県西部・山間の道  黒沢湿原・日の丸林道・2020 (2004年の記録は、こちら
 県西部には、北に阿讃山脈、西南に塩塚峰、東南は腕山など標高1000m前後の山々があり、いずれも急斜面の山肌に田畑や民家の点在する徳島の山間地ならではの光景が見られます。そんな集落を結ぶ道を走るサイクリングには、なかなか魅力的なものがあります。その中心部となる三好市池田町は、徳島市内からでも70qほどあるので、自走は無理。いつも池田町までクルマで移動して、そこから走り始めます。必然的に県内では走る機会が少ない地域で、毎年定期的に走るほどではありません。今回は、池田町の東南に当たる部分を、未走の道を2か所ほど繋いで走ってきました。結果的には2004年に走ったコースとよく似た逆回りとなったのですが、県西部の山間地を走ることの楽しみを改めて確認する一日となりました。 (2020年 9月30日 記)

井川町井内東・下久保付近にて (2019.09.19)
コース  池田−黒沢湿原−松尾川−水ノ口峠−日の丸林道−井内−池田
走行距離   80q   積算標高 2200m
最高地点   水ノ口峠  標高1120m
走行日   2020年 9月19日  天候:晴れ  GIANT TCR
 午前9時50分くらいに、徳島道・池田へそっ湖大橋を見上げながら池田ダム湖畔をスタート。吉野川に架かる橋は徳島県内の道路橋だけでも30本以上と結構多いのですが、池田付近は構造も異なる数本の橋が集中しています。池田大橋(写真なし)のT字路を直進し、そんな橋を眺めながら吉野川右岸を遡ります。三繩駅の横を通って県道269号線にでると、4qほど吉野川に沿った後、県道269号線は左折するように曲がります(写真;「下右端)。そのまま左折して、ここからは初めて走る道です。
徳島道・池田へそっ湖大橋 三好橋・北から南へ 土讃線鉄橋・背後は阿讃山脈 県道269号線は右折
 左折前後の道は右岸も左岸も何度か走っているのですが、吉野川沿いから見た雰囲気からは、きっと細く暗い谷沿いの急勾配の道を進んでいくのだろうと思っていました。ところが、進んでみると最初は2車線の道で勾配もさほどなく谷も広めと予想外の展開でした。地形図で、黒沢湿原方向に向かってショートカットする道が2、3本あるのを確認していましたが、ほとんどの分岐には行先を示す表示がありました。写真:下左は前半部分のちょっと開けたところ。梅之谷という地区のようです。小さな商店もありました。昔風に言えば万事屋でしょうか。田舎ならでは、店先には各種野菜種の袋が並んでいました。
 進んでいくと、予想していたような杉や檜に覆われた暗い部分もありました。写真:下中は、まだまだ明るいところ。左手の谷も細くなって、幅が5mもないような谷筋もありましたが、進むとまた谷幅は広がります。進み続けると、谷から尾根に出たようなところに集落がありました。写真:下右、後ろにあった建物には漆川分館とあります。そろそろ黒沢湿原に近づいてきたのかなと思いましたが、まだここから数キロ先です。写真が小さいのでわかりにくいですが、前方の山肌、まだかなり高いところに民家があります。あの辺まで登るのかなあ。一服後、そう思いながら登り続けます。
    
 ところで、この日当初の予定はずっと県道269号線を進むつもりでした(地図では漆川辺りから県道140号線に名称が変わっています)。そして、そう走ったつもりだったのですが、帰路予定コースには重複しないはずだったのに、帰路予定していた林道池田漆川線の分岐に出てきました。その時はあれっと思っただけでそのまま進んだのですが、今回改めて確認すると、この漆川集落で右へ進むべきY字分岐を「黒沢湿原6q」の標示に沿って直進していたことがわかりました。Google Street View、恐るべし。この分岐に道路工事の標示があって、林道池田漆川線が時間通行止めになっていることを知りました(後述)。まあ、後はその時の状況で判断することに。それにしても間違って(そのことに気づかずも)進んだ道は、逆に正解だったかもしれません。点々と存在する民家を蛇行しながら繋いでいる道脇には、満開のソバの花も見ることができました。
 
