向かうのは、ちょっと記憶に残っていないくらいです。そんな味気ない?県道44号線で、唯一のお気に入りが林道小祖谷三加茂線への分岐部すぐ上方にある落葉松(写真:下右)。信州では至る所で当たり前のように広大な落葉松の林を見かけるのですが、四国ではほとんどその姿を見ることができません。ここもおそらく30本程度しかないのですが、ちょっと信州の峠を思わせる樹高のある落葉松が続きます。登り口の染まり具合からすると、もう落葉しているかと思われましたが、意外にもまだ染まりきっていませんでした。
 落葉松の地点から桟敷峠までは、後一息。途中、何時からだったか木々が伐採されて三加茂の町から讃岐山脈・大川山が見えるポイントで一枚(写真:下左)。やはり霞んでいて期待したほどの展望はありません。桟敷峠に到着は9時半。この時点で、矢筈山ハイキングはほぼ諦めました。桟敷峠から深渕までは、標高差約100mの下り。少し雲が出てきて陽射しが遮られ、寒いくらいです。ここも登り始め時の予想に反して、ちょうどいい紅葉具合でした。これまた好きな、道に沿った小さな流れを楽しみながらゆっくりと下りますが、明け方まで雨が降っていたのか路面は結構濡れていて水浸し。松尾ダム湖周辺の紅葉も、まだ少し早いくらいです。例年、この付近がちょうどいい染まり具合だと落合峠では既に終了、ここがまだだと峠方面はちょうどいいかもという具合ですので少しばかり期待が持てました。松尾ダム湖が満水だと(あまりない)、湖面に映る紅葉が見映えするのですが、そんな思いをしたのは一度だけ(何時だったか不明)。
 松尾ダム湖からしばらく、晴天が続いていても濡れていることが多い、横手の崖下に松尾川が流れている区間は水たまりだらけでした。紅葉は、下左右の写真のように、ちょうど見頃くらいでしょうか。川面と一緒の写真をと思う場所ですが、標高差が20mくらいあって、一つの画面に捉えることがなかなか難しいです。
 コンクリートの橋を渡って松尾川の左岸に進んだところ、行く手に黒い雲が立ち込めています。好天の予報だったのですが、まさか雨なんてことはないよな、と願いながら先へ進みます。いつもなら、この烏帽子山の登山口までの南へ向かう区間でも、これこれ、この光景だよと思う雑木林に覆われた心地良い道となって(写真:下右端)くるのですが、雲に覆われたためもあるのか、もうひとついつもの高揚した気持ちになってきません。対岸の山肌や道沿いのそれなりに紅葉した木々を見ても、例年の見頃ならも少し気持ちも弾んでくるのに。やはりちょっと遅かったか、今年は期待薄かなと思いながら進みます。
 そんな気持ちで進んだところ、烏帽子山登山口の左コーナーを曲がったところ(標高1100m弱)から、前言撤回。雨に濡れた路面が続くのは自転車が汚れるので嫌ですが、落ち葉が路面に貼り付いて見事な絨毯を呈しています(トップ・下左の写真)。路傍に落ち葉が堆く積もっている光景は何度か見てきましたが、路面が雨に濡れたままであったことが思わぬ功を奏したようです。もちろん、木々の紅葉(黄〜茶系がメインですが)も上々。下右の写真は、滝の少し手前の対岸に、いつも確認している大きな樹が3本ほどあるところ。標高1400m付近には、多少まとまってブナの大樹があるところがありますが、そこから随分と離れた地点で見かける大樹。しかし、これほど見事な黄金色に染まっている姿は初めて見ました。
 同じような写真ばかりで恐縮ですが、もう立ち止まって写真撮影ばかりで、いつもにも増して一向に先へ進めません。いつもは見上げて紅葉を確認することが多い道ですが、この日は上はもちろん、下を見ても前を見ても、横を向いても見頃の紅葉が楽しめました。
 ひとつ上の大樹(標高1100m付近)がそこそこなら、標高1400m付近は通常もう落葉していることが多いのですが、同じような染まり具合・落ち葉の状況が続きます。その前週に向かった高の瀬でも感じたことですが、この年は10月遅くまで高温が続いた後いきなり冷え込んだので、何処も標高差に関係なく紅葉が一気に進んだようです。
 上下の写真は、標高1300m付近。例年、新緑時も紅葉時も最もお気に入りの場所ですが、この年は赤や黄を始め様々な色の落ち葉の絨毯が、いつもとはまた一味違った趣で出迎えてくれました。結果的には、烏帽子山登山口から落合峠すぐ手前まで、数qに渡ってこんな落ち葉の道が続きました。
 下左は黄色基調に染まったところ、下右は数少ない紅い(モミジ類)葉が多く見られるところ。緩やかに蛇行を繰り返す道、雑木林、そして電線やガードレールなどが一切ないことなどそれだけでも楽しい道ですが、これはなんという幸運でしょう。おそらく路面が乾けば、落ち葉は風に吹き飛ばされて路傍に追いやられていくこと間違いなし。100mも進まないうちに立ち止まっては、目に焼き付けるだけではなく写真をとカメラを構えるのですが、決定的な1枚はなかなかです。多数の写真を挙げることで、少しでもその雰囲気が伝われば幸い。
