高屋神社 その周辺
 「天空の鳥居」として、今や全国区の有名地となった高屋神社。初めて登ったのは、麓から少し離れたところにある中学校の遠足でした。1970年から1972年の間なので、もう50年も前。急な坂道を登った印象だけしか残っておらず、何年生の時だったのか、春だったか秋だったかの記憶もなく、暮らす町の全容が見えた覚えも全く残っていません。それから30年余、正月に帰省した時に高屋神社のある稲積山の並びである七宝山の稜線近くに道らしい筋が見えることに気付き、地図で確認して不動ヶ滝方面から登ってみたのは2004年1月のことでした。この時は稲積神社方面への道は未開通でした。2007年10月に訪れた時には道が出来ていたようですが、高屋神社再訪は2008年1月。神社からの眺望はなかなかのものだと思ったものですが、当時は全く無名の地で人と出会うことも稀でした。父母ヶ浜同様、これほどまでに脚光を浴びるようになるとは想像もできなかったことです。 (2022年10月 5日 記) 

高屋神社からの眺め(2019.09.07)
 今回は2019年2月に友人と訪れた時の話を中心に、眺めの条件が良かった同じ年9月に訪れた時などの写真も織り交ぜての記録です。走ったコースは下図のように、まずは荘内半島・紫雲出山を登って、当初は半島先端の三崎まで行くことも考えていましたが、時間が足りなくなったため引き返して高屋神社へ。このコースは、友人にどんなところを走りたいかと尋ねたところ、「山から海が見えるところ」とのリクエストに応えて企画した次第です。何度も一緒にツーリングをしている友人ですが、西讃を一緒に走るのは意外にも初めてのことでした。

右は高屋神社付近の拡大図
 
コース   琴弾公園−紫雲出山−父母ヶ浜−高屋神社−琴弾公園
走行距離   60q   積算標高 1000m
最高地点   七宝山展望台  標高 444m
走行日   2019年 2月23日  天候:晴れ  FELT F1
  2004年 1月 2日2007年10月28日2008年 1月 2日
  2014年12月23日2019年 9月17日2022年9月25日
 徳島を出発後、まずは全く反対・東方向の淡路島へ向かいます。この季節限定・馬廻の枝垂れ梅を愛でるためです。自転車で数q走って到着すると、ほぼ満開。花付き、樹の大きさ・形と、何度見ても素晴らしい枝垂れ梅です。初見だった友人も、その姿に圧倒されたようです。しばし鑑賞後、一路西へ。母校(中学校)近くの琴弾公園にデポして、海岸沿いを荘内半島・紫雲出山へ向かいます。
淡路・馬廻の枝垂れ梅 左奥に紫雲出山 大浜付近から 左手奥に七宝山
 さて、最初の登り・紫雲出山です。ここも高屋神社や父母ヶ浜同様、有名なスポットになってしまい、この2019年から桜の季節にはシャトルバス通行のため一般車(自転車を含め)通行止めになりました。最も訪れた2月は、桜もまだまだ硬い蕾、もうひとつの花・紫陽花も枯れ枝を見せるばかり。そんな時期ですが、数名の観光客が訪れていました。下の写真は、山頂展望台からのものです。下左、手前の枝は全て桜の樹です。奥には、本州・笠岡市付近が見えています。満開になった時の写真は、今やウェブ上でも至る所で見ることができますが、確かに満開の桜を手前に瀬戸内海の多島美を一望できるポイントは、そうはないと思われます。