 さらに登り進むと、西手の展望が広がってきました。点在する民家に廃屋はまだ少なそうに見えましたが、田畑は耕作放棄地が多いようです。ソバ畑も上の写真のところともう1か所だけでした。遠望も楽しめました。写真:下左、緑っぽく見える手前の山肌と青っぽく見える奥の山肌の間に、吉野川が南北に流れています。山頂の形からすぐそれとわかる塩塚峰も確認できます。写真:下右は、もう少し登って、下左の左中辺りをズームアップしたところです。稜線のやや左寄りに、ぴょこんと飛び出たところが塩塚峰です。肉眼では、その後方に赤石山系の山々も薄っすらと見ることができました。
 さらに進むと、上述の林道池田漆川線の分岐に出て、その後は松尾川方面に下っていきます。2qほど下ったところで、黒沢湿原の分岐。当初は訪れる予定にしていなかった黒沢湿原。花の時期も終わっているだろうと思われましたが、こんな機会にでも立ち寄っておかないと次はいつになるかわからないと、通り道からすぐだったので寄り道してみました。2004年8月12月以来なので、なんと16年振りです。ところが、入り口付近にヒツジグサが咲いた小さな池を確認したものの(写真:下右上)、進んでみるとあったはずの大きな池が見当たりません。自転車を置いて遊歩道を半分くらい歩いてみましたが、水辺の姿がありません。16年のうちに随分と乾燥・陸地化が進んだのでしょうか?それとも単に見逃し? 毎年季節になると、地方局や地方紙でサギソウの話題を見聞することも多いのですが、実情はどうなのでしょう。
 黒沢湿原からは、松尾川方面へ向かって下っていきます。この道は2度目です。杉と檜が繁る暗い谷筋が続く道ですが、結構好みです。しかし、相変わらず国土地理院地形図には記載がありません。地形図で黒沢湿原から松尾川方面へ点線・黄で示される道は、2004年12月知らずに進んで大変な目に遭いました。とてもお勧めできません。一方、この写真:下左の道は、地形図でひとつ西の谷・下尾後という付近を通る道です。決して新しい道ではなさそうなのですが、なぜ地形図に記載されていないのでしょう。下るにつれて、9月も下旬になろうとするのに、周囲の森ではミンミンゼミの大合唱。
 下り切ると、松尾川へ出ます。水は少し濁り気味でした。松尾川に沿って県道149号線を遡ります(写真:下右)。この道は何度か走っていますが、松尾川温泉を過ぎたところに、「この先崩落通行止め」の標示が写真入りで出ていました。通行止めが前年から続いていることは知っていましたが、なかなか復旧されないようです。写真を見る限り、自転車なら担げるかも。しかし、この日は、崩落部の手前(西側)アクセ谷沿いの道で県道263号線に出る予定です。
 地形図で念入りに確認していましたが、アクセ谷への分岐も標示があって迷わず。ここから県道263号線までは初めての道です。最初の県道269号線同様、初めての道はワクワクしますね。路面は平均すると、写真:下右のような感じ。細いタイヤで下るのは、ストレスが多いかもしれません。最初は少しきつめ、途中から少し緩んで、急なところでも10%以内だと思います。道周辺は新緑が楽しめそうな雑木林もありますが、杉林のところもある状況を繰り返します。道の半ば以上を過ぎた辺りで、皆伐された山肌が目立つようになりました。ちょうどそのあたりで、松尾川に出た時に追い抜いて行った大型トラック(空荷だった)が凄い勢いで下ってきました。荷台には満載の材木。私は少し手前からエンジン音で気づいていたので、少し広めの場所で通り過ぎるのを待っていましたが、あの狭い道幅いっぱいの大型トラック、対向車が来たらどうするのでしょう。その後半部分には、離れて3軒ほどの民家がありましたが、いずれも無人となって久しい荒れ果てた様相でした。そうそう、軽四四駆(ジムニーとパジェロミニ)が、錆びついたタイヤチェーンを付けたまま、ポツリポツリと4台放置されていました。