 上の1300m付近がちょうど見頃であっても、風が当たり易いためか落葉していることの多いブナ類の大樹が繁る標高1400m付近。そこまでの状況から、絶対に落葉していると思っていたのですが、下の4枚の写真の通り、ちょうど見頃。2、3度この付近がちょうどいい時期に遭遇したことがあるのですが、そんな時はおおよそ下方ではまだまだ色付き始めでした。上述のように、この年は標高の低いところから高いところまで、関係なく一気に染まったことが実感できる一コマです。
 ブナ類は紅葉(茶系)すると落葉まで早いのかと思うくらい旨い染まり具合の時期に当たることがないのですが、今年はそれもバッチリでした。見上げると、再び広がってきた晴れ間の青空にオレンジ色の葉が輝いています。
 峠少し手前の直線区間(写真:下左)、ここも同様でした。いつも、最後にちょっと勾配がきつくなるんだよなあと思いながらでしたが、確かにGPSでは10%を越えています。これまで深渕から落合峠までは緩やかだという印象が強かったのですが、今回途中にも意外と10%の区間が何か所かあることを確認して驚きました。桟敷峠までの勾配がきついこともありますが、おそらくいつも周りの素晴らしい光景に騙されていたのかもしれません。
 落合峠には、11時半くらいに到着。峠は風も吹き抜けて寒いだろうとの予想は外れて、回復した天候で陽射しも戻り、ポカポカと暖かいくらいでした。しかし、残念ながら、南の天狗塚方面も北の大川山方面もくっきりとは見えていません。折角担いできた靴とズボン、無理して矢筈山に登っても期待するほどの眺めは得られないだろうと、いつものように、SPDの靴のままで東手の稜線まで登るだけにしました。この登山道が先の塩塚峰同様、道際のクマザサが刈り取られて随分と広くなっていました。南側・サガリハゲ山の西側斜面も条件がいいと緑も点在する紅葉が山肌全体に見られるのですが、少し靄っていたこともありますが、北側と異なり落葉している樹が多いように思われました(写真:下左)。一方、落合山北面の紅葉はまずまずでした(写真:下右)。
 下左の写真は、クマザサの草原から西へ。左が前烏帽子山、右がその名の通りの烏帽子山です。この山肌ももう少し鮮やかに色付くのですが、少し靄っています。下右は北北西くらい。ほぼ中央に腕山の姿、奥に淡く讃岐山脈。澄んでいると、その奥に讃岐平野の山が頭を見せてくれるのですが・・・。
 下左は東へ向いて。左奥が矢筈山です。この地点から片道90分くらい。下中は峠の南斜面。サガリハゲ山西斜面同様、もう落葉してしまっている木々が多いです。下右は峠の北斜面。北側斜面のほうが、気温や風当りから考えると、落葉は早いのではと思われるのですが、なぜでしょう。
  
 峠で一服後、正午過ぎに下山開始です。同じ道を往復することは、あまり好みではないのですが、落合峠に限っては例外。登り時とはまた少し異なった視点で走る道を楽しむことができるからです。ところが、この日は、また格別でした。
 これまで何度か往復しているのですが(特に最近では距離が延びる周回は脚力がないのでなおさら)、これほど下りが素晴らしかったことは記憶にありません。まさに落ち葉の絨毯の上を走っている様相。登り時より落ち葉が多いように思われたのは、気のせいでしょうか。
 いつもはいいと思う下り時でも写真はほとんど撮ることがありません。しかし、この日は下るのが惜しいくらいの光景が続きます。登り時と同様に、何度も立ち止まって撮影。登り時と同じような場所ですが、微妙に見え方が異なります。気のせいかもしれませんが。烏帽子山登山口を過ぎて対岸の山肌の紅葉も、登り時よりずっといい感じです(写真:下右2枚)。
 さすがに桟敷峠からは、これといった見所はなく、落ち葉の絨毯もないので、注意だけ十分にして下りました。三加茂の町まで下って、ぶぶるパーク方面へ向い、吉野川右岸を少し走って、角の浦大橋(すみのうらおおはし)を渡って左岸へ。下の写真は、橋上から上流へ向けて。スタート時と同様、鏡のような川面です。
 深渕から登り始めてしばらくは、ハズレかなと思ったことが嘘のよう。落合峠の魅力を改めて思い知らされた一日でした。そうそう、気温は20℃近い予報だったのですが、北側斜面で結構寒く、下りは耳当てにもう一枚(ハイキング用に持参していたアウター)着込んでちょうど良いくらいでした。

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