手前・粟島、奥・高見島

南備讃瀬戸大橋
 写真:下左は東南・丸亀方面です。写真が小さいですが、ほぼ中央部の正三角形様が讃岐富士・飯野山、そのすぐ左が城山です。さらにその左が五色台。下右の写真は、左の右手側です。左手奥に見える町並みが詫間。その後方に、我拝師山大麻山が並んでいます。大麻山の右手後方に薄っすらと阿讃山脈・大川山付近が見えています。
 下の写真は、2019年9月撮影。西方向・燧灘。左手の少し濃く写っている島影は魚島諸島です。右手奥にうすく見えるのは、しまなみ海道北部から鞆の浦付近。ちなみに、紫雲出山に初めて登ったのは、1969年のこと。小学校の宿泊訓練時に北西側の箱地区から山道を歩いてでした。自転車で初めて登ったのは、1974年春。高校の自主的に企画したクラスの遠足で。1974年には山頂付近は多少整備されていましたが、今とは比べるほどではありませんでした。紫雲出山からの眺めを楽しみに通うようになったのは、その後からです。
 下3枚の写真も2019年9月のものです。この日は、大気の澄み具合が上々でした。下右は北、瀬戸内海を挟んで福山方面から背後の中国山地まで見えています。偶然、沖に大きな帆船の姿が見えました。紫雲出山を下った後は、上述のように半島先端を回って詫間方面へ向かう予定でしたが、ここまでゆっくりし過ぎたため時間的余裕が厳しくなってきました。そのため予定を変更して仁尾まで戻り、七宝山トンネルを越えて高屋神社の登り口に向かうことにしました。

南東、伊吹島と赤石山系

北東、帆船と福山方面
 途中、往路時は満潮でスルーした父母ヶ浜。そろそろ潮が引き始めてきており、浜辺には既に20人ほどの姿。以前なら、この季節に人影を見ることはなかったものです。もう少し遅い時間帯だと、さらに潮が引いて、また太陽の高さも低くなって、写真にはいい条件だったかもしれません。

水平線上に円上島と魚島諸島
 七宝山トンネルを抜けて山の東側に出た後、不動ヶ滝付近から高屋神社に向けて登り開始です。下の写真:両端は2004年時のものです。先日訪れた2022年9月時にも、左端の標示がありましたが、その左手に2019年にもなかった「天空の鳥居」写真入りの大きな案内板が立っていました。右端の写真は、ほぼピークの地点。高屋神社は左に進むのですが、2004年時はこの少し先で道が終わっていました。道は左端の標示からこのピークまで、3.5qでちょうど標高差350m、平均勾配10%。3年振りだった2022年は、何度も足付き休憩が必要でした。自力で登れるのも、あと僅かかもしれません。
 きつい勾配が続きますが、3qほど進んで道が左手に曲がる手前付近(標高300m前後)から南から東方向の眺めが望めます。ため池が多い三豊平野です。写真:下右、右後方の横長い山が大麻山。左手が我拝師山です。我拝師山の後方に薄く見えているのが城山。飯野山は我拝師山の後に隠れているようです。

2014年12月
 下の写真は南東方面に向いて。緩やかに蛇行するのは財田川です。川の右岸、木が繁ったところが四国霊場70番札所・本山寺。大川山は左手、雲辺寺は右手に切れているので、横切る阿讃山脈は中蓮寺付近でしょうか。その背後に見えている稜線は左手が矢筈山付近、右手中央部に特徴的な形でよくわかる烏帽子山。大好きな鳥瞰、疲れた脚を休めるためにも、しばし休憩です。それにしても驚いたのは、2014年の時点でもほとんど出会わなかったクルマが、次々と登って来る・降りていくと多かったことです(30台超くらいですが)。SNSの影響は凄いです。細く対向も困難なこの道、2022年の時点では土日・休日は午前10時から午後6時まで一般車通行禁止となっています。自転車も同様なので、2022年時は10時までに下れるように8時前に登り始めましたが、同じような理由で登っていくクルマのほとんどが関西を中心とした他県ナンバーでした。
 分岐部からは、先に右手へ進んで七宝山の展望台へ。最後は200mほど未舗装路になり、両側からは繁茂した雑草が道に伸びています(2022年9月の時点でも)が、北西方向・荘内半島を中心とする瀬戸内海の展望は、ここから一番だと思います。予想通り、こちらには誰一人立ち寄っていません。展望台付近も多少荒れていますが、のんびりと瀬戸内海の眺めを独占できるので、整備されて人が沢山やってくるよりはいいかもしれません。下の写真、直前に走ってきた荘内半島・紫雲出山全景。友人の前腕の向こうが父母ヶ浜です。
 父母ヶ浜も大分潮が引いています。コンデジでズームアップしてみると、干潟に点々と人の姿が確認できます。この日は、上述のように夕方が干潮となり、風もさほどなかったため、写真撮影には絶好の条件だったかもしれません。