分岐すぐ、松尾川を渡る

アクセ谷への分岐、左へ
 県道263号線まで出てきた時は、もうお昼前になっていました。まあ水ノ口峠まではそれほどないだろうから、補給休憩は峠についてからと思ったのですが、全くの思い違いでした。結局、県道140号線に出た地点から峠まではまだ8qばかりあって、標高差も500m余あったのです。事前チェックのいい加減さが良くわかりました。写真:下左は、県道263号線に合流してすぐのところから、アクセ谷方向。皆伐された山肌の一部分が見えます。見える道は登ってきたものではなく、材木運搬用の林道です。左奥に見えるのは、おそらく中津山でしょう。道沿いにはこの日一番の手入れの行き届いた杉林が続いていました。少し進んだところで、また伐採された木を運び出す準備をしている重機とトラックに出会いました。
 上述のように、峠までの距離を勘違いしていたので、まだかまだかと思いながら進みました。そんな途中、北側の展望が広がるところが何か所かあって、これ幸いと写真撮影を兼ねて休憩です。写真:下左、この後下る予定の井内地区が眼下に見えます。右て方向から回って下っていき、左手方向に登り返す予定です。奥は讃岐山脈、右奥の一番高いところが大川山。峠手前にある腕山スキー場までの距離標示を見て、勘違いしていることに気づきました。そんな距離を書いた案内板に、「瀬戸内海も見えるよ」との文言がありましたが、その通り(写真:下右上)。ボンヤリですが、讃岐山脈の向こうに瀬戸内海と島が見えます。方向から詫間・粟島付近でしょうか。さらに登り進むと、手前の山に隠れていた吉野川沿いの町も見えてきました(写真:下右下)。おそらく少し前に走った県道12号線から県道4号線への分岐付近だと思います。
 腕山スキー場からは、もっと見晴らしが効いたかもしれませんが、分岐部で「スキー場まで1q」との表示に心折れ、そのまま峠へと進みました。峠に到着した時には、13時もとっくに過ぎていました。峠からは何の見晴らしもないことは記憶通りでしたが、大師堂があったことは記憶にありませんでした。峠から200mも下ると、左折して日の丸林道へと進みます。ここからは、2004年に逆走したのと2005年に落合峠の後に桟敷峠から松尾ダム回りで走って以来なので15年振りです。下右の写真、2004年時にもほぼ同じ場所で撮っていますね。西に向いて、山肌の集落は井内西地区です。
 上 水ノ口峠の大師堂
 右 日の丸林道から西へ
   山肌の集落は井内西地区
 日の丸林道に入ると、一度少しだけ下って、また少し登り返し。地形図で確認すると、水ノ口峠とほぼ同じ標高1100m付近をしばらくトラバースします。ここからも、瀬戸内海が見えました。讃岐山脈の向こうに見えるのは、やはり粟島付近のようです(写真:下右)。この位置と標高からは、讃岐山脈に隠れて、紫雲出山は見えないようでした。進んでいくと、また切り出した材木をトラックに積み込んでいるところに出会いました。邪魔になるかと立ち止まったら、作業していた人が話しかけてきました。「何処へ行くの」と聞くので、「井内(いうち)方面です」と答えると、一瞬おいて「ああ、井内(いのうち)ね」と返ってきました。地名は難しい。写真:下左は、西へ向けて。池田から川之江を結ぶ国道192号線は、この右手付近です。遠くに見えるのは、赤石山系。
 多美農村公園の分岐を過ぎて本格的に下り始めると、結構鬱蒼とした杉林の中を下っていきます(写真:下左)。何処かに林道小祖谷三加茂線に繋がるところがあるらしいので気を付けていたのですが、見逃したようです。そういえば、日の丸林道も地形図では繋がっていませんし、林道小祖谷三加茂線も記載がありません。それにしても杉木立の中を曲がりくねって進むので方向感覚がおかしくなって、こんな道だったっけ、とちょっと不安になるくらいでした。後半の谷沿いになると狭い湿地もあって、2004年に逆走で登った時はブヨの襲撃に悩まされたことも納得です。大分下って、ほとんど使用されていないように見えるメイト文化村の建物群が現れ、やっと間違っていないことを確信して一安心できました。
 そこからは井内東地区を繋ぐつづら折れが複雑に組み合わさる道を適当に選んで下っていきます。すると、見覚えのある光景に出くわしました(写真:上右)。2004年に初めてやっていた時にもよく似た場所で写真を撮っています。吉野川支流・井内谷川を挟んで対岸の山肌に広がる井内西地区の山村風景も、こちら側とよく似た感じ(トップ、下2枚の写真)。神山や貞光川沿い、池田西山、祖谷など徳島県内の山村では当たり前にみられる光景ですが、全国的には珍しい光景かと思います。そんな中でも井内地区は東西合わせて結構規模も大きく、改めてゆっくり訪れてみたいと思いました。
 そんなことを思いながらゆっくりとつづら折れを下っていると、確か下久保のエドヒガンザクラを見に来た時にも通ったような記憶が蘇ってきました。間違いありません、少し下ると下久保のエドヒガン(写真:下左)。2本あるエドヒガンの葉は、もうすぐ散り始めるところのようでした。せっかくなので、その時とは違う道で、小学校(休校?)付近の県道140号線へ下りました。そこからは、再び県道140号線で腕山方面に向かいます。途中、井内西地区内への分岐が何か所かありますが、それは次のお楽しみ。茶畑の多い井内西地区(写真:下中)を横目に、腕山へ向かう県道263号線の分岐をそのまま県道140号線で西へと向かいます。写真:下右は、登り切ったと思った地点で。奥に見えるのは、おそらくアクセ谷と中津山だと思います。またまた誤算だったのは、登り切ったら後は下りだけと思っていたのに、そうではなかったことです。
    
 思ったほど下らないなあと思いながら山中の道を進んでいると、往路に見た林道池田漆川線の分岐部に出てきました。上述のように、この時点でも往路時に予定外の道を通っていたことに気づかないままでした。道路工事案内には、通行可能時間が各時50分から10分間とあります。この時点で15時20分くらいだったと思います。往路に戻ることも考えましたが、標高差はさほどないはずだし、距離的にもなんとか間に合うかと林道池田漆川線へと進みました。少し走ったところで、閉鎖のコーンがあって、腰の曲がったご高齢の誘導の方がいました。ちょうど県道140号線への分岐のあるところです。私の姿を見ると携帯電話を取り出して、「さっきの自転車が戻ってきたけど、通れるかな」と確認してくれました。誰か他に逆走していった自転車乗りがいたようです。OKとの返事を得て、そのまま進みました。この林道池田漆川線も新緑が美しかったり、吉野川を高所から眺めることができたりと好きな道のひとつなのですが、この日は工事の方に迷惑をかけないようにと、あまり残っていない力を振り絞って走りました。工事区間はかなり池田に近づいた辺りで、ちょうど通行可能時間帯の15時50分過ぎに通過できました。最後は、池田体育館の方には下らずに途中で左折して、ほんの少しですが初めての道を下って、デポ地すぐ近くの国道192号線に出ました。

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