上:父母ヶ浜 
右:紫雲出山、山頂の向こうは中国山地(2019年9月))
 分岐部まで引き返して、噂の天空の鳥居・高屋神社へ向かいます。ピークからは標高差で70mほど下って、駐車場に到着。少し整備されたように見える駐車場には10台くらいのクルマ。ここからは急なコンクリート舗装の道を自転車を押しあげます。神社脇には、新しいトイレと自販機も設置されていました。写真:下左、ほぼ真南に向いて。中央付近を横走するのは財田川。川のすぐ上に母校(小学校・最近廃校と高校・校舎新築)が見えています。奥の山並の中央付近を県道8号線が抜けています。豊稔ダムは右手前の山並の後方、一番奥は塩塚峰野鹿池山付近です。下右の写真は2019年9月。財田川河口付近と、奥に香川愛媛県境の余木崎、四国中央市。
 同じような写真ですが、左は2014年。32X24のギアでは、もうこの坂を登って来ることが出来ません。中は2019年9月、右は2019年2月。やはり若いカップルが多いです。
  
  時刻はいつの間にか17時過ぎに。燧灘は夕日に輝く状況になってきました。下の写真、手前に横たわるのは伊吹島の南側。奥に小股島と横たわったお地蔵さんにも見える股島。日没まで20分程。だるま夕日が見られないかと思っていたのですが、下ってスタート地点近くの有明浜に到達するのには微妙な時間です。しかし、折角なのでと急な坂を慎重に下り、疲れ切った脚に鞭打って、財田川沿いに出た時には日没に間に合うと確信できました。
 下右の写真は、その財田川から見た稲積山(2019年9月)。手前が財田川、架かるのは大小路橋です。私が小学生の頃は木造で土の路面でした。その橋の正面に見える一段高いところが、高屋神社のある稲積山です。歩いて登る道は左手の急な斜面にあります。今回も走った道(林道七宝線)は、右手に切れている山の裏側からぐるっと回って、稜線の中央部やや右手から稜線を越えて(ピークの分岐部からは森林管理道稲積山線)、稜線近くを左に走り半円形に飛び出した稲積山の右手から歩いて登ります。

江甫山麓から見上げた稲積山

南側から見た稲積山
 話は戻って。急いで有明浜へ向かいます。上手い具合に日の入り前に間に合いましたが、残念ながら西の地平線は霞んでいます。事前に調べたところ、この日、この付近から太陽は股島の南側に沈むようで、その先西条方面まで60qほどの距離には地平がありません。だるま朝日拝める徳島から日御碕方面とほぼ同じ距離なので水平線上に沈む姿がみえるかと予想していたのです。偶然見えた春分・秋分の日10日前後が唯一のだるま夕日の狙い目なのかもしれませんが。ちょっと失意で眺めていたら、父母ヶ浜と同じように遠浅で潮が引いた干潟を、馬に乗った人が優雅に散策中。こんなところで?と思っていたところ、振り返るとすぐ後ろに馬舎がありました。知らぬうちに乗馬クラブが出来ていたようです。
 有明浜も父母ヶ浜も遠浅の海岸線で、干潮時にはどちらも沢山の干潟ができます。いずれも以前は海水浴場として夏は賑わっていましたが、父母ヶ浜は、それ以外の季節は人が訪れることもほとんどない寂れたところでした。有明浜のほうが長さも幅もあって干潮時に現れる干潟も多いかと思うので、父母ヶ浜同様に取り上げられてもいいように思うのですが。上の写真にも一部が写っている沖にいくつかある水中離岸堤の姿が写真映えを損なっているのかもしれません。思わぬ形で超有名になってしまった父母ヶ浜、高屋神社、そして紫雲出山。いずれもずっと以前から馴染んだ大好きな光景で、有名になったこととは関係なく(むしろ閑散としていたほうが良かった)、これからも訪れ続けたいところです。「山から海が見えるところ」のリクエストにも十分応えることができたと、友人からも満足の声。

 ご意見・ご感想・新しい情報はこちらへ

ツーリング香川へ戻る  TOPに戻る

inserted by FC2